2017年10月28日土曜日

10/27 勉強会:条件付取得対価、返還される場合の処理明確化へ/企業結合基準の改正 他

1.PEの定義規定、30年度改正で見直し検討

BEPS行動7の最終報告では下記のPEの定義規定の見直しがあるが、契約期間の規定以外は受け入れる方針
⇒30年税制改正ではこれに沿った国内法の見直しへ
・従属代理人PEの範囲拡大
・独立代理人の要件厳格化
・準備的・補助的活動の実質判定
・活動の細分化によるPE回避防止規定
・契約期間の分割によるPE回避防止規定

(用語説明)
■PE(=恒久的施設)=一般に事業を行う一定の場所等のこと
PEの有無は、企業の海外での事業所得が進出国の税務当局の課税権に服するか否かを決定する重要な指標となる。
例:非居住者および外国法人が日本国内で事業を行っていても、日本国内にPEがなければ日本で課税されない

■BEPS(=税源浸食と利益移転)
現地税制や国際課税原則の観点からは合法ではあるが、法人税収を著しく減少させる国際的税務プランニングのこと。


2.監査部会、KAM導入に課題は山積み

・現行の、日本の監査報告書では、監査人の見解に関する記載は限定的
※主として、F/Sが適正と認められるか否かについての記載

・企業会計審議会の監査部会が「監査上の主要な事項(KAM)を監査報告書に記載する」制度の導入について検討を開始(監査報告書の透明化)
⇒英国・EU・米国では、上記同様の制度が導入済み(予定)

・監査上の主要な事項(KAM)とは、当期の会計監査において最も重要と判断した事項
⇒ex. 監査人が着目した虚偽表示リスク

・今年10月に1回目の監査部会が開催
⇒制度導入に概ね賛成する意見が多かったが、KAMの記載内容や対象企業・対象法律等、導入までの課題は山積み


3.条件付取得対価返還の会計処理を明確化

企業結合会計基準における条件付取得対価
⇒企業結合日後に追加的に交付又は引渡しされる取得対価とされる

では返還された時は?
・現状、条件付取得対価の会計処理に返還を想定したものは明記されていない。
・交付時と同様に返還時も買手と売手間にリスク分担が設定されるため、
交付時の会計処理と異なる性質はないと判断
⇒対価の交付と同様の会計処理を行う方向となる。


4.仮想通貨のP/L表示は純額表示に

■仮想通貨交換業者のP/L表示
・売却収入から売却原価を控除した純額を売上高に表示
・売却損益と評価損益は一括で表示することは不可
・活発な市場が存在するかどうかは関係なく、どの仮想通貨についても同様の処理を行う
⇒トレーディング目的で保有する棚卸資産の会計処理と類似した処理

■仮想通貨交換業者とは
・金融庁に登録の業者はマネーパートナーズ、bitFlyerなど11社(9/29時点)
・他17社が審査中


5.専門用語解説―資本連結実務指針32項

■のれんの価値に2つの評価尺度が存在
 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針では、減損の兆候の有無、認識の判定、測定を行うというプロセスを経て、のれんの価値を算定する
 一方、連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針では、上記の実務指針とは別に子会社株式の減損処理をした場合、のれんも合わせて償却するとなっている。
 どちらの評価でも間違ってはいないが、のれんの価値について2つの評価尺度がある状態となっているため改善が必要であり、資本連結実務指針32項を削除すべきと企業会計基準を設定する基準諮問会議でも提言されている。


6.永年勤続者表彰記念品と課否判定

■課税されない場合
下記(1)(2)を満たす場合には課税されない
(1) 当該役員又は使用人の勤続期間等に照らし,社会通念上相当と認められること
(2) おおむね10年以上の勤務年数の者を対象とし,かつ,2回以上表彰を受ける者については,おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること

■課税上注意すべき点
上記を満たす場合であっても次の点に注意が必要
・社会通念上、相当な金額以内であること
・旅行券については①支給後1年以内に旅行が実施されること②旅行に行かなかった場合には会社に返却すること
・カタログギフトについては選択できる範囲が極めて限定的な場合を除き、原則課税となる
・商品券は給与課税となる
・現金は給与課税となる


7.東京高裁 分掌変更に伴い支給した退職給与を巡り納税者敗訴

■事案
代表取締役A⇒取締役(相談役)に再任、報酬月額205万円⇒月額70万円
営業部長B⇒代表取締役に選任、報酬月額85万円
Aには退職慰労金約5,600万円支給⇒損金算入可能か

■法人税基本通達9-2-32
分掌変更後の役員給与が激減(おおむね50%以上減少)している等、その役員としての地位又は職務の内容が激変し実質的に退職したと同様の事情にあると認められる場合、役員退職給与として損金算入が認められる

■争点と結論
退職と同様の事情にあると認められるかが争点となり、認められなかった
以下が事実認定
・AはBのサポート(経営に関与して指導や助言)で引き続き2年間は常勤
・Bは案件ごとにAに確認を求め、その助言に従って業務を実施、席も隣同士で共同経営に当たる執務環境があった
・Aは幹部が集まる代表者会議に引き続き出席、出席しない会議も議事録の回付により経営の内容の報告を受けて確認、助言・指導を行う等、個別案件の経営判断にも影響を及ぼし得る地位にあった
・Aは会社の資金繰りに関する窓口役を務め、主要な取引先銀行から実権を有する役員と認識されていた、また、外出で不在の多いBに代わって来客応対を行うなど対外的な関係においても経営上主要な地位を占めていた

■役員給与が激減について
法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者は判定から除かれる(通達の括弧書き部分)


8.条件付取得対価、返還される場合の処理明確化へ/企業結合基準の改正

・条件付取得対価:契約締結後の特定の事象等により追加的に交付される取得対価
会計処理
・条件付取得対価の交付が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、 「支払対価を取得原価に追加」「のれん又は負ののれんを追加認識」する。
 追加的に認識するのれん又は負ののれんは企業結合日時点で認識されたものと仮定して計算する

現行基準では対価が追加される場合のみ記載があり、返還される場合(業績未達で返還する場合等)については記載なし。
⇒追加の場合と同様にすべき、との方向で審議中


9.役員報酬額の分析

■業種別報酬分析
・売上高に対する役員報酬の比率が大きい企業
⇒売上高に対して付加価値が大きい業種…情報通信業、サービス業
・売上高に対する役員報酬の比率が小さい企業
⇒売上高に対して付加価値が相対的に小さいと考えられる業種…卸売業、小売業等
・成長段階の新規上場企業は売上高に対する役員報酬の比率が高い
⇒創薬ベンチャー等、成長性に期待される企業


10.財務諸表の分析

■役員向け株式交付信託に係る財務諸表本表の開示状況
・調査対象の約半数が「株式給付引当金」または「役員株式給付引当金」の科目名で開示
・残りの半数は引当金として開示なし
 ⇒役員向け株式交付信託を導入して間もなく、財務諸表への影響が限定的なため

■役員向け株式交付信託に係る会計方針および追記情報の開示状況
・引当金として開示している会社の多くは重要な会計方針を開示
・引当金として開示していない会社であっても、大半の会社が取引の概要等を追加情報として開示


11.タイの外資規制

■外国人事業法に基づく外資規制(3種類43業種)、外国企業(外国資本50%以上)の参入を規制
(1)9業種
外国企業の参入が禁止されている業種
(ex新聞発行・ラジオ・テレビ放送事業)
(2) 13業種※例外あり
国家安全保障または文化、伝統、地場工芸、天然資源・環境に影響を及ぼす業種として外国企業の参入が禁止されている業種
(ex国内陸上・海上・航空運輸および国内航空事業)
(3) 21業種※例外あり
外国人に対して競争力が不十分な業種であるとして外国企業の参入が禁止されている業種
(ex精米・製粉、漁業(養殖))

■外資規制の回避スキーム
(1)「外国人」(参考)ではなく、友好的な株主(実際は日系企業がコントロール)から一部の出資を受けるスキーム
・タイ国内の日系コンサルティング会社や会計事務所
(2)種類株を使うスキーム
・1株当たりの議決権数の異なる種類株式を利用して、実質的に外国企業が議決権の過半数を取得

(参考)
(1) タイ国籍を有しない個人
(2) 外国の法律で設立された法人
(3) 資本の半分以上を(1)または(2)が所有するタイの法律で設立された法人
(4) 資本の半分以上を(1)または(2)または(3)が所有するタイの法律で設立された法人
⇒「資本の半分以上が外資の会社は外国人事業法上の外国人である」


12.市場別の役員報酬制度の事例分析

■東証
⇒基本固定報酬+短期業績連動型報酬、SO、株式交付信託※の組合せが多い
⇒金銭と株式を組み合わせ、投資家を意識した中長期型インセン

■マザーズ
⇒基本固定報酬+SOが多い
⇒現金支出や費用が発生せず、上場による売却益を狙えるSOが人気

※株式交付信託
会社が取得資金を拠出したうえで、信託銀行が株式を市場から取得管理し、後に給付する
在任中に受給権が確定するもの(在任型)と退職時に確定するもの(退職型)の2種
29年改正により、(インセンをより高める)在任型の権利確定時の損金算入が認められ、今後増加か


13.非財務情報の分析

・コーポレート・ガバナンスの状況に関する分析
平成27年から適用されたコーポレートガバナンス・コードで役員報酬を決定する方針と手続の開示が求められる。

日経300採用会社のうち、97%超の会社が役員報酬の算定方法の決定に関する方針等を定めている。
報酬限度額を記載する会社が多く、具体的な算定方法を明示している会社は少ない

・ストック・オプション制度の内容に関する分析
コーポレートガバナンス・コードで経営者の報酬については、企業価値の向上につながるインセンティブを与えることが
求められてきている。

日経300採用会社は株式報酬型のストックオプションを採用する会社が多く、マザーズ上場会社は通常型のストックオプションを採用する会社が多い。


14.役員報酬をめぐる動向

■役員報酬に係る近年の動き
(1)日本の現状
中長期の業績連動報酬を導入している会社が少なく、固定報酬が中心であり、株式報酬や業績連合報酬の割合が低いため、企業の持続的な業績向上に繋がりにくいという問題点がある。
これに対し、平成27年から適用された、コーポレートガバナンス・コードでは、業績連動報酬の割合や現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきとの記載がある。

(2)上記の問題に対する日本の対応
・政府
役員に付与する株式報酬に係る法解釈を明確にし、株式報酬導入の手続きを整理。
・税務面
平成28年度の改正で特定譲渡制限付株式を事前確定届出給与として損金算入が認められた。
更に、平成29年度の改正で改正前に利益連動給与として規定されていた役員給与を新たに業績連動給与という定義を設けることにより、指標の選択肢及び支給対象範囲、支給手段の拡大がされ、中長期の指標に連動させることが可能。

⇒結果、従来採用していた役員報酬制度の見直しや、新たな役員報酬制度を導入する会社が増加している。


15.改正民法(債権法)成立

・平成29年6月2日に公布。平成32年前半に施行の見込。
・短期消滅時効(医師3年、弁護士2年など)をなくし、時効は一律で「権利行使出来ることをしってから5年、権利を行使できる時から10年」で消滅。
・法定利率を現行民法5%から3%に引き下げ、かつ変動利率制を導入。
・極度額のない個人根保証は無効。


16.ベンチャーの失敗事例(その2)

1.ストックオプションの発行でミスる
・役職員に発行する場合には、適格ストックオプションの要件を満たすことは必須。
・適格と非適格では、場合によっては、多額に税額が変わってしまうため。
・上場時において、発行済み株式数の10%に留まっていることが好ましいとされている。
・上記数値を超えたからと言って直ちに上場できなくなるわけではないが、上場できたとしても、希釈化されるリスクがあるものとして時価には悪影響を与えることとなる。

2.議事録類をなくす
・会社法上も保管義務があり、IPO審査、M&A、資金調達のデューディリジェンスの際には議事録の写しを提出することが要請される。
・なくす原因としては、登記の際には議事録の原本を提出する必要があるところ、原本還付手続を行っていないため、そのまま法務局に原本が保管されてしまうなど。

3.商標を取っていない
・IPOが近くなった時点で、自社のメインサービスの商標が他社に取られていたことが明らかになったりした場合には最悪









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