2014年11月29日土曜日

11/28 勉強会:有限責任事業組合(LLP)への出資の処理について 他

1.海外への機器使用料等に係る源泉徴収

■質問
 当社は日本法人です。
 香港の会社より日本国内で使用する機械装置を借りました。
 賃借料の支払いについて、源泉徴収の必要はありますか。

■回答
 1、租税協定の適用を受ける場合…源泉徴収は不要
   ただし、最初の使用料の支払いをする日の前日までに租税条約に関する届出書を日本法人の所轄税務署長に提出する必要がある

 2、租税協定の適用を受けない場合…源泉徴収は必要


2.実調減少の一方で無申告理由のお尋ね

・国税庁が平成25年事務年度における相続税・贈与税の調査状況を公表
→相続税の実地調査11,909件で前年より約300件減少
→贈与税も3,786件で前年より約800件減少

・減少の理由
(1)国税通則法改正の影響(調査手続の順守)
(2)実地調査以外の多様な手法の活用
[例:無申告が想定される者に対する書面でのお尋ね(平成25年度は相続税約5,000件、贈与税約1万件実施)]


3.堅固・非堅固にかかわらず借地権は存在

■概要
・母から子供へ土地を贈与した
・土地は法人に貸付を行っている
・土地の評価にあたり、借地権価格の控除は認められるか

■流れ
1、昭和52年 亡父が所有している土地の上に法人が建物を建てる
2、昭和63年 法人から亡父へ地代の支払開始 ※賃貸借契約なし
3、平成10年 建物を取壊し、駐車場へ
4、平成21年 母から子供へ土地を贈与

■論点
1、建物を取り壊した場合の借地権は?
  ⇒朽廃を原因とした滅失でない場合、借地権の存続には影響しない(借地法2)

2、借地権の発生は昭和52年か昭和63年か?
  借地権の判定に必要な建物は堅固か非堅固か?
   ⇒どちらにせよ本件贈与時には借地権が存続していると判断

 ・堅固な建物の場合 【存続期間:60年】
  ⇒昭和52年・昭和63年どちらの発生でも借地権は存続期間内

 ・非堅固な建物の場合【存続期間:30年】
  ⇒昭和52年に発生したと考える場合…平成19年に契約更新したとみなされる
  ⇒昭和63年に発生したと考える場合…存続期間内


4.改正会社法の施行日は平成2751

今年6月に公布された改正会社法の施行日が平成2751日とされる予定

【社外取締役に関する改正】
 社外取締役を選任していない上場会社等は、定時総会において口頭による説明に加え
(1)事業年度末日に社外取締役を置いていない場合、事業報告において
(2)総会に提出する取締役選任議案に社外取締役の候補者が含まれていない場合、株主総会参考書類において社外取締役を置くことが「相当でない理由」を記載しなければならない。

【「相当でない理由」とは】
 会社の実情に即したものでなければならず、「社外監査役が複数いることのみ」をもって当該理由とすることはできない。


5.税務申告を怠った税理士に、附帯税と慰謝料の損害命令

■事例
A社と税理士Bで税務申告係る委託契約を締結
Bは支部会が多忙等の理由により3年間税務申告をしなかった
・その間、顧問報酬は自動引き落としされていた
・無申告に伴う附帯税はBが負担すべきと損害賠償をおこした

■判決
支部会の仕事がいそがしい ⇒ 委任業務の放棄
記帳代行等を行わず    ⇒ 業務に係る報酬請求権は発生しない
3年間無申告       ⇒ 契約義務の不履行、不法行為による権利侵害

以上の判断により、
無申告により被った附帯税等につき損害賠償命令が下された。


6.受配益金不算入改正、JV(ジョイントベンチャー)への影響回避へ

★受取配当の益金不算入額
【現状】
<持分比率>           <益金不算入>
       100%              ⇒  配当全額
25%以上100%未満   ⇒  配当 ▲ 負債利子
25未満                 ⇒ (配当 ▲ 負債利子)× 50%

27年度税制改正の『有力』検討案】
<持分比率>               <益金不算入>
       100                                ⇒ 配当全額
       33%以上100%未満             ⇒ 益金不算入額縮小?
③少数株主持分(5%)以上33%未満  ⇒ 益金不算入額縮小?
       数株主持分(5%)未満            ⇒ 益金不算入額縮小?

JVは、出資比率を51:49へ設定することが少なくない
(誰が主導権をとるか明確にするため)
⇒上記②の持分比率を「50%以上100%未満」とすると、出資比率の決め方に多く影響する(51%49%では税負担が変わるため)
⇒影響を避けるためにも、上記②の持分比率を「33%以上100%未満」とする案が有力


7.新規上場企業紹介

㈱カヤック(マザーズ 3904
承認日:2014/11/20
上場日:2014/12/25
本社所在地:神奈川県鎌倉市
主幹事証券:大和証券
監査法人:トーマツ
主な事業内容:広告コンテンツ開発、ソーシャルゲーム開発等

企業の特徴:
広告コンテンツ事業とソーシャルゲーム事業の売上が拮抗している。
「面白法人カヤック」と打ち出しているように、一社だけで「合同説明会」をやってみたり、退職者ブースがあったり、採用ページに退職者インタビューが載っていたり。
また、毎月の社員の手当てがサイコロで決まるようです。


8.消費税:外国の市場調査を外国法人に委託した場合の課税仕入れ

■事例
(1)A社は外国の市場調査を当社に委託
(2)当社はその調査を外国法人B社に再委託

この場合、A社・当社が支払う手数料の扱いはどうなるか?

■役務提供の内外判定
市場調査など、役務の提供場所が明らかでないものは役務の提供にかかる事務所等の所在地で判定する。

■課税関係
(1)当社が外国法人B社に支払う手数料
⇒事務所等の所在地が国外であるため国外取引(課税仕入れとならない)

(2)A社が当社に支払う手数料
⇒事務所等の所在地が国内であるため国内取引(課税仕入れとなる)

結果、同一内容の調査報告であっても内外判定が異なることとなる。


9.所得税:海外勤務者に対するボーナスの源泉徴収誤りが散見

内国法人の海外勤務者に支給されるボーナスについて源泉徴収の対象となる国内源泉所得の範囲は以下のとおり。
 ※OECDモデル租税条約を前提

■従業員の場合
 支給された賞与のうち、国内勤務分に対応する部分は源泉徴収の対象となる。
 出国後に賞与支給された場合でも賞与支給対象期間の中途まで国内勤務していたら、プロラタで計算する。

■役員の場合
 支給された賞与の全額が源泉徴収の対象となる。
 内国法人が支給する役員報酬は、勤務地にかかわらずその全額が国内源泉所得となる。


10.役員向け株式給付制度

・日本版ESOP(株式給付型)
  ※退職時などに自社株式を給付する制度で給付対象者を従業員ではなく役員する会社があり
・事例:東京エレクトロン
  役員退職慰労金制度を廃止し、「業績連動型報酬制度」を導入


11.消費税10%引き上げに伴う経過措置

1. 消費税8%へ引き上げ時と同様の経過処置
・旅客運賃等
・請負工事
・資産の貸付
・延払基準適用
・工事進行基準適用
・冠婚葬祭互助会が行う役務提供
・書籍等の予約販売
・特定新聞
・通信販売
・有料老人ホーム
・仕入返還等、貸し倒れに係る消費税額の控除等

2. 消費税10%引き上げ時に新たに経過措置として追加されるもの
・家電リサイクル
【対象取引】
 ⇒ 施工日前にリサイクル料金を受領し、施工日後に再商品化等した資産を引き渡す取引
【適用条件】
 ⇒ 家電リサイクル法に規定されている条件を満たすこと

・電気料金等
 ⇒ 電気料金等の範囲に、灯油の供給が追加

3.消費税率10%へと引き上げの時期
 ⇒ 引き上げ時期の判断は12/8以降の予定であるが、引き上げ時期は延期される見通し


12.連結財務諸表上の税効果の考え方

 ・性格
  単体財務諸表の税効果=税務上の簿価と会計上の簿価の差異に係るもの
  連結財務諸表の税効果=単体会計簿価と連結会計簿価の差異に係るもの
 ・回収可能性
  連結:単体で回収可能性を検討した繰延税金資産については新たに検討不要
 ・実効税率
  単体:差異の解消年度(将来)の実効税率
  連結:差異の発生年度の実効税率


13.税務調査を活用した不正防止・早期発見法

税務調査を分析し、管理部門、内部監査部門がノウハウを共有する。

・調査官はどのような証憑書類を要求したか?
・調査官にどのような質問を受けたか?
・論点となった項目は否認事項となったのか?問題とならなかったのか?
 そうした判断根拠はどこにあるのか?


14.有限責任事業組合(LLP)への出資の処理について

(1)有限責任事業組合の特徴
  a.構成員全員が有限責任で、
  b.損益や権限の分配が自由に決めることができるなど内部自治が徹底し、
  c.構成員課税の適用を受ける⇒損益通算が可能

(2)個別FSの会計処理
  a.純額法:損益計算書の純額のみを持ち分割合に応じて計上
  b.総額法:損益計算書と貸借対照表の全てを持ち分割合に応じて計上
  c.折衷法:損益計算書は全てを持ち分割合に応じて計上、貸借対照表はLLPの資産から負債を引いた純資産の金額を持ち分割合に応じて計上

(3)税務のポイント
 ・税務メリットを最大限取るなら、総額法
 ⇒受取配当金の益金不算入、所得税額の控除、引当金繰入額の損金算入
全て認められる。
 ⇒純額法は全て認められない
 ⇒折衷法は受取配当金の益金不算入、所得税額の控除は認められる。


15.使える補助金・助成金vol.9「長期優良住宅化リフォーム推進事業」

・(要件)
もらえるのはリフォーム工事発注者、リフォーム工事施工業者
住宅をリフォームし、耐震性・省エネ・維持管理の容易性等の要件を満たした場合

・(補助内容)リフォーム費用の一部を補助
・(金額)1/3 上限1百万/戸、50百万/事業者
S基準を満たすリフォームについては、上限2百万/

・(募集期間)2月上旬
・(採択数)平成25年度: 6件採択(131件応募)


※専門家による審査が行われ、表面的な内容の提案は弾かれてしまう模様。








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2014年11月22日土曜日

11/21 勉強会:連結納税の範囲と連結会計の範囲の差異について 他

1.緊急インタビューヤフー事件・高裁判決

・ヤフー事件の高裁判決が115日にあり、控訴棄却となった

・高裁と地裁の判決の違いがあった
 地裁:法人税法132条の2の趣旨、目的で判断
 高裁:趣旨、目的に加えて行為の目的、性質にも目を向ける

・行為によって導き出された結果が「不当」かどうかで判断する必要がある


2.高裁勝訴がIBM二審の国の主張に影響も

・ヤフー事件は高裁でも国の勝訴という結果を受け、IBM事件の控訴審における国の主張に注目
⇒「132条は租税回避のみを目的にした行為にのみ適用」と前提を変更してくる可能性

IBM事件とヤフー事件では行為計算否認規定に関する国側の主張に大きな違いがある
⇒ヤフー・・・「個々の行為には租税回避以外の目的が含まれていたとしても法人税法132条の2の適用があり得る」

IBM・・・「租税回避のみを目的にした行為でない限り132条の適用はない」


3.自己株式取得に伴う株式譲渡損と同族会社等の行為計算の否認~日本IBM事件~

【論点】
日本にあるIBMの中間持株会社が米国IBMから資金を借り入れ、その資金で米国IBMから取得した日本IBM株式を日本IBMに譲渡した取引において、譲渡損及びみなし配当の計上が認められるか否か
(租税回避行為として否認されるか否か)

【背景】
・訴額が巨額で、訴訟当事者が先進産業であるIT関係であり、著名な外資系企業であったこと
・ヤフー事件(最近、判決が出た同様の租税回避事件)では、当局の課税処分が適法とされたが、当該判決では当局の課税処分は違法とされたことから、社会的に注目された。

【国の見解】
日本にある中間持株会社はペーパーカンパニーであり、株式の売買の必要性はなく、株式譲渡は赤字づくり(連結納税を適用しているため、日本IBMの黒字と相殺できる)のために行った経済合理性がないものであるとして、租税回避行為と主張。

【裁判所の見解】
中間持株会社はグループ内で資金を柔軟に移動させる等、持株会社としての一定の機能があったとして、ペーパーカンパニーではなく、また、株式譲渡によって赤字が発生したことについても、不合理不自然とは言えず、租税回避行為ではないとした。


4.貯玉再プレーに係る処理で留保金課税

※貯玉再プレーとは
 パチンコで遊んだ後、パチンコ玉を景品交換せずに店に預けて、次回来た時に預けておいたパチンコ玉(貯玉)を引き出して遊ぶこと

■事例
経営者が貯玉再プレーにおける会計処理について、売上・仕入処理を行った
⇒原処分庁はこの処理に対し留保金課税を適用した

■なぜ適用したか
・預け金的な性質を有するにもかかわらず、意図して計上したため売上高・仕入高が過大計上と認定

・認定された過大計上分は配当を目的とした金額ではない
 ⇒内部に留保するための金額と判断され、留保金課税の対象となった


5.QAで読み解く 27年経過措置通達

10%増税時に予定されている経過措置の内容は、8%増税時とほぼ同じ

・主な経過措置
 -旅客運賃等に関する経過措置
 -電気料金等に関する経過措置
 -工事の請負等に関する経過措置
 -資産の貸付に関する経過措置
 -役務の提供に関する経過措置


6.政府税調、配偶者控除の見直し案を示す

…政府税制調査会は配偶者控除の見直しについて、大きく3つの改革案が挙がっている。

■改革案(1)
 配偶者控除をそのまま廃止
 ※「高所得の世帯に限り廃止」も検討されている

■改革案(2)
 配偶者控除を廃止し、「移転的基礎控除」を導入
 …配偶者が自身の基礎控除額38万円を使い切れなかった場合に、残った基礎控除額を納税者本人の控除額に振り替える

 ()配偶者の収入が80万円だった場合
   80万円-(給与所得控除)65万円= 15
   15万円-(基 礎  控 除)38万円=△23万 ←移転対象額

■改革案(3)
 配偶者控除を廃止し、「夫婦世帯を対象とする新たな控除」の導入

(1)(3)に支持が集中している


7.新地方公会計基準について

【背景】
地方公共団体等は住民・納税者・各種利害関係者に対して、財務・非財務情報を作成・開示する義務があるが、統一的な地方公会計基準が作成されていなかった。
そこで総務省より「今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書」が公表された。

【目的】
・公表される財務数値の透明性の向上、説明責任の履行
・団体間での比較可能性の確保

【概要】
・現金主義から発生主義へ

・複式簿記の導入

・財務書類の体系
貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書

・固定資産台帳の整備
貸借対照表との突合だけでなく、公共施設等のマネジメントにも活用

【今後の課題】
・運用のための人材の育成
・統一的な基準の導入にあたり、システム面の整備


8.後発的事由による更正の請求

■更正の請求期限
通常⇒法定申告期限から5
後発的事由による場合⇒事由が生じた日の翌日から2月以内

・後発的事由とは
(1)判決や和解により計算の基礎とした事実が異なることとなった場合
 (例)和解により請求権が消滅したことで所得が減少したケースなど
(2)所得が他者に帰属するものとする国税の更正や決定があった場合
 (例)子の所得として処理していたものが更正により親の所得とされたケースなど
(3)その他やむを得ない理由がある場合

これらに該当する場合、法定申告期限から5年を超過していても更正の請求ができる


9.法人税:自己株式の取得付随費用の損金性と申告減算の可否

■自己株式の取得付随費用は支出時の損金になるか?
⇒支出時の損金になる。

自己株式の取得は資本等取引であり、有価証券の取得のように取得付随費用を取得価額に乗せる処理はしない。
支出後の複数年に渡って「自己が便益を受けるために支出する費用」とも言えないため、税務上の繰延資産にも該当しない。

■会計上取得価額に乗せられた取得付随費用を申告減算できるか?
⇒申告減算できる。

損金経理要件を課す規定は無い。


10.遡及適用の例外

・会計方針を変更した場合
 原則:過去もすべて変更
 実務:実務上不可能な場合もある
⇒遡及適用が実行可能な最も古い期間の期首時点で累積影響額を算定し反映する

H26.3期決算の上場会社
 会計方針変更は53件
 うち、「原則的遡及適用が実務上不可能なケース」は7件あった


11.連結納税の範囲と連結会計の範囲の差異について

(連結納税)
 100%完全支配関係のある子会社のみ対象とする
 重要性を問わず対象となる
 破産手続中の子会社はたとえ100%完全支配関係があったとしても対象とできない

(連結会計)
 一定の要件を満たせば、40%などの低い持株比率でも対象とできる場合がある
 「重要性の乏しい会社」「支配が一時的であると認められる会社」は連結対象外とすることができる
重要性があれば破産手続中の会社等も連結対象としなければならない


12.使える補助金・助成金vol.8「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル実証事業」

・(要件)
設備導入により、ビルのエネルギー消費量を25%以上削減など

・(補助内容)
 設備・システム導入のための設計費、工事費等

・(金額)
 1/3 上限5
※削減率によっては補助率引き上げ

・(募集期間)
 5月~8

・(採択数)
 平成25年度: 97件採択(107件応募)

※前回の「エネルギー使用合理化事業者支援事業」と異なり、専門家による計算が必要。ただし要件を満たせば、採択率は非常に高い。








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2014年11月19日水曜日

11/14 勉強会:自社開発のソフトウェアの研究開発費の取扱い 他

1.自社開発のソフトウェアの研究開発費の取扱い

■市場販売目的のソフトウェア
・会計
 最初に製品化された製品マスターの完成をもって研究開発の終了
 それまでの制作費用は研究開発費として費用処理
・税務
 研究開発費はソフトウェアの取得価格に算入しないことができる
 研究開発費の定義が明らかでない
 →実務上は会計と同じ取扱い

■自社利用のソフトウェア
・会計
 ソフトウェアの利用で将来の収益獲得又は費用削減が確実
 →無形固定資産に計上
 将来の収益獲得又は費用削減が確実ではない、又は不明瞭
 →費用処理
・税務
 ソフトウェアの利用で将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らか
 →取得価格に算入しないことができる
 →不明瞭の場合は、取得価格に算入する

■まとめ
(1)市場販売目的のソフトウェア
 会計と税務の取扱いに差異がない

(2)自社利用のソフトウェア
 将来の収益獲得等が確実かどうか不明瞭の場合、
 会計と税務の取扱いに差が出る
 会計…費用処理
 税務…資産計上


2.ゴルフ会員権の譲渡損失計上を認めず

H1910月にゴルフ会員権(預託金制)を売却
 ⇒譲渡所得として譲渡損失を計上していたが、このゴルフ会員権の譲渡損失は認められず

■預託金制ゴルフ会員権
 ・預託金返還請求権      …譲渡所得にならない資産
 ・優先的施設利用券(プレー権) …譲渡所得になる資産

⇒今回の譲渡損失が認められなかった事例は、
 経営者の交代に伴いゴルフ場の所有権を移転していた最中に売却
⇒一時的にプレー権が消滅したと判断されてしまった


3.遺贈土地めぐる和解、馴れ合い認めず

■事例
A氏(請求人)への土地の遺贈について、請求人と相続人間でこの土地は被相続人の遺産を構成しない旨の裁判上の「和解」が成立し、この判決を基にA氏は遺贈分に対する更正の請求をした

※後発的自由による更正の請求とは
 裁判上の「和解」が租税回避を目的としたもので、実際は申告書提出時に計算した事実関係に変動がない場合は、通達に該当する「和解」に該当しない。
 ⇒更正の請求は認められない

■主張
原処分庁側:
請求人は遺留分の減殺請求が抑制され、また相続人は借入金返済の負担を免れられることができる
⇒租税回避目的とした両者の馴れ合い和解と主張し、更正の請求は認めない

審判所側:
和解とは当事者にとっての利権につき、双方の経済面等の利点があるからこそ互譲が可能となる。
 ⇒結果として当事者の税負担が軽減されたが、利点等から鑑みると必ずしも馴れ合いによる和解には該当しない。
 更正の請求を認めた


4.10%時の新経過措置通達、8%時と同様

・国税庁より、消費税率10%引上げ時における経過措置の取扱い通達が公表
⇒基本的に消費税率8%引上げ時の経過措置と同様

・電気料金等の経過措置(施行日をまたぐ請求は旧税率とする措置)
⇒電気・ガスに加えて「灯油」が追加


5.中小・公益法人税制の改正は見送りへ

27年改正で検討されていた中小企業に係る「軽減税率の引き上げ」「外形標準課税の対象範囲拡大」等の改正は見送り

・公益法人等に係る「軽減税率に引き上げ」「収益事業の定義見直し」「みなし寄付金制度の廃止・縮減」等の改正は見送り

⇒ただし公益法人等税制に対する税務当局の問題意識は高い
 そのため28年税制改正で検討される可能性あり


6.ノンコミットメント型ライツ、上場制度見直しで濫用に歯止め

【論点】
ノンコミットメント型ライツ・オファリングが濫用的に利用されていることを受け、東京証券取引所が新株予約権証券の上場制度を一部改正した。

(1)ライツ・オファリングとは
 増資手法の一つで、すべての既存株主に新株予約権無償割当てを行い、行使する株主は新株を取得し、行使しない株主は予約権を売却する制度
∴株式の希薄化をできる限り回避

 コミットメント型とノンコミットメント型がある。
(a)コミットメント型・・・株主が権利行使しない場合、証券会社がライツを取得し権利行使する
 ∴発行会社は満額の資金調達が可能
(b)ノンコミットメント型・・・株主が権利行使しない場合、ライツは消滅する。
 ∴発行会社は満額の資金調達不可

(2)問題点
 ノンコミットメント型を採用する上場企業は経営成績や財政状態が悪く、他の増資方法では引き受け手がいないところが多い。

(3)改正内容
 ノンコミットメント型について、既存の上場基準に加え、以下(a)(b)を要求

(a)株主総会決議による株主の意思確認、又は、証券会社による審査
(b)形式基準の充足
 ()2期連続で経常赤字でないこと
 ()直前の事業年度又は四半期会計期間末日において債務超過でないこと


7.課税事業者の判定について

課税事業者と免税事業者を行ったり来たりしているケースがあり、判定について整理しました。
【会社の状況】
1期:課税売上高 2,000千円 期首資本金 1,000千円
2期:課税売上高 3,000千円 期首資本金 50,000千円
3期:課税売上高 5,0,000千円(開始6ヶ月の課税売上高 20,000千円) 期首資本金 500,000千円

【判定】
1期:免税(基準期間なし 期首資本金10,000千円未満)
2期:課税(基準期間なし 期首資本金10,000千円以上)
3期:免税(基準期間の課税売上高 10,000千円以下)
4期:課税(基準期間の課税売上高 10,000千円以下だが、前期開始6ヶ月の課税売上高10,000千円超)
5期:課税(基準期間の課税売上高 10,000千円超)

【まとめ】
スタートアップの企業においては、課税売上高・資本金に変動が大きいため、注意が必要。
また、還付となるケースが多いが、免税事業者の場合は課税事業者選択届出が無いと還付を受けられないため、免税事業者となる事業年度開始前に翌期の事業計画等を見ながら、会社にとって有利な方法を検討するように注意する。


8.地方法人税の創設に伴う地方税予定申告の経過措置

■地方法人税の創設(26101日以後開始事業年度より)
(1)地方法人税(国税) 法人税額の4.4%相当額
(2)法人事業税(地方税)2.7%⇒3.4% 4%5.1% 5.3%⇒6.7
(3)地方法人特別税(地方税)81%⇒43.2
(4)住民税法人税割 17.3%⇒12.9%(23区内)
                 5%3.2%(市町村)

■予定納税の経過措置⇒26101日以後開始の最初の事業年度の予定申告が対象
<例 住民税法人税割>
(通常)前事業年度の税額×6/12
(経過措置)前事業年度の税額×※3.8/12
 ※6×3.2/53.8
 ⇒前事業年度の1/2とならないので注意が必要


9.法人税:パーティー開催費用にかかる接待飲食費の範囲

接待飲食費に該当するかどうかは下記のとおり。
■︎該当するもの
•飲食費
•テーブルチャージ
•会場費

■︎該当しないもの
•招待客の宿泊費
•送迎費

■︎内容によって該当するもの
•音響照明
•装花
•司会者
•ステージ看板
•その他

•主にゲームなどの余興に使用する音響照明、それ自体が余興としての価値がある生演奏などは該当しない。
•数万円でつけるホテルスタッフ等による司会者ではなく、それ自体に余興としての価値があるタレント司会者などは該当しない。


10.役員の範囲

・有価証券報告書などの「役員の状況」欄に男女別人数と女性比率を記載することに
・「役員」の範囲が問題に
・役員
  金商法:取締役、会計参与、監査役もしくは執行役又はこれらに準ずるもの
  会社法:取締役、会計参与、監査役(会社法329条)

 金商法の範囲は会社法の「役員等(423条)」に近い。

・執行役≠執行役員
・執行役員=取締役待遇の従業員

・「役員の状況」に執行役員は含まれない。


11.ストックオプションの税務

1.SO付与時又は権利行使時の課税関係
【個人】
(1) 譲渡制限無  ⇒ 付与時に所得税課税
(2)譲渡制限有  ⇒ 権利行使時に所得税課税 
 ∵ 付与時に担税力無い為

【法人】
 個人が課税された時に損金算入可能

2.SO譲渡時の課税関係
【原則】
 ⇒ 株式の譲渡と同様(分離課税)
【発行会社へ譲渡】
 ⇒ 給与所得(総合課税)

3.譲渡制限が解除された場合の課税関係
 ⇒ 解除時に課税 
∵ 換金性を有し、担税力有る為

※課税方法
 ・付与時の価額
 ・譲渡制限解除時の価額 … 事例では解除時の価額で課税処分


12.為替予約の会計処理

為替予約:将来の特定の日(期間)に、一定の外貨を一定のレートで売買する契約。デリバティブ取引に該当し、原則として期末に時価評価、評価差額を損益とする。

・ヘッジ会計の適用
 →条件を満たす場合にはヘッジ会計を適用可
 (1)取 引 前:ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが取引時に客観的に認められること
 (2) 取引時以降:ヘッジの効果が定期的に確認されていること
 →ヘッジ会計を適用する場合、振当処理によることが認められている
 →会計方針として決定する必要があり(一取引ごとに原則/振当の判定をすることはできない)

・予定取引にも適用可
 →発生可能性が極めて高い確度で予測される場合
 →取引発生までの期間が1年以上の場合、特に留意(以下が満たされているか判断)
  (1)為替相場の合理的な予測に基づく輸入に係る合理的な経営計画があり、かつ、損失が予想されない場合
  (2)輸入取引に対応する円建て売上に対応する解約不能の契約があり、かつ、損失とならない場合
 →決算日を挟む場合、為替予約を時価評価し、評価差額を繰延ヘッジ損益とする必要あり


13.ライツ・オファリング(新株予約権無償割当)に係る新株予約権証券の上場制度の見直しについて

【ライツ・オファリングの種類】
(1)コミットメント型
⇒株主が新株予約権を行使しない場合、証券会社がその権利を買い受けて行使するもの
・メリット       :発行企業は予定額の資金調達が見込める
・デメリット    :リスクを負う証券会社が事前に厳しい審査を実施する

(2) ノンコミットメント型
⇒株主が新株予約権を行使しない場合、権利が失効するもの
・メリット       :証券会社の審査を経る必要がなく機動的な発行が可能
・デメリット    :株主が権利行使しないと当初に予定した資金が調達できないおそれがある

【問題】
赤字企業、債務超過企業が、証券会社の審査がないノンコミットメント型を利用する例が多発。

【上場基準等の見直し(1031日より)】
・ノンコミットメント型の場合でも、証券会社による引受審査に準じる審査を必要とする
 (株主総会決議等の承認を得た場合は省略可)
・ノンコミットメント型の場合でも、市場から評価されない経営成績・財政状態の会社を除外する形式基準を求める


14.企業不祥事に際しての監査役の対応

企業不祥事=法令または定款に違反する行為
その他社会的非難を招く不正又は不適切な行為

(1)第一ステージ
a.第一報告受領時
⇒ステークホルダーにとってどれほど重要なものか判断し、対外的開示、第三者委員の設置等について執行側の見解を確認し、必要に応じて助言・勧告する

b.対外的開示
⇒適切な開示は損害拡大防止・早期収束の重要なファクターであるため、執行側の対応をしっかりと監視・検証する

(2)第二ステージ
a.原因究明・再発防止策の策定
⇒取締役会、経営会議等での報告徴収のほか、個別に取締役等から定期的に報告を聴衆する

b.損失拡大防止、早期収束
⇒危機管理の3原則「隠さない」、「決断する」、「説明する」に則り、事実関係を積極的に、適時・適切に公表が重要であり、執行側の対応につき厳しくチェックする

c.対外的開示
⇒「いつ、どこで、だれが、何を、どのように」が明確になっているか


15.使える補助金・助成金vol.7「エネルギー使用合理化事業者支援事業」

・(要件)以下2つを満たすこと
(1)省エネ設備・システムを導入し、1%以上の省エネ等を達成すること
(2)設備・システム等の導入に300万円以上かけていること

・(補助内容)設備・システム導入のための設計費、工事費等
・(金額)1/3 上限50億(1社に50億出す、ということではなく、年間の補助金総額)
・(募集期間)5月~6月(+補正予算として翌2月~3月)
・(採択数)平成25年度: 1,465件採択(応募数不明)
・(採択事例)「スーパーでLED照明を導入」
「工場の稼働率に合わせた給排気ファンの自動調整」


※要件を満たせば自動的にもらえるわけではなく、他の応募者と比較して相対的に省エネ率の高い事業者が選ばれる。






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