2015年5月29日金曜日

5/29 勉強会:マイナンバー取得、顧客等の身元確認も必要 他

1.検証・IBM事件高裁判決[2]

132条が創設された際に「経済的合理性を欠くものは租税回避行為である」という考え方は存在していない

・税務職員に「経済的実質」を判断させる税制度はあり得るが「経済的合理性」を判断させる税制度はあり得ない
 税務職員は経済の専門家ではないから

・経済的合理性の有無で租税回避の有り無しを判断する根拠としてしばしばグレゴリー判決が持ち出されるが、132条の創設はグレゴリー判決が出される前なので132条の創設の趣旨、目的にグレゴリー判決で示された「事業目的原理」が考慮されているはずはない

・「行為、計算が不当」かどうかではなく、「結果が不当」かどうかをもって132条の適用の有無を判定するという法律の本来の趣旨が正しく理解されていればIBM事件の判決結果は違ったはず

・租税回避の判定基準は創設時のものを軸として時代に合わせて必要な基準を追加していくべきもの


再雇用も職務内容に変動あれば退職所得

■事案
幼稚園の園長が退職金を支給されたあとも勤務を継続した。

■原処分庁
勤務を継続しており、給与所得に該当すると指摘。

■審判所
下記を満たせば退職所得と同様に取り扱うことが相当であると判断。
⇒勤務関係の性質、内容、労働条件等に重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とは認められないなどの特別の事実関係があること

今回の事案では・・・
・園長は再雇用されて嘱託職員として園長にとどまり、理事長の地位も有していた。
・実質的には園長としての職務のほとんどを引き継いでいた。
・職務内容は量的にも質的にも大幅に軽減され、基本給の減額など労働条件も大きく変動。

よって従前の勤務関係の延長とは認められず、退職所得に該当する。


3.美術品についての減価償却資産の判定に関するFAQ

H27/1/1以降、100万円未満の美術品は減価償却資産
 ⇒例外として、100万円以上の美術品でも時の経過により価値が減少することが明らかな場合は減価償却資産

■「時の経過により価値が減少することが明らか」とは?
 ・例えば、次に掲げる事項を満たす場合など
  (1)会館のロビーのような不特定多数の者が利用する場所の装飾/展示用
  (2)移設することが困難
  (3)他の用途に転用した場合、美術品としての市場価値が見込まれない

■少額減価償却資産に出来るか?
 ・「中小企業の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」適用可能

■耐用年数は?
 ・金属製のもの     …15
 ・その他(絵画、陶器等) … 8


4.コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について

■コーポレートガバナンス・コードとは
・上場企業が守るべき行動規範を網羅したもの
 (ex.独立社外取締役を少なくとも2名以上選定すべき)
・コードを実施しない場合に、その理由を開示・説明する必要がある
・その説明をしなかった場合、制裁措置を受ける
・平成2761日から実施予定

■ガバナンス報告書における記載
(1)コードの各原則を実施しない理由
 ・どの原則に対する説明なのかを明示(ex.原則1-4)
 ・自社の個別事情や今後の取り組み、実施の目途など
 ・原則全てを実施している場合、その旨

(2) コードの各原則に基づく開示
 ・コードには特定事項の開示を求める原則あり
  (ex.政策保有株式に係る議決権行使の基準)
 ・直接、内容を記載するほか、
  有報・会社HPに記載していれば、それを参照すべき旨やURLなどの閲覧方法を記載する方法もあり
 
■ガバナンス報告書の更新・提出
・上記記載事項の(1)(2)の内容に変更が生じた場合、その後最初に到来する株主総会の日以後遅滞なく記載を更新し提出する必要あり
 (任意に都度、更新も可)
 
・ただし、適用開始後初回の提出については、特例あり
⇒上記記載事項の(1)(2)は、準備が出来次第、
 速やかに(遅くとも定時株主総会の6ヶ月後までに) 記載し提出すればよい
 (それ以外の既存の記載事項は、通常通り、定時株主総会後遅滞なく更新し提出する必要あり)


5.マイナンバー取得、顧客等の身元確認も必要

■マイナンバー制度
・行政を効率化し、国民の利便性を高める等の目的で導入される。
H27105日より国民1人ずつに通知される。
 ⇒個人番号は12桁、法人番号は13
H2811日以降、税務申告書、支払調書等に、個人番号、法人番号を記載する必要あり

■主に個人番号の記載が必要となる申告書等
(1)所得税、個人住民税、個人事業税
 ⇒H2811日の属する年分以降の申告書より
  (H29315日提出期限の申告書より)

(2)法人税、法人住民税、法人事業税
 ⇒H2811日以降に開始する事業年度の申告書より
   3月決算・・・H293月期の申告書より
  12月決算・・・H2812月期の申告書より

(3)法定調書
 ⇒H2811日以降支払いに係る法定調書等より
  (H28年分の法定調書合計表より)

(4)給与支払報告書
 ⇒H28年分の給与支払報告書より

(5)各種申請書・届出書
 ⇒H2811日以降に提出すべき申請書等より

H28年分以後に使用予定の様式一覧(H27.5.29現在)

■事業者が従業員の個人番号を把握する場合
・利用目的を明示する必要あり。
・通知カード又は住民票で個人番号の確認をし、免許証等により身元確認をする。

■事業者が顧客の個人番号を把握する場合
個人番号の提供依頼書類を作成して提供を受ける。
なお通知カードの写し又は写真等でも構わない。


6.国外転出時課税、未分割時の取扱いは?

・国外転出時課税制度 (H27/7/1以降適用)
1億円以上の有価証券等を保有する居住者が、次のいずれかの場合、その有価証券等の含み益に所得税が課税される制度(みなし譲渡所得課税)

(1)国外転出する場合
(2)非居住者へ有価証券等を贈与する場合
(3)対象者が死亡して有価証券等を非居住者が相続する場合
 ※非居住者へ贈与したものとみなされる

(3)の場合の取扱
⇒みなし譲渡所得課税額は、通常相続発生の際に提出する、準確定申告書()と合わせて申告
 ※死亡する時までの被相続人の所得税を、相続人が代わりに申告するもの
 ※死亡後4ヶ月以内の申告義務あり

4ヶ月以内に遺産分割協議が整わず、非居住者が相続するかどうか不明な場合
⇒法定相続分に応じて非居住者が相続するものとみなして国外転出時課税制度を適用する


7.法人税:受取配当等益金不算入(短期保有株式関連)

■計算期間を通じた保有割合で判定するもの
(1)完全子法人株式等(100%保有)
(2)関連法人株式等(33%超100%未満保有)

■基準日の持株割合で判定するもの※
(3)その他株式(5%超33%以下保有)
(4)非支配目的株式等(5%以下保有)

⇒※短期保有(基準日以前1月以内取得かつ基準日後2月以内譲渡)株式等を除いて判定する

■ポイント
3月決算の場合、2月中に買い増しておく
3月中に購入した場合は6月以降に譲渡する


8.源泉:社宅家賃の経済的利益について

使用人に社宅を貸与する場合で、家屋や土地に係る固定資産税の課税標準等を用いて計算する『通常の賃貸料』の50%以上の家賃を徴収しないときは、その経済的利益に係る源泉徴収が必要となる。

■借上げ社宅等で固定資産税の課税標準額が知り得ない場合に、近隣相場等を用いて判定することは出来るか?
⇒できない。

社宅賃料の金額設定にあたっての算式は会社独自に決めて運用できるが、税務上のバーに例外はない。
例えば全ての社宅について一律で近隣相場の50%の賃料を徴収している場合にも、その金額が『通常の賃貸料』の金額を超えている場合には源泉徴収が必要。


9.新規上場後3年は内部統制監査を免除

・金商法の改正により、新規上場後3年以内に提出する内部統制報告書は、公認会計士または監査法人の監査証明が不要とされている。
 ※内部統制報告書の提出は必要
 ※新規上場の負担を軽減するため

・資本金100億円以上または負債総額1000億円以上の会社は除く。


10.平成26年会社法改正に伴う有価証券上場規定等の一部改正

1. 関連する会社法改正
・株式等売渡請求制度の新設
※議決権90%以上を有する株主(特定株主)が、他の株主に保有する株式の全てを売渡ことを請求できる制度。

・独立役員の範囲の緩和
※退任後10年経過していれば、独立役員になることが可能になった。

2. 上場規定等の改正
(1) 株式売渡請求
・発生事実としての開示
 ⇒特定株主が請求することを決定した場合にその内容を開示

・決定事実としての開示
 ⇒売渡請求の承認・不承認を会社が決定した場合にその内容を開示

・上場廃止基準の該当事由として追加

※その他、全部取得や株式併合など、キャッシュアウトの手法となるものは、適時開示が改正されているため注意が必要。

(2) 独立役員の独立性についての開示
・退任後10年経過したものが独立役員となる場合
 ⇒ 過去に勤めていたことを開示


11.MBOを失敗させた場合の会社の取締役の責任

・取締役の責任
  善管注意義務
  忠実義務
 ⇒一般株主(会社の持ち主)の立場に立って
   企業価値の向上を企図すべき法的義務を負う
 ⇒公開買付価格の公正さを確保する義務
   価格決定手続の公正さの確保に配慮すべき義務 を負っている


12.外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理

・会計処理の方法
  区分法 → 予約権部分と社債部分に分けて会計処理
  一括法 → 両者を区別しないで会計処理

・一括法の場合の会計処理
  行使されるまでは、すべて社債として負債に計上する
  (通常の社債として換算も行う)
  予約権が行使された時は、行使時レートで換算し、社債から資本金へ振替。
  (社債の帳簿価額との差異は為替差損益とする)


13.従業員による不正に係る課税上の問題点と留意点

①従業員が得た収益が、法人の売上に当たるか否か?
⇒以下を総合的に検討する
・取引を行った従業員の地位、権限
・従業員が行った取引形態
・法人の事業内容
・取引の相手先の認識

②会計不正による増加税額に対する加算税が重加算税になるか、過少申告加算税で済むか?
⇒「従業員の行為=法人の行為」と同一視できるか否かで判断
 ・法人が認識していたか
 ・法人と従業員との関係(地位や権限)
 ・法人の黙認の有無
 ・法人が払った注意


14.コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備

(1) コーポレートガバナンス・コードとは
株主の権利や取締役会の役割、役員報酬のあり方など、上場企業が守るべき行動規範を網羅したもの

(2)実務の留意点
・「基本原則」、「原則」「補充原則」の73原則について、実施しない原則がある場合には説明する必要がある。
⇒東証1部・2部は全ての原則について説明
⇒マザーズ、ジャスダックは「基本原則」のみ説明

・「実施しない」場合には、実施する意思があっても適用当初から実施が困難で実施していない場合も含まれる

・ガバナンス報告書に変更が生じた場合は遅滞なく変更後の報告書を提出するが、新設される2つの記載欄の記載内容(5月の改正に伴う)について変更が生じた場合は、少なくとも変更が生じた最初に到来する定時総会の日以後遅滞なく記載を更新
⇒初回の特例として、201561日以降最初に到来する定時株主総会の日後準備が出来次第速やかに(6ヶ月以内)でOK
⇒新設項目以外は特例なし


15.企業の節税策 報告義務化へ

・規則の詳細は未定。欧米のルールを参考にこれから詰める

・対象=税理士、コンサル会社

・報告内容=顧客リストの提出、節税策の報告(対象となる節税策、金額基準については別途規定)、高額報酬を受けている場合の開示等

・罰則=報告義務を怠った場合罰金

・適用時期=2017年度から?

※米英、韓国ではすでに同様の義務あり。
 OECDが日本にも同様の制度導入を呼びかけ。

※米国では1,000万ドル以上の損金が対象









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