2018年4月23日月曜日

4/20 勉強会:「改正CFC税制(外国子会社合算税制)・キャピタルゲイン特例の全容 他

1.改正CFC税制(外国子会社合算税制)・キャピタルゲイン特例の全容

■概要
・CFC税制(外国子会社合算税制)
⇒外国の子会社等の所得を日本の親会社等の所得に合算して課税される税制

・キャピタルゲイン特例
⇒ペーパーカンパニーで生じる一定のキャピタルゲイン※を合算対象外とする特例
※買収されるまで外国企業グループの中にあったペーパーカンパニーが行った
株式の譲渡により生じた譲渡益など、日本の税源を侵食しているとは言えない
外国法人の株式の含み益に起因する譲渡益

■改正政省令の内容
・内国法人が特定外国関係会社を直接保有する場合はキャピタルゲイン特例の適用対象外
・譲渡された株式の再移転があった場合は原則としてキャピタルゲイン特例の適用対象外
・やむを得ない理由(本店所在地国の法令や慣行等)があれば2年以内でなく5年以内の譲渡も特例対象




2.公正価値測定、金融商品以外は検討せず

・IFRSでのBS価額=公正価値で評価
・日本基準=時価の概念はあるが、金融商品以外は「公正価値測定(IFRS)」と異なるもの
・トレーディング目的で保有する棚卸資産は売買目的有価証券に準ずる、とされているため、今後国際基準との整合を図る可能性あり
・それ以外の資産について、国際的な会計基準と整合性を検討する必要性は高くない⇒特段の取り組みは行わない方針


3.中小企業賃上げ税制の詳細が明らかに

■中小企業向け所得拡大促進税制の改正
【基本】
・雇用者給与等支給額が前事業年度を超える
・継続雇用者給与等支給額が全事業年度比1.5%以上増加
⇒増加額の15%相当額を税額控除可能(法人税額の20%が限度)
※ただし、継続雇用者給与等支給額がゼロの場合は適用不可

【上乗せ措置】
・継続雇用者給与等支給額が前事業年度比2.5%以上増加
・下記どちらかを満たす
(1)教育訓練費が全事業年度比10%以上増加(前年度0でも適用可)
(2)経営力強化計画の認定あり
⇒増加額の25%相当額を税額控除可能(税額の20%が限度)


4.仕入税額控除否認、マンション一室毎販売も対象か

■消費税の仕入税額控除を巡り地裁と裁決が異なる解釈
・販売業者が取得した居住用建物にかかる消費税の仕入税額控除の大部分を否認する更正処分が頻発
⇒裁決(H24.1/19大阪国税不服審判所) 賃貸の用に供しているから共通仕入と判定
⇒判決(H25.6/26さいたま地裁) 販売目的と謳っていれば課税仕入れのみと判定される可能性あり

■一棟毎でも一室毎でも同じ
・更正処分が頻発している現在、対象は“一棟ごと”販売した法人に限られている。
⇒区分所有の賃貸用マンションを“一棟づつ”販売ではなく“一室づつ”販売したとしても取引金額の大小があるだけで、取引自体が変わるわけではないため爆発的に更正処分の件数が増える可能性がある。


5.IFRS任意適用日本企業が計上している耐用年数を確定できない無形資産

【IAS第38号「無形資産」について】
■耐用年数を確定できない無形資産
→無形資産が、正味CFをもたらすと期待される期間について、予見可能な限度がない場合には、耐用年数を確定できないものとみなす必要がある。
→耐用年数を確定できない無形資産は償却を行ってはならない。
→毎期減損テストを実施する必要がある
→毎期耐用年数が確定できないものとする事象又は状況が引き続き存在しているか、毎期見直す必要がある。

【日本企業における適用事例】
■IFRS任意適用日本企業:123社
→内、耐用年数を確定できない無形資産を計上している企業:29社
→内、500億円を超える耐用年数を確定できない無形資産を計上している企業:5社
→ソフトバンクが群を抜いて多額に計上している。
計上額は4兆8,036億円(内、FCCライセンスが4兆1,006億円)。
→次に多く計上しているLIXILグループで1,795億円。

■耐用年数を確定できない無形資産の内容
主に計上されているものは、商標権(17件)である。
その他には、ブランド(4件)や仕掛研究開発(3件)、ライセンス(2件)、顧客との関係(1件)がある。




6.今週の専門用語

■法定相続情報証明制度
 平成29年5月29日から開始され、登記所より交付される法定相続情報一覧図の写しを各種相続手続きに利用できます。(※法定相続一覧図の写しは無料で必要な通数を取得、また5年間は再交付が可能)

■利用者のメリット
(1)戸籍謄本の束を何度も出し直す必要がなくなる。
(2)金銭的負担の軽減。
(3)時間の短縮(書類の返却を待つ必要がない)

■留意点
(1)全国の登記所と一部の大手機関となるため事前に利用できるか確認が必要。
(2)亡くなられた方と相続人が全員日本国籍を有していない場合は、本制度は利用できない。
(3)法定相続情報一覧図の写しは、あくまで戸籍謄本一式の代わりなので、一部の手続きには利用できない。(例:遺産分割協議書、相続申告書の添付資料など)



7.確定申告書の「連年提出要件」

■概要
・個人Aは平成23年から25年において先物取引を行っていた
・平成23年については差金決済にかかる損失が生じていた(確定申告済)
・平成24年については確定申告をしていなかった
・平成25年分の確定申告時に「差金決済に係る損失の繰越控除控除の特例」を適用して申告した
が同特例の適用をうけるためには「連続して確定申告書を提出している」ことが要件とされている
 ことから適用を受けられなかった
・そこで平成24年分の期限後申告を行った上で、平成25年分の更正の請求を行った
・しかし、提出順序が前後していることから更正がされなかった

■まとめ
「連続して確定申告書を提出する」とは各年分の確定申告書が前後せず順番に提出されていることを意味している




9.電子申告義務化に係る法人税申告書別表見直しは31年4月に

e-taxの使い勝手の大幅改善策として、
法人税の申告書の別表と内訳書、財務諸表のデータ形式につき、
CSV形式で提出することを許容することを明らかにした。

H31年4月を目途に以下の書類が簡素化される
・勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化
・法人税の申告書の別表及び内訳書のデータ形式での柔軟化
・財務諸表のデータ形式の柔軟化
・申告書と共に提出する添付書類の提出方法の拡充(光ディスク等)
・財務諸表の提出先の一元化

相続税の申告手続きの電子化については、H31年10月以降に対応予定。




10.海外M&A 実行「前」と「後」が重要

※経済産業省 海外M&A研究会報告書等を公表

①M&Aストーリーの構想力
 海外M&Aありき、ではなく、まず「なぜ海外M&Aなのか」の緻密な検討と入念な準備が必要
②海外M&Aの実行力
 DDの意義と限界を理解した上で、目的意識を明確に持ってDDを遂行する
③グローバル経営力
 海外企業にも通用するリーダーシップ・専門性・コミュニケーション能力を持った人材を採用・育成する

※経営トップがとるべき9つの行動
・「目指すべき姿」と実現ストーリーの明確化
・「成長戦略・ストーリー」の共有・浸透
・入念な準備に「時間をかける」
・買収ありきでない、成長のための判断軸
・統合に向け買収成立から直ちに行動に着手
・買収先の「見える化」の徹底
・自社の強み、哲学を伝える努力
・海外M&Aによる自己改革とグローバル経営力
・過去の経験の蓄積により「海外M&A巧者」へ




11.平成30年6月株主総会の想定問答

■監査等委員会設置会社への移行
Q:監査等委員会設置会社に関してどう考えているか、また移行は考えているか
A:監査等委員会設置会社は最低2名以上の社外取締役を要求、取締役の監督機能を強化する狙い
当社においてもガバナンス上の最適な機関設計を検討しているが、監査役会設置会社でも
半数以上の社外監査役がいるので、十分に機能を果たせると考えている

■働き方改革
Q:働き方改革に伴い、何か取り組みを行っているか、その取り組みで人件費は増加したか
A:ワークライフバランス推奨活動を実施し、柔軟な出退社時間の設定、時間外労働の削減、
有給休暇取得推進等を進めています。これらの取り組みで人件費が大きく増加したということは
今のところございません。



12.持分法会計

・投資会社が被投資会社の資本および損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法
 仕訳例(投資有価証券×× / 持分法による投資損益××)
 対象=原則、議決権の20%以上を自己の計算において所有している場合
■基本的な会計処理
・被投資会社の時価評価
・のれんの償却
・持分法による投資損益の計算
・未実現損益の消去
・配当金の消去
■留意点
・子会社と同様に同一環境下で行われた同一の性質の取引等についても、子会社の場合と同様に原則統一する
・被投資会社の直近の財務諸表を利用することが認められている
 ただし決算日に差異があり、その期間内に重要な取引または事象が発生しているときには、修正または注記が必要
・連結と異なり追加取得の際、新たにのれんを認識する



13コーポレートガバナンスの促進とフェア・ディスクロージャー・ルール適用の動き


■コーポレートガバナンス(CG)コードに関する現状と今後の動き
(1)招集通知への記載内容の充実
CGコードで開示が求められる事項※を、総会参考書類や事業報告に任意に記載する事例が増加中
※特に、社外役員でない取締役・監査役候補者の指名理由は、上場会社の60%超が記載

(2)相談役・顧問の開示
CG報告書の改訂により、相談役・顧問の任意記載が可能に

(3)CGコードの改訂案
政策保有株の縮減に関する方針、年金の人事・運営に関する取組、役員解任の手続に関する開示要請等

■フェア・ディスクロージャー・ルール(FDルール)の導入(2018年4月から適用)
(1)内容
上場会社の役員等が、重要事項を伝達した場合、同時又はその後速やかに、公表することを求めるもの

(2)重要事項
会社の経営・財産に関する未公表の重要な情報であり、投資家判断に重要影響を及ぼすもの

(3)ルールが適用される場合の例
株主懇親会等でのスライドを用いた中計の報告時、総会の質疑回答で重要情報を意図せず伝達した場合

※インサイダー規制等の従来の縛りがあることから、実質的に大きな影響はないか



14.開示書類に係る改正と一体的開示への取り組み

欧米諸国:株主総会までに開示書類1つ
日本:有価証券報告書と事業報告の2つ
⇒有価証券報告書と事業報告の雛形や様式の差異が多いので、別書類として作成
⇒一体化することで効率的な開示を目指す

・一体化に向けた対応項目
以下の事項等については一体的開示が進められている
※対応は義務ではない。
※事業報告等の項目/有価証券報告書の項目

主要な事業内容/事業の内容
使用人の状況/従業員の状況
主要な営業所及び工場/主要な設備の状況
会社役員の報酬等/役員の報酬等
計算書類/財務諸表




15.積立金方式での固定資産の圧縮記帳


■圧縮記帳が認められる主な場合
・国庫補助金等で取得した場合
・保険金等で取得した場合
・交換により取得した場合 等

■積立金方式で圧縮記帳を実施するかの判断ポイント
(1)金額的重要性
(2)資金繰り、資金運用の観点からの有用性
・受贈益等が原則通り課税された場合、予定していた設備投資等の支出が困難になる場合
 ⇒圧縮記帳の実施が有利
(3)今後の法人税率等の引下げの可能性
・⇒引き下げが考えられる場合、圧縮記帳が有利
(4)資産内容(償却資産か土地か)
・償却資産⇒耐用年数の経過により小さくなった減価償却費を通じて課税所得の増額
・土地  ⇒処分予定がない場合、課税所得の増加もない
(5)圧縮額の計算の容易性



16.無対価株式交換の会計上の留意点



■概要
・無対価株式交換
⇒100%資本関係のある会社間の企業再編で、取得企業が対価の支払を省略し、被取得企業の株式の取得のみを行う取引のような、対価の支払のない株式交換取引のこと。

■個別財務諸表上の会計処理
(ex.親会社:P社、P社の100%子会社:A社、B社、A社がB社株式を株式交換により取得するケース。)
対価の支払のある株式交換取引と考える(株式交換方式)。
・P社の処理
⇒取得したA社株式を、B社株式の帳簿価額により算定(適用指針236-4項)。
・A社の処理
⇒取得したB社株式を、B社の株主資本に、P社の持分比率(100%)を乗じた持分相当額により算定(摘要指針 236-4項)。
・B社の処理
⇒処理なし(株主がP社からA社に変更するのみ。)

P社がB社株式をA社へ現物出資したと考える(現物出資方式)。
・P社の処理
⇒取得したA社株式を、B社株式の帳簿価額により算定(分離基準19項)。
・A社の処理
⇒取得したB社株式を、B社株式の帳簿価額により算定(結合基準41項)。
・B社の処理
⇒処理なし(株主がP社からA社に変更するのみ。)

■両会計処理の相違
・A社の会計処理に差が生じる。

■諮問基準会議の結論
⇒基準化が見送られ、会社の方針や他の事業との整合性などを勘案して判断する。

■IFRSの考え
⇒採用している子会社株式の評価方法を考慮する。



17.PwCあらた監査法人は企業会計の異常値を人工知能(AI)で抽出するシステムを開発し、このほど試験的に運用を開始。



売上高や費用を分類する会計仕訳という作業に使い、不正などの可能性がないかどうかを自動的にチェック。
PwCあらたは2016年10月にAI監査研究所を開設。会計監査にAIを活用し、業務の効率化などを進める考え。


















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2018年4月13日金曜日

4/13 勉強会:軽減税率導入に伴うインボイス方式の詳細 他

1.平成30年度改正の政令公布

平成30年4月1日施行の政省令の主な改正点

■組織再編成に係る適格要件
・組織再編後に適格株式分配が見込まれている場合における、
 適格株式分配後の完全支配関係の継続を不要とする
・共同で事業を行うための組織再編成の適格要件について、
 当初の組織再編成の後に完全支配関係がある法人間で従業者又は事業を移転する見込みでも、
 従業者従事要件及び事業継続要件を満たすこととする

■連結納税
・連結子法人となる法人の連結納税の承認申請書を提出した旨の届出、
 連結完全支配関係を有しなくなった等の事由が生じた場合の書類の提出が不要になる
 (平成31年4月1日以後適用)




2.企業結合、比較財表の遡及修正を廃止へ

■検討依頼段階である
■現行基準
・暫定的な会計処理が翌年度に確定:比較年度のFSを遡及修正する必要あり
・大量の貸出金がある銀行業界では実務上の負荷が高い
⇒結果、買収案件の柔軟性が妨げられるなど、経営を阻害する要因になっているのでは…

■米国基準:すでに廃止
・日本基準においても廃止する方向で検討すべきという意見あり





3.業務労災に係る支給も賃金なら課税所得

■事例
・業務中に労災事故に遭った従業員に勤務先が給与名目で金員を支給
⇒給与(課税)or休業補償、損害賠償金(非課税)のどちらになるか裁判

■事実関係
・入院、自宅療養の約3か月間、事故前と同水準の金員の支給を受けていた
・勤務先復帰後約3か月間、午前中のみ勤務の際も事故前と同水準の金員の支給を受けていた
※雇用契約書なし、就業規則の定めなし

■賃金とは
・使用者が労働者に対して明示又は黙示の合意により支払い義務を負うとされるもの
・労務提供の対価or労働関係上の地位に対して支払われるという性質を有するもの

■判決
1.実際の勤務実態に関係なく、給与の名目で金員を支給していた
2.労災事故前と同水準の金員を支給していた
3.従業員が出勤しなくなった後も復帰前提で金員を支給していた
4.従業員は給与として受け取るものではないと明示的にしていなかった
⇒賃金に当たると判断




4.軽減税率導入に伴うインボイス方式の詳細

■軽減税率の導入(平成31年10月1日から10%へ) 
・酒、外食を除く飲食料品、週2回以上発行される新聞が軽減税率の対象
⇒上記の売上、仕入がある事業者は区分した経理処理が求められる

■区分記載請求書の保存(H31年10~H35.9までの経過措置)
・取引月日、内容、請求書の発行者名などの記載が必要
⇒上記に加え、軽減税率の対象品目・税率毎に計算した対価の額を記載

■適格請求書等保存方式(H35.10~)
・適格請求書発行業者:適格請求書を交付できる事業者として登録を受けたもの
・適格請求書:上記に加え、発行業者登録番号、税率毎の消費税額や適用税率
・適格請求書の保存=仕入税額控除が可能(なくした場合は仕入税額控除不可)
・請求書の発行が難しい取引:帳簿のみの保存(出張旅費や通勤手当は帳簿のみで可能)

■簡易課税制度の見直し
・農林水産業 みなし仕入率80%へ
売上は軽減税率だが仕入(農薬、農耕器具等)は10%
仕入税額控除が過少に計算されない為の見直し.




5.IFRS任意適用日本企業が計上している開発費(無形資産)

IFRS38号では、「研究」から生じた無形資産は認識してはならず、発生した時点で費用として認識するものの、「開発」から生じた無形資産については、一定の要件(6要件)を満たす場合には、無形資産として認識しなければならないとされている。

 (6要件)
1.使用又は売却できるように無形資産を完成させることの技術上の実行可能性
2.無形資産を完成させ、さらにそれを使用又は売却するという企業の意思
3.無形資産を使用又は売却できる能力
4.無形資産が可能性の高い将来の経済的便益を創出する方法。とりわけ、企業は、無形資産の産出物の、又は無形資産それ自体の市場の存在を、あるいは、無形資産を内部で使用する予定である場合には、無形資産の有用性を立証しなければならない
5.無形資産の開発を完成させ、さらにそれを使用又は売却するため必要となる、適切な技術上、財務上及びその他の資源の利用可能性
6.開発期間中の無形資産に起因する支出を、信頼性をもって測定できる能力

日本におけるIFRS適用企業の事例
■開発費を無形資産として計上している企業数について
 →22社(任意適用企業123社中)

■無形資産計上金額について
→本田技研工業:6,190億円(当期資産化率18%)が最大

■開発費の償却年数について
→償却年数は2~15年と様々である。
→2~5年としている事例が比較的多く

■開発費の資産化率について
→最大:コナミ78.4%、最小:デンソー0.4%




6.第一種特例経営承継贈与

「先代経営者」から後継者への株式贈与を指します。
先代経営者からの相続・遺贈による株式の取得が第一種特例承継相続です。
これに対し、「先代経営者以外の株主」から後継者への贈与は第二種特例経営承継贈与、相続・遺贈は第二種特例経営承継相続になります。

平成30年度税制改正において大きく改正され、10年間限定の特例措置で、税制の対象が一人の先代経営者から一人の後継者へ贈与・相続から親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象になりました。

■特例の適用受けるには
(1) 平成30年4月1日から平成35年3月31日までに、都道府県庁に「特例承継計画」を提出していること。
(2) 平成30年1月1日から平成39年12月31日までに、贈与・相続(遺贈を含む)により自社の株式を取得すること。
※平成29年12月31日までに贈与・相続により株式を取得した場合は、特例の認定を受ける(あるいは通常の認定から特例へ切替えを行う)ことはできない。



7.賃上げ・設備投資促進税制(旧所得拡大促進税制)における「継続雇用者」

■概要
・平成30年度改正により所得拡大促進税制が賃上げ・設備投資促進税制に改称
・「継続雇用者」の定義が変更された

■継続雇用者
<改正前>
前期及び当期において雇用保険一般被保険者として給与の支給を受けた者が該当
⇒前年中途入社や当年中途退職者も該当

<改正後>
前期及び当期の各月を通じて雇用保険一般被保険者として給与の支給を受けた者が該当
⇒前年中途入社や当年中途退職者は該当しない

■適用要件
(中小企業者等の場合)
上記継続雇用者の当年給与総額が前年給与総額より1.5%以上増加している場合に適用がある

※中小企業者等以外については別途設備投資増加要件がある



8.H30年度税制改正法が3/31に公布

主な概要
■所得課税
・給与所得者の特定支出控除の範囲の見直し
・生命保険料控除等に係る年末調整手続の電子化
■法人課税
・資産の販売等に係る収益の認識等
・給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の特別税額控除
・情報連携投資等促進税制
■資産課税
・特定一般社団法人等に対する相続税の課税
・相続時精算課税適用者の特例
・非上場株式等に係る贈与税及び相続税の納税猶予の特例制度
■消費課税
・長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例
・適格請求書等保存方式の実施に伴う措置(インボイス制度の導入)



9.改正税効果会計基準の早期適用

・税効果基準の改正は2019年3月期(2018年4月~)から強制適用
・開示の取扱は2018年3月期末決算からの早期適用も認められている
 ※早期適用の場合は表示と注記はセットで適用。部分適用はNG
・表示は長短に分けず、
  DTA⇒投資その他の資産
  DTL⇒固定負債
 にまとめて表示する
 ⇒表示方法の変更として取り扱う⇒過去分も修正する
・注記に関しては下記が追加
  評価性引当額の内訳に関する事項
  税務上の繰越欠損金に関する事項
  ⇒初年度は表示方法の変更として取り扱う
  ⇒経過措置として、前連結会計年度分は比較情報に記載しないことができる。



10.株主総会に関する規律の見直し

■株主提案権
(1)提案できる議案の数
・現行法上、上限なしだが一人の株主より膨大な提案がなされるケースあり
⇒意思決定機関としての機能が害されたり、検討や招集通知の印刷コストが増加
⇒一定数の上限を設ける
(2)内容による制限
・現行法も制限はあるが充分ではない
⇒下記のような場合に制限する
・名誉を侵害、人を侮辱する目的
・人を困惑させる目的
・不正な利益を図る
・総会の運営を妨げ、株主共同の利益が著しく害される
(3)持株要件、行使要件の見直し
・300個以上の議決権
・総会の8週間前までとういう行使期限の見直し


11.子会社株式の追加取得・一部売却

(子会社株式の追加取得)
・追加取得持分と追加投資額の差額=資本剰余金
⇒この資本剰余金は連結の範囲から除外されても連結FSに計上され続ける
・資本剰余金が負の値となる場合=資本剰余金をゼロとし、利益剰余金から減額する

(子会社株式の一部売却/支配継続)
・親会社の持分の減少額と売却価額との差額=資本剰余金
・支配獲得時に計上したのれん=減額しない

(子会社株式の一部売却/持分法適用関連会社orそれ以外)
・のれん=売却持分に係るものを取り崩し



12.税効果会計基準の一部改正について

■会計処理の見直し
(1)個別上の子会社株式等に係る将来加算一時差異
従来:一律にDTL計上
改正:売却等を投資会社自身で決定、かつ予測可能な将来期間に、売却等を行う意思がない場合を除き、DTL計上(連結上の取扱いに合わせる)

(2)分類1の企業でのDTA回収可能性
「原則として」DTAの全額について回収可能性がある、と強調
⇒回収可能性がないとする判断が適切な場面があることを明示

■表示方法の見直し
従来:DTAとDTLは流固分類
改正:DTAは投資その他資産、DTLは固定負債

■注記の見直し(注記事項の追加)
(1)評価性引当額の内訳に関する数値情報
⇒税務上の繰越欠損金(以下、繰欠)に係る評価性引当額・その他の評価性引当額を区別して記載
(2)評価性引当額の内訳に関する定性情報
⇒評価性引当額の合計に重要な変動が生じている場合、その主な原因
(3)税務上の繰欠に関する数値情報
⇒繰欠全額を基礎に算出したDTA・評価性引当額・実際に算出した繰欠DTAを記載
(4)税務上の繰欠に関する定性情報
⇒繰欠DTAに関して、回収可能と判断した理由



13.改正「税効果会計基準」等の開示の実務ポイント

■適用時期
平成30年4月1日以後開始する年度から
※表示や注記の取いは、平成30年3月31日以後最初に終了する年度末から早期適用できる

■表示区分の見直し
・改正前
⇒繰延税金資産/負債は関連する資産/負債に基づき、流動又は固定区分で開示
・改正後
⇒繰延税金資産は投資その他、繰延税金負債は固定負債
⇒流動/固定区分に関する作業が省略

■注記事項の拡充
・評価性引当額の内訳に関する情報
⇒評価性引当額に重要な変動が生じた場合、主な変動内容について定性的な情報の開示が必要

・税務上の繰越欠損金に関する情報
⇒定量情報として繰越期限別に評価性引当額および繰越欠損金に係る繰延税金資産の額を注記 
⇒定性情報として繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を注記

・重要性
⇒評価性引当額の内訳、税務上の繰越欠損金に関する情報に重要性がある場合に注記が必要
⇒重要性の判断についての基準は定められておらず、企業の状況に応じて判断
⇒評価性引当額:税前利益に対する評価性引当額の変動額の割合等
⇒税務上の繰越欠損金:純資産に対する税務上の繰越欠損金の割合等



14.適格合併の要件変更

■論点
・子会社の合併を検討。
・少数株主へは合併対価として現金を交付し、子会社が抱える土地の含み損の実現可能か。

■結論
 合併直前において合併法人が被合併法人の発行済株式等総数の2/3以上を有する場合
⇒合併法人以外の株主への金銭の交付がされたとしても、適格合併とされることになる
 (2017年10月1日以降に行われる合併より適用)
⇒子会社の土地は簿価で承継され、含み損の実現は不可

(参考)2017年10月1日以降の適格合併の要件(支配関係での合併)
(1)金銭等不交付要件
 (2/3以上の支配関係である場合の非支配株主への金銭交付は可能)
(2)従業者引継要件
(3)事業継続要件



15.平成29年度税制改正で、移転価格税制に係る文書化義務が拡大

・既存の文書について、「同時文書化」が義務化。
 ⇒ 前事業年度の国外関連取引が50億円以上の会社等が対象
 ⇒ ローカルファイル(国外関連取引に係る独立企業間価格の算定に必要とされる資料)を、確定申告書の提出期限までに作成が義務化
 (対象以外の会社は、作成自体は必要だが、提出期限の定めなし)

・新たな文書の作成義務が発生。
 ⇒ 国別報告事項(各国の事業活動の状況を記載した文書)
 ⇒ 事業概況報告事項(多国籍企業グループ活動の全体像に関する情報を報告)
 ⇒ 最終親会社等提出事項(最終親会社等に関する情報を記載)


16.関連当事者取引


・関連当事者
申請会社の親会社や子会社、役員やその親族、
主要株主、関連会社など

・営業取引
営業取引を行った経緯や取引条件の決定方法が他の取引と比較して歪められていないかの点で審査

・不動産賃貸借取引
その場所でしか営業できない、近隣相場と比べて合理的など、
関連当事者への利得行為としての余地が認められなければ、認められるケースあり

・金銭消費貸借取引
金銭の貸付、借入は合理性を説明することは難しい
金銭の貸借取引を行える相手先は多数存在するため、基本的に解消が必要

・役員のための住宅補助
役員に対してのみ行われる住宅補助は取引合理性が低いため、解消が必要
会社都合で地方へ単身赴任した場合に、会社の規程に従って、
従業員への条件と同等な条件で賃貸する場合、認められることもある












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