2016年12月24日土曜日

12/22 勉強会:平成29年度税制改正:配偶者控除の見直し 他

1.改正CFC税制の全貌

CFC税制とは
・外国子会社合算税制のこと(タックス・ヘイブン税制)
・現在:特定外国子会社等が軽課税国(20%未満)に所在する場合に適用

・平成29年度税制改正で見直し
 外国関係会社を経済活動基準に照らし、
(1)すべての基準を満たし、かつ、税負担割合が20%未満の場合
⇒受動的所得が合算対象とされる
(2)いずれかの基準が満たされず、かつ、税負担割合が20%未満の場合
⇒会社単位で全所得について合算対象とされる

・現行制度との違い
(1)現行制度はまず税負担割合が20%未満か以上かを基準としていた
⇒税負担割合が20%以上の場合実態がなくても合算されない
(2)見直しでは、経済活動があるかないかを最初の基準としている
⇒税負担割合が20%未満でも実態があるものについては合算されない


2.自己創設のれんの時価評価が不要に

・従来、自己創設のれんの評価方法は通達等で明確になっていなかった
(平成29年度税制改正)
⇒連結グループへの加入等に伴う資産の時価評価の対象から、帳簿価額が1,000万円未満」の資産が除外
⇒税制改正大綱に明記はないが、そもそも簿価が存在しない自己創設のれんは時価評価の対象外に

これによって連結納税制度導入を後押しする可能性がある。


3.平成29年度税制改正:配偶者控除の見直し

■居住者自身の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除の適用なし

■居住者の合計所得金額と控除金額:
合計所得金額900万円以下
⇒配偶者控除38万円/老人配偶者()控除48万円
合計所得金額900万円超950万円以下
⇒配偶者控除26万円/老人配偶者控除32万円
合計所得金額950万円超1,000万円以下
⇒配偶者控除13万円/老人配偶者控除16万円

※老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年1231日現在の年齢が70歳以上の方


4.積立NISAは現行制度との選択制で平成301月に導入

原稿のNISAに加え、積立NISAが平成301月より導入

■積立NISAの概要
・年間投資上限40万円⇔(現行NISA120万円)
・非課税保有期間20年間⇔(現行NISA5)
・投資可能期間20年間⇔(現行NISA10)

また、長期投資に適した一定の投資信託を想定している
※具体的な話は今後検討されていく

■注意点
・現行NISAと選択制となる
・暦年単位で切替えは可能


5.業績連動の退職給与は損金算入に制限

■平成29年度税制改正で役員給与税制に大幅な見直し
⇒課税緩和・強化いずれもあり

■課税緩和:平成2941日以後の付与決議等から適用
(1)利益連動給与の指標
・株価及び売上高を追加
※売上高のみを指標とした場合、損金不算入
(損金算入するには、利益や株価と併用する必要あり)
・指標が対象とする年度:単年度⇒複数年度
上記改正により、役員在任時の「信託型株式報酬」は利益連動給与として損金算入可

■課税強化:平成29101日以後の付与決議等から適用
(1)業績に連動する退職給与
・利益連動給与に該当するもののみ、損金算入可
(2)新株予約権
・事前確定給与又は利益連動給与に該当するもののみ、損金算入可
※改正前:税制非適格であれば、損金算入可
(3)譲渡制限付株式報酬
・没収要件が「利益その他の指標」を基礎としているものは事前確定届出給与から除外


6.固定資産税の軽減、平成313月で終了

■固定資産税の軽減の特例措置とは(H28年度税制改正)
H28.7.1H31.3.31までに機械装置(1:160万円以上)を取得。
・販売開始後10年以内の資産。
・旧モデル比で年平均1%以上向上している
・固定資産税を3年間、2分の1に軽減
※中小企業者に限定

H29年度税制(H29.4.1施行)
・適用期限はH31.3.31で終了(延長なし)
・地域や業種を限定した上で、
新たに器具備品、建物附属設備が追加対象(償却資産の課税対象に限る)

■まとめ
(1)機械装置
⇒地域・業種に問わず軽減の対象
(2)器具備品、建物附属設備等
・最低賃金(H28年度823)が全国平均未満の地域((2)以外の地域))
⇒全業種の上記資産が軽減の対象
・最低賃金が全国平均以上の地域(東京、大阪等の主要都市)
⇒労働生産性が全国平均未満の業種の上記資産のみ軽減の対象
主に飲食料品の小売業、飲食店、宿泊業、自動車整備などの業種


7.平成29年度税制改正 法人課税

(1)競争力強化のための研究開発税制等の見直し
・税額控除率の計算基準を変更(試験研究費割合⇒試験研究費の増減割合へ)
※研究投資を増加させる企業にメリットあり

(2)賃上げを促すための所得拡大促進税制の見直し
・平均給与が前年度より2%以上増加した場合、上乗せ控除が可能に
今までの控除額:24年度からの増加額×10%
+上乗せ控除額:前年度からの増加額×12%
※毎年給与を上げる会社にメリットあり

(3)コーポレートガバナンス改革
・会計監査人を置いている会社で、期末後3か月以内に定時総会を開催できない常況にある場合
⇒延長手続きを取ることで確定申告書の提出期限を期末後4か月以内とすることが可能に
(現在は、最大3か月しか延長できない)

(4)中堅・中小事業者支援
・中小企業経営強化税制が創設
⇒経営力向上計画の認定を受けると、
特定の設備について即時償却等の優遇措置が受けられるように


8.NPO法人が行う障害福祉サービスの課税関係

■公益法人等が行う事業
収益事業に該当する場合のみ課税される
⇒法人税法上34種の事業を「収益事業」として規定

■障害福祉サービス(医療保険業)の課税関係
NPO法人が行う場合
34種の収益事業のうち「医療保険業」に該当する
⇒課税される

②社会福祉法人(公益法人に該当)が行う場合
34種の収益事業のうち「医療保険業」に該当する。
ただし、法令上、「社会福祉法人」が行う医療保険業は法人税法上の収益事業に該当しないこととされている。
⇒課税されない

(まとめ)
障害福祉サービスはその事業を行う法人について種類が限定されていないが、社会福祉法人が行う場合には課税されず、NPO法人が行う場合には課税されることに留意する。


9.平成29年度税制改正のポイント〈2〉資産課税関係

■取引相場のない株式の評価の見直し
・類似業種の株価に「課税時期の属する月以前2年間平均」を追加
・類似業種の比準要素に連結決算を反映して株価表作成へ(今までは単体ベース)
・比準要素の比重
 配当:利益:簿価純
(現行)131⇒(H29より)111
・「大会社」と「中会社」の範囲を拡大⇒内容は現在検討中
・株特はずしに制限、判定基準に「新株予約権付社債」を追加


10.オンラインゲームと収益認識

①ゲーム内でのみ利用可能な通貨の購入
②引き換えにアイテム入手
③アイテム使用
⇒どの時点で売上計上するか。

・日本では①や②での売上計上が多い。
・アイテムが使用された時点で役務提供が完了したと捉え、③とする考え方もある。
⇒実務負担重い。使用するとすぐ無くなる「薬草」のような消耗性アイテムならわかりやすいが、「剣」のように半永久的に所持・利用できるものはどの時点で役務提供完了とするか?が悩ましい。
 そしてそれをユーザーごとに把握することは非常に困難で負荷が重い。


11.取引参加者の概要

東京証券取引所、または大阪取引所で有価証券の売買取引等を直接行うことができる、金融商品取引業者(証券会社)、取引所取引許可業者及び登録金融機関(銀行等)
取引参加者となるためには、取引資格の取得の申請を行い、承認を受ける必要がある。

・取引参加者の種類
1.総合取引参加者
東京証券取引所が開設する取引所金融商品市場で、有価証券の売買を行うことのできる取引参加者

2.先物取引等取引参加者
大阪取引所が開設する取引所金融商品市場で、国債証券先物取引、指数先物取引、有価証券オプション取引、国債証券先物オプション取引、指数オプション取引を行うことのできる取引参加者

3.国債先物(※)等取引参加者
大阪取引所が開設する取引所金融商品市場で、国債証券先物取引及び国債証券先物オプション取引を行うことのできる取引参加者

(※)実際に発行されている日本国債ではなく、国債の「標準物」を取引対象とした先物取引
標準物とは、取引円滑化のため証券取引所がクーポンレート(利率)、償還期限などを標準化し、設定したもので、実在しないため、最終決済では受渡適格銘柄と呼ばれる国債の授受が行われる。


取引範囲は、23









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2016年12月17日土曜日

12/16 勉強会:中小企業向け措置法 他

1.株式併合などにも組織再編税制を適用

100%子会社化の手法
・株式交換、株式併合、全部取得条項付種類株式、株式等売渡請求など
・現行の税制で組織再編税制の対象になっているもの
⇒株式交換のみ

・平成29年度改正で株式併合、全部取得条項付種類株式、
株式等売渡請求についても組織再編税制が適用されることに
100%子会社化に際して、税制適格の要件を満たさないものは時価評価が必要になる
⇒平成29101日以降の組織再編から適用が開始される予定


2.過去の誤謬(時効完成利益)

(設例)
・前期以前計上の損害保険の積立金500について、前期以前に入金があったが対応する保険積立金の取崩損が計上されていなかった
・上記処理は5年以上も前のことであり時効により減額処理することができない
・過年度遡及会計基準の適用により、当期の期首利益剰余金を500減額処理した
⇒当期の申告調整はどうするか。

(答)
別表四は「特別損失否認」として500加算(社外流出)および「特別損失認容」として500減算(留保)する


3.高所得者の配偶者控除を低減・消失へ

※平成30年分から適用

■配偶者控除適用
・配偶者の給与収入(年収、源泉徴収票に記載の支払額) 150万円以下に引き上げ

■配偶者特別控除適用
・配偶者の給与収入が150万円を超えると、控除額が徐々に減っていく(201万円超で控除ゼロ)
・納税者本人(世帯主)の給与収入によっても控除額が異なる
・納税者本人(世帯主)の給与収入が、1,220万円を超えると配偶者控除、配偶者特別控除の適用なし


4.割引率、マイナスでも零でも利用可能

293月期決算において国債利回りがマイナスの場合、退職給付債務等の計算における割引率を「マイナス」でも「ゼロ」でもどちらで算出しても可となる可能性

・今後マイナス利回りの幅が著しく変動・長期化した場合、取扱いを見直す可能性がある
・国際的にマイナス利回りにおける議論は行われているが、定まった見解はない


5.中小企業向け措置法

H29年度税制改正にて中小企業向けの租税特別措置が大幅に見直される。

■主な論点
・研究開発税制
⇒現行12%の税額控除率を確保も最大で17%まで引き上げ。
・中小企業経営強化税制が創設
⇒器具備品及び建物附属設備が対象
 即時償却と税額控除10%選択適用可
・中小企業向け軽減税率
⇒所得800万円以下は引き続き15(2年延長)

■中小企業の要件見直し
資本金1億円以下の法人であれば中小企業の特例が適用可能も、H29年度税制改正にて、以下要件が追加された
⇒課税所得の過去3年間の平均が15億円以下であること。

従って、過去3年間の課税所得の平均が15億円超であれば、中小向けの税制措置は適用不可となる。(2年間の経過措置あり)


6.上場株の時価は原則「終値」、95%相当額譲渡も寄付金課税

・上場株式の時価は特段の事情がない限り、「終値をもって時価」とする

【審判所事例】
A社が関連会社B社に、上場株式を終値の95%にて譲渡
・下記事情があるときに、特段の事情と認められるか

(1)A社は銀行から借入返済を迫られており、資金化ニーズあり
(2)B社は収益事業なく、配当収入を得るために株式が必要だった
(3)B社に対して、譲渡後の株価下落リスクを配慮した
(4)A社は発行法人との契約で、関係法人以外へ譲渡できなかった
(5)市場で譲渡した場合、インサイダー取引に該当する可能性あった

⇒上記(1)(5)は、すべてA社&B社の内部事情によるもの
⇒上場株式の客観的な交換価値自体に影響を及ぼさない
⇒時価と譲渡金額の差額は、寄付金課税


7.不納付加算税における「正当な理由」

■不納付加算税とは
源泉徴収による国税が期限までに完納されなかった場合に徴収される加算税。
ただし、納付しなかったことについて「正当な理由」がある場合には徴収されない。

■正当な理由があると認められた事例
(概要)
・請求人Aは居住者Bから店舗を賃借し賃料を支払っていた
・居住者Bはその後出国し、非居住者となった
・請求人Aはその事実を知らず、源泉徴収をせずに賃料を支払い続けていた
・請求人Aは不動産会社CからBが出国したこと及び源泉徴収が必要な旨を聞き、過去分の源泉所得税を納付した
・課税庁は不納付加算税を課した

⇒請求人Aは源泉所得税を納付しなかったことに「正当な理由がある」として不服を申し立て認められた。

(参考 所得税法212条等)
非居住者に対し国内源泉所得の支払をするものは、その支払の際、その金額の20/100に相当する金額の所得税を徴収し、徴収日の属する月の翌月10日までにこれを国に納付しなければならない。


8.自己株式の取得 措置法特例で非上場株式を取得した場合の税務処理

■非上場会社が自己株式を取得
・相対取引のケース⇒みなし配当発生⇒税務処理「資本金等の額」と「利益積立金額」の
それぞれを減算
・相続により買取のケース⇒みなし配当なし⇒ただし税務処理「資本金等の額」と「利益積立金額」のそれぞれを減算
※相続により買取りのケースでは譲渡所得として課税(「届出書」の提出が要件の一つとしてある)
■論拠
上場会社が市場等取引により自己株を取得した場合⇒みなし配当なし
⇒税務処理「資本金等の額」から自己株式の「取得対価の額」そのものを減算する
⇒当該ケースは限定列挙で、相続により買取ったケースは含まれていないため


9.生産性向上設備の固定資産税特例措置

1.概要
・資本金1億円以下の会社等
・認定された経営力向上計画の一環で特定の機械又は装置を取得
⇒最長3年間分の固定資産税が半減
2.経営力向上計画
⇒人材育成、コスト管理等の経営力向上のために実施する計画
3.対象となる中小企業
・常時使用する従業員が1,000人以下
・資本金1億円以下
※上記の両方を満たすことが必要
4.対象となる機械装置等
・販売開始から10年以内
・生産量等が年平均1%以上向上
160万円以上
・中古資産でない


10.貸倒引当金の実務上のポイント

■貸倒実績率がゼロの場合の貸倒引当金
・過去3期中に貸倒実績がなくても、それより過去に実績があれば貸倒引当金をゼロとすることは認められない
・期末に有する債権の回収期間内に貸倒の発生がないものと合理的に予想される場合はゼロとしてよい

■過年度遡及会計基準との関係
(繰入額)
・特別損益の計上を認めないとするものではない(営業外債権)
・臨時的かつ巨額に発生した項目である場合は特別損失で表示されることもある
(戻入額)
・戻入額が多額に生じた場合、当時の最善の見積もりを行っていない場合は過去の誤謬として過年度修正
・繰入額を特別損失として計上していたとしても必ずしも戻入を特別利益で行う必要はない
・実態に応じて見積もりの変更等が生じた理由ごとに、営業外or特別を判断

■後発事象との関係(期末売掛金がその後回収不能になったケース)
(監査報告書日まで)修正後発事象
・BSPLの修正が必要
(監査報告書日後)開示後発事象
・財務諸表に注記
・監査役監査報告書に貸倒事実があった旨を記載するか、取締役から株主総会で報告を行う必要あり


11.ビジネスモデル別KPI設定の考え方

BtoBBtoC
BtoB
・受注残
・訪問数
・成約率

BtoC
WEBへのアクセス数
・接客数

■新製品・サービス開発型、二番煎じ戦略型
【新製品・サービス開発型】
・販売取扱製品の新製品割合を○%以上とする
・革新的な業務に取り組むために業務時間の○%をモラトリアムタイムとする

【二番煎じ戦略型】
・コスト
・製造、販売数量

IT関連、サービス業
・閲覧ユーザー数
・会員登録数

■少品種大量生産型製造業、多品種少量生産型製造業
【少品種大量生産型製造業】
・原材料滅失率
・機械装置稼働時間

【多品種少量生産型製造業】
・実際の原価率、利益率


12.有報虚偽記載に関する損害算定の考え方 つづき

損害事例から得られる教訓
(1)平時の心がけ
・損害額の出発点を小さくする
・虚偽記載を行わない、可能性が判明したら適時・適切に開示する
(2)虚偽記載公表時の留意点
・可能性が生じたら直ちに公表という訳ではない
・東証や監査法人と協議、第三者委員会の設置を含む適切な事態収束策を用意
(3)訴訟段階での留意点
・専門家と担当弁護士の実質的な共同作業が極めて重要


13.KPI設定までの4ステップ

KPIとは
Key Performance Indicator(重要業績評価指標)
・具体的な経営アクション※を起こすための指標⇔財務指標は包括的で経営目標の設定に役立たない
KGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)を達成するための具体的なアクション指標
例:(KGI)年間売上高を前年比+10%(KPI)契約件数+●%、営業担当者+●人

KPI設定までの4ステップ~定性的分析⇒定量的分析~
(定性的分析)
SWOT分析:自社分析(強み、弱み、機会、脅威)
・バリューチェーン:商材のどの部分で付加価値が生まれるか
(定量的分析)
PI(Performance Indicator)の抽出:PL(売上高)や非財務項目(人材)
PIのうち、KPIの選択:PIを縦に、SWOT分析とバリューチェーンを紐づけ、適合者に加点
⇒最高得点のPIKPIに設定

KPI設定にあたっての留意
・中計との整合の考慮(日常的アクションと紐づけるため)
・継続的な運用可能性


14.BEPS行動計画 無形資産の扱いについて

・無形資産を軽課税国に持たせることで租税回避を狙うスキームがある。
OECDより、上記を防止するための提言が出された。
・下記を、企業から国に開示させる
→研究開発、所有、使用する場所の所在地はどこか。
→無形資産についての重要な取り決めの一覧
→対価の設定方針
→無形資産をグループ企業内で移転する場合、その対価の妥当性
取引時、どのような事業計画に基いて評価額を決めたか
移転後、計画と実績に乖離はなかったか


15.MBO後の再上場時における上場審査

1MBOと再上場の関連性
MBOと再上場はそれぞれ独立した行為であり、両者の間に必ずしも高い関連性があるとは限らない。
⇒上場審査では、主導者(経営者・株主)の同一性・連続性、MBOから再上場までの期間の長短などを確認。

2.プレミアム配分の適切性・MBO実施の合理性
aMBO時に株主の判断の前提となる手続きが公正に行われた上でMBOが成立していれば、問題なし。
⇒上場審査では、MBO時の手続きのMBO指針への準拠性などを確認。

b)再上場時から見て、MBO時の計画とMBO後の進捗との間に乖離がある場合であっても、再上場時にその理由について合理的に説明することができるのであれば、問題なし。
⇒上場審査では、当該説明が十分に説得力のあるものかどうかなどを確認。









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2016年12月10日土曜日

12/9 勉強会:経理業務効率化のための業務棚卸と取捨選択 他

1.平成29年度税制改正で相続税の節税策に対応

※財務省が提案した改正内容です。

■広大地の評価方法の見直し
・現行 1000㎡以上の宅地 面積が広くなるほど評価額を減額
・現行の問題点
 同じ面積の土地でもその形状によって取引価格は異なるのに相続税評価額は同じ
 富裕層の節税策に利用されている

・見直し案
 各土地の状況に応じて、面積・形状に基づき評価する方法に見直し
 取引価格と相続税評価額とのかい離を解消する

※通常の宅地評価 路線価×面積×補正率(形状を考慮した補正率)
 広大地の評価  路線価×面積×広大地補正率

■国外財産
・現行 被相続人と相続人の住所が5年超海外にあるとき
⇒国外財産は相続税の課税対象外となる(贈与税もほぼ同じ)
・現行の問題点
 海外へ住所を移転、5年経過後に国外財産を相続・贈与する租税回避行為として問題視されている

・見直し案
 5年超を10年超とする方向で見直し


2.過去の誤謬(土地評価損)

(設例)
・前期において土地に係る減損損失500の計上漏れがあり修正申告済

・過年度遡及会計基準の適用により、当期の期首利益剰余金を500減額処理
⇒当期の申告調整はどうするか。
(答)
別表四は申告調整不要
※土地評価損はいずれにしても損金算入できないため


3.居住者と非居住者の区分に係る住所認定の6つのポイント

所得税法に規定する「居住者」に該当するか否かの判断について

■前提
・住所についての定義規定:ない
・所得税法における住所:各人の生活の本拠地
・生活の本拠地:その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心

■各人の住所の認定の判断材料:
(1)滞在日数
(2)生活場所及び同所での生活状況
(3)職業及び業務の内容・従事状況
(4)生計を一にする配偶者その他の親族の居住地
(5)所有資産の所在場所
(6)生活に関わる各種届出の状況等
これらの客観的諸事情を年度ごとに、総合的に勘案して判断


4.医療費控除は医療費明細書の添付でOK

■現行の医療費控除
・医療費の【領収書】を確定申告書に添付する

■平成29年分以降(平成301月以降の申告)
・確定申告書の添付は【領収書】に代えて【明細書】でも良い

※法定申告期限から5年間は税務署長から求められた場合、【領収書】の提示が必要となるため保管必須

■経過措置
・平成29年分~平成31年分の確定申告に関しては、納税者の選択により現行制度でも申告できる


5.子会社株式減損、清算方針でも一時差異

■国内100%子会社の株式の減損は税務上、損金算入されない
⇒会計上の簿価と税務上の簿価に差異が発生

■減損後、将来想定されるパターンは2
(1)子会社株式を売却
⇒損金算入OK
⇒両者の差異が解消した際、課税所得を減額する効果あり
⇒将来減算一時差異
(2)子会社を清算
⇒損金算入NG
⇒両者の差異が解消した際、課税所得を減額する効果なし

(2)に関する、会計上の取り扱い
将来の一定の時期が到来しないと、損金に算入されるかどうか
判明しない項目については、判明するまで一時差異として取り扱う

ただし、清算するまで保有し続ける方針がある場合、(将来、損金に算入される可能性が低い場合)減損に係るDTAの回収可能性はないと判断
⇒分類1でも、回収可能性なしと判断するケースあり
DTAの回収可能性に関する適用指針において、『分類1:「原則として」全額、回収可能性あり』とする方向


6.対価補償金は収用土地上の資産の対価相当部分に限定

収用される土地の上にある建物の移転雑費費用につき、
補償金として受領した一部に設計工事費用や工事管理費用が含まれていた。すべての費用を対価補償金として収用等に伴う課税の特例を受けられるか?

・収用に際して交付を受ける移転料や収用に伴う対価 ⇒ ○
・収用に伴う取壊し又は除却に伴う費用 ⇒ ○
・上記以外 ⇒ ×

純粋に、土地の上にある建物の取壊しや移転費用に基づく補償金のみ、対価補償金として課税の特例が受けられる。付随費用に近い費用に伴う補償金は対象とならない。


7.増額更正時の控除額増加、更正請求不要

【現行】
・外国税額控除、研究開発税制の控除額が増加する場合、必ず更正の請求が必要

29年度改正】
・税務調査の結果増額更正となり、連動して上記控除額が増加する場合、更正の請求は不要
※外税控除等は、法人税額の一定割合が控除限度額なため、増額更正で法人税額が増加すると控除限度額も増加するケースあり
※現在は、増額更正の結果を受けて、更正の請求を手続きする必要あり
(納税者にとっても税務署にとっても二度手間)


8.移転価格税制 国外関連者に対する貸付金利息

■審判事例
(概要)
A社は国外関連者B社(海外子会社)に対し貸付をした
・利息については任意の利率により設定した
・原処分庁から利息が低すぎるとして更正処分を受けた

■適正な利率は?
審判所の判断によれば、この場合の適正利率は「独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法」を用いて算定すべきとさせる。具体的には「貸手の銀行調達利率による方法」を用いるべきである。
A社の設定利率と乖離があったため移転価格税制が適用された。

(参考)
独立価格比準法
⇒非関連者間で同種・同様の状況下で行われる取引の対価の額を
基礎として独立企業間価格を算定する方法


9.輸入消費税の仕入税額控除と輸入者

輸入消費税の納税義務者
⇒“輸入者”自身、「輸入許可書」等の保存により納付した輸入消費税の仕入税額控除が認められる
⇒“輸入者”が通関業者の場合、その輸入消費税の仕入税額控除は、通関業者側で認められる


10.消費増税延期と連結納税

・法定実効税率は変わらないが、地方法人税(国税)と法人住民税法人税割の割合が変わる
・連結納税は国税と地方税で分けて繰延税金資産の回収可能性を検討する
(国税は連結対象、地方税は連結しないため)
⇒消費増税延期で国税と地方税の割合変更時期が変わると回収可能性にも影響あり


11.三角合併の会計処理

1.三角合併とは
吸収合併のうち、存続会社の親会社の株式を合併の対価として交付する取引

2.メリット
・企業再編の際にキャッシュが不要
・親会社と子会社(存続会社)の100%支配関係が崩れない。
※子会社株式を交付すると、非支配株主が発生してしまうため

3.会計処理
(1)他の会社を吸収合併
・企業結合の分類判定(取得か持分の結合か等の判定)
⇒親会社と他の会社との取引とみなして判定
※合併当事者である、子会社と他の会社とでは判定しない
・会計処理(取得の場合)
<個別FS>
⇒親会社株式の時価と適正な帳簿価額との差額は損益計上
⇒あとは、通常のパーチェス法と同様
<連結FS>
⇒当該損益を、資本取引として自己株式処分差額へと振替える
※親会社からすると、自己株式を処分する取引となるため
(2)他の子会社を吸収合併
・企業結合の分類判定
⇒共通支配下の取引に該当
・会計処理
<個別FS>
⇒適正な帳簿価額で資産負債を受け入れ、親会社株式の簿価との差額はのれん
<連結FS>
⇒少数株主に交付した自己株式の時価と適正な帳簿価額との差額を自己株式処分差額へと振替える


12.秘密情報の例外をどのように規定するか

■秘密保持契約における一般的な例外規定
(まとめ)
・すでに知っていた、または知ることができた秘密情報は秘密保持契約の例外
・自己の責めによらずに第三者が開示した秘密情報は秘密保持契約の例外
・他の公開情報等から自分で作った情報は秘密保持契約の例外

(例外規定の例示)
(1) 相手方から提供または開示を受けた際、すでに自己が適法に保有していた情報
(2) 相手方から提供または開示を受けた際、すでに公知となっていた情報
(3) 相手方から提供または開示を受けた後、自己の責めによらずに公知となった情報
(4) 開示当事者に対して秘密保持を負わない正当な権限を有する第三者からなんら秘密保持義務を負うことなく適法かつ正当に入手した情報
(5) 相手方から開示された情報によることなく独自に開発した方法

■売主として検討を要する例外規定
・上記(5)について削除することがあり
・売主と同業種の買主
⇒売主から開示された対象会社の情報によらなくても独自に情報を開発できるため、売主から開示された情報と自己が開発した情報との区別が困難なため


13.秘密情報をどのように定義するか

NDA締結の目的
・開示した情報を第三者に開示、漏えいすることを禁止する
M&A取引を検討する目的以外の目的で情報を使用することを禁止する

■秘密情報の定義
M&A取引の検討及び実施のための協議交渉の過程において、売主又は買主が相手方から開示される相手方に関する情報及び対象会社に関する情報
NDAの存続及びその内容
・売主、買主がM&A取引を検討しているという事実、その検討結果


14.有報虚偽記載に関する損害算定の考え方

損害賠償の根拠
(1)民法(不法行為)
・取得時価-処分時価=損害額
・虚偽記載公表直後の下落額=損害額
・取得時価-取得時に虚偽記載がなかったと仮定した場合の時価=損害額
※これとは別に市場全体の影響もあるが、投資家による証明は困難

(2)金商法(21条の2)
・株主:流通市場で取得した株主(発行市場は1819条が適用)
・粉飾:有報の重要事項の虚偽記載や不記載
・虚偽記載公表日-前後1ヶ月の平均=損害額
※会社はこれとは別に市場全体の影響等も証明出来れば減額可


15.経理業務効率化のための業務棚卸と取捨選択

■業務効率化までのステップ
業務棚卸⇒(深堀)⇒取捨選択⇒アクション

■業務棚卸
各メンバーによるリストアップ⇒統合一覧表
・リストアップ:業務区分、作業内容、必要時間、問題点、改善アイデア等
※業務区分:分類する⇒ex.債権管理>顧客別管理/期日別管理
※作業内容:フローを意識⇒ex.インプットは何、アウトプットは何
※必要時間:集計期間を設定⇒ex.1年で何時間、1ヶ月で何時間

■業務棚卸の深堀り
・一度の業務棚卸では理解しきれない業務がある場合の、分解方法
⇒難易度高:業務マニュアル作成し、複雑な業務を特定
⇒必要時間多:線表化し、時間のかかる業務を特定
⇒難易度高、必要時間多、関与人数多:業務フロー図への落としこみ+上2つ
⇒特定期間に負担大:業務時間の面グラフ化: 山をならすための業務を特定

■業務の取捨選択
全業務を万遍なく検討、ではなく、特定の切り口に紐づくか、の視点
Ex:経理部ミッションの設定
・経営層からの期待
・社内他部署からの期待
・経理部書内部の目標


16.インサイダー取引の事例と上場企業の管理体制

・平成27年、インサイダー取引で課徴金が課された事例は22件、課徴金額75.5百万円。
・平成17年~27年の11年間の累計は241件。最も多いのが公開買付け等事実64件。続いて新株等発行40件、業績予想等修正37件。
→ 公開買付けは、「多くの関係者が関与」「最終的な合意・公表までに相当な時間を要する」ことからインサイダー取引が行われやすい。
・違反行為者は、直接の会社関係者よりも、間接的に情報を得た友人・同僚などの人間が多い。
・現在ほとんどの上場企業でインサイダー取引防止規定が整備されている。
→ ただし、「具体的な罰則は定められていない」「子会社役職員は対象外」など不十分。


17.虚偽記載とディスクロージャー規制(東京証券取引所の対応)

・虚偽記載
有価証券報告書等について、以下の場合を虚偽記載という。
1.内閣総理大臣等から訂正命令を受けた場合
2.内閣総理大臣等又は証券取引監視委員会により告発が行われた場合
3.訂正報告書等を提出した場合であって、その訂正した内容が重要と認められるものである場合
4.内閣総理大臣等から課徴金納付命令を受けた場合

・各上場基準における「虚偽記載」の取扱い
1.上場審査基準
最近2年間(最近3年間の利益の額が審査対象となる場合は、最近3年間)の個別・連結財務諸表が記載又は参照される有価証券報告書等に「虚偽記載」を行っていないことを要する。
2.市場第一部銘柄指定基準
最近5年間の個別・連結財務諸表が記載又は参照される有価証券報告書等に「虚偽記載」を行っていないことを要する。
3.株券上場廃止基準
有価証券報告書等に「虚偽記載」を行い、かつ、その影響が重大であると当取引所が認めた場合に上場廃止する。

・「虚偽記載」により、上場廃止となった銘柄
2010925日 シニアコミュニケーション
200951日 アイ・ビー・イーホールディングス
2009221日 オー・エイチ・ティー

・シニアコミュニケーションの「虚偽記載」の内容
20043月期から20103月期第3四半期まで架空の売上を計上するなどして、実際には赤字のところを黒字であるかのように虚偽の報告書を作成。
2005年の新規上場においても虚偽の内容により審査を通過
監査法人の残高確認手続きに対し、虚偽記載をおこなった取引相手や郵便ポストから書類をだまし取り偽造









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