2015年11月29日日曜日

11/27 勉強会:マイナンバーにおける実務上の留意点-本人確認編- 他

1.節税の事実がなくても土地保有特定会社の適用あり
■取引相場のない株式の評価方法(相続税)
(1)原則
・大会社 …類似業種比準方式
・中会社 …類似業種比準方式と純資産価額方式の併用
・小会社 …純資産価額方式

(2)例外
・下記に該当する場合は、主に純資産価額方式
 開業前(休業中)の会社
 開業3年未満の会社
 株式保有特定会社(純資産に占める株式等の保有割合が50%以上)
 土地保有特定会社(総資産に占める土地等の保有割合が70%以上など)

■今回の事例
・土地の保有割合70%以上の非上場会社の株式を相続により取得
 (会社の規模は大会社)
・納税者と課税庁の間で評価方法について争われた
 納税者 …営業の事実があることから類似業種比準方式
 課税庁 …土地保有特定会社に該当することから純資産価額方式
・営業の事実等は問わず、純資産価額方式で評価することに合理性があると東京地裁は判断した
 …土地保有割合が極めて高い評価会社はその資産価値をよく反映する純資産価額方式で評価することが適切


2.タイムスタンプ

■タイムスタンプとは?
・電子文書がスキャンされた時点及び電子化から現在まで当該電子文書が改ざんされていないことを証明するもの
・タイムスタンプは日本データ通信協会の認定を受けたものである必要がある
・時刻情報に加え「ハッシュ値(あるデータについて一定の演算処理をすることにより得られる値)」が付与される
・ハッシュ値の比較により電子文書の改ざんの有無を検証できる


3.所得控除見直しでゼロ税率を導入も

政府税制調査会において、個人所得課税・資産課税の見直しについて、論点整理が行われた。

基本的には若年層や低所得層の税負担減を図る方向性であるが、税負担減を補う税負担増をどこで補うか具体的な話は上がっていない。

■個人所得課税
 …諸控除を見直し、より税負担の累進性を高めていく

・人的控除(扶養控除や基礎控除)は所得控除方式に代わる制度へ
・欧米諸国で採用されている方法を参考にしながら考慮
 (ゼロ税率、税額控除等)

■資産課税
・相続税
 …平成25年度税制改正の影響を見極めながら、対象をさらに検討
・贈与税
 …高齢者の資産保有の増加や老老相続が進んでいる現状を踏まえ、相続税との関係を含めさらに幅広く検討


4.ハイブリッド型年金の会計処理を検討へ

■ハイブリット型年金
 確定給付制度における、運用リスクを事業主と加入者で柔軟に分け合うことができる年金制度
 (運用成績↓:加入者への支給を減額(事業主の負担を軽減) ⇔ 運用成績↑:加入者への支給を増額する)
 ⇒制度導入が検討されている

■現行の退職給付制度
 「確定拠出制度」、「確定給付制度」いずれに該当するか判断した上で、会計処理
 ⇒ハイブリッド型年金はどちらに該当するか不明
 ⇒ハイブリッド型年金の会計処理を検討へ


5.マイナンバーにおける実務上の留意点-本人確認編-

Q1:従業員のマイナンバーはH27年末の年末調整で集める必要があるか
A1:H27年中の取得は法令上の義務ではないため集める必要はない。
  マイナンバーの記載をもとめても差し支えないが、記載を拒否されたとしても記載を強制することはできない。

Q2:通知カードにてマイナンバー確認をする際、免許証等で身元確認をするが、顔写真と容姿が違っている場合はどう対応をすればよいか
A2:身元確認は顔写真がついている免許証等にて氏名・住所・生年月日を確認するので、容姿自体は確認事項とならない

Q3:健康保険証で身元確認は可能か
A3:健康保険証単体では不可。
  健康保険証+年金手帳など2つの書類を組み合わせれば可能。

Q4:長く務めている従業員に対しても本人確認が必要か
A4:必要である。
  原則、マイナンバーの提供を受ける際には本人確認(「番号確認」と「身元確認」のこと)が必要のため

Q5:従業員の本人確認は毎年行う必要があるか
A5:毎年行う必要はない。2年目以降は本人確認を簡略化可能。

Q6:外部委託先へ支払調書を発行する際にも本人確認が必要であるか
A6:「個人番号の提供のお願い」といった書類を作成し、通知カードの写しを貼付けて提出すれば本人確認は完了となる。


6.スマホでスキャナ保存が可能に

・領収書等の書面保存コストを軽減するために、スキャナ保存制度あり
・平成27年度改正で「3万円未満」の金額要件が撤廃、3万円以上の領収書保存も可能に
・平成28年度改正でスマホによるスキャンも認められる方向に
 ※現在は、原稿台と一体となった固定スキャン機器の使用しか認められていない
 ※領収書等には従業員等の署名が必要、かつ、PC取込後「3日以内」にタイムスタンプの付与が必要に


7.税務動向:法人版ふるさと納税

■概要
企業が一定の地方公共団体の地方創生事業に寄付をした場合、
・寄付金額の全額を損金算入(現行通り)
・法人税及び法人住民税から寄付金額の3割を税額控除
(ただし、法人税額等の20%を限度とする)
・寄付金額の下限を10万円とする

■対象外自治体
東京都:東京23区他
神奈川県:鎌倉市、藤沢市、厚木市、寒川町
埼玉県:戸田市、三芳町
千葉県:市川市、浦安市

■実施時期
未定


8.法人税:債権放棄に関する法基通9-4-29-6-1(3)ロとの適用の区別

債権放棄をする場合においては,以下の2つの場合があり得る。

A:その債権について、企業活動上のさまざまな理由により債権放棄をせざるを得ない場合
⇒損金算入の理由として費用的に捉える。法基通9-4-2が適用される場面。
債権放棄が企業活動上必要でないと,寄附金の額に算入される。
必要であるか否かを判断するために、“合理的な再建計画”が必要とされる。

B:その債権が無価値なものと評価された上で、債権放棄をする場合
⇒損金算入の理由として損失として捉える。法基通9-6-1(3)が適用される場面。
貸倒損失として、法定手続等より無価値なものと評価されることが必要である。
無価値であるかを判断するために、“法定手続に準じる公正な手続”による債権放棄が必要とされる。


9.税効果の新指針 適用初年度の影響額

・適用初年度の期首の影響額の取扱について意見が分かれている

(公開草案)
・新指針の適用を「会計方針の変更」として、適用初年度の影響額はすべて利益剰余金調整とする取扱

これに対し、
DTAの取り崩し時にはPLヒットすることから、計上時と取り崩し時で処理が不整合となる
・監査委員会報告66号はルール自体が「会計上の見積もりの変更」であり、新たな指針の適用は見積りの変更に該当する⇒全額PLヒットすべき
といった意見が出ている。


10.グループ会社間取引の相殺処理の効率化ポイント

1. グループ会社間の取引の相殺とは
(1) グループ会社間の債権・債務の相殺
(2) 未実現利益の消去
※グループ間の取引は、個々の会社では通常の取引だが、グループ全体を一つの会社とみなすと、内部での取引に過ぎないため、取引がなかったことにする必要がある。

2. 効率化のポイント
(1) グループ会社間の債権・債務の相殺が大変な理由
⇒ どの債権と債務が紐付くのか、突合が困難
⇒ 効率化の方法として、下記の方法が挙げられる。
 ・差異の許容額を定め、許容額以下の差異については無視する
 ・正しい金額がどちらなのかを定めておく
(2) 未実現利益の消去
⇒ 期末の在庫額と利益率を乗じた金額を消去
⇒ 個々の在庫毎の利益率を把握することが困難
⇒ 取引の時点で、期末の在庫の利益率が把握できるようにする必要がある。


11.決算早期化を阻害する、連結決算プロセスにおける相殺消去処理の負荷

■連結決算のプロセス
 3段階に大別
 単純合算 → 相殺消去処理 → 開示資料の作成

■負荷のかかる連結決算処理
 相殺消去のプロセスが多く、連結決算早期化の大きな阻害要因となっているといえる


12.BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの経緯と最終報告書の概要

1.経緯
 多国籍企業による、各国の税制の相違点や不整合を利用した国境を越えた過度な節税策が問題に
OECDG20が中心となり、以下を目的に合意文書を作成。
 日本の税制改正に影響する。
①国境を越えて事業展開する企業活動に係る国内の課税ルールの整合性確保
 ②企業行動の実態に即した課税ルールの再構築
 ③国際課税ルールの策定

2.最終報告書の概要
  ①電子商取引課税
⇒消費税は27年度税制改正(国境を越えた役務提供に対する消費税の課税の見直し)で対応済
  ②ハイブリッド・ミスマッチの効果の無効化
   ⇒27年度税制改正(外国子会社配当益金不算入制度の見直し)で対応済
  ③効果的なCFCルールの構築 ⇒今後法改正の要否を含め検討
  ④利子等の損金算入を通じた税源浸食の制限 ⇒今後法改正の要否を含め検討
  ⑤有害税制への対抗 ⇒既存の枠組みで対応
  ⑥租税条約の乱用防止 ⇒租税条約の拡充の中で対応
  ⑦恒久的施設認定の人為的回避の防止 ⇒租税条約の拡充の中で対応
  ⑧移転価格税制(無形資産) ⇒今後法改正の要否を含め検討
  ⑨移転価格税制(リスクと資本) ⇒今後法改正の要否を含め検討
  ⑩移転価格税制(他租税回避の可能性が高い取引)
   ⇒今後法改正の要否を含め検討
  ⑪BEPSの規模や経済的効果指標の集約・分析方法の策定
  ⑫タックス・プランニングの報告義務 ⇒今後検討
  ⑬移転価格関連の文書化の再検討 ⇒28年度税制改正で対応予定
  ⑭相互協議の効果的実施 ⇒対応済
  ⑮多国間協定の開発 ⇒参加予定


13.子会社化した直後の吸収合併の個別財務諸表の取り扱い

下記2つの合併処理がある
(1)パーチェス法による合併処理
→取得原価を、識別可能な子会社の資産・負債の時価を基礎に配分

※パーチェス法による合併処理は、株式の取得と直後の吸収合併の取引は一体で、一つの企業結合を構成
子会社株式取得の対価を合併対価とした「取得」であると判断

(2)共通支配下取引としての合併処理
→移転する資産及び負債は移転前の簿価で承継
→ただし親会社が子会社を企業結合する場合では、子会社の資産・負債の簿価を連結上修正していれば当該価格が適正な帳簿価格

※共通支配下の取引とは、親会社と子会社の合併や、親会社の支配下にある子会社同士の合併など、結合後企業のすべてが企業結合の前後で同一の企業によって最終的に支配され、その支配が一時的ではない場合での企業結合をいう。


14.米ファイザーがアラガンを買収

・米製薬会社ファイザーが、アイルランドに本社を置く同業のアラガンを買収。
・買収総額は1,600億ドル(約20兆円)と製薬業界で過去最大。
・形式上は、アラガンが買収側に。
⇒本社がアイルランドになることで、大規模な節税が可能となる。
・アラガンも元をたどれば米国企業。
 アイルランドの医薬品メーカーを買収する際、税務上の本社をアイルランドに移して今の形になっている。


15.取締役会の整備のポイント

(1)株式上場審査では、コーポレート・ガバナンスが最重視されている。
 取締役会は、コーポレート・ガバナンスが機能するための重要な意思決定機関であり、決議事項、報告事項を明確にする必要がある。
(2)機動的な経営を実践するために、定期的(最低月1回)に取締役会を開催する必要がある。
(3)同族関係者が取締役会総数の過半数を占めないようにする。
(4)名目的な取締役が存在する場合、上場審査上問題となる。

■今週の新規上場会社
上場・公開日    社名              銘柄コード 市場  公募価格(円)

1127      ネオジャパン        3921      マザ  2,900






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2015年11月20日金曜日

11/20 勉強会:印紙税法の第2号文書・第7号文書をめぐる実務ポイント 他


1.マイナンバー制度が税務執行に与える影響

■まとめ
・税務調査での活用
 ⇒税務署での業務がスムーズになる
  源泉徴収票などが名寄せしやすくなる
 ⇒将来は預金口座などの資産も把握できるようになるかも

・富裕層の資産移転の把握
 ⇒国内預金口座の把握が進む

・勤務先による副業の把握
 ⇒マイナンバーが導入されることにより明らかになることはない


2.非常勤役員への日当給与を定期同額給与と認めず

■請求人が非常勤役員に支給した日当は定期同額給与に該当しないため、損金算入できないと判断された事例

■審判所の判断
主に下記より定期同額給与や通勤費には該当しないと判断
・日当が規則的に継続支給されていないこと
・各月の支給額が同額でないこと
・自宅から直接用務地へ出向いており、宿泊を要する出勤ではなかったこと
・交通費は実費で支払っていた

よって非課税となる通勤費、損金算入可能な定期同額給与にも該当しない。


3.法人税の実地調査率

・法人税の税務調査を受ける確率のこと
・法人税に関する実地調査件数÷対象法人数により算出
・実調率(1)は、年々低下している
 平成元年:8.5% ⇒ 平成26年:3.2%
(1) すべての法人を対象とした実調率
・国税局調査課が所管する法人(2)の実調率は、かなり高い
 国税局調査課が所管する法人:10.6% ⇔ 税務署が所管する法人(3)3.1%
(2) 原則、資本金1億円以上の法人が対象。約25,000社あり
(3) (3)以外の法人が対象


4.株主総会招集通知の電子化や重複開示の廃止などが実現へ

金融審議会に設置されたディスクロージャーワーキンググループにて、以下事項が検討されている。

■開示内容の整理
金商法、会社法、取引所規則それぞれの開示書類は目的は異なるものの開示内容の統一が図られていたが、さらに3つの開示制度の相違点が統一される方向で検討されている

金商法 ⇒ 有価証券報告書
会社法 ⇒ 計算書類や事業報告
取引所 ⇒ 決算短信

(1)経営方針の記載
決算短信 ⇒ 記載が要求されている
有報・事業報告 ⇒ 明示的に要求されていない

(2)大株主の状況
有報と事業報告とでは大株主の所有株式数の定義が異なる

これら相違点が統一される可能性あり。

そのほか、
四半期決算短信と四半期報告書の開示日が近いため、四半期決算短信は任意で開示すべきとの意見あり

■株主総会招集通知の電子化
株主総会招集通知の提供を原則電子化する可能性あり
⇒日本では株主総会日が集中し、株主による議案検討期間が確保されていないため。
⇒アメリカの制度を導入することも検討(Notice & Access制度)
 ・招集通知関連書類の提供は原則電子的に行う
 ・希望する株主のみ書面で送付

これら検討事項はH283月頃を目途に報告書をまとめる予定


5.移転価格税制の申告漏れが多数発生

・移転価格税制に関する申告漏れ件数が過去10年で最高の240件(前年対比+41.2%)を記録。
・海外取引法人への税務調査が重点課題の1つになっていることが一因か。
・海外取引においては、特に、下記事例で源泉徴収漏れが発生しやすので要注意。
(1)海外企業への、権利侵害に関する賠償金支払が、実質、工業所有権の使用料に該当する場合
(2)海外企業へ工業所有権の使用料を支払う場合で、金銭のやり取りなく債権債務を相殺する場合

 ⇒どちらも源泉徴収が必要


6.消費税:国外事業者が行う電子書籍の販売

■電気通信利用役務の提供にかかる課税方式
(1)消費者向け⇒国外事業者が納税義務を負う
(2)事業者向け⇒リバースチャージ方式
       (国内事業者が納税義務を負う)

Q:業界専門書の電子書籍販売はどちらになるか
A:「消費者向け」に該当
⇒必ずしも一般消費者が購入しないわけではない

Q:ウェブ広告サービスはどちらになるか
A:「事業者向け」に該当
⇒通常、事業者限定のサービスである(と国税は考えている)
 ※実際は一般消費者でも利用可能

(まとめ)
その電気通信利用役務の提供が「消費者向け」か「事業者向け」かは役務の内容では判断できず、実質的に限定列挙となる

<「事業者向け」とされているもの>
・ウェブ広告
・アプリ等を販売するためのウェブサイトを利用させるサービス
・インターネットを介して行う宿泊予約サイトへの掲載 など


7.臨時報告書

・会社の業績等に重要な影響を与える事象が発生した場合に提出する開示書類
・株式交換・移転、合併・分割、重要な事業の譲渡・譲受けの決定や公認会計士等の異動など。
・損益への影響が純資産の3%以上、5年平均当期純利益の20%以上となる後発事象も対象となる。


8.法人税等負担率の分析

1. 法人税等負担率の注記
⇒ 法定実効税率と法人税等負担率に大きなかい離がある場合は、その主な要因を注記

※法人税等負担率 … 法人税等合計 ÷ 税前当期純利益
※法人税等合計  … 法人税等 + 法人税等調整額

2. 法人税等調整額の意義
⇒ 会計と税務とでは、資産・負債に差異が生じることがある。
⇒ 法人税等は税務上の所得で算出される
⇒ 法人税等の金額を期間按分(法人税等調整を計上)することにより会計上の税金費用に調整。

3. 法人税等負担率の分析の意義
⇒ 税効果会計が適切に適用され、決算数値に反映されているかを検証できること
※分析を通じて、DTADTLの計算にあたって、税務申告の調整項目の反映漏れ等を発見できる可能性がある。

4. 分析の方法
(1) 税前当期純利益に法定実効税率を乗じる
(2) 調整内容の影響額の算出 (下記の合計)
  ・永久差異(会計と税務で永久に差異が解消されないもの)× 法定実効税率
  ・所得に関係のない税金の金額 (住民税均等割など)
  ・評価性引当額の増減 × 法定実効税率
(3) (1)(2)の合計額が、法人税等合計と一致するかを確認する。


9.決算期が異なる場合の対応方法の比較と検討ポイント

■親子間で決算期が異なる場合の対応方法比較
(1) 子会社の正規の決算を基礎とし、連結会社間の重要な取引のみ調整する方法
 子会社の決算日と連結決算日との差異が3か月を超えない場合、採用可
 長所:最も負荷がかからない方法である
 短所:重要な連結間取引しか調整されず、適切な連結財務諸表を作成する観点からは限界あり

(2) 仮決算を行う方法
 正規の決算とは別に仮決算を組む方法(仮決算日は連結決算日から3か月以内の一定の日に設定することが可能)
 長所:法的な規制はないため、決算手続を限定したり決算日を連結決算日の1か月前に設定したりと柔軟な対応が可能
 仮決算の精度にもよるが、(1) の方法よりも適切な連結財務諸表が作成されると考えられる。
 短所:毎期継続して2回決算を行うことになるため、導入後のコストは(1)(3)の方法の中で最大となる。

(3) 決算日の統一
  そもそも決算期自体を変更してしまう方法
 長所:法定決算を基礎とするため最も適切な連結財務諸表が作成されるものと考えられる。
 短所:所在地国の法規制に対応する必要あり。採用できる会社が限られる。
 子会社決算と連結パッケージの作成が同時期に行われるため決算期の負荷は最も高くなる。

■仮決算と決算期変更、どちらをとるかについて検討のポイント
(1) 所在地国の法規制
 所在地国の税制によって決算日が特定の日に法定されている場合がある(ロシア、メキシコ、ブラジルなど)
 このような国に在外子会社がある場合、決算期変更の採用は不可能

(2) 決算体制の充実度
 増加する負荷に子会社の経理体制が耐えうるものであるかどうか

(3) グループ会社の分散状況
 特定の国に子会社が集中するなど、場合によっては親会社が決算期を変更する場合もありうる。


10.印紙税法の第2号文書・第7号文書をめぐる実務ポイント

・第2号文書…請負に関する契約書
・第7号文書…継続的取引の基本となる契約書

Qひとつの文書が第2号文書と第7号文書の両方に該当する場合はどうするか?
Aどちらか一方の号に所属が決定される。

原則:第2号文書とする
契約金額の記載なし:第7号文書とする 
※月額の記載だけがあり、契約期間の記載がないものは金額を計算できない為、契約金額の記載がないものとして第7号文書となる

⇒第2号文書と第7号文書、どちらの印紙税額が少ないかを考えて契約書を作成することで節税ができる。


11.新株予約権を対価とする費用の帰属年度の特例の内容について

内国法人は新株予約権を、個人から受ける役務提供の対価として発生する報酬債権と相殺して発行した場合
→新株予約権付与時の公正価値相当額を役務提供の対価とする費用
→被付与者である個人に給与等課税事由が生じたときに損金算入

(1)新株予約権の公正価値相当額
 会計:ブラックショールズ・二項モデル等の価格算定モデルで算定
 税務:法人税法規程なし、会計を準用

(2)公正評価額の損金算入時期
 会計:権利付与時~権利確定時までは対象勤務期間として、同期間に渡り合理的な方法で按分
 税務:被付与者が権利行使をして、かつ、所得税の課税が生じるときに限り損金算入できる
 →税制適格ストック・オプションが行使され、非課税となる場合には損金算入×


12.YKKはなぜ非上場なのか

YKKはファスナー世界最大手。有数の、非上場の大企業。
・現会長の吉田忠裕氏は、創業者の息子。
・現会長以外の幹部はすべて非同族。
・創業者が外部の株主ではなく、社員に株を持たせることにこだわった。
⇒現在の筆頭株主は「社員持株会」。

・他に著名な非上場企業は、
サントリー、竹中工務店、JTB、ロッテ、大創産業など


13.ビートたけしが孫を養子に 相続税対策か

・ビートたけしが長女の子供を養子に。
・子供を経由して孫に行くよりも、相続税課税が1回少なくて済む。
・「孫を養子にする」節税対策は、バブル期に流行ったが、今回の相続税改正で再びブームになる可能性も。

・法定相続人に含めることが出来る養子の数は、「実子がいる場合」1人まで、「いない場合」2人まで。
・養子のうち直系卑属(孫、ひ孫)は税金が2割加算。


14.上場審査の流れ

(1)取引所上場の審査の流れ
 ・通常審査と予備審査がある。
 ・取引所の上場審査部が3ヶ月程度(標準審査期間)(JASDAQは標準で45営業日)かけて審査を行う。
 ・通常審査
  株主総会→取締役会決議(上場申請の決議)→上場申請(申請書類の提出)
  →上場審査(ヒアリング、実地調査、会計士ヒアリング、監査役ヒアリング、社長ヒアリング、社長説明会)
  →上場承認(公募・売出しに関する取締役会決議、有報を財務局に提出、取引所よりプレスリリースされる)
  →上場
   
  上場申請から上場承認まで3ヶ月、上場承認から上場まで1ヶ月
 ・予備調査
  上場申請直前事業年度の末日からさかのぼって3か月前に予備申請、審査開始、定時株主総会終了後、上場申請となる。
  予備申請を行えば、通常申請に比べ最短で3か月程度、上場までの期間が短縮される。

(2)マザーズ上場の審査の流れ
  ・上場審査の流れは、取引所上場と変わらないが、取引所上場の場合と比べ、提出書類が少ないことから、標準審査期間を2か月としている点に違いがある。

■今週の新規上場会社
上場・公開日    社名                  銘柄コード   市場  公募価格(円)
1119      ロゼッタ                       6182        マザ     695
1119      あんしん保証               7183        マザ   1,460

1120      ベルシステム24      6183        東証  1,555






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2015年11月14日土曜日

11/13 勉強会:扶養控除等申告書には個人番号記載不要 他

1.検証日産自動車事件
■争点
・子会社が減資を行い、親会社に時価よりも低い金額を交付した場合
 親会社に対して時価と交付を受けた金銭との差額について子会社への寄付金課税が成立するかどうか

■子会社が時価よりも低い金額を交付した理由
・旧商法において、減資には払戻限度額がありその払戻限度額を超える払戻しは違法であるため、払戻限度額までしか払戻しをしなかった
・払戻限度超過額を収益として計上することはできないし、実際に払戻しをされていない金額は寄付金にはならない

■裁判所の判断
・営利法人は損をする取引を選択しないはずであり、 損をする取引を選択したということは、損をした部分は寄付である
・法人税において、収益とは経済的な実態に即して実質的に理解することが相当である
・旧商法において、払戻限度超過額を収受することが許されなくても
 許されない=収益ではない、という理解はできない
⇒寄付金課税は成立する


2.海外取引への税務調査、申告漏れ発見の端緒は?

■事例
①租税条約等に基づく「自動的情報交換※1」が端緒となり申告漏れが発覚
具体的には・・・
「自動的情報交換資料等」により、Aが海外で資産運用が見込まれる一方、その運用益が申告されていないと想定されたため調査に着手。
1
法定調書等から収集した情報を支払国の税務当局から受領国の税務当局に対して一括して送付するもの。

②「国外送金等調書」が端緒となり申告漏れが発覚
具体的には・・・
「国外送金等調書」は金融機関が税務署へ提出する法定調書の1つであり、100万超の国外送金、国外からの入金があった場合、送金者等の氏名、住所、送金額等を記載した調書を税務署へ提出する。

⇒国税庁は今後も海外取引に関する税務調査を積極的に行う方針。



3.扶養控除等申告書には個人番号記載不要

■扶養控除等申告書
・原則
 …マイナンバーを記載。(※記載した書類は厳重に7年保管)

・例外
「個人番号については給与支払者に提供済みの個人番号と相違ない」
旨を余白に記載すれば、省略も可能となる。

※保険料控除申告書、退職所得の受給に関する申告書については、現時点では省略可能とはなっていないため、記載必要。
 今後足並みをそろえていく可能性もあるかもしれない。



4.予備的主張

 訴訟において、本来の主張が認められなかった場合に備え、予備的に行う主張のこ

例えば、債務不存在確認訴訟において、
「そもそも借金していない」という本来の主張が認められなかった場合に備え、「仮に借金していたとしても、返還請求権は時効により消滅している」と主張するのが予備的主張


5.タワーマンション節税に国税庁が方針

・高額なタワーマンション(タワマン)の1室を購入し、相続税評価額を下げるという節税策に国税庁が方針

【スキーム】
・タワマン(特に眺望のよい高層階)は、高い販売価格が付く
・マンション1室の相続税評価額は、通達上、下記合計により計算
 -敷地全体のうち1室当たりの土地部分の評価額(路線価)
 -家屋部分の評価額(固定資産税評価額)
・タワマンは、総部屋数が多く土地部分の評価額が小さくなるため、相続税評価額が低くなる(平均で、約3分の1に評価額を圧縮でき、物件によっては7分の1になることも)

 ⇒相続直前にタワマンを購入、相続発生後すぐに売却するようなケースは、相続税評価額=購入価格等 で計算し、追加課税する可能性があるとの方針


6.資本金額の説明義務違反で税理士が敗訴した事件

■概要
・節税目的で税理士と顧問契約
・税理士より法人成りの提案があった
・資本金1億円超で医療法人を設立
・新設1期・2期分の消費税の還付等が受けられなかった

■医療法人側(原告)の主張
節税を目的とした顧問契約を締結したにもかかわらず、損害を被る結果となったことは債務不履行による損害と主張

■税理士(被告)の主張
法人設立時に消費税が免税となる旨を説明したものの、資本金1億円とし「資産価値を高めたい。運転資金を潤沢にしたい」とする原告側の強い要望があったと主張し、債務不履行に該当しないと主張。

■裁判所の見解
・顧問契約の本当の目的が「節税」であること。
・節税目的で法人を設立したにも関わらず損害が発生した。

顧問税理士として節税目的に沿うよう正しく説明・指導しなかったと判断し、税理士に債務不履行の責任ありとの判決を下した。


7.相続タワマン節税:旧措法694復活か?

■タワマン節税とは
⇒市場価格と相続税評価額との乖離を利用した節税策

相続税評価額の計算では、
・階層による評価額に違いがない
・一棟の建物全体の評価額を専有面積の割合で按分
⇒世帯数が多いとひと部屋あたりの評価額が低くなる

ことから市場価格との乖離が生じやすく節税対策で
購入されるケースも多い

■旧措法694
⇒相続開始前3年以内に被相続人が取得した土地建物はその取得価額をもって相続税評価額とする規定。平成8年廃止。

■裁決例(H23.7.1
・購入後居住した形跡がない
・被相続人死亡後すぐに売却
・乖離率5倍(購入3億、評価額0.6億)

⇒評価額は購入価額を基礎に算定すべきと判断された


8.税務当局への事前相談の方法

税務当局への事前相談、照会の方法は下記の4つがある。

(1)タックスアンサー
 国税庁HPに掲載されているFAQ集。

(2)電話相談
 電話相談センターの税務相談官による一般的な税務相談。
 
(3)面接による相談
 税務署が対応する個別案件相談。要予約。

(4)特定案件の事前照会
 各国税局の審理課等で対応する「再建支援等」「特定調停(債権放棄に係るもの)」「企業組織再編成」に係る具体的な事前照会。否認されると企業活動が立ち行かなくなる重要事項に特化している。
 
 ※(4)の窓口一覧


9.権利確定条件付き有償新株予約権の処理を検討(ASBJ

・権利確定条件付きで従業員等に有償で発行される新株予約権(権利確定条件付SOについて会計処理の検討を始める

・権利確定条件付SOの会計処理について
 「複合金融商品適用指針」
 「ストック・オプション会計基準」
 のいずれの適用対象になるか明確化されていない

・現行実務では「複合金融商品適用指針」での処理が多い。
 「ストック・オプション会計基準」に従って報酬費用を計上するケースは少ない

ASBJ事務局より、「ストック・オプション会計基準」の適用範囲に含めることが適切と提案された


10.上場審査の形式基準

(1)本則第一部
  ・株主数2,200人以上
  ・流通株式数20,000単位以上
  ・流通株式時価総額10億円以上
  ・流通株式数(比率)35%以上
  ・時価総額250億円以上
  ・会計監査2年間(虚偽記載なし、かついずれも適正意見であり、直前期は無限
定適正意見)
  ・純資産の額10億円以上
  ・利益の額(経常利益)5億円以上(最近2年間の合計)

(2)本則第二部
  ・株主数800人以上
  ・流通株式数4,000単位以上
  ・流通株式時価総額10億円以上
  ・流通株式数(比率)30%以上
  ・時価総額20億円以上
  ・会計監査2年間(虚偽記載なし、かついずれも適正意見であり、直前期は無限
定適正意見)
  ・純資産の額10億円以上
  ・利益の額(経常利益)5億円以上(最近2年間の合計)

(3)マザーズ
  ・株主数200人以上
  ・流通株式数2,000単位以上
  ・流通株式時価総額5億円以上
  ・流通株式数(比率)25%以上
  ・時価総額10億円以上
  ・会計監査2年間(虚偽記載なし、かついずれも適正意見であり、直前期は無限
定適正意見)

(4)JASDAQ
  ・株主数200人以上
  ・流通株式時価総額5億円以上
  ・会計監査2年間(虚偽記載なし、かつ直前期は無限定適正意見)
  ・純資産の額(スタンダード2億円以上、グロース正(直前期末)
  ・利益の額(経常利益)(スタンダード1億円以上(最近1年間)、グロース 該当なし)(※1

  (※1)「スタンダード」は、既にある程度の利益が出ているレベルの企業向けの区分

     「グロース」は、将来性を秘めた成長途上にある企業向けの区分






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