2017年10月22日日曜日

10/20 勉強会:ペーパー会社の譲渡益を合算対象外に 他

1.ペーパー会社の譲渡益を合算対象外に

■H30年度税制改正
・CFC税制(外国子会社合算税制)において「外国関係会社が保有する株式に係る譲渡益の取り扱い等の見直し」を検討
⇒外国関係会社はペーパーカンパニーを想定
・H29年度税制改正では、ペーパーカンパニー等の「特定外国関係会社」については単純に税負担割合が「30%未満」=全所得が合算対象
 当然、ペーパーカンパニーで生じた譲渡益も合算対象
⇒ただ、例えば買収した外国会社グループの中にあるペーパーカンパニー保有の実業会社の株式をグループ内の別会社に移すことがある
 この際に生じる譲渡益を合算対象外とすることを求めている
⇒買収されるまで外国会社グループの中にあったペーパーカンパニーが行った株式の譲渡益に日本の課税ベースに属する利益が含まれているとは考えにくいため
⇒要望が満たされることでペーパーカンパニー下の実業会社の株式の移転をスムーズにできる


2.譲渡制限特約付き債権の譲渡で民法改正も実務上の懸念

■今年6月に「民法の一部を改正する法律」が公布
⇒債権の譲渡制限特約が付されている場合であっても、債権譲渡は有効であると見直し
⇒中小企業による売上債権を担保とした資金調達が可能になると期待
⇒一方、中小企業が特約違反に基づく契約解除を恐れ、改正民法が想定する上記資金調達が進まない懸念もあり
⇒政策的な対応として、独禁法ガイドラインの見直し、等を検討中


3.悪意重過失とは

悪意 ⇒ 法律上は「ある意味を知っていた」ということ
重過失⇒ 結果を予見できるにも関わらず、注意欠如の状態で見逃すこと

意味は同じである。
当初の民法においては「悪意又は重大な過失」としていたが、改正に伴い、意味をわかりやすくするために「悪意重過失」と文言が見直しされた。


4.活発な市場は仮想通貨の流動性で判断

■期末評価の取扱い
・活発な市場が存在する場合は時価評価
⇒活発な市場とは、仮想通貨が売買・換金を行うことが可能な程度に十分な流動性を有しているかで判断
⇒時価は自己の取引実績のもっとも大きい仮想通貨取引所or販売所の価格を使用

11月頃に「仮想通貨に係る会計上の取扱い」の実務対応報告の公開草案が公表される予定


5.役員給与の過大認定、審判所の着眼点

法人税法34条2項や法人税法施行令70条において「不相当に高額」な役員給与を損金に算入しないとしている。では、どういったプロセスを経て不相当に高額とするのか?裁決事例と共に紹介。
○納税者は海外を中心に中古車販売業を営む法人であり、代表取締役は中古車の主たる輸出先の国で職務を行っていた。役員給与は定時株主総会で決議された金額を代表者に支給していた。この支給額を損金として計上した申告書を期限内に提出していた。

■税務署側の判断となった要因
①代表者の職務内容 ②納税者の収益状況 ③納税者の使用人への給与支給状況 ④納税者の同業類似法人の代表者に対する役員給与の支給状況(平均額や最高額で比較した)から総合判断すると本件代表者は極めて高い役員給与のであるして法人税の更正処分を行った。

■審判所の判断プロセス
 結果:更正処分を一部取消し
① そもそも「不相当に高額」か?を検討 
② 税務署側の④の抽出法人は合理的かどうか?(このうち1社は類似性がないとして除外した)
③ 税務署側の判断となった要因①~③を検討して本件の役員給与の額には不相当に高額があると判断
④ 同業類似法人の売上・粗利・営業利益の推移にも着目、業界的に若干の減少があった事から、減額されることはあっても増額される要因はないとして、同業類似法人の役員給与の最高額を役員給与相当額である審判所が認定(税務署側が認定した相当額とは少し異なった)
 ⇒これにより、審判所が認定した金額を超える支給額は認め難いとされた。


6.研究開発税制:サービス開発について

■研究開発税制の見直し
平成29年度改正により「サービス開発」が試験研究費の範囲に含まれることになった
「観測」「分析」「設計」「適用」のプロセスを経たものが対象
⇒主にサービス開発に係る人件費が対象となる

■サービス開発の具体例
自然開発予測サービス
⇒ドローンによる地形の観測や気象状況の収集・分析サービス
ヘルスケアサービス
⇒ウェアラブルデバイスによる健康状態の分析サービス

その他:農業支援サービスや観光サービスなど

■「専ら従事」要件あり
原則としてこれらのサービス開発研究に「専ら従事する者」の人件費が対象となる。
一定の研究プロジェクトチームに在籍しているなどの記録・証明が必要


7.グループ子法人が留意すべき法人課税実務<平成29年度税制改正による影響

■中小法人等・中小企業者等に対する優遇措置の改正
所得基準が追加
・過去3年の平均所得金額が15億円を超える場合には、租税特別措置法に規定されている一部の優遇措置について適用無しとなる
⇒中小法人等に対する優遇措置へは、租税特別措置法に規定されているものは一部影響
(EX)
・年800万円以下の所得についての軽減税率の適用⇒所得基準対象
・貸引の法定繰入率の使用⇒所得基準対象
・交際費等の損金不算入制度における定額控除制度⇒所得基準対象外
⇒中小企業者等への主な優遇措置は全て影響する
・適用は平成31年4月1日以後に開始する事業年度
■ご参考
中小法人等
・資本金の額が1億円以下である普通法人
ただし、期末において以下の状態の法人を除く
・大法人との間に当該大法人による完全支配関係がある法人
・完全支配関係のある複数の大法人に発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている法人
中小企業者等
・資本金の額が1億円以下である普通法人
ただし、次に該当する法人は除きます。
・同一の大規模法人に発行済株式等の2分の1以上を所有されている法人
・2以上の大規模法人に発行済株式等の3分の2以上を所有されている法人


8.請求済未出荷契約

・顧客に対価を請求したが、買手に商品を移転するまで売手が物理的占有を保持する契約
・買手に商品の置き場が無いことをなどを理由に採用される
・現行の日本基準では一般的な定めなし
・請求時に収益認識、物品の引渡し時に収益認識等が採用されている

収益認識基準案
・物品を移転するという「履行義務をいつ充足」したのかがポイント
・「顧客が物品の支配をいつ獲得したのか」という観点から検討する
収益計上には、下記をすべて満たす必要あり。
①当該契約を締結した合理的な理由があること
②物品が、顧客に属するものとして区分して識別されていること
③顧客に対して物理的に移転する準備が整っていること
④物品を使用したり他の顧客に振り向けることができないこと


9.「収益認識に関する会計基準(案)」

・連結財務諸表と個別財務諸表で同一の会計処理を定める。
 → 中小規模の上場企業や連結子会社における負担が懸念されるため、重要性等に応じて代替的な取り扱いを定める。

・同一の顧客等と同時期に締結した複数の契約について、実態を判断して単一の契約とみなして処理することがある。

・収益の認識は、顧客が資産に対する支配を獲得した時(検収基準など)。


10.ベンチャーの失敗事例(その1)

1.設立時の発行株式数が少なすぎ
・ベンチャー企業は成長するに当たって、株式を発行することによる資金調達をしたり、ストックオプション発行をしたりする。
・しかし設立時に少数株しか発行していないと、VCの持株比率を細かく設定できなかったり、従業員に発行済株式総数の1%分以上でしかストックオプションが付与できなくなるといった事態に陥いる。

2.創業者間の持株比率の設定でミスる
・全創業者が同じだけの株式を持つと、意思決定がスムーズに行なわれないとの事態が考えられる。
・代表は投資契約等の当事者となり、通常は株式を売却することができず、また様々な制約も課されるため、代表がその義務に見合うだけの多くの株式を持つことは不公平とは言えないと思われる。
・また、一般的には代表者は株式を売却することは難しく、上場等との関係での安全株主対策の面からも、代表に株式を集中させておいた方が好ましい。
・創業者の持株比率は大きいため、誰か一人が抜けた場合に株式を置いていってもらえるよう創業者株主間契約を締結しておくこともあり。

3.最初の資金調達の際に条件交渉をしっかりしない
・投資契約等は基本的に経営者に対し様々な義務を課す内容となっていることから、弁護士にリーガルチェックを依頼するべきだが、最初の資金調達の際の投資契約等についてはリーガルチェックなしで資金調達が行なわれている例も少なくない。
・VCや事業会社等は投資契約書等のひな型を有しているのが通常であり、資金調達の際にはひな型がそのまま提示されることも少なくないが、自社としてそれをそのまま受け入れて良いかについては慎重に検討する必要があり。








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