2016年1月17日日曜日

1/15 勉強会:組織再編に伴う報告セグメントの変更 他

1.裁決事例から見る処分理由の記載内容
・平成23年度改正により、税務署長は更正・決定などの
 不利益処分等を行う場合は、通知書に処分理由を記載することになった
 ⇒平成251月から適用されている

・どのような事実関係でどの法規を適用して処分したかを具体的に理解できる程度の理由の記載が必要


2.空家等対策の推進に関する特別措置法
・平成2611月成立
・管理されていない空き家が地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすことを未然に防ぐ目的
・空き家の所有者は適切な管理をしなければならない旨が明記
・地方自治体は、空き家への立入り調査や倒壊等のおそれがある等の空き家に対して除去や修繕等の指導・命令等を行うことが可能


3.相続空き家の譲渡に3,000万円の特別控除
■平成28年度税制改正
・相続した家に相続人が住まず、空き家になっているケース
⇒「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設
⇒譲渡所得から3,000万円を特別控除できる

■要件
・相続開始直前に被相続人だけが居住していたこと
・昭和56531日以前に建築されたもの
・相続時から譲渡時点までに居住・貸付・事業の用に供していないこと
・譲渡価格が1億円以下であること


4.繰延税金資産回収可能性で柔軟な取扱い
■企業会計基準委員会が「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を公表
⇒ 監査委員会報告第66号について、企業から(硬直的な運用であるとの)指摘を受けたため

■改正内容
・スケジューリング不能な将来減算一時差異に関する取り扱い(分類2)
・課税所得の見積可能期間に関する取り扱い(分類3)
・一定の場合、分類2又は分類3として取り扱うことができる(分類4)
など

■平成283月期より早期適用可能(なお、平成293月期より強制適用)
■適用初年度の取扱い
「分類2に該当する企業において、スケジューリング不能な将来減算一時差異について回収可能であることを合理的に説明できるために回収可能性ありと判断する場合」など、
3つのケースの場合、会計方針の変更に該当
⇒ 影響額について、期首の利益剰余金等に加減


5.スマホ、デジカメによる領収書等の電子保存が可能に
H28年度税制改正により、スマホやデジカメで撮影した領収書の電子保存が可能となる。

・従来の制度
 電子化には固定型のスキャナを使用する必要があった。
 また受け取った領収書は、会社に持ち帰り経理担当者が原本確認後、電子化する必要があった

・制度改正後
 スマホやデジカメで電子化可能。
 受け取った領収書をその場で電子化可能なため、経理担当者の経費精算等がスムーズになる。
 ただし撮影した領収書をPCやクラウドに転送する場合は、受け取った従業員の署名やタイムスタンプ(3日以内)の付与が必要となる。
 また経理担当者が領収書等を確認することが要件。

小規模企業者(従業員5人以下の会社等)は、税理士または会計士が事後検査を行うことを条件に、経理担当者による領収書等の内容確認が不要となる。

H28930以後に行う承認申請から適用される見込み。


6.相続財産の申告漏れめぐり税理士の調査義務違反を認めず
■事例
・税理士が相続案件を受注した
・相続人からの提供資料を基に申告書を作成
・税務調査により、一部相続財産の申告漏れが発覚
・相続財産の調査義務違反と主張し、税理士に対して損害賠償を請求した

■争点
税理士に申告漏れとなった相続財産の調査義務違反があったか否か

■高裁の判断基準
調査義務の範囲は、税理士と相続人間で締結される委任契約の解釈で決すべきと判断。

■委任契約の中身
・相続人は相続財産に関する資料提供を約する
・税理士は提供される資料に基づき申告書を作成することに限定

■判決
委任契約での解釈から判断すると、
・相続財産の申告漏れは、税理士に対し申告に必要な書類を交付しなかった。
・申告の基礎資料は提供された資料に限定していることから、申告漏れの危険に備えるための調査検討すべき義務はあったと判断できない。

以上のことから税理士の調査義務違反はないと判断した。


7.株式継続保有要件の適用は法人毎に判断
・平成28年度税制改正で、共同事業を行うための新設合併等に係る株式継続保有要件が明確化
※株式継続保有要件
 ⇒適格合併等において、株主が50人未満である場合には、合併後も一定割合の株主が継続して株式を持ち続ける必要があるというもの

・合併法人(A)の株主が50人以上、被合併法人(B)の株主が50人未満の場合
(1)従来
 ⇒A社株主及びB社株主のどちらについても、株式継続保有要件が求められると解釈されてきた
 ※規定で明確化されておらず、実務上、保守的処理が行われていた

(2)今後
 ⇒B社株主のみに、株式継続保有要件が求められることが明確化された


8.NISA(少額投資非課税制度)に関するQ&A 抜粋
NISAとは?
20歳以上の居住者を対象として、H35年までの間に、非課税口座で取得した上場株式等について、その配当等や譲渡益を最長5年間非課税とする制度をいう。
投資額は年間120万円が上限。
(注)平成27年分までは100万円が上限

■売却損の取り扱いは?
非課税口座で取得した上場株式等の売却損はないものとみなされる。
したがって特定口座や一般口座で生じた売却益との損益通算はできない。

■年間100万までしか購入しなかった場合、未使用枠はどうなる?
未使用枠を翌年に持ち越すことはできない。

■複数の金融機関に申し込みを行うとどうなる?
税務署では申請がもっとも早かった金融機関にのみ「非課税適用確認書」を送付し、その他の金融機関には「交付を行わない旨の通知書」を送付する。
したがって複数の口座で非課税規定の適用を受けることはできない。


9.住民税:均等割に係る無償減資の減算措置と合併
均等割の税額の判定上、「資本金等の額」から無償減資に係る一定の欠損填補額を減算できる。(H27年度改正)

上記の恩恵を受けていた法人を被合併法人として適格合併した場合、合併後に合併法人は、被合併法人の欠損填補額を資本金等の額から控除して均等割の税率区分を判定できない。

■たとえば...
  合併法人 :資本金等の額200
  被合併法人:資本金等の額10090%欠損填補済

[合併前]
 合併法人 :200を用いて判定する。
 非合併法人:10(100-90)を用いて判定する。(H27改正の恩恵)

[合併後]
 210(=20010)を用いて判定するのではなく、
 300(200+100)を用いて判定しなくてはならない。

 ※なお、外形標準課税の資本割にも同様の取り扱いがある。


10.税効果会計の新指針、公表
2015.12.28公表
・分類2から4までの回収可能性の判断要件について見直ししている

分類2
 従来:スケジューリング不能⇒×
 今後:スケジューリング不能⇒企業が合理的な根拠をもって説明する場合◯
分類3
 従来:5年
 今後:5年超の部分でも企業が合理的な根拠をもって説明する場合◯
分類4
 従来:1年
 今後:企業が合理的な根拠をもって説明する場合、分類2や3として扱うことができる


11.平成28年度税制改正大綱のポイント
1. 法人実効税率の引き下げと、税源配分の変更
(1) 平成28年度 (実効税率の引き下げ)
・法人税率が引き下げ(23.9%23.4%)
・事業税所得割の引き下げ(6%3.6%
 ※税率は、法人特別税を含んだ税率
(2) 平成29年度 (税源配分の変更)
・地方法人特別税の廃止
・地方法人税の引き上げ(4.4%10.3%
・道府県民税法人税割の引き下げ(3.2%1%)
・市町村民税法人税割の引き下げ(9.7%6%)
 ※上記変更は、税目間の変動であり、実効税率自体に変更なし

2.税収確保のための財源措置
(1) 事業税外形標準課税の強化
・付加価値割の引き上げ(0.72%1.2%
・資本割の引き上げ(0.3%0.5%
(2) 繰越欠損金の控除制限の強化
⇒ 繰越欠損金を使える額が徐々に制限される
⇒ 現行65%が最終的に平成30年度では50%

3. 消費税
(1) 軽減税率制度
⇒ 平成2941日以降、消費税率は10%
⇒ 飲食品(外食以外)及び、定期購読の新聞については、現行の8%が適用
(2) インボイス制度導入
⇒ 導入時期は平成3341
⇒ 導入までは、現行の請求書等保存方式が適用
⇒ 軽減税率適用品目については、その旨と税率毎の対価の額を請求書等に記載することが要件


12.不正による収益認識への対応策
■不正のレベル
 ・企業レベル>組織レベル>個人レベル

■モニタリング体制の構築
(1) 企業レベル ⇒ トップ主導で不正が実施されることが想定
 ・外部専門家に期待。
   定量的アプローチによるモニタリング
   トップマネジメント層と密にコミュニケーションをとることができる体制
(2) 組織レベル ⇒ トップレベル+人的リソースの振り分け(リスクアプローチ)
 ・基本的には企業レベルと同様
 ・比較的大きな変化に直面している組織(部門)を選定・モニタリングを強化
   ⇒より効果的かつ効率的な対応につなげる対応も可能
(3) 個人レベル ⇒ 金銭的事情等の個人的な事情が絡むことが多い傾向
 ・マネージャー層等、上位職階によるコミュニケーション⇒何らかのシグナルの把握
 ・内部統制や社員間の相互けん制により、不正が予防されることも期待される。


13.組織再編に伴う報告セグメントの変更
・開示
  原則:前年度のセグメント情報を当年度の区分方法により作り直して開示
  容認:当年度のセグメント情報を前年度の区分方法により作成して開示
  困難な場合:実務上困難な場合は、困難である旨とその理由を記載

・四半期での取扱い
  原則:前年度のセグメント情報を当年度の区分方法により作り直して開示
  容認:実務上困難な場合には困難である旨とその理由を記載

・報告セグメント変更のタイミング
  法的な効力発生日と合せる必要はない
  ⇒法的な効力発生日に先行して、変更後の事業セグメントにより取締役会等で経営上の意思決定や業績評価が行われている場合はそのタイミングで変更する


14.招集通知等の発送前開示に関する実務上の留意点
・招集通知等の発送前開示とは、招集通知等の発送が行われる前に、TDnetや自社ウェブサイトを通じて開示する事

(1)株主以外への開示に対する抵抗感
CGコード等での積極的な評価による後押しがあり払拭されたため、批判を受けることはないと考えられる

(2)訂正に関する問題点(発送前開示をした後に訂正があった場合の取扱が明確でない)
・発送前開示の訂正を行わなかったとしても違法ではないが、通常は適時に訂正を行うべき
・訂正方法は差替方式ではなく、正誤方式によるべき
・発送前開示後、招集通知発送前であっても、スケジュール・費用等を鑑み、書面自体の修正が不可能・著しく困難な場合はウェブ修正もOK

(4)その他
・自社ウェブサイトが閲覧しやすいか見直す
・比較可能性確保のため、少なくとも数年分は開示が望ましい


15.住友商事 ニッケルプロジェクトで減損計上
・マダガスカルで推進中のアンバトビーニッケルプロジェクトで770億円の減損損失を計上。
・足元のニッケル価格下落で、固定資産を全額回収不可と判断。
・投資総額は約2,000億円強。⇒約3分の1を減損。
・ニッケル価格は2010年頃10ドル/ポンドだったが、今は4ドル以下。


16.セグメント情報の上場審査上のポイント
セグメントは、マネジメントが実際の意思決定で利用している単位、あるいは業績評価の対象としている単位と整合している必要がある。

(1)セグメント情報の概要
⇒「上場申請のための有価証券報告書」や「有価証券届出書」では、連結F/SまたはF/Sの注記事項としてセグメント情報の開示が求められる。
⇒セグメント情報では、以下の項目が開示される。
●報告セグメントの概要(報告セグメントの決定方法、各報告セグメントに属する製品及びサービスの種類)
●報告セグメントの利益・損失、資産、負債およびその他の重要な項目の額
●セグメント情報と財務諸表計上額との間の差異調整に関する事項

(2)上場審査とセグメント情報
⇒上場審査上、申請会社の収益構造を把握し、利益計画に基づく申請会社の収益性、安定性を判断するため、セグメント情報が検討される。
⇒どのセグメントが会社の弱点であるか、今後どのセグメントが成長するのかを判断することになる。
特定セグメントの業績が悪い場合には、その理由や今後の見通しについて、説明が求められることになる。


17.今週の新規上場会社
なし







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