2017年4月15日土曜日

4/14 勉強会:平成29.3計算書類注記に関する留意事項 他

1.役員給与の損金不算入等、平成29年度改正の政令公布

■見直された点
(給与関連)
・定期同額給与の範囲に、定期給与の各支給時期における支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるものを含める
・事前確定届出給与の届出が不要となる特定新株予約権による給与等の範囲を定める
・業績連動給与について、支給額の算定の基礎となる株式の市場価格の状況を示す指標および売上高の状況を示す指標の細目を定める

(連結納税)
・連結納税への加入に伴う資産の時価評価制度について、簿価1,000万円未満の資産が除外

(仮想通貨)
・仮想通貨の譲渡について、消費税を非課税とする
・課税売上割合の計算上、資産の譲渡等に含まないものとする

※いずれも平成2941日から施行


2.TAXプランニングの義務的開示の行方

・財務省はH28年末に諸外国の制度等の調査の入札を行うなど意欲的
⇒落札結果:不調(応札者がいないため落札者が決まらない)
・税務当局の動きを踏まえると、義務開示は暫く導入されないとの楽観論は禁物


3.小規模宅地特例の同居要件に例外なし

■小規模宅地の特例
被相続人からの相続等で住宅用・事業用宅地につき、一定の要件を満たした場合その宅地の評価額が5080%減額される制度

■特例を受けるための要件()
(1)生計が同一の親族であり、相続するものが事業用や居住用の宅地であること
(2)面積上限以内であること(事業用宅地…400㎡、居住用宅地…330)

■ケース事例
・生計を一にしていたABが両方とも要介護認定を受け、老人ホームへ入居
Aが亡くなり、Bへの相続が発生した
・老人ホーム入居前に居住していた宅地について、特例が使用できるか?

⇒同居要件に関して、被相続人に関しては例外規定は設けられているが、相続人の例外規定は設けられていないため、同一生計親族(同居要件)とならない


4.「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ」報告を踏まえた決算短信等の開示の自由度の向上について

■決算短信等の様式及び記載事項の見直し

(目的)
・決算短信等の開示の自由度を高める
・速報としての役割に特化する

(概要)
(1)監査・四半期レビューが不要であることの明確化
⇒監査・四半期レビューの終了を待たずに、「決算の内容が定まった」と判断した時点での早期開示を改めて要請

(2)速報性に着目した記載内容の削減による合理化
・記載要請事項は、原則として速報性が求められる情報のみ
⇒サマリー情報、経営成績等の概況(四半期は不要)、連結財務諸表及び主な注記

(3)要請事項の限定等による自由度の向上
・「サマリー情報」の様式の使用強制とりやめ
⇒あくまで参考様式として、その使用を要請するにとどめた

(実施時期)
今回の見直しを反映した「有価証券上場規程の改正規則」、「決算短信の作成要領」等は、173月末日以後に終了する連結会計年度の決算に係る決算短信から適用(四半期も同様)


5.事業承継税制の改正で経過措置を手当て

H29年度税制改正で事業承継税制の改正があり

・納税猶予の取消し事由に係る雇用確保要件
⇒相続又は贈与時の常時使用従業者数×80=××人(切捨)
改正前は切上

・災害等で被害を受けた会社について
雇用確保要件等を緩和又は免除するセーフティネット規定が措置。

・贈与税の納税猶予を受ける受贈株式について
相続時精算課税制度との併用が可能。
H29.1.1以後の贈与より適用可


6.監査法人のガバナンス・コードが確定

東芝の不正会計問題等がきっかけとなり、大手監査法人の組織的な運営の強化を目的に策定

■内容(概要のみ)
5原則と22の指針で構成
(1)果たすべき役割:社員が能力を発揮できるようトップが動機づけを行うこと
(2)組織体制:組織的な運営のために経営陣の役割を明確化すること
(3)組織体制:組織運営について、外部の第三者に監督・評価させること
(4)業務運営:人材育成、評価報酬に係る方針を策定、運用すること
(5)透明性の確保:原則の適用状況などを文書で開示すること

■適用方法
・法令ではないので、規制・検査・処分の基準とはならない
・コンプライ・オア・エクスプレインの手法を取る
(原則を実施するか、実施しない場合はその理由を説明する)


7.消費税税務相談 通勤手当と仕入税額控除

■消費税法上
従業員等に支給する通勤手当のうち、通勤に通常必要であると認められる部分の金額は仕入税額控除の対象となる。

■所得税法上
通勤手当のうち、非課税限度額を超える部分の金額は給与として課税となる。

QA
Q:所得税法上、給与課税される部分について仕入税額控除できるか?
A:仕入税額控除できる

(解説)
消費税法上、「通勤に通常必要であると認められる部分の金額」は仕入税額控除の対象となる。所得税の非課税限度額を超える部分であっても「通勤に通常必要である金額」であるならば仕入税額控除の対象となる。
⇒所得税法では「通勤に必要だが給与課税される」部分があることになる


8.最近の事業承継スキーム報道を読み解く②総則6項による否認事案(その1:トステム事案)

■事例
・被相続人(会長)が旧住生活グループ株を資産管理会社に時価で売却。売却収入で金融商品を購入し、資産管理会社へ現物出資。

■効果
・金融商品(投資信託と推定)で、資産管理会社の株式の保有割合を50%以下にコントロールし、株特外しを実施。
 S1S2方式の評価を回避し、大会社として類似業種比準価額にて資産管理会社を評価
 ⇒配当と利益を低くすることにより株価の圧縮が可
 ※株式型投資信託は、株特の判定上、株式として扱われない

■課税庁の否認のロジック
・現物出資など一連の行為は税負担軽減を目的とし、経済的に不合理と判断
 ただし、更正処分の事由は総則6項、相続税法22条の時価による否認=行為ではない
※財産評価基本通達 6(この通達の定めにより難い場合の評価)
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
 ⇒税務上、本ケースの会社を適切に評価する方法が準備されていなかった

■その他
・本件は巷にあふれた手法だが、あまりにも短期間であからさまだったので目についた可能性がある
・財団法人絡みの利益供与問題の調査も同時にされていて、その兼ね合いで本件では争わなかった様子
・過去には、AB社方式という手法で株価を下げ生前贈与をし、行為計算否認による否認をされている。


9.若手会計士が大手事務所から大脱出@オーストラリア

・オーストラリアの会計士事情
・平均的には40代半ばに大手事務所を退職していたが、2017年では30代初めか半ばころに変化
・大手会計事務所は監査業務に集中しているが、会計学専攻の大学院生は監査に魅力を感じていない
・かつて会計は「基準に準拠する業務」であったが、現在は「ビジネスに対する助言を行うこと」に向かっている


10.重加算税と再発防止策

1.重加算税が課されるケース
⇒「事実」の一部、又は全部に仮装・隠ぺい行為を行った場合

2.再発防止策
・経営者が、仮装等を行わない、行わせない姿勢を取ること。
・税務コンプライアンスに関する方針を発信する
・適切な社内監査の実施
・交際費等のルールの明確化
・稟議、決裁フローの明確化
・不正行為に対し、適切に処罰を行う


11.有価証券報告書における経営方針等の記載の追加等に係る開示府令等の改正

■有価証券報告書等への経営方針等の記載の追加(第2 事業の状況)
・名称変更:(現状)対処すべき課題 ⇒(改正)経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
・例示:経営理念、ビジネスモデル、経営計画等を記載
・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等があればその内容も記載

■海外募集時の臨時報告書の提出見直し
・発行価額1億円以上かつ本邦以外の地域で開始された株式等の募集
(原状)
・臨時報告書を遅滞なく提出=国内で届出書+海外で臨時報告書の二重手続が必要
・さらに届出書には海外での募集に関する概要を記載する必要あり
(改正)
・臨時報告書に記載すべき事項が、同時期に開示される届出書で記載されていれば、OK


12.粉飾決算防止のための監査役の法的責任と対応策

■監査役の法的責任
・相当な注意を用いたにも関わらず知ることができなかったことを主張・立証しない限り責任を免れない。

■対応策
・会計監査
⇒会計監査人の監査を前提としてその監査の方法と結果の相当性を担うべき責務があるか否かと重点的に監査する。

・業務監査
⇒役割分担に基づき、他の監査役が適正に監査を行うことを信頼して、自らの担当する役割に比重を置いて監査する。
⇒監査による知識・情報を共有して相互に検証する。


13.グループ監査の展開

■国内子会社との連携
(1)重要子会社:常勤監査役を設置し、本社の監査役が四半期毎にヒアリング+毎年代取と意見交換
(2)その他子会社:本社の管理部門所属の者を非常勤監査役として派遣し、監査役連絡会で共有を図る

■海外子会社との連携
原則、2年毎にすべての子会社往査を実施。
内部監査結果や監査報告書を事前チェックしている。
社外監査役も年1回同行

■内部監査部門との連携
4回ヒアリングを実施。内部監査室長の監査役会への陪席も検討。

■会計監査人との連携
十分に連携しつつ、その独立性を確保。問題が生じた際には直ぐに情報交換。


14.平成29.3計算書類注記に関する留意事項

H28税制改正による減価償却方法の変更
⇒法令等の改正に伴う会計方針の変更注記
(1)重要な会計方針に係る注記:H28.4以降取得の有形固定資産には定額法適用の旨
(2)会計方針の変更注記:償却方法を変更した旨および当期への影響額
※取得の有無にかかわらず、(2)は必要

■回収可能性基準の適用
(1)これまでの会計処理と異なることとなる場合(当初判定より上位分類で取り扱う場合)
⇒会計基準等の改正に伴う会計方針の変更注記:
適用初年度期首のDTA、利益剰余金(+その他の包括利益or評価換算差額)に対する影響額

(2)これまでの会計処理と異ならない場合
⇒その他の注記:同指針を適用している旨

■法人税等基準の適用
⇒注記不要(実質的な内容の変更ではなく、会計基準等の改正に該当せず)


15.個人データの漏えい等対応に関する告示の要点解説

2017530日に改正個人情報保護法が全面施行される。
・当該施行に合わせて「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応についても同時に適用される。
⇒対象は「個人データ」
・「事業者における特定個人情報の漏えい事案等が発生した場合の対応について」は引き続き適用。
⇒対象は「特定個人情報」

・「個人データ」=データベース化した個人情報(整理していないものは該当しない)
・「特定個人情報」=マイナンバーを含む個人情報
⇒改正により、漏えい等の対象が広がった。

・両対応についても漏えい等が発覚した場合に講ずべき措置に大きな違いなし。
⇒「拡大防止」「原因究明」「再発防止策」「個人情報保護委員会等への報告」等


16.今3月期決算の実務ポイント 租税特別措置法関連

・中小企業者等で、取得価額30万円未満の減価償却資産を全額損金算入できる制度
 ⇒ 中小企業者のうち「従業員数1,000人以下」に限定。

・生産性向上設備等の特別償却または特別控除
 ⇒ 平成29331日で廃止

・(相続税)非上場株式評価方法を見直し
 ⇒ 上場会社の株価に、直近2年間平均を採用できるように
 ⇒ 連結決算を反映
 ⇒ 配当:利益:簿価純資産=1:1:1に


17.常勤監査役

・株式上場にあたって、常勤監査役1名を含む2名以上の監査役の選任が必要
・少なくとも直前期の1年間の監査役(会)の監査実績が審査の対象
⇒監査計画の策定、監査の実施や取締役会への参加、監査調書の作成など、監査役監査の体制の整備・運用

・直前期の期首までには常勤監査役の選任を終えることが望ましい。









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