2018年4月9日月曜日

4/6 勉強会:「税効果会計に係る会計基準」の一部改正」等の概要 他

1.債務超過法人への第二次納税義務は違法

■事案
・同族会社の株主の滞納国税について、税務当局が当該同族会社に対して、第二次納税義務の納付告知処分をした(国税徴収法:同族会社の第二次納税義務)

■税務当局の判断
・納付告知処分直前の簿価純資産により限度額を算出し、納付告知処分をした

■同族会社の主張
・時価ベースでは債務超過であるから第二次納税義務の納付告知処分は違法と主張

■審判所裁決
・同族会社の資産負債は客観的時価を標準として計算すべき
 ⇒当該同族会社は債務超過であり株式の価額は0円である
⇒税務当局の納付告知処分を取り消した




2.「税効果会計に係る会計基準」の一部改正」等の概要

■会計処理に関する改正
・個別BS上の子会社株式等に係る含み益(将来加算一時差異)
(従来)一律DTLを認識
(改正)予測可能な将来に売却の意思がある場合はDTL認識(連結と合わせる)

・会社区分1のケースでのDTA
⇒回収可能な将来減算一時差異に「原則として」の文言を追加
⇒工場用地の含み損や売る前提にない子会社株式の含み損について回収可能性はないと判断することが適切であるという立場を基準で明確にした。

■表示に関する改正
・DTA、DTLはすべて非流動区分に表示

■注記に関する改正
・税務上の繰越欠損金が重要⇒以下を分けて2行で表示
(1) 繰越欠損金に係る評価性引当額
(2) 将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額



3.法人税率引下げで税額は0.3%減

■H28年度会社標本調査結果
・H28年度の法人税額は10兆4,676億円。前年比339億円減少
⇒H27年度税制改正の法人税率引下げが影響
・繰越欠損金の当期控除額は7兆5,951億円。3年連続減少
⇒大法人の控除限度額が80%から65%に引き下げられたことが要因
・寄付金支出額は1兆1,229億円。4年連続増加
・交際費等の支出額は3兆6,270億円。5年連続増加
・全法人に占める欠損法人の割合は63.5%。7年連続減少



4.消費税仕入れ税額控除否認事件が訴訟に

■消費税の仕入税額控除を巡り地裁と裁決が異なる解釈
⇒裁決(H24.1/19大阪国税不服審判所)
・課税仕入れを行った日の状況で判断
・課税仕入の目的、課税仕入等に対応する資産の譲渡等の内容を勘案
・取得の時点で賃貸のように供しているから共通仕入と判定

⇒判決(H25.6/26さいたま地裁)
・課税仕入れを行った日の状況で判断
・最終的に課税資産の譲渡等のコストになる課税仕入等だけである。
・本件は、取得時点で賃貸契約を結んでいた為、共通仕入と判定されていた
・考えようによっては販売目的と謳っていれば課税仕入れのみと判定される可能性あり

■ムゲンエステート社が東京地裁へ提訴
・購入したマンション:大半が課税売上、賃貸料収入は僅か
・購入時に支払った消費税が全額仕入控除されない
⇒会社全体の課税売上割合が適用され仕入税額控除が否認されてしまう。
⇒財産権の保障について定める憲法29条などの憲法違反を主張する構え



5.収益認識会計基準の全容

■収益認識会計基準は国際的な会計基準と同様に

収益認識会計基準は、IFRS15号の基本的な原則を取り入れてまとめられており、
以下の5つのステップを適用し、収益の認識を行う。
(1) 顧客との契約を識別する。
(2) 契約における履行義務を識別する。
(3) 取引価格を算定する。
(4) 取引価格を履行義務に配分する。
(5) 履行義務が充足された時、又は充足につれて収益を認識する。

■日本の会計実務及び税務上の影響
収益認識会計基準の導入により、例えば今後は以下のような日本基準における実務の取扱いが認められなくなる。
・顧客に付与するポイントについての引当金処理
・返品調整引当金
・出荷基準は容認・有償支給取引
・割賦販売における割賦基準にも基づく収益計上
→これに伴い税務上は、返品調整引当金制度や長期割賦販売等における延払基準の選択制度が廃止される(一定の経過措置あり)。

■中小企業への影響
→中小企業については「中手企業の会計に関する指針」が適用されるため、収益認識会計基準の適用対象外となっているため、会計上直接の影響はない。
→ただし上述の通り、収益認識会計基準の導入に伴い、税務上も返品調整引当金制度や長期割賦販売における延払基準が一定の経過措置の適用後に廃止されるため、これらを適用している場合には、影響が及ぶことになる。




6.変動対価

取引価格を検討する際に考慮すべき事項のひとつ。

■変動対価の例
・ボーナス   ・インセンティブ     ・ペナルティー
・返金     ・市場に基づく手数料   ・値引き
・返品     ・返金保証        ・価格譲歩
・数量リベート ・サービス品質保証契約  ・損害賠償金

■変動対価の測定方法
期待値法⇒一連の起こり得る結果の確率加重平均金額
最頻値法⇒一連の起こり得る結果の中で、最も発生可能性が高い金額
※事実及び状況により適切な方法を用いて見積もる。

■変動対価の算定方法
(1)変動対価かどうか。
(2)期待値、または、最も発生の可能性が高い金額を用いて見積もる。
(3)将来重大な戻し入れが生じない可能性が非常に高い金額を超えていないかについて判定する。
(4)その金額を取引価格に含める。


7.裁判例:実質的に退職しているかどうかの判定で個別判断を公表

■概要
・スクラップ加工会社Aの代表取締役Bが代表権のない取締役会長になった
・A社は分掌変更による退職慰労金をBに支給損金算入した
・原処分庁は「実質的に退職していない」として全額否認(役員給与損金不算入)した
・A社はこれを不服として取り消しを求めた

■審判所
A社の請求を棄却した(退職の実態なしと判断)

■判断のポイント
・Bは会長就任後も周辺住民対策費として多額の金員を代表取締役に相談なく支払っていた
⇒事業に関する重要な意思決定及び執行を行っている
・取引先幹部に対する接待を担当していた
⇒営業面において相応の役割を果たしている
・代表取締役と金融機関との交渉の場に立ちあい意見を述べていた
⇒財政管理について相応の役割を果たしている
・取締役会で役員の選定及び役員給与の変更について意見を述べていた
⇒重要な人事の決定に関与している
・自ら領収書のチェックをしていた
⇒経理面においても支出状況を監視する立場にあった

上記を総合勘案すると実質的に退職しているとは認められず、支給金員は役員報酬としての
性質を有する。定期同額給与等に該当しないため、全額損金不算入となる



9.消費税増税に伴う経過措置の内容は前回引き上げ時と基本的に同じ

H31年10月1日から適用される消費税率10%への引き上げにつき、
前回引き上げ時(5%→8%へ)と同様に経過措置が設けられている。

■経過措置
指定日の前日までに契約を締結した取引については、
H31年10月1日以後も旧税率8%を適用することが可能
※指定日とはH31年3月31日のこと

■指定日が関係する主な取引
・請負工事等
・資産の貸付け
・指定した役務提供に係る取引 ※結婚式場の事前予約
・予約販売による書籍等
・通信販売



10.収益認識会計基準等を公表

・早期適用:2018年4月1日以後開始事業年度から
・強制適用:2021年4月1日以後開始事業年度から
(5つのステップ)
①顧客との契約の識別
②契約における履行義務の識別
③取引価格の算定
④契約における履行義務に取引価格を配分
⑤履行義務を充足した時(充足するにつれて)収益を認識



11.引受審査と上場審査

・引受審査
主幹事証券会社の審査
・上場審査
証券取引所の審査

引受審査(4~6ヶ月)

主幹事が取引所に推薦書提出

上場審査(2~3ヶ月)

・審査内容は引受審査も上場審査も基本的に同じ
・審査は質問⇒回答書作成⇒質問を何度か繰り返す
・社長、監査役、監査法人ヒアリングあり


12.中小企業者と中小法人等の差異

■租税特別措置法上の中小企業者
① 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
ただし、同一の大規模法人に発行済株式または出資の総数または総額の2分の1以上を所有されている法人および2以上の大規模法人に発行済株式または出資の総数または総額の3分の2以上を所有されている法人を除く。
② 資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人

■法人税法上の中小法人税等
① 普通法人のうち、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの(大法人との間に大法人による完全支配関係がある普通法人または複数の完全支配関係がある大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人を除く)または資本もしくは出資を有しないもの(相互会社を除く)
② 公益法人等または協同組合等
③ 人格のない社団等

■判定結果が異なった事例
A社:上場会社(資本金5億円超)
B社、C社:非上場会社(資本金1億円以下)
⇒A社は、租税特別措置法上の大規模法人、法人税法上の大法人の両方に該当
⇒A社がB社株式を100%保有、B社がC社株式を100%保有
⇒租税特別措置法上の中小企業者は、自らの資本金額及び直接の親会社の資本金額で判定
⇒C社は、租税特別措置法上の中小企業者には該当するが、法人税法上の中小法人等には該当しない














◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

0 件のコメント:

コメントを投稿