2017年6月3日土曜日

6/2 勉強会:契約書のコピーなら印紙税は非課税 他

1.税効果会計の改正案の全容

■個別TBにおける子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱い
(現行)
一律、繰延税金負債を認識する
(改正案)
下記の場合を除き、繰延税金負債を計上する
⇒親会社又は投資会社がその投資の売却等を当該会社自身で決めることができ、かつ、予測可能な将来の期間に、その売却等を行う意思がない場合

■繰延税金資産及び負債の表示のすべてについて非流動項目に表示する
・具体的には、繰延税金資産=投資その他の資産の区分、繰延税金負債=固定負債の区分

■評価性引当額の内訳に関する情報などを注記へ
1)評価性引当額の内訳に関する数値情報
2) 評価性引当額の内訳に関する定性的な情報
3)繰越期限別の税務上の繰越欠損金に係る数値情報
4)税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報
※連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における注記事項については(1)のみ開示

※適用:平成3041日以後開始する連結会計年度等の期首から


2.家屋の所有権取得前の居住ではマイホーム譲渡特例の適用不可

審判所事例:
・妻Aは、夫B名義のオーストラリアの家に夫と共に16年間居住
・夫Bが病気になり、一緒に日本に帰国
・夫Bが病死し、オーストラリアの家を相続
・妻Aは、相続した家には住まず、姉と同居・家を譲渡した際に、「マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除」を活用できるか?

⇒特例を活用できない
⇒特例は「自分で所有している住宅」に居住していることが条件
⇒夫名義の家に住んでいたとしても、実績とはならない
※相続後、その家に住んでいれば活用できた


3.較差補填でない留守宅手当の損金性は

近年、海外出向者に対する「留守宅手当」の一部が、出向元から出向先への寄附金とされる事例が増加している。

■給与較差補填金(法基通9-2-47
出向元と出向先の給与水準の較差を出向元が補填する場合、当該金額は出向元の損金とすることが出来る

■留守宅手当
従業員が海外出向等の事情で、単身で海外赴任した場合、日本に残る家族の生活費に充てるための費用として支給されるもの

⇒留守宅手当はどのような扱いになるのか現状割れている状態である。過去は合理性があれば、留守宅手当が給与較差補填金でなくても、寄附金課税の対象とはならないとの考え方が取られていた。


4.税理士妻への給与巡り納税者が再び敗訴

■個人事業者が同一生計の配偶者に支払う給与
・原則:必要経費に算入NG
・例外(1):必要経費に算入OK
(1)配偶者が「青色事業専従者」に該当する場合

■「青色事業専従者」
・要件:「事業専従期間」がその年の6ヶ月を超える等
・「事業専従期間」
原則:他の職業に従事する期間は含まれない
例外(2):他の職業に従事する期間も含まれる
(2)他の職業に従事しても、時間が短い等、個人事業者の事業に専ら従事することが妨げられない場合

■事例
・納税者が経営する税理士事務所の業務に、その妻が所長代理として従事
・一方で、妻は関連会社3社の業務にも役員として従事
⇒納税者は妻に対する給与を必要経費に算入

(地裁判決)
・関連会社における業務(3)は相応の業務量であり、納税者の事業に専ら従事することが妨げられないものであったとまでは言えない
(3)代表取締役を務める関連会社もあり
⇒青色事業専従者に該当せず、必要経費に算入NG

(高裁判決)
・地裁判決を全面的に支持


5.H29年度消費税の改正について

主な改正点
(1)仮想通貨の取扱いの見直し
H29.7.1以降、仮想通貨(ビットコイン等)の譲渡は「非課税取引」へ。
理由として、
・欧州司法裁判所で仮想通貨の譲渡が非課税と判示。
・資金決済法で仮想通貨が定義化。
・仮想通貨が通貨として認められ始めた等
ただし収集品及び販売目的の譲渡は引続き「課税取引」

なお、非課税取引ではあるが、課税売上割合(分母の資産の譲渡等)に含めない。
⇒紙幣や小切手等の支払手段の譲渡と同様の取扱いのため。
※会計ソフト上は「課税対象外」とした方が、消費税集計時、算定時に役立つ

(2)届出書の簡略化
⇒納税地が異動した場合、
異動前の所轄税務署のみに消費税異動届出書を提出すればよい。


6.契約書のコピーなら印紙税は非課税

■不動産売買契約時の印紙税の節約方法
通常は売主・買主の契約書を1部ずつ作成し、それぞれに印紙を貼付して保管。
ただし、買主のみが印紙を貼付した契約書を作成し、売主は契約書のコピー(印紙なし)にすることで印紙代を節約できる

■買主が印紙税の非課税措置を適用した場合
H28年以後に発生した自然災害で損壊した建物の代替建物を取得する場合、被災者(買主)が作成する不動産売買契約書は、印紙税は非課税
⇒この場合、売主・買主の双方で非課税が認められる

■やってはいけない
・契約書のコピーの上から署名や押印をする
・原本とコピーを並べて割印をする
・コピーに、原本と相違がないという文言が入っている
⇒税務調査で課税文書とされる恐れあり(過怠税は3倍)


7.法人税:豊洲移転延期に伴う減価償却等の取り扱い

Q&A
(減価償却)
Q:豊洲市場に設置した固定資産について減価償却費は損金算入できるか
A:事業の用に供している(例えば通電している冷蔵庫など)場合には損金算入できる
 ⇒単に設置しているだけでは事業の用に供していると言えないため損金算入不可

(評価損)
Q:豊洲市場に設置した固定資産で事業の用に供していないものにつき評価損は損金算入できるか
A:価値が減少(時価<簿価)したと認められる場合には東京都の補償基準に従って計算される、価値減耗相当額を評価損として損金算入できる

<参考通達 >
例えば、法人の有する固定資産がやむを得ない事情により、その取得の時から1年以上事業の用に供されないため、当該固定資産の価額が低下したと認められる場合には評価損の計上ができる

(補償金)
Q:東京都から豊洲市場の移転延期に伴う補償金を受領した場合、補償金の課税関係は?
A:法人事業者が受領する補償金については交付決定日の属する事業年度の益金に算入する

※個人事業者が移転延期に伴う財産的損害の補填として受ける補償金は非課税となる


8.<税務相談>消費税《中間省略登記を利用した不動産の譲渡契約における譲受人としての地位の譲渡》

■事例
A(所有者)⇒B(当社)、BC(最終譲受人)へ不動産譲渡
・登記手数料等の節約を目的とし中間省略登記の手法を採用
BAの引渡し前に(契約金額9,000万円)Aからの譲受人としての契約上の地位をC1,000万円で譲渡

■質問
・中間省略登記・地位譲渡の消費税の課税関係は?(BC)

■回答
・課税される(課税標準は1,000万円)
⇒消費税の課税対象には権利その他の無形資産が含まれる
⇒登記の有無にかかわらず、契約内容に沿って消費税の課税関係を判定する
 本件はあくまで地位の譲渡なので課税標準は1,000万円、中間省略登記で地位ではなく物の移転をしていく場合には、1億円が課税標準となる


9.自社利用のソフトウェア

・将来の収益獲得または費用削減が確実であると認められる場合のみ、無形固定資産計上できる
・認められない場合、または不明な場合は費用処理
資産計上の例
①外部へのサービス提供で受益者から対価を得る場合
②自社利用目的でソフトウェアを制作し継続利用することで、
 自社業務を効率的または効果的に遂行できると明確に認められる場合
③市場販売しているソフトウェアを購入し、継続利用することで、自社業務を効率的または効果的に遂行できると認められる場合

・減価償却方法:定額法が合理的とされている
・耐用年数は原則5年以内
・スマホ向けアプリの多くは自社利用の区分とされ、耐用年数2-3年が多い
・税務上は5年で会計の耐用年数と異なる場合が多い


10.事前確定届出給与と未払金

資金繰りの関係から、事前確定届出給与の通りの役員賞与を払うことが出来ず、一部未払金計上を行った。賞与全額が否認されることになるか。

実態を見て、個別判断されることになるが、業績に動きがあった場合、まず影響を受けるのは定額報酬ではなく賞与であることから、未払金計上は容認されると思われる。


11.経理部門の業務のアウトソーシングはどこまで許容させるか?

上場審査上、経理業務のうちディスクロージャーや予算立案、予算実績差異の分析や対策等の中枢業務については、社内で実施する必要がある。
それ以外の経理業務については、アウトソーシングすることは原則として問題ないが、留意点は以下の点が挙げられる。

1.連結決算や四半期開示等のディスクロージャーの適切な対応に支障をきたすことがないようにすること。
2.各種経営分析資料や原価削減プランの作成・提案等、本来会社が有しているべき管理会計の機能が、アウトソーシングによって失われないようにすること。
3.少なくとも1人は責任者を社内に置き、その責任のもとにアウトソーシングをし、アウトソーシングに委ねる部分の責任と権限の範囲を明確にしておくこと。
4.インサイダー情報が社外に漏れることのないよう、機密情報保持契約を締結し、受渡しする情報を厳密に管理する等の体制を整えること。

5.財務報告の信頼性に重要な影響を与えるアウトソーシングについては、受託会社の統制状況の情報を把握するなど内部統制の評価対象とする必要があること。









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