2017年1月28日土曜日

1/27 勉強会:平成29年度税制改正について 他

1.平成29年度税制改正について①

■所得拡大税制(法人税)
・大企業は要件が一部変更
 改正前:平均給与等支給額が前事業年度を上回ること
 改正後:平均給与等支給額が前事業年度より2%以上増加すること
・中小企業は要件の変更なし
 ただし、平均給与等の支給額が前事業年度より2%以上増加した場合は控除額が大きく拡充
 10%+12%=22%を控除(10%は通常分、12%は上乗せ分)

■中小企業税制(法人税)
・中小企業のうち大企業なみに売上、利益がある企業については、中小企業向けの租税特別措置法の適用を停止する
 前3事業年度の所得金額の平均が年15億円を超えるとき

■仮装通貨の消費税非課税化(消費税)
・仮想通貨の取引について消費税を非課税とすることとした

■積立NISAの創設(金融)
・中長期にわたる投資を支援するため創設
・対象商品は投資信託に限定、投資方法は契約に基づき定期かつ継続的な方法による買い付け
・現行NISAとは選択適用

■タワーマンションにかかる課税の見直し
・高層階と低層階に実勢価格に差がある実態があるなか、固定資産税、不動産取得税の負担は平等
 ⇒高層階になるにつれ固定資産税等の負担が大きくなるように見直す
・平成30年度から新たに課税されることとなる新築のタワーマンションについて適用される


2.平成29年度税制改正について②

■配偶者控除制度の見直し
・配偶者の収入の上限103万円⇒150万円
・納税者本人の所得制限1,120万円から逓減し、1,220万円で消失

■株主総会時期の見直し
・株主総会の集中を緩和させるため、法人税等の申告期限の延長可能月数を拡大
・会計監査人設置会社において、定款の定めにより決算日より3ヶ月を越えて株主総会期日を設定
⇒決算日から最大6ヶ月まで延長可能(※株主総会開催月まで)


3.財産評価を巡る災害に関する判決事例

地盤の液状化、雑損控除は適用できる?
⇒事例ではできないと判断されている。

■雑損失控除
・生活に必要な資産が災害等により損失を被った場合に、その損失による担税力の低下を課税上、考慮しようという趣旨のもの。
・損失の有無は、資産の物理的被害の有無によって判断。
■今回の請求人は
災害後の宅地に係る固定資産税評価額の下落額を雑損控除の対象としたかった。
■審判所の判断
生活に通常必要な資産の毀損と認められるものではないため、雑損失控除の規定を適用することはできない。


4.小規模住宅用地特例の適用ミスで都敗訴

■概要
・相続により納税者が土地を取得
・建物を建て、法人へ賃貸 ※介護付き有料老人ホームとして使用

・都税事務所は小規模宅地の特例を適用せずに、固定資産税評価
⇒納税者が平成17年~平成26年まで固定資産税等を過大に納付

・都税事務所は平成22年~平成26年度分の過納付額966万円を還付
⇒平成21年度以前分は還付を拒否
⇒訴訟へ

■判決
・固定資産税等の過大な賦課徴収行為は違法であると判断
・一方で、納税者が住宅用宅地の申告を怠っていた過失もあったと指摘
⇒過納付額のうち2割を過失相殺し、8割を都税へ損害賠償を命じた


5.マイナス金利で実務対応報告を策定へ

企業会計基準委員会は3月期決算に向け、マイナス金利における退職給付債務等の計算の割引率に関する実務対応報告を策定へ

割引率を「マイナスの利回り」又は「ゼロ」として適用することも可

実務対応報告の適用は、平成293月期から1年間に限定される方向
今後、金利動向等を踏まえて恒久的な取扱いを設けるか検討


6.二次・三次再編の税制適格要件を見直し

H29年度税制改正で組織再編税制の大幅な見直しがあり、税制適格要件の緩和がキーワードとなる。
■二次再編
・主要な資産負債の移転を適格要件から除外
・移転事業の従業員の80%が移転先に残れば適格要件に該当
・株式交換完全親会社の100%保有関係の継続が、直接保有から間接保有でも適格要件に該当
■三次再編
・三次再編が適格合併である場合は、主要事業が三次再編に係る合併法人で継続していれば要件に該当。

<遺産分割の効力とは>
■遺産分割とは
被相続人が遺書を残さず死亡した場合に、相続人全員の共有財産となったものを、各相続人間の協議により分配すること。
■遺産分割の効力(民法909)
・相続開始時まで遡って効力が発生する。
・ただし第三者の権利を害することはできない。つまり相続開始時は相続財産が共有状態であるが、分割後は所有権を単独、かつ、相続開始時から相続していた扱いとなる。ただしその単独で所有していた所有権に、相続人とは関係のない第三者がからんでいる場合は、第三者の権利は保護される。


7.固定資産の取得後に国庫補助金等を分割して受けた場合の圧縮記帳の取扱い及び国庫補助金等の範囲について

【事前照会事例】
・国&県から取得資金支援が受けられる物流施設を取得
・国からは、補助金が交付決定通知後「5年間」で分割してもらえる
・県からは、「助成金」が一括でもらえる

⇒国庫補助金等の圧縮記帳を適用できるか?

⇒「5年間」の分割収入であっても、交付決定通知を受けた事業年度において一括して圧縮記帳が可能
(通知を受けた時点で、収入すべき権利が確定するため)
⇒「助成金」の名称であっても、圧縮記帳を適用できる
(交付目的が制度趣旨に合っていれば名称は関係ない)


8.株式交付信託と役員給与

■株式交付信託とは
会社が役員等に対して信託を利用して自社株式を交付する仕組み

■株式交付信託の種類
(1)在任時交付型株式交付信託:在任時に株式を交付する
(2)退任時交付型株式交付信託:退任時に株式を交付する

29年改正前後の役員給与に関する取扱い
(1)在任時交付型
改正前:定期同額給与・事前確定届出給与・利益連動給与のいずれにも該当しない⇒損金不算入
改正後:利益連動給与に該当する⇒損金算入可

(2)退任時交付型
改正前:役員退職給与として損金算入可
改正後:利益連動給与としての損金算入要件を満たす場合に限り(退職給与として)損金算入可

■施行
(1)在任時交付型→2941日以後の決議分より
(2)退任時交付型→29101日以後の決議分より


9.東京地裁 収用等の5,000万円特別控除特例の適用可否を巡り国側勝訴

■収用等の5,000万円特別控除の特例
 ”最初に”買取り等の申出があった日から6か月で土地建物を売却等の要件(買取り等の申出証明書が必要)

■事案
 S市は収用の対象資産Aの所有者Bに買取の申し出⇒S市は新たな価格を提示して買取りの申出⇒Bは申し出に応じなかった
 ⇒収用等裁決⇒S市はBの口座に補償金を送金⇒Bは収用代替特例で確定申告
 ⇒修正申告で収用等の5,000万円特別控除特例⇒認められず

■論点
 1.最初に買取り等の申出があった日はいつか(買取価格変更ありのため)
 2.修正申告書に買取り等の申出証明書等を添付していなくても収用等の5,000万円特別控除は適用できるのか否か

■結論
 1.買取価格変更ありでも、収用等裁決があっても、当初の申し出が最初に該当する
 2.申出証明書が必須


10.クロスボーダーM&Aの苦労話

・時差の問題が大きい
 ⇒UKの案件に関与した場合、夕方から深夜にかけてやり取りが増える
 ⇒欧州、西海岸と複数ある場合は担当者を変えないと寝る時間が無くなる
・現地カレンダー
 スケジュールを立てる上で、現地のスケジュールを把握することが肝要。
 欧州の夏休み、米国のクリスマス、イスラム圏のラマダン、中国の春節休暇等。
 ⇒これらの期間に対応してもらうのは至難の業。
・クロスボーダー案件では高値づかみも多い(成長国オークション)。
・早期に減損するケースや早期撤退も多い。


11.スキャナ保存制度の留意点

1.スキャナ保存制度改正の概要
⇒ハンディスキャナの利用が可能になるなど、スキャナ保存の要件が緩和
2.適用するための要件
⇒事務処理体制の整備等
・相互けん制
※事務に係る職責を分け、相互にけん制できる体制の構築
・定期的チェック
※最低、1年に一度は運用状況を確認しているか。
・再発防止策
※問題が生じた場合には、即座に経営者等に報告され、改善策を取っているか。


12.将来キャッシュ・フローの見積期間

・将来キャッシュ・フローの見積期間=主要な資産の残存使用年数を基礎として決定
・経済的残存耐用年数と税務上の残存耐用年数に著しい差異がない限り、税務上の耐用年数を使用可能
・主要な資産=将来キャッシュ・フロー精製能力にもっとも重要な構成資産かどうかが判断基準(残高に占める帳簿価額の割合で安易に決定しないこと)
・仮に将来キャッシュ・フローに一番寄与するものであっても償却済みの資産は主要な資産とならない
・主要な資産の大規模修繕等が計画されている場合は将来キャッシュ・フロー見積もりに織り込む
・大規模修繕により残存耐用年数が延長する場合は、延長後の残存期間を見積期間とする


13.期ズレ子会社の決算日後の減損損失は連結計上?

子会社の決算日後、連結決算日までに子会社で計上された減損損失を連結計上すべきか?
⇒修正後発事象の場合は連結計上する。関連会社の場合も考え方は同様。


14.執行役員制度について

■執行役員の定義
会社法上の概念ではない事から、各社の考え方によりそれぞれ定義がある。一般的には、上級使用人(上級管理職)と解され、目的による要素を勘案して定義が可能
→目的として、監督と執行の分離、上級使用人の処遇施策
■執行役員と会社の関係
自由度が高いゆえに、権限や義務は契約で定める必要がある
(1)雇用契約→使用人であることが前提+労働法の適用
(2)委任契約→取締役に近い
(3)混合契約→雇用契約の性質と委任契約の性質を包含、執行役員制度を創設する契約を締結


15.減損会計:使用価値に使用する割引率について

■減損会計(概要)
固定資産の収益性が低下して当初の投資の回収ができない場合回収可能価額※まで帳簿価額を減額し、減額分を減損損失計上
※回収可能価額:以下のうち金額が大きい方
・正味売却価額(資産を今処分した場合の価値)
・使用価値(資産を使用継続した場合の価値)⇒将来CFの割引現在価値、本論はここでの割引率について

■論点(1)~どのようなリスクを考慮して決定するか~:4方法
⇒貨幣の時間価値+将来CFが見積値から乖離するリスクを反映する必要
・企業に固有のリスクを反映した割引率
WACC
・合理的な市場平均収益率
・当該資産・資産グループのみを裏付けとして資金調達を行った場合の利率
※リスクの組み込み方法
将来CFと割引率のいずれかに反映する必要があるが、実務上、後者の方法が多い

■論点(2)~いつ時点の割引率か~
・減損損失の認識時点
⇒現在から将来に渡る回収可能性を反映させる必要

■論点(3)~税引前か後の割引率のどちらか~
・税引前
⇒割引く将来CFが税引前(法人税等の支払/還付は資産の使用から直接的に発生しないため考慮しない)

■論点(4)~子会社で採用した割引率の連結上の取扱い~
・連結の観点で資産グループを見直さない限り(資産の収益性が異なる可能性)、基本的に見直さない
・親会社の資本コストを用いる場合は簡便的にOK、明らかに不合理でない限り


16.粉飾法人で黒字申告していた場合

 ⇒ 修正経理を行い、更正の請求を行うことが出来る。ただし過去5年分まで。
 ⇒ 減額更正によって生じた過大申告に伴う法人税額は、すぐには還付されない。
 ⇒ 翌年以降5年間の納付すべき法人税額から控除。控除しきれない場合還付される。


17.情報システム整備

1)情報システム整備の時期
・上場審査では、内部管理体制について、1年以上の運用実績を要求
・大規模なシステム導入や見直しなどは、時間がかかるため、早期に着手する必要あり

2)情報システムの整備範囲
・どの範囲のシステムの見直しを行うか検討、目的に合致するように要件定義を明確化
Ex.販売部門)
売上計上、売掛金回収などの記録計算にとどまらず、得意先別、地域別、製品別等の経営陣のマネジメントに必要な資料を分析報告できるようシステム設計

3)内部統制報告制度
IT評価は不可欠な要素
1.全社的な内部統制に関する評価項目の1つとして
ITに関する適切な戦略、計画等の策定
IT環境に対する方針の設定
など、ITに対する適切な対応を図っているか評価

2.評価対象となったIT業務処理プロセス(例:販売管理)に係るIT基盤に係る全般統制として
・システムの開発、保守
・システムの運用・管理
・アクセス管理
などに関する整備・運用状況について評価

3.評価対象となった業務処理プロセスに係るIT業務処理統制として
・入力情報の完全性や正確性の確保
・エラーデータの修正と再処理の機能の確保
・マスタ・データの正確性の確保
などに関する整備・運用状況について評価

2.のIT全般統制は、3.の評価対象となったIT業務処理統制に対するIT基盤に対して実施
IT全般統制は、IT業務処理統制が有効に機能するための前提であり、両者が一体となって機能することが重要

IT全般統制に不備がある場合、虚偽記載に直接的に結びつくわけではない。しかし、IT業務処理統制が有効に機能しない可能性あり、そのため、虚偽記載のリスクが高まる

その場合には、不備を解消するようなIT全般統制の整備を図る、もしくは、IT業務処理統制に代替する業務処理統制(手統制など)の構築を図る必要あり

・当制度に関する留意点
1.制度が従業員に周知されていること
2.通報を受け付ける部署または外部機関が適切であること
3.通報があった場合には、放置せずに対応がなされていること
4.通報者が公益通報者保護規程(※)等に基づき保護されていること


(※)通報を理由とする解雇の無効や不利益な取り扱いの禁止などを規程









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2017年1月21日土曜日

1/20 勉強会:役員給与税制改正Q&A(平成29年度税制改正) 他

1.有利発行事件確定なら再び課税拡大も

・グループ法人税制外しの事例で、132条の適用
IBM事件判決を受けて?

・行為計算否認は
「租税回避以外に正当な理由等が存在しないと認められること」という通説から「行為または計算が純粋経済人として不合理、不自然なもの、すなわち経済的合理性を欠く」が適用要件へ。


2.役員給与税制改正Q&A(平成29年度税制改正)

・改正の適用開始日
 利益連動給与の指標拡大など課税緩和となる改正=平成2941日以降の付与決議等から
 譲渡制限付株式報酬、新株予約権、退職給与に係る課税強化措置=平成29101日以降の付与決議等から

(1)株式交付信託を利益連動給与の一つと位置付け、損金算入を認める。
⇒利益連動給与の指標に「株価」や「売上高」を加え、複数年度を対象とする指標を用いることが可能に
⇒ただし「売上高」のみを指標とした場合は、損金不算入、株価や利益との併用が必要

(2)複数年度を対象とする指標とは?
⇒例:「3事業年度後の利益」、「将来のある時点のROE」、「一定期間の利益の平均額」など

(3)税制大綱の注書き「損金経理要件の見直し」とは?
⇒「引当金」の計上を指す
 利益連動給与の対象期間が複数年にわたる以上、これと整合して引当金の計上も認められる

(4)譲渡制限付株式報酬は利益連動給与に該当し得るか?
⇒利益連動給与に該当しない

(5)業績未達で"全て"没収の譲渡制限付株式は事前確定届出給与に該当するか?
⇒事前確定届出給与に該当する余地あり
 業績により没収数が変動するものは事前確定届出給与に該当しえない

(6)税制非適格の新株予約権の損金算入
⇒従来=税制非適格であれば損金算入可
 改正=「事前確定届出給与」or「利益連動給与」の損金算入要件を満たさない限り、損金不算入

(7)在任年数に応じて支給される退職給与の損金算入は可能か?
⇒従来通り損金算入できる(不相当に高額な場合を除く)


3.為替差損益の算定は総平均法が合理的

・預入が随時可能な(異なる為替相場での預け入れが混在している)外貨預金の為替差損益の算定
⇒「総平均法に準ずる方法」が最も合理的

・該当年度分の雑所得に加算すべき外貨預金の金額
⇒該当年度(1年間)中の為替取引で預金口座から払い出した時に生じた為替差損益の合計額


4.仮装経理(売上過大、原価過大)

(設例)
・前期において、売上過大300、原価過大200の計500の利益過大の粉飾経理
・過年度遡及会計基準の適用により、当期の期首利益剰余金を500減額処理した
⇒当期の申告調整はどうするか

(答)
・別表四は申告調整不要
・前期の減額更正をし、別表4500の減算調整
・当期で別表5(1)の期首現在利益積立金額が相殺されて0となる


5.有償新株予約権の会計処理案、射程範囲は典型的な取引のみ

■有償新株予約権の会計処理に関する実務対応報告案
・現在、企業会計基準委員会が検討中
・実務対応報告案の内容は、下記の通り
有償新株予約権は、SO会計基準に定めるSOに該当すると整理
会計処理や開示は、SO会計基準を基本的に踏襲
SOの付与に伴って、企業が従業員等から提供を受けるサービスについて費用計上
※費用計上額=SOの公正な評価額-払込金額

■有償新株予約権の会計処理
・現状:実務上、適用指針第17号※を適用しているケースが多いと想定される。
※払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理
⇒現預金×××/新株予約権×××(費用処理しない)

・今後:実務対応報告を適用
⇒株式報酬費用×××/新株予約権×××(費用処理する)
※処理内容が大きく変更され、企業の実務や損益に大きな影響を与える為、経過的な取扱いあり

■実務対応報告における経過的な取扱い
・公表日より前に付与したものは、従来通り費用処理可
※以下の注記が要件
・有償新株予約権の概要及びその変動状況
・採用している会計処理の概要

■実務対応報告の対象範囲
・従業員等(役員も対象)に対して付与した権利確定条件付き有償新株予約権
※昨今、役員向けのインセンティブ・プランとして開発されているスキーム(ex.時価発行新株予約権信託)は対象外


6.平成28年分所得税確定申告のチェックポイント

・無記名公社債の利子等の帰属
H28.3.31以前:元本の所有者が利子等の支払いを受けたとみなす
H28.4.1以降 :実際に利子等の支払いを受けたものの帰属に

・建物付属設備、構築物の定率法廃止
H28.4.1以後取得分から適用

・通勤手当の非課税限度額が拡大
-月額10万円が限度⇒月額15万円が限度
H28.1.1以後適用

・給与所得控除上限の引下げ
245万が上限⇒230万が上限
H28.1.1以後適用

NISAの拡大
-年間100万円限度⇒年間120万円限度
H28.1.1以後適用


7.税制改正ポイントチェック

■法人税率
中小法人
<年800万以下部分>
29331日までに開始する事業年度⇒15
2941日以後に開始する事業年度⇒19

中小以外の法人
30331日までに開始する事業年度⇒23.4
3041日以後開始事業年度⇒23.2

■欠損金の控除限度額(中小以外の法人)
2841日~29331日の間に開始する事業年度⇒控除前所得の60%(繰越期間9年)
2941日~30331日の間に開始する事業年度⇒控除前所得の55%(繰越期間9年)
3041日以後開始事業年度⇒50%(繰越期間10年)


8.29年度税制改正 事業承継税制の雇用確保要件を緩和

非上場株式等の相続税の納税猶予制度について
■雇用確保要件(要件の内の1)
・申告期限後5年間の平均で、相続開始時の雇用の8割の維持が必要
⇒この維持すべき常時使用従業員数の算定方法が改正
 (現行)端数切り上げ
 (改正)端数切り捨て
⇒改正により小規模企業の実質100%維持要件を解消

(判定例)4名が3名になったケース
 (現行)4×0.8=3.24(切り上げ)>3名⇒NG 4名の維持が必要
 (改正)4×0.8=3.23(切り捨て)3名⇒OK 3名の維持でOK

■平成2911日以後の相続等に適用


9.決算短信を293月期から合理化へ

・東京証券取引所が改正案を公表

①監査・レビューが不要であることを明確化
②記載項目を削減
 経営方針等は有報へ
③項目の限定
 ※投資判断を誤らせるおそれがない場合には短信開示時点で連結不要。

日本証券アナリスト協会
・様式の使用義務撤廃に懸念表明
・連結財務諸表を開示しないことを容認する点にも懸念表明

上場会社の開示担当者
・様式の使用義務が撤廃されても様式を使用する予定
・経営方針等の件は時間的余裕ができて助かる


10.事業承継ガイドラインの改正

・早期、計画的な取り組みを促す(60歳を着手の目安に)
・地域に密着した支援機関のネットワークを構築。
 ⇒ 行政、商工会議所、地銀、専門家(会計士、税理士、弁護士、M&A仲介業者など)
 ⇒ 事業引継支援センターを設置。
2020年に数十万人の団塊経営者が引退時期にさしかかる
 ⇒ 60歳以上の経営者のうち、50%が廃業予定。
・廃業予定の経営者のうち4割が、「事業を続ければ少なくとも現状維持は可能」との認識。


11.内部・外部通報制度

上場にあたっては、不正や不祥事の早期発見や防止を目的として、全社的な内部統制の観点から、内部・外部通報の設置が望まれる(絶対ではない)。

・当制度に関する留意点
1.制度が従業員に周知されていること
2.通報を受け付ける部署または外部機関が適切であること
3.通報があった場合には、放置せずに対応がなされていること
4.通報者が公益通報者保護規程(※)等に基づき保護されていること


(※)通報を理由とする解雇の無効や不利益な取り扱いの禁止などを規程









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2017年1月13日金曜日

1/13 勉強会:第三者割当新株予約権の設計ポイント 他

1.過去の誤謬(減価償却資産の減損損失)

(設例)
・前期において、建物に係る減損損失450の計上漏れがあった
・過年度遡及会計基準の適用により、当期の期首利益剰余金を500減額処理した
・減損損失450に係る当期の減価償却費限度額は50
⇒当期の申告調整はどうするか。

(答)
別表四は「減価償却費認容」として50減算(留保)する


2.債権放棄の事実を認めるも、寄付金に該当で損金不算入

国外関連者(国外子会社)に対する債権放棄が、寄付金に該当すると判断された審判事例

債権放棄に関する損失が寄付金に該当する場合
⇒全額が損金不算入

寄付金に該当しない場合
⇒債権放棄に経済的合理性がある場合

経済的合理性の有無は、下記要素を総合して判断
(1)被支援者は支援者と事業関連性のある子会社等であるか
(2)当該子会社は経営危機に陥っているか
(3)支援者が損失負担を行う相当の理由があるか

今回の事例では、(2)から(3)が無いと指摘された。

さらに審判所は、子会社の債務超過が相当期間継続した事実が無い点を指摘、債権放棄による損失は法人税法上の寄付金に該当する(損金不算入)と判断した。


3.今週の専門用語

■固定資産税の設備投資減税

・「中小企業等経営強化法」が平成2871日に施行
⇒中小企業等を対象とした固定資産税の減税や金融支援等の特別措置

・固定資産の減税
⇒認定経営力向上計画に記載された機械装置を取得した場合、固定資産税が3年間2/3となる
⇒平成29331日までなら、生産性向上設備投資促進税制と重複適用可能

※生産性向上設備投資促進税制
 最先端設備等を取得した場合に、特別償却50%か最大4%の税額控除


4.分割法人の株式売却でも税制適格に

■平成29年税制改正で組織再編税制が大幅に見直し
⇒税制適格の判定に際して株式保有の継続に関する要件が緩和
(1)企業グループ内の分割型分割に係る関係継続要件
(2)共同事業を行うための合併等に係る株式保有継続要件

(1)分割後における、当事者間の完全支配関係の継続について
・改正前:親法人、分割法人、分割承継法人の間で必要
・改正後:親法人、分割承継法人の間で必要

(2)合併等後における、被合併法人等株主の合併法人等株式保有の継続について
・改正前:被合併法人等の発行済株式総数の80%以上に相当する株主による保有
※被合併法人等の株主数が50人未満の場合のみ
・改正後:被合併法人等の発行済株式総数の50%超を保有する株主による保有


5.中小企業の賃上げに最大22%の税額控除

H29年度税制改正で「所得拡大促進税制」を見直し。
前事業年度からの賃上げ率が2%以上であれば、前事業年度からの給与増加額の22%を税額控除。

なお大企業については、前事業年度からの賃上げ率が2%未満の場合は、「所得拡大促進税制」の適用対象外となる。

H294月以後開始事業年度より適用開始。


6.QAで読み解く中小企業の新投資減税

(1)中小企業投資促進税制
・機械装置、工具、ソフトウェアが対象
30%特別償却 or 7%税額控除

(2)固定資産の設備投資減税
・認定経営力向上計画の策定が必要
・機械装置、工具、器具備品、建物付属設備が対象
・償却資産税を3年間、2分の1に軽減

(3)中小企業経営強化税制
・認定経営力向上計画の策定が必要
・機械装置、工具、器具備品、建物付属設備、ソフトウェアが対象
・即時償却 or 7%-10%税額控除

⇒上記の(2)(3)、経営力向上計画の策定に税理士などが関与


7.相続税:類似業種比準方式改正の影響

■見直し内容
(1)類似業種の上場会社の株価について、前2年平均を加える
(2)類似業種の配当・利益・簿価純資産価額について連結決算を反映させたものとする
(3)配当・利益・簿価純資産価額の比重を1:1:1にする

■上記(2)の影響を検証
配当⇒連結子会社から連結親会社への配当は相殺されるためほとんど影響がないと思われる。
利益⇒単体では別表4調整後の課税所得をベースとしているが、改正後は連結P/Lの税引前利益がベースになると思われる。通常、別表調整は加算項目の方が多いため利益の数値は改正により小さくなるケースも想定される。
簿価純資産価額
⇒単体では別表4調整が反映された別表5(一)の数値をベースとしているが、改正後は連結B/Sの純資産がベースになると思われる。利益と同様、改正後の数値の方が小さくなるケースも想定される。 

上記分析は別表調整の金額が大きい場合を想定しているため、別表調整の影響が小さい場合は連結ベースの方が利益・純資産とも改正前より数値が大きくなると予想される。


8.グループ法人税制と特定新規設立法人の「他の者」

■特定新規設立法人とは(以下の3要件全てを満たす法人)
1.資本金等の額1,000万円未満の新規設立法人
2.他の者、他の者に完全支配された法人に50%超支配されている
3.上記判定の基礎となった他の者等の,新規設立法人の基準期間に相当する期間の課税売上高が5億円超
⇒設立1年目,2年目であっても,消費税免除なし

■グループ税制との比較(Cを中心に)
 AB 100%支配
 BC 100%支配
・グループ税制⇒ACはグループ税制の対象
・特定新規設立法人⇒上記3.の要件については、Bが判定対象となる(ACの関係ではなく)
 (3.5億円超の判定対象は,新規設立法人の直接的な株式保有を要件としている)


9.ホワイトカラーの犯罪

・かつて米国でビジネス・リーダーとして褒め称えたれた50人の経営者について、その後、ホワイトカラー犯罪で3名が刑務所に収監され、別の3名は不法行為により数百万ドルの罰金刑を科せられている。
・成功した人がなぜ、犯罪に走るのだろうか?
・インサイダーや粉飾決算などは少なくとも被害者を目にすることがない
 ⇒犯罪としての実感が希薄と感じる


10.平成29年度税制改正

1.デフレ脱却・経済再生
(1)研究開発税制
<従来> 売上に占める研究開発割合に応じた税額控除率
<改正> 試験研究費の増減率に応じた税額控除率
※売上規模に関わらず、試験研究費の増加を控除額に反映
(2)所得拡大税制
<従来> 雇用者給与増加額の10%
<改正> 雇用者給与増加額の10%(雇用者給与-比較雇用者給与)×2%

2.コーポレート・ガバナンス改革
(1)確定申告書の提出期限の延長
下記要件を満たせば、申告期限を4ヶ月まで延長可能
・会計監査人設置会社
・定款に定時株主総会が事業年度終了日の翌日から3か月以降とする旨を記載
(2)役員給与等
利益連動型給与の指標として下記の指標を採用することを認めることを明示
・売上高
・株価


11.第三者割当新株予約権の設計ポイント

■主要条件
(1) 行使価額固定型、行使価額修正型
・固定型:行使価額が満期まで一定。
株価↑=希薄化
株価↓=思い通りに資金調達ができない可能性あり

・修正型:株価が下がっても行使価額が下方に修正される
⇒資金調達の確実性が高くなる。

(2) 行使指定、行使制限、行使禁止
可能⇒発行会社のタイミング・ニーズに合わせた資金調達が可能に。

(3) 強制行使、コミットメント条項
株価が行使価額よりも高い場合に一定量の株式数を上限とした行使を強制できる条件が一般的

(4) 株式数固定、株式数変動
株式数固定型が一般的だが、株式数変動型とすることも可能
⇒行使価額修正条項が付されたものには株式数変動型が多い。

(5) 取得条項(コール条項)
よりよい資金調達手段がえられた場合、企業として新株予約権を取得してしまうもの

(6) 取得請求権(プット条項)
コール条項とは逆に、割当先が売却する権利。割当先の投資家と交渉の結果付されることがある。

(7) 権利行使条件(業績条件、株価条件)
不必要な希薄化を抑えるという観点からは、一定の行使条件により制限を設けることに意義あり


12.固定資産投資後の効果測定はこうする

投資実行後にその実際の成果を把握・測定できていないケースが非常に多い。
⇒固定資産投資後、「モニタリング可能指標」を適切に設定し、個別の投資案件ごとにその成果を把握することが重要。

■モニタリング可能指標の要件
①事後的にトレース可能
・投資後、一定期間経過後に定量的に把握することが可能なもの
・必ずしも金額である必要はない
・投資を契機にトレースの仕組みを構築することも一案
例:資産ごとの稼働時間と動力使用料を把握するなど

②固定資産そのもののパフォーマンスが測定可能
・操業度や市況などの外的要因による影響をできる限り排除し、固定資産のパフォーマンスを純粋に測定することが可能なもの
・単位当たりの指標を設定することや「%」や「時間」等の指標を設定することも有用
例:製品1個当たり人件費、設備稼働1時間当たりの電気使用量など


13.シャルレMBO事件における社外取締役の責任

(1)シャルレMBO事件とは
MBOを実施するに際し、買付側(創業家一族)の算定した価格<シャルレ側で算出された価格(11041300/株)
→買付側で高額と判断
→買付側である社長が価格が安くなるよう算定根拠となる利益計画の作り直しをメールで何度も指示
800/株でMBOを実施しようとしたが、上記内容が内部通報され、買付側はMBOを撤回、結果計画は頓挫した

(2) 社外取締役の責任
→義務違反なし

・監視義務
→本件においては、社長の価格決定への不当介入プロセスを知らなかったor容易に知り得なかったため、監視義務の前提を欠くと判断
・株主利益に配慮した公正な手続きにより買付者側と交渉すべき義務
→利益計画を変更することに十分な理由が認められた
→ヒアリングや計画作成の過程で不当性が認められなかった
(意図的に計画を下げる、数字合わせ等)


14.決算期変更時の論点

■事業年度の取扱い(会計&税務)
会計上最長16ヶ月⇔税務上は1年毎に区分の必要

~以下、事業年度を9ヶ月間に変更した場合を想定~
■減価償却限度額(税務。会計は合わせるのが一般的)
旧定率法:改定耐用年数(本来の耐用年数×12÷9)を使用
旧定額法・定率法・定額法:改定償却率(本来の耐用年数の償却率×12÷9)を使用

■貸倒実績率(税務)
・分子:前3年内事業年度の貸倒損失等×12(A)÷(12129)
・分母:前3年内事業年度の一括債権÷3(B)
A:必ず12
B:事業年度は3を超える場合はその数

■中間申告(税務)
・中間申告:変更後事業年度が6ヶ月以内⇒中間申告不要
・予定申告:前事業年度の法人税額÷9×6ヶ月分

■役員報酬(税務+会社法)
・変則事業年度の期間(9ヶ月)に見合った報酬等を総会決議すればOK

■親会社(3月決算)が子会社(12月決算)に決算期を合わせる場合(会計)
◇親会社の事業年度が9ヶ月(X1.4-X1.12)となるケース
BS(利益剰余金)で調整する方法
1Q(X1.6)にて、親会社業績3ヶ月分と同期間の子会社業績3カ月分により連結FS作成(SS不要)
連結会計年度のSSにて、子会社社業績を利益剰余金に反映
PLで調整する方法
1Q(X1.6)にて、親会社3ヶ月分と子会社6ヶ月分で連結FS作成

■子会社(12月決算)が親会社(3月決算)に決算期を合わせる場合(会計)
⇒子会社の事業年度が15ヶ月(X1.1-X2.3)となるケース
BS(利益剰余金)で調整する方法
⇒子会社の3カ月分(X1.1-X1.3)の業績のうち、親会社持分相当額をX1.3の連結SSに反映
PLで調整する方法
⇒翌事業年度(X1.4-X2.3)に影響させる(1Qでは6ヶ月分、4Qでは15ヶ月分が反映される)


15.上場準備中の事業承継(親⇒子)

上場後は一般的に株式の評価額が高くなる。
上場前のできるだけ初期段階で次世代の持分割合を増加させるような施策を取ることが望ましい。

・後継者(子)の持分割合増加のための諸施策
1.後継者への株式移動
直接的な持分移動により、後継者の持分割合が増加できるが、譲渡の場合には譲渡益課税、贈与の場合には贈与税が発生し、資金流出がある。

2.後継者への新株予約権の割当
株価が高くない初期の段階で、新株予約権を割当て、上場が近づいたところで行使し、持分割合を確保。
1.の株式移動と比べ、後継者の資金負担が少ない。

3.相続時精算課税制度
贈与時に贈与財産から2,500万円を特別控除した金額に、一律20%の税率を適用して計算した贈与税を支払い、その後、相続発生時に贈与財産を含む相続財産に対して計算した相続税額から、すでに支払った贈与税額を控除できる制度。


当該制度を活用すれば、将来、価格上昇が見込まれる株式価格を、現時点の時価で固定して後継者へ承継することができ、相続税額の節税効果が期待できる。









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