2015年3月30日月曜日

3/27 勉強会:所得拡大促進税制 ポイントチェック 他

1.遺留分の民法特例、兄弟姉妹・親族外承継も対象

■まとめ
・事業承継税制が改正された
 ⇒親族外承継が可能に
・それに合わせて、「遺留分に関する民法の特例」も今国会で改正される予定
 ⇒後継者に「兄弟姉妹」、「親族外」も含める
・施行は公布の日から1年以内

■「遺留分に関する民法の特例」とは
・後継者を含めた推定相続人全員の合意の上で後継者に贈与等された自社株式について
 (1)遺留分の算定基礎財産から除外、または
 (2)遺留分の算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定
 することができる制度
・現時点では、後継者が現経営者の推定相続人に限られている

■遺留分とは
・相続人のうち、配偶者や子供などに最低限の相続権を保障するもの
・分配された財産が遺留分に満たない場合は他の相続人から取り戻すことができる


2.関係会社間での上場株売却で寄付金認定

・グループ会社の内部事情により終値の9割相当額で売却した
⇒上場株式の時価=特段の事情のない限り取引日の終値、
ただし個別の事情などがある場合には、終値を基準として個別の事情などを勘案して時価を判定
⇒税務署は、終値との差額を寄付金と認定した

・東京地裁の判決
寄付金課税をした更正処分は適法であると判断


3.今月末までに株式保有で50%益金不算入も

平成27年度改正で受取配当等の益金不算入規定の見直しが入り、株式の保有に関する要件の確認が必要となる。

■不算入割合
(現行)
 (A)株保有割合100%   100/100
 (B)株保有割合25%以上 100/100
 (C)上記以外の株式    50/100

(改正後)
 (1)株保有割合100%    100/100
 (2)株保有割合1/3超  100/100
 (3)その他の株式     50/100
 (4)株保有割合5%以下  20/100

■留意点
(2)にするためには、6ヶ月以上保有してなければいけない
 ⇒継続保有要件
 ⇒3月決算の会社は、今から(2)にしたくても不可能

(3)にするための、継続保有要件はない
 ⇒決算時点で、5%超保有していれば良い
 ⇒今からでも(4)に該当する株を、買い増しで(3)に引き上げ可能


4.在外子会社の会計処理、3月中に公表へ

■「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」
(以下、「当面の取扱い」)の改正案が公開草案から内容面での変更なく公表される模様

■「当面の取扱い」とは
 連結対象の海外子会社のF/Sを作成する際、「一定の条件」を満たした場合、日本基準を採用しないことを容認するもの(原則は日本基準を採用すべき)
(条件)
(1)代わりに採用する基準がIFRS or 米国会計基準
(2)日本基準と取扱いが異なる項目について修正

たとえば、
          IFRS or米国会計基準  日本基準
・のれん      非償却       ⇒ 20年以内の規則的償却

・少数株主損益   当期純利益に含む  ⇒ 当期純利益に含めない。

など

■改正内容
(1)修正項目について
・のれん
 従来は、IFRS or米国会計基準ともに非償却⇒修正する旨の定め
 米国会計基準が改正(非公開会社では償却の選択可)⇒「非償却の場合」、修正する旨の定めに変更

・少数株主損益
 修正項目から削除
(日本基準の改正によりIFRS or米国会計基準との間で取扱いに差異がなくなったため)

など

(2)適用時期
 平成2741日以後開始する連結会計年度の期首より適用


5.出国時課税、長期出張にも適用

■出国時課税とは
・海外移住後に株の譲渡益回避を防止するための措置
・H2771日以後に国外転出する
・出国時の評価額の合計額が1億円以上である、株式・国債・有価証券等を保有している
・対象者は、出国時前の10年内で5年超国内に住所を有していた居住者

■Q&A
Q:外国人は課税対象か
A:外国人であっても居住者であり、上記を満たせば課税対象となる。
※居住者の要件⇒国内に住所を有する者
 ∴従って国籍を問わず外国人で5年超居住していると課税の対象となる  

Q:長期海外出張や留学の場合は?
A:出国の理由が長期出張等であっても、
国内に住所及び居所を有しなくなる場合は課税の対象となる

  ※出国の理由は判定の有無に影響なし


6.青色欠損金控除額の加算で理由提示不備

【審判所事例】
・青色申告の承認が取消に
⇒それに伴い、原処分庁が青色欠損金控除額を所得加算する更正を実施
⇒更正通知書に更正理由を記載せず

【判断】
・更正通知書に更正理由がないため、更正は無効
・「青色申告承認の取消に伴う更正」が明らかであっても、書面に記載しなければダメ


7.所得拡大促進税制 ポイントチェック

■適用要件
(1)雇用者給与等支給増加額≧基準雇用者給与等支給額×2%(改正前5%
(2)雇用者給与等支給額≧比較給与等支給額
(3)平均給与等支給額>比較平均給与等支給額

■平成263月期分の上乗せ適用
26年改正により、平成263月期において(1)の増加割合が2%以上だった場合で、平成273月期においても適用要件を満たしている場合、上乗せ適用が受けられる。

∇ケース別判定
         <ケース1>    <ケース2>     <ケース3> 
263月期    2%以上5%未満  2%以上5%未満   5%以上(適用を受けなかった)
273月期    2%以上         1%         2%以上
上乗せ適用有無   有         無         無

(まとめ)
前期・当期ともに増加割合2%以上の場合、当期に2年分適用してよい。
ただし、前期に適用が受けられたのに受けなかった場合を除く。


8.法人税:太陽光発電 系統連系工事費の税務上の取り扱い(国税庁)

■系統連系工事とは
 発電業者の太陽光発電設備を電力会社の電力網に接続するための工事のこと。
  工事費用は発電業者が負担し,その設備は電力会社に帰属する。

■法人税上の取り扱い
 ・繰延資産として扱う(20万円未満は一時の損金処理が可能)
   ※発電設備本体にかかる事業供用費用としては扱わない。
 ・支出の効果の及ぶ期間にわたって償却する
 
■支出の効果の及ぶ期間
 下記のいずれかの期間による償却であれば、妥当と判断される可能性が高い。
 ・無形固定資産である「電気ガス供給施設利用権」に準じて【15年】。
 ・売電契約が有期で、自動更新条項が無い場合にはその【契約期間】。
 ・売電契約が実質的に期間の定めがないものである場合には、売電設備が10kW以上であれば【20年】,その他は【10年】。


9.相当でない理由

公開会社+大会社&有報提出が義務
⇒社外取締役を置いていない場合、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を総会で説明する&総会参考書類と事業報告に記載する

⇒「相当でない理由」としてはどのような内容がOKか?
・社外監査役が2名以上いる
・社外監査役が十分に機能している
・適任者が不在
等の説明ではダメ。

「社外取締役を置くことがマイナスの影響を及ぼすような事情を開示する必要がある」

H27.3末に社外取締役はいないが、H27.3期の総会で選任する場合
⇒総会参考書類への記載は不要
⇒総会での説明と事業報告への記載は必要
⇒この場合の「相当でない理由」の説明は、比較的簡潔なものでOK


10.法人税関連のチェック事項

1. 受取配当金
⇒ 配当支払法人の区分に留意
※完全子法人株式なのか、関係法人株式に該当するのか
2. 減価償却費
⇒ H26120日~H26331日の間に取得した生産性向上設備で特別償却制度を適用する場合、H273月期に特別償却費を計上。
3. 貸倒引当金
⇒ H273月期は、改正前の引当金繰り入れ限度の25%まで損金算入可能
4. 欠損金
⇒ 企業グループ内の再編で、みなし共同事業要件を満たさない適格合併
⇒ 引き継げる欠損金が一部制限される。
5. 中小企業税制
⇒ 中小企業税制は、特例の種類によって、適用できる企業の範囲が異なるため留意
6. タックスヘブン対策税制
⇒ 間接保有割合の判定を行うタイミングが変更
※従来の配当事業年度末時点から、配当基準日時点の保有割合で判定へ変更

■その他重要事項
1. 税効果会計
 ⇒ 法人税率の変更(引き下げ)が公布されたら、DTADTLの取崩しが必要
2. 消費税
 ⇒ 金銭債権の譲渡の取り扱いが、有価証券の譲渡の場合と同様に改正
3. 事業税(外形標準課税)
 ⇒ 関連会社間で出向者の受け入れがある場合、報酬給与額計算に留意


11.平成26年度改正に係る法人税関連のチェック事項

■交際費
 ・仮払交際費は減算調整&交際費の額に含めているか
 ・資産の取得価額に含まれている交際費について取得価額の調整計算を行っているか
 ・中小法人の有利判定を行っているか(800or飲食費50%)
 ・控除対象外消費税の計算は適切に行っているか

■所得税額控除(復興特別所得税)
 ・所有期間の計算は適切か(適格組織再編等による引継は考慮しているか)
 ・所得税額は全額加算調整されているか

■税額控除
 ・税額控除限度額(法人税額の10%)を超過する場合には、特別償却制度の併用を検討したか

■地方法人税
 3月決算法人では平成283月期からの適用となるので平成273月期の申告には直接関連しないが、当該改正を受けて実効税率が変わっているので、税効果会計に注意する

■その他
 ・生産性向上設備投資促進税制
 ・研究開発税制
 ・所得拡大促進税制・雇用促進税制
 ・事業再編促進税制・ベンチャー投資促進税制
 ・中小企業投資促進税制


12.改正会社法の要点(社外取締役を置くことが相当でない理由の説明)

・概要
改正会社法(51日施行)では社外取締役を置かない上場会社等は定時株主総会等で社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。

・説明内容
社外取締役を置くことがかえって会社にマイナスの影響を及ぼす事情を説明しなければならない。


13.決算日が異なる子会社の連結調整と後発事象の取り扱いについて

1)親子で決算日が異なる場合の取り扱い
・原則:子会社で仮決算
・例外:差異が3か月超えない場合、仮決算不要+親子間取引(重要な不一致)を調整

2) 重要な不一致とは
・連結内部の重要な取引
※連結外部との重要な取引は調整不要→そもそも仮決算を行うべきで調整事項ではない

3)後発事象の考え方
・子会社の後発事象の基準日は、子会社の決算日とする(親会社の決算日ではない)
・子会社の後発事象を考えるうえでのポイントは子会社の決算日と監査報告書日(※)
(※)決算日~監査報告書日までの事象は修正後発事象、監査報告書日の後の事象は開示後発事象

(前提)子会社決算12月、親会社決算3月の場合(子会社の方が先に決算が来る場合)
→子会社における開示後発事象は親会社の連結決算で修正の可能性あり。また連結決算で修正しなかったとしても、重要性に応じて親会社で開示後発として取り扱うか検討する。


14.グローバル節税 アップルの事例

アップルのグローバル節税の肝の1つが「非居住法人による二重非課税」

・米国アップル本社の下に、「アップルオペレーションズインターナショナル」(以下AOI)という会社がある
AOIはアイルランドの法人だが、役員3名、従業員0名、役員3名のうち2名は米国在住。

米国の課税基準:「本店所在地基準」⇒AOIの本店はアイルランドなので課税しない
アイルランドの課税基準:「管理支配地基準」⇒AOIの実質的管理は米国で行われているので課税しない


米国側でAOIの法人格を否認することは非常にハードルが高い。








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2015年3月21日土曜日

3/20 勉強会:法人税:欠損金繰越控除 新設法人の特例等(27年度改正) 他

1.名古屋地裁TH税制における「主たる事業」の判定方法

・タックスヘイブン(TH)対策税制の適用除外基準の1つである事業基準における「主たる事業」の判定方法について、原処分庁と国税不服審判所が出した結論と地裁が出した結論が異なっている

・原処分庁、国税不服審判所
 地域統括会社における事業ごとの収入や所得金額に占める割合をもって主たる事業を判定
※今回の事例では、
 株式保有による収入が多い=主たる事業:株式保有業=TH適用ありの課税処分を行っていた

・地裁
 事業活動の具体的かつ客観的な内容から判定
 事業ごとの収入や所得金額だけでなく、その事業に従事する使用人の数、施設などを具体的、総合的に勘案することが必要
※今回の事例では、
 株式保有以外の具体的な事業活動がある=主たる事業:株式保有業以外の事業=TH適用なしの判決

・主たる事業の判定方法を「事業ごとの収入、所得金額に占める割合」としてしまうと「たまたま」配当収入が多かった株式の譲渡益が出た場合などに、本来はTH対策税制の適用が除外されるものもTH対策税制が適用になってしまい、法律の立法趣旨を損なうことになる

・現在高裁で係争中


2.税効果、改正法が3月末公布なら新税率

・平成27年度税制改正により、法定実行税率が引き下げ

・税効果会計の適用税率は?※3月決算の場合
⇒改正税法が3月末までに公布=改正後の税率を適用、
 また税率変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正された場合、その旨及び修正額を注記

⇒改正税法が41日以後に公布=税率の変更の内容及びその影響額を注記

いずれにせよ新税率での算定は必要となる。


3.一部会計ソフトで事業税が過少に算出

一部の申告書作成ソフトで、事業税の「第六号様式」の改正が反映されていないケースがある
⇒計算状況の確認必須

■原因
 「利子」や「配当」について源泉徴収された復興特別所得税が、損金算入処理をした場合、事業所税の所得に加算されていない

■経緯
 ・平成251月 復興特別所得税導入
 ・平成264月 事業税の計算において復興特別所得税の加算開始
 ・平成265月 一般会計ソフトの販売開始
 ・平成266月 第六号様式の改正
⇒一般会計ソフトの販売開始が、第六号様式改正よりも早かったため


4.中期経営計画がなければ原則の適用なし

・金融庁と東京証券取引所が有識者会議でコーポレートガバナンス・コードの原案を正式決定(公開草案から内容の変更なし)

・コーポレートガバナンス・コードとは、役員報酬のあり方など上場企業が守るべき行動規範を集約したもの。
 上場企業が各行動規範に同意しない場合は、その理由を投資家に説明する必要がある。(平成2761日から実施)

・一方、公開草案について実務上の取扱いを明確にするよう求める意見があり、これに対して回答が出されている。

例えば、「中期経営計画が目標未達の場合、原因を分析し株主に説明する」
(補充原則4-1)

(意見)
 中期経営計画の策定を明確に求めるべき
(中期経営計画といった名称を利用しない、計画そのもの策定しないことで同原則の適用を回避しようとする恐れがあるため)

(回答)
 中期経営計画の策定は求めない
(中期経営計画に該当するかどうかは実質的に判断する一方で、策定しないという経営判断は容認(策定しない場合、同原則の適用なし))


5.最高裁、当たり馬券の払戻金は「雑所得」に該当

■事例
・ネット上において馬券を購入
・全レース網羅的(全通りなど)に購入していた
3年間で約28.7億円を投資し、約30.1億円の払い戻しを受けていた
・投資額と払戻金のトータルの差額(1.4億円)は雑所得に該当すると主張

■ポイント
馬券の購入が一時所得or雑所得どちらに該当するか

条文においては
一時所得・・・営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得
雑所得 ・・・事業所得や一時所得などすべての所得以外の所得

上記の条文をもとに、
課税庁は馬券の購入はあくまでも趣味で行っており、営利目的として行っていないと判断し、一時所得に該当すると主張

■判決
3年間にわたり全レース大量に購入(年換算で約10億円超)
・恒常的に多額の利益をあげていた
・馬券購入行為そのものが利益をあげるための経済活動
⇒営利を目的とする継続的行為から生じた所得と判断され、雑所得と認定された

ただし、一般的な馬券の購入とは異なり、機械的かつ網羅的に馬券を大量購入しているので、例外として雑所得として取り扱う。
一般的には「一時所得」に該当する


6.消費税における「租税回避」

【事実】
・消費税法には、「租税回避」規定がない。
※法人税法には、同族会社・組織再編などの行為計算否認規定がある。

【考察】
・消費税法導入時に、「租税回避」規定の創設が検討されたはずである。
・預り消費税を国へ納付するだけなので、同族会社特有の租税回避等は想定しにくかったのでは。
・ただし実際は、自販機スキームなどの租税回避(=制度の濫用)も行われている。
・今後は消費税の租税回避にも課税を行うことが検討されるのでは。


7.リバースチャージ方式の対象となる「事業者向け取引」とは

■リバースチャージ方式(対象者)
・国内事業者で課税売上割合が95%未満
H27.10.1以降、国外事業者から「事業者向け」電気通信利用役務の提供を受けた場合に、
⇒役務の提供を受けた国内事業者が納税義務を負う

■「事業者向け」電気通信利用役務の提供とは?
⇒役務の提供を受ける者が通常、事業者に限られるものをいう

(具体例)
・電子書籍 ×(不特定多数の者が役務の提供を受ける)
・音楽の配信 ×(〃)
・クラウドサービス ×(〃)
・広告の配信 ○(通常、事業者のみが役務の提供を受ける)

■留意点
「事業者向け」か否かはサービスの性質で判定する。
そのため、たとえば音楽の配信契約を事業者として契約をしていても対象とならない。


8.法人税:欠損金繰越控除 新設法人の特例等(27年度改正)

繰越欠損金の利用制限について改正が行われる。
■資本金1億円以下の法人
 ・単年度の所得相当(全額)まで、繰越欠損金を使用可能

■資本金1億円超の法人[原則的な取り扱い]
 ・現行 
   単年度損益の80%まで、繰越欠損金を使用可能
 ・H27.4.1以後開始事業年度
   単年度損益の65%まで、繰越欠損金を使用可能
 ・H29.4.1以後開始事業年度
   単年度損益の50%まで、繰越欠損金を使用可能

■資本金1億円超の法人[設立から7年以内の特例]
 ・H27.4.1以後開始事業年度において、設立から7年以内であれば単年度の所得相当
(全額)まで繰越欠損金を使用可能。
  ※H27.4.1より前に設立された法人にも適用される。
  ※設立から7年以内であっても、上場した法人にはこの特例は適用されない。


9.連結の範囲/一般社団法人・一般財団法人が子会社に該当するか

(1)「会社に準ずる事業体」に該当するか否かを検討(該当すると子会社になる)
⇒親会社と一般社団法人・財団法人との関係性の実態判断。
⇒例えば、最終的に一般社団法人・財団法人から生じる損益がグループ内に還元又は転嫁されている場合は「会社に準ずる事業体」として取り扱うべき、となる。

(2)機関(社員総会または評議員会など)を支配しているか否かを検討
⇒「会社に準ずる事業体」かつ、意思決定機関を支配している場合には、子会社と判断する。

意思決定機関
 一般社団法人:社員総会、一般財団法人:評議員会
業務執行機関
 一般社団法人:理事会 、一般財団法人:理事会


10.単体開示の簡素化の復習

1. 単体開示の簡素化の趣旨
 ⇒ 金商法において、重要視されるのは連結FS
 ⇒ 個別FSの開示内容を簡素化し、事務負担を減らす

2. 簡素化の内容
(1) 特例財務諸表提出会社のみに適用
 ⇒ 会社法ベースでの開示を認める。
 ⇒ 開示すべき内容が金商法ベースと比較して減る。
 ⇒ 有報向けに資料を作成し直す手間が減る。
※特例財務諸表提出会社 … 連結FS作成会社、かつ会計監査人設置会社

(2) 連結財務諸表作成会社に適用
 ・注記すべき事項の一部免除
※リース取引や、減損損失の注記などが免除
 ・主な資産及び負債の内容の省略
 ・製造原価明細表の省略(ただし、連結FSでセグメント情報を記載している会社のみ)

(3) 全ての財務諸表作成会社に適用
 ・区分掲記すべき科目の金額的基準(重要性基準)の緩和
 ・有価証券明細表の省略(ただし、上場している会社のみ)


11.平成2627年度税制改正に伴う税効果会計のポイント

■平成26度税制改正の影響
(1) 生産性向上設備投資促進税制に係る税効果
  一定規模以上のものを取得・事業供用した場合には特別償却or税額控除
  特別償却…会計上認められていない方法
  特別償却を選択した場合には一時差異が発生する
(2) 地方法人税の創設による連結納税制度を適用する場合の税効果
  地方法人税…国税として取り扱う=連結の見地で回収可能性判断

■平成27年度税制改正の影響
(1) 税率変更
  決算日までに公布された場合:
   新実効税率=解消年度の税率により計算する点留意
   (平成283月期=32.11%、平成293月期=31.33%)
  公布日が決算日より後だった場合、その内容と影響の注記が必要!(要注意)

(2) 繰越欠損金
  繰越期間(平成2941日以後に開始する事業年度で生じた欠損金は10年)
  使用制限(平成283月期、293月期は課税所得の65%、平成303月期は同50%)
  スケジューリングにあたって、上記に留意する

(3) 受取配当等の益金不算入制度の見直しによる影響
  将来の課税所得の発生見込の見積もりにあたって、留意


12.在外子会社の清算決定に係る会計上の論点

①連結除外とするかどうか
 ・原則、精算手続が結了するまでの間連結
 ・量的質的に重要性が乏しい場合は除外できる

②留保利益に係る将来加算一時差異に対する税効果
 ・子会社の資本の親会社持分額と個別BS上の投資簿価との間の差額は将来加算一時差異。
 ・清算配当を受け取ったときに追加納付が見込まれる税額を連結上、繰延税金負債として計上する必要がある

③為調に対する税効果
 ・清算を決議している場合、為調の一時差異の実現可能性が高いといえるため、税効果を認識する必要がある


13.有価証券報告書虚偽記載に基づく取締役の責任

1)相当な注意の有無
・有報の作成・提出に関与していなかったとしても、当然に免責されるものではない
⇒ただし、有報に虚偽記載があることを知らず、かつ相当な注意を用いたが知ることが出来なかった場合は免責可能

2)相当な注意の内容
・各役員の職務や地位によって異なる
・ある事業部門に関する記載について、当該部門を担当する役員等には記載の原資料を確認する義務がある
・多忙、病衣、遠隔地居住は理由にならない

3)免責事例
A社では各取締役間で職務分担がされており、財務は経験のあるものに委ねられていた
・財務にノータッチ
・取締役会資料が完全に粉飾されていた


14.決算日の変更手続き

・株主総会特別決議(半数以上出席、2/3以上賛成)で変更可能。
→税務署に異動届出書を提出

※総会決議は、決算日以前に行う(3月決算の会社が2月決算に変えたいならば2月中に)異動届出書は、決議後速やかに提出

・「12ヶ月を超える事業年度」には出来ないので、変更する事業年度は、通常期間が縮まることになる。
※税務上。会計上は「変更直後は18ヶ月まで可」


・変更によって、場合によっては節税効果があることも。








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2015年3月15日日曜日

3/13 勉強会:間接的に100%保有なら非支配に当たらず 他

1.税理士業をめぐるトラブル、最新の裁判事例を一挙紹介

■事例1
 関与先決算書を関与先株主へ開示義務が税理士にあるかどうか
 ⇒開示義務はない

 ・税理士は依頼者(関与先代表者など)の依頼に対応する必要はある
 ・株主のその地位に基づく権利の行使はその会社に対してされるもの
 (東京地裁平成27223日判決)

■事例2
 顧問税理士が算定した株価と正当な価格との差額について損害賠償する義務がその税理士にあるかどうか
 ⇒損害賠償義務はない

 ・A法人が顧問税理士に非上場会社の株価の算定を依頼し顧問税理士が算出した株価で売却したがその後、別の税理士に依頼して算出した株価がより高い金額になった
 ・不当に低い価格で売却することになったとA法人は顧問税理士を訴えた。
 ・顧問税理士は業務委託契約に基づき、会計全般についてのアドバイスをする義務はあるが株式評価のような資産評価の業務は業務委託契約に基づく業務に含まれないと裁判所は指摘した。
 (東京地裁平成27128日判決)


2.適格合併でPE(恒久的施設)移転、繰越欠損金使用可

(原則)
日本国内にPEを有する外国法人が撤退後、日本に再進出した場合
⇒撤退前の繰越欠損金は引き継げない

上記により、

(改正前)
一旦撤退した外国法人が、適格合併によりPEを再保有した場合
PEの繰越欠損金は引き継げない

(平成27年度税制改正)
一旦撤退した外国法人が、適格合併によりPEを再保有した場合
PEの繰越欠損金は引き継げる!
PEを有しない外国法人が平成2841日以後にPEを有することとなる場合に適用


3.QAで読み解くガバナンスコード

東証がコーポレートガバナンス・コード(以下コード)の制定に伴い、上場制度の整備案を発表した。

■コードとは?
・上場企業が守るべき行動規範を網羅したもの
・コードを実施しない場合に、その理由を開示・説明する必要がある
・その説明をしなかった場合、制裁措置を受ける

()原則4-8:独立社外取締役を少なくとも2名以上選定すべき
  ⇒2名以上いる場合 …作業は不要
  ⇒2名以上いない場合…開示・説明する必要あり

■対象者は?
・市場第一部、第二部、マザーズ、JASDAQに上場している企業
・ただし、マザーズとJASDAQに上場している企業については、「基本原則」と言われるコードのみ、説明義務がある

 ※例えば上記()のコードは実施対象外となるため、社外取締役2名以上選定してなくても開示・説明は不要

■いつから?
・平成2761日から実施予定。
 株主総会後速やかに「コーポレート・ガバナンス報告書」を提出
※今年は経過措置があるため平成2712月末までに提出すれば良い


4.長期解消将来減算一時差異は現行通りに

企業会計基準委員会が繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針()を作成中
(1)長期解消将来減算一時差異の取り扱いを従来通りとする方針
 前提:会社の業績や課税所得等の状況によって、回収可能性の判断が異なる。
 例えば、分類3(業績が不安定で、将来減算一時差異を大きく上回るほどの課税所得がない)に該当する場合、

 (原則)
  概ね5年以内に解消する将来減算一時差異についてのみ、回収可能性ありと判断

 (例外)
  減価償却に係る将来減算一時差異は、5年を超えて解消されるものについても、回収可能性ありと判断

 ∴企業が継続する限り、差異はいずれかのタイミングで解消され、税金負担を軽減する効果があるため
 
(2)新たな開示項目を追加する方向
  重要な税務上の欠損金が生じている場合に繰延税金資産の回収可能性があると判断する場合、 その根拠や計上額を説明する情報を開示する。


5.貸し付けていた建物の取壊し費用は必要経費

■事例
・貸付用の建物を取り壊し更地にした
・建物に係る取壊し費用を支払った(必要経費に算入して申告した)
・更地の貸付けまで約2年半要した
・その間、土地の譲渡や個人で使用する予定はなし
・貸付直前までに貸付広告等を行っていなかった

■原処分庁の主張
条文において、不動産に伴う費用については、近い将来において貸付けが確実に行われるような場合でなければ必要経費算入は認めない
⇒貸付けの広告や看板が設置されたのは貸付直前であるため、取り壊した年分の必要経費とは認めない。

■審判所の判決
・取壊し後に家事用への転用や土地を譲渡する計画はなかった
・賃貸業は取得、賃貸人の募集、貸付け、取壊しや廃棄までの一連を流れとしており、取壊し費用は貸付業務に係る残務処理である

以上のことから、必要経費算入を認めた。


6.間接的に100%保有なら非支配に当たらず

H27年度改正により、配当等の益金不算入区分が見直しへ
【改正後】
保有割合                                                益金不算入割合
100%              (完全子法人株式等)  全額
100%未満3分の1  (関連法人株式等)               全額
3分の1未満5%     (その他の株式等)                50%
5%以下           (非支配目的株式等)  20%

⇒直接の保有割合が100%未満であっても、間接の保有割合が100%であれば完全子法人
株式等に該当する

(例)
A社→(3%)C
A社→(100%)B社→(97%)C

A社は、B社を通じて間接的にC社株式の100%を保有している
C社株式は完全子法人株式等に該当する


7.来日芸能人等に対する消費税課税方式の見直し

■改正案
2841日より「リバースチャージ」方式に変更の予定

■現在の課税方法
(例)プロ野球H球団のG選手に対する報酬
国内でプレーした場合には消費税の納税義務がG選手本人に課される(基準期間における課税売上1,000万以下は免税)

(報酬額1,000とする)
H球団:G選手へ1,080支払 仕入税額控除80
G選手:預り税額80を納付

■改正後
選手から役務提供をうけた者(H球団)が納税義務を負う。
H球団:
(1)G選手へ1,000支払
(2)税務署へ80納付
(3)仕入税額控除80

G選手:納税義務なし


8.所得税:太陽光発電の売電収入の所得区分

■余剰売電の場合
電力の使用状況に応じ、付随収入として整理される。
 ・サラリーマンの家に設置
   ⇒雑所得
 ・事業者が事業所に設置
   ⇒事業所得
 ・賃貸用マンションの屋根に設置
   ⇒不動産所得

■全量売電の場合
基本的には出力に応じて判断される。サラリーマンか事業者かは考慮されない。
 ・50kW未満
   ⇒雑所得
 ・50kW以上
   ⇒事業所得
 ※50kW未満でも、設備に係る除雪や除草等の通常の管理をしている場合には、事業所得と判断されるケースも有る。

■事業所得の場合は...
 ・青色申告をすればグリーン投資減税の対象となる。
 ・給与所得等との損益通算ができる。


9.公開会社

・公開会社≠上場会社 ※混同が多い
・公開会社=定款に譲渡制限の無い会社
  ※発行する株式のうち、1株でも譲渡制限がない株式があれば該当

公開会社
・取締役会の設置は義務
・大会社&公開会社⇒監査役会&会計監査人の設置義務あり
 ※監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社を除く

20155月施行の会社法改正で以下の義務発生
・公開会社and大会社and有価証券報告書の提出義務あり
⇒事業年度末に、社外取締役を置いていない場合は
 「社外取締役を置くことが相当でない理由」を定時株主総会で説明する必要あり
 株主総会参考書類や事業報告でも理由記載必要。


10.棚卸資産管理にあたっての税務上&実務上の留意点

■棚卸資産の税務上のポイント
 ・免税事業者の棚卸資産計上漏れに要注意
   ⇒税抜経理で処理している場合

 ・税務調査上、重要なチェック項目
   ⇒棚卸除外はないか。等

 ・対策
   ⇒現在在庫の把握をしっかり行うこと

■在庫管理上のポイント
 ・適正在庫の見極め


11.消費税 軽減税率当落予想

ポイントは「生活必需品」かどうか
・軽減税率が通りそうなもの
→ 「米・味噌・醤油」「塩・砂糖」「肉・魚」「野菜」「新聞」

・軽減税率が通らなさそうなもの
→「パン」「チョコレート」「携帯電話」「ガソリン」

100年前の生活必需品」と言った方が正しい…??

EU諸国では、「高級食材でも国産のフォアグラ、トリュフは対象、ただし輸入品のキャビアは標準税率」
「ケーキは対象だが、チョコレートは対象外」
「バターはOKだがマーガリンはダメ」

など税制が複雑怪奇で、訴訟も絶えないとのこと。








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