2015年4月25日土曜日

4/24 勉強会:電子商取引に係る消費税の経過措置 他

1.決算支援業務に保有株式の評価に関する助言義務なし

■経緯
・保有するB社の株式の譲渡を検討していたA社が、A社の顧問税理士Cに株価評価を依頼
 ⇒顧問税理士は、B社と株価算定契約を結ぶ
A社はCが算出した評価額に基づきB社株式を売却した。
 ⇒その際に、A社は他の税理士にB社株式の評価を依頼
  より高い評価額が算定されていた
A社はB社株式を不当に低く売却させられたとCに損害賠償請求をした

■裁判所の判断
CA社の顧問税理士だが、A社との業務委託契約には、株式評価のような特殊契約は含まれないと解釈
CB社と株価算定契約をしている
 A社はCと本件についての契約の当事者ではない
 ⇒Cの算定した評価額をA社が使用してもCには責任がない
・またA社はB社株式を売却する前に、C以外の税理士にB社株式の評価を依頼している
 ⇒どの価格を使用するかはA社が売却前に意思決定できた
・以上より、Cに損害賠償する義務はない


2.請求書日付指定の経費繰上計上は仮装

■事案
災害による被害復旧のために各事業者と締結した修繕工事等請負契約、備品等の売買契約に係る各費用を事業年度末日付で費用処理したことに、事実の仮装が認められるか否かが争われたもの。

■結論(審判所の判断)
仮装行為に当たり、重加賦課決定処分が下った

■主な判断理由
・請求書を事業年度末日以前の日付で発行することを業者へ依頼した。
・事業年度末日までに役務提供・備品の引き渡しが未了であった。
⇒これらは書類の改ざんなど、経費の繰上計上を意図的に行ったものである


3.スキャナ保存の見直しなど、平成27年度税制改正の省令公布

■所得税法等の一部の法律の改正が331日に公布された事に伴い、関係する政省令も同日に公布された。

(1)欠損金に係る帳簿書類の保存期間
 ⇒大企業における欠損金の繰越期間が10年に延長されることに伴い、欠損金に係る帳簿書類の保存期間も10年に延長
 29/4/1以降開始事業年度発生の欠損金より対象

(2)住民票の写し等の添付を省略
 ⇒マイナンバー制度導入後は住民票の添付省略可
 ⇒住宅ローン控除、贈与税の配偶者控除、小規模宅地の特例 等
 ⇒施行は27/7/1

(3)スキャナ保存の3万円未満基準の削除
 ⇒契約書・領収書は3万円未満のもののみスキャナ保存可能だったが、3万円以上のものについてもスキャナ保存可能になる
 ⇒施行は27/9/30


4.新税効果適用指針は誰のためのもの?

■企業会計基準委員会が検討している「DTAの回収可能性に関する適用指針」
 (以下、適用指針)の公開草案の取り纏めが大詰め
3月決算会社の場合、公開草案によれば、
 連単ともにH293月期から強制適用、H283月期から早期適用可

■「会計方針の変更」か「会計上の見積りの変更」か?
 (前提)
・会計基準等の改正に伴う変更であれば、「会計方針の変更」に該当
 ⇒遡及修正するため、P/L損益に影響なし
・新たに入手可能となった情報に基づく変更であれば、「会計上の見積りの変更」に該当
 ⇒遡及修正せず、P/L損益として計上

 (適用指針の適用は?)
・新たに入手可能となった情報に基づく変更ではない
・適用指針のベースである「委員会報告66号」は、会計処理の原則・手続を定めるものであり、会計基準等に該当する
⇒「会計方針の変更」として取り扱う方向
 (「会計方針の変更」として取り扱いつつも、一方で、遡及適用はせず影響額を利益剰余金期首残高に反映させる方法も検討中)


5.勤務税理士の賠償責任を認めた税賠事件が決着

■事例
・所長税理士()が相続税の申告業務の委任契約を締結。
・申告書作成業務を担当したのは勤務税理士()
・控除できない債務控除を計上し、相続税のほか延滞税・加算税が追加徴収された
・税理士側の過失によるものとして賠償請求された

■地裁判決
・制限納税義務者であるにも関わらず債務控除を行った
 ⇒国籍の確認を怠ったBに対し注意義務違反と認定
・相続税の申告等の過誤は債務不履行及び不法行為に基づくと判断
 ⇒Aは契約の債務不履行として、約1,000万円超の損害賠償支払い
  Bは不法行為として、約1,165万円の損害賠償支払い

※制限納税義務者とは
 相続時点で海外国籍かつ海外居住である相続人のこと
 ⇒自身が取得した国内財産に係る債務のみ債務控除可能

■高裁判決
・Aはもちろんのこと、Bも公的な資格に基づいて申告に関与しているので、勤務税理士とはいえども個人責任を負うこともやむを得ないと指摘
 ⇒地裁判決を支持し、上記同額の損害賠償を命じた

・税理士側は上告しなかったため判決が確定。

■税理士としての責任
会計事務所の勤務税理士であろうが、実際に担当した申告書作成業務に関し、税理士としての責任が問われるリスクが発生する。


6.電子商取引に係る消費税の経過措置

・国外事業者が、国境を超えて日本で行う電子書籍、音楽、広告配信等
 -H27/9/30以前 : 不課税取引
 -H27/10/1以後 : 課税取引(8%)

【経過措置】
H27/4/1前に締結した契約で、10/1前から引続き行われる役務提供
 ⇒10/1以後も不課税取引

 例)H27/1月~12月までの1年間の広告配信を契約しているケース

H27/4/1以後に締結した契約で、10/1をまたぐ役務提供
 ⇒月額料金が定められていれば、9月分までは不課税、10月分以後は課税

 例)H27/4月~H28/3月までの1年間の広告配信を契約しており、月額料金が定められているケース
 
※月額の定めが無ければ、1年分の費用すべてが課税
 (全部役務の完了時で判断するため)


7.消費税:新設法人等の納税義務

■原則
期首資本金が1,000万円未満であれば設立1期目、2期目は免税

■特例(納税義務ありとなる場合)
(1)特定期間おける課税売上高、給与支払額のどちらも1,000万円を超える場合、設立2年目において納税義務ありとなる。

(2)特定新規設立法人に該当する場合
設立1年目または二年目の期首において、基準期間に相当する期間の課税売上高が5億円超である法人に発行済株式等の50%超を保有されている法人は納税義務ありとなる。

<参考>個人事業者が法人成りした場合
個人事業者本人の50%超出資により法人成りした場合、2年前の課税売上高が5億円を超えていると納税義務ありとなる。


8.住民税:住民税均等割の『無償増減資の加減算措置』(平成27年度改正)

■原則
均等割の税率区分の基準は,原則,法人税法上の「資本金等の額」である。

■平成27年度改正
均等割の税率区分の基準である「資本金等の額」から
 ・無償減資に係る一定の欠損てん補額を減算できることとなり
 ・無償増資を行った場合には,その増資相当額を「資本金等の額」に加算することとなった
   ※「資本金等の額」自体の定義は変更なし

本年41日以後開始事業年度に行った無償減資に係る欠損てん補額のみでなく、過去の欠損てん補額についても「資本金等の額」から減算できる。
無償増資についても同様に過去の増資相当額が加算される。

■主な影響
欠損填補を実施したことのある法人については、均等割の負担が軽くなる可能性がある。


9.責任限定契約

・役員、会計監査人は任務を行ったことで生じた損害について賠償責任あり
・業務執行取締役以外であれば責任限定契約を締結できる(定款に記載必要)

・責任限定:善意無重過失であれば限定できる。
 あらかじめ会社と合意した金額か最低限度額のいずれか高い金額に限定。
  ※最低限度額:代表取締役=年俸×6、業務執行取締役=年俸×4、その他=年俸×2

会社法改正前
・社外取締役でない取締役、社外監査役でない監査役は責任限定契約NGだった。
会社法改正後
・業務執行取締役を除く取締役とすべての監査役に責任限定契約がOKになった

【責任を免除できる場合】
①株主総会の特別決議(出席株主の2/3の賛成)
②取締役会決議(定款に取締役会で免除できるという記載が必要)
③責任限定契約(上記)

いずれの場合も「最低限度額」までは責任を負う。
唯一、株主全員の合意があれば全額免除できる。


10.予定取引に関するヘッジ会計の中止と終了

1. 言葉の説明
(1) ヘッジ会計
 ヘッジの効果(価格等変動のリスクの回避)を会計に反映させるための会計処理
(2) 予定取引
 実際に取引はまだ行っていないが、将来取引が実行される可能性が高い取引
(3) ヘッジ対象
 為替変動等を伴う資産や負債。価額変動等を抑えたい資産・負債。
(4) ヘッジ手段
 リスク軽減手段としてのデリバティブ取引

2. ヘッジ会計の終了と中止の判定
(1) 終了 ⇒ ヘッジ対象の消滅や、予定取引が実行されなくなった場合
(2) 中止 ⇒ ヘッジ手段の消滅など

3. ヘッジ手段の損益認識時点
(1) 終了 ⇒ ヘッジ会計終了時点で損益認識
(2) 中止 ⇒ ヘッジ対象の損益認識時点で損益認識


11.特定資産の買替特例制度の改正

1. 特定資産の買換特例とは
 特定の資産を売却し、新たな特定の資産を取得した場合に、譲渡益の課税を繰延る制度。
 ※取得資産の取得価額を減額(圧縮)し、減価償却を通じて課税する。

2. 改正
(1) 特定資産買換のうち、土地等を中心とする買換え(9号買換え)が改正
(2) 改正内容
 ・期限の延長        … H26.12末 ⇒ H29.3
 ・買換資産の対象範囲の変更 … 機械装置及びコンテナ用貨車を除外
 ・圧縮限度額割合      … 80% ⇒ 取得資産の場所により変わる。
 ※地方から都市部への資産を買換は75%など。
  ※圧縮限度額
  ⇒ 買換資産の取得価額or譲渡資産の対価の小さい額)×差益割合×圧縮限度割合
 ※差益割合 = 譲渡益 / 譲渡資産の対価


12.「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」改訂版の解説

■計算書類
 大きな改正は平成2741日以後開始する事業年度から適用
 平成263月期決算では「退職給付に関する会計基準」への対応のみ留意
 注記表:
  会計方針に重要性がある場合、
  「期間定額基準」
  「給付算定式基準」
  のいずれの会計方針を選択したかを明記するよう求められる(各社で要否を判断)

■事業報告
 1.責任限定契約
  取締役or監査役との間で責任限定契約を締結している場合、
  (1) 契約の相手方、(2) 契約の内容の概要
  を記載する。

 2.社外取締役を置くことが相当でない理由
  ※社外監査役が2名以上あることのみをもって当該理由とすることはできない。

 3.業務の適正を確保するための体制等の整備に関する事項
  子会社についての内部統制に関する規定を記載するとの例示が追加

 4.親会社等との取引に関する事項
  関連当事者取引注記を要するもの(個別ベース)について、取引の合理性確保のために留意した事項(自社の利益を害さないように留意したか)について記載する

 5.その他
  会計監査人の報酬等、解任又は不再任に関する事項
  特定完全子会社に関する事項


13.近年のインサイダー取引規制見直しの概要

・事業譲渡と同様、合併・会社分割等による保有株式承継も規制対象に追加(H24年改正法)
・組織再編の対価としての自己株式交付は新株発行と同様適用除外とされた(H24年改正法)
・純粋持株会社等に関する軽微基準は連結ベースの計数を用いることとされた(H24年改正法)
・重要事実を他人に情報伝達した会社関係者が刑事罰・課徴金の対象となった(H25年改正法)


14.株主代表訴訟への対応実務 -監査役-

 (1)対応スケジュール
・株主による提訴請求
 ↓60日以内(※)
・取締役等へ提訴するか否かの決定
 ↓
・提訴しないと判断した場合は、株主が株主代表訴訟を提起できる

(※)考慮期間中にすべきこと
・事実関係の調査
・法的検討
・訴訟になった場合の見通しの検討

(2)提訴するか否かの判断ポイント
・訴訟の可能性
・提訴の必要性
・会社が被った損害の程度(金額)
・提訴対象取締役からの損害の回収可能性
・会社の人的・時間的・金銭的負担
・会社の信用に対する影響

(3)応用編
・利益相反状況にある監査役(監査役にも善管注意義務があった恐れ)
⇒上記(1)(2)の対応をすることに変わりはない


15.グローバル節税 「タックスヘイブン」

いわゆる「タックスヘイブン」には4つのパターンがある。
(1)無税国:所得、相続税がまったくかからない(バミューダ、ケイマンなど)
(2)低税率国:税金が安い(シンガポール、香港など)
(3)国外源泉所得非課税国:国外で生じた所得は非課税(日本も配当に関してはこのタイプ)
(4)租税特典国:持株会社に対する免税、パテントボックスなどがある国

グローバル節税にはこれらの国をうまく組み合わせて(?)利用する必要がある。








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2015年4月19日日曜日

4/17 勉強会:監査委員会設置会社 上場58社が移行表明 他

1.分掌変更の役員退職金で納税者勝訴の注目判決

■まとめ
・分掌変更による役員退職金が分割支給された場合の損金算入時期
 ⇒分掌変更があった事業年度でもOK、各支給年度でもOK
 ※各支給年度の損金とする要件と思われるもの:
  実際に退職した状況と言えること、支給の総額と分割支給する期間の明確な定めがあること、各支給年度において損金経理すること

■経緯
A社の代表取締役(創業者)が非常勤取締役になった
 代表権なし、給与も50%超減額
 実際に退職した状況と言える
X18月期に開催した取締役会で役員退職金(2.5億円)の支給と
 資金繰りが厳しいため、3年以内に分割支給することを決定
 その事業年度においては7.5千万円を支給し、損金にした
X28月期に1.25億円を支給し損金にした
 ⇒この1.25億円はX28月期の損金かどうか

■主張
・課税庁
 役員退職金について債務確定したのはX18月期
 よって、損金算入もX18月期にすべきでX28月期は損金算入できない
 支給事業年度で損金算入するのは完全退職したときのみで、分掌変更の場合は予定していない

A
 支給のあった事業年度に損金処理するのは、法人税法の基本通達でも認められているし、他企業でも行われている(いわゆる公正妥当と認められる会計処理)
 ⇒法人税が予定する公正な所得計算を阻害していない

■裁判所の判決
・役員退職金の損金算入時期は、公正妥当な会計処理に従うべき
・支給年度に損金算入するのは、中小企業では一般的に行われている会計処理
 ⇒公正妥当な会計処理と言える
・よって1.25億円はX28月期の損金と認められる


2.東京都のみ異なる条例公布日、法定実行税率も算定には要注意

・東京都のみ改正条例が、41日に公布された
→よってH273月期の法定実行税率=33.10
                     第1Q33.06

今回のように改正税法や改正条例の公布タイミングでの影響を避けるため、国会での成立時点等への変更も検討されている。


3.為替予約等の含み益を10億超計上漏れ

・為替予約の含み益について期末の時価評価を行っていなかった事例
・金融商品取引税制が複雑、実務上も絶対量が少ない、近年の為替変動が大きかった等の要因が重なっている

■以下に該当しない場合は、含み損益を時価評価する
(1)期末までに、ヘッジ対象に係る損益が実現していない
(2)ヘッジ処理の要件を満たす
 ※ヘッジ対象の損益とヘッジ手段に係る損益の差額が80%~125
(3)振当処理の要件を満たす
 ※外貨建て債権債務の換算をする時に為替予約のレートを用いる


4.継続企業の前提の注記が長期間にわたる企業も

■平成2612月期決算会社では、4社の監査報告書において継続企業の前提に関する注記の追記情報あり

■継続企業の前提に関する注記と追記情報
・継続企業の前提
 企業会計の基準は「企業は半永久的に存続する」ことを前提
(「企業は半永久的に存続する」ことを前提として事業活動しているため)

・継続企業の前提に関する注記
 期末日において、企業が将来にわたって事業活動を継続することが不確実である場合、企業はF/Sに一定事項を注記
(主要な取引先の倒産など一定の事象が生じ、将来に渡って事業を継続できるかどうか疑わしくなった場合、F/S利用者の注意を喚起する必要があるため)

・追記情報
 企業が継続企業に関する注記をした場合、
 監査人はA/Rに継続企業に関する注記について追記
(F/S利用者が重要情報である継続企業に関する注記を見過ごすことを防ぐため)

■事例
(1)セーラー万年筆(東証2)
 数期連続して重要な当期純損失を計上
 ⇒6期連続注記

(2)タツモ(東証JASTAQスタンダード)
 4期連続営業損失の計上+金融機関から返済条件の緩和
 ⇒初めて注記

(3)ジオネクスト(東証JASTAQグロース)
 9期連続営業損失の発生及び営業キャッシュフローのマイナス
 ⇒8期連続注記

(4)SmartEbook.com(東証JASTAQスタンダード)
 5期連続営業損失及当期純損失の計上
 ⇒2期連続注記


5.会社法改正を受け法人税法施行令も改正

平成2751日施行の会社法改正に伴い、法人税法施行令の一部が改正される。

(1)株式併合による反対株主からの株の購入
  改正会社法:
  株の併合に反対している株主から自己株式を購入する場合、併合による端株であっても公正な価格で買い取る必要がある。

  法人税法施行令:
  自己株式を購入するとみなし配当の取扱いがあるが、併合により反対する株主から端株を買い取ったとしてもみなし配当は発生しない。

(2)監査等委員会設置会社に関する取扱い
  改正会社法:
  監査等委員である取締役が代表取締役の選定や、取締役の報酬の決定を主導的に関与することが可能

  法人税法施行令:
  利益変動給与ににおける役員報酬の支払いについて、通常であれば株主総会での決議が必要であるが、監査等委員会設置会社は、取締役会の決議による決定でも可能となる

改正会社法の施行日である平成2751日より適用となる


6.役員退職慰労引当金は税効果QAを踏襲

<企業会計基準委員会の税効果会計適用指針>
・役員退職慰労引当金(将来減算一時差異)の取扱(予定)は下記の通り。
(1)役員の退任時期を合理的に見積もり、差異解消を合理的にスケジューリング可能
 ⇒スケジューリング結果に基づき回収可能性判断。

(2)スケジューリングが合理的にできない
 (A)原則
  ⇒スケジューリング不能な差異として扱う。
 (B)分類2に該当する場合で、将来回収できることを合理的に説明可能
  ⇒回収可能性あるものとして扱う。

※【分類2】以下すべての要件を満たす会社
・過去3年間+当期すべてで、課税所得が安定的に生じている
・当期末、経営環境に著しい変化なし
・過去3年間+当期いずれかで、重要な税務上の欠損金が生じてない


7.貸倒引当金 改正点確認

■大法人(資本金1億円超)の経過措置終了
資本金1億円超の法人が貸倒引当金を損金算入できるのはH273月期が最後となる(従前の限度額の1/4

■法定繰入率の基準年度が改正
法定繰入率による場合の「実質的に債権とみられないものの額」を簡便法で計算する場合の基準年度が改正された。

改正前:
平成1041日~平成12331日までに開始された各事業年度
改正後:
平成2741日~平成29331日までに開始された各事業年度

(簡便法の算式)
A×B/C

A:当期末の一括評価金銭債権
B:原則法による実質的に債権と見られないものの額
C:対象期間の一括評価金銭債権総額
→適用初年度の対象期間は当期のみ

結果、H283月期は原則法と一致する(有利判定不要)


8.消費税:ゴルフ会員権の譲渡と消費税

■発行体のゴルフ場からの原始取得
 ⇒不課税取引
  ・株式方式のケースは資本の払込みとして扱う。
  ・預託金方式のケースは預け金として扱う。

■発行済のゴルフ会員権の売買
 ⇒課税取引(株式方式、預託金方式を問わない)
  ・非課税取引とされる有価証券には該当しない。

■預託金方式のケースの返還時
 ⇒不課税取引
  ・預け金の戻りとして扱う。
 ※返還されないケースの貸倒れについては、貸倒れに係る消費税額の控除の対象にはならない。


9.監査委員会設置会社 上場58社が移行表明

・監査等委員会設置会社では
  2人以上の社外取締役が必要だが、監査役会設置会社で必要であった2人以上の社外監査役は不要となる

・監査等委員会
  取締役で構成/3人以上/過半数は社外取締役


10.キャッシュ・アウトの手法の整備に係る改正項目

1. キャッシュ・アウトとは
少数株主から株式を現金等で取得 ⇒ 100%完全子会社化すること。

2. 法改正の目的と内容
・特定支配株主による株式等売渡請求制度
(1) 機動的なM&Aの実施を目的
 ⇒ 特定支配株主は株主総会決議なし(取締役会決議でOK)で、キャッシュ・アウトが可能
(2) 株主への情報提供の充実を目的
 ⇒ 事前及び事後に条件・結果等を株主に通知
(3) 株主救済を目的
 a) 取得の差止請求
 b) 売買価格の決定の申立
 c) 取得無効の訴え

※特定支配株主 … 総議決権の90%以上を保有する株主

・株式併合
(1) 株主への情報提供の充実を目的
 ⇒ 事前及び事後に条件・結果等を株主に通知
(2) 株主救済を目的
 a) 株式併合の差止請求
 b) 株式併合に反対する株主による株式買取請求制度

・全部取得条項付種類株式の取得
(1) 株主への情報提供の充実を目的
 ⇒ 事前及び事後に条件・結果等を株主に通知
(2) 株主救済を目的
 a) 取得の差止め請求
 b) 取引価格決定の申立

3. 法改正の影響
従来、実務でのキャッシュ・アウトの手法は、全部取得条項付種類株式の取得が殆ど。
 ⇒ 特定株主の株式等売渡請求や株式併合も、実務上活用されると考えられる。

※株式併合等は、株主保護の観点から従来あまり利用されていなかった。


11.基準改正で乖離が広がった!?持分法と連結はここがこう違う

■付随費用(M&Aコンサルフィーなど)
 単体での処理 :取得原価に含める
 連結子会社  :連結取得原価に含めない
   単体の取得原価を修正する必要がある
 持分法適用会社:取得原価に含める(改正前基準のまま)

■売却時ののれん未償却残高(相当額)の償却
 連結子会社  :しない
支配を獲得してから支配を失うまでの間(持株比率50%~100%)の持分変動によるのれんの増減はなし
 持分法適用会社:する(改正前基準のまま)


12.親会社を合併法人、債務超過の100%子会社を被合併法人とする適格合併

①親会社の合併処理
 ・子から受け入れた資産と負債の差額と、子会社株式との差額を抱合せ株式消滅差額とする
 ・連結上、抱合せ株式消滅差額は消去する

②抱合せ株式消滅差額に係る税効果
 ・抱合せ株式消滅差額を法人税申告書上、別表四で加算(減算)留保する
 ・抱合せ株式消滅差額は一時差異ではない為税効果なし

③子会社に対する貸引きの取扱い
 ・子会社に対し貸付金があり貸引きを設定している場合は合併により取り崩される
  戻入益は特別損益において抱合せ株式消滅差額と両建て表示する


13.M&Aに関する改正項目について

(1)親会社による子会社譲渡について
現行:株主総会決議は不要(重要な財産の処分は取締役会)
改正:株主総会特別決議が必要
(要件)・子会社帳簿価額/親会社総資産(単体)>20% 
    かつ
      ・譲渡後に子会社の議決権の過半数を持たない

※実態としては事業譲渡に近いため、事業譲渡と同じ株主総会の特別決議とした

(2)組織再編の差止請求について
現行:通常の組織再編(略式以外)は明文の規定なく、見解が分かれていた
改正:通常の組織再編(略式以外)で法令・定款に違反、株主が不利益を受ける恐れがある
→組織再編の差止請求できる


14.グローバル節税 「パテントボックス」

・世界各国は「法人税率軽減」の他にも様々な優遇措置で、企業の誘致を図っている。
・イギリスには「パテントボックス」という制度がある。
 ⇒ 特許発明その他の革新によって得た所得については、10%の軽減税率が適用される。
 ⇒ 「特許」は英国知的財産庁、欧州特許庁などに認定されている必要あり。

 ⇒ベルギー、オランダ、スイスにも同様の制度あり








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2015年4月12日日曜日

4/10 勉強会:支配株主が新たに現れた場合の第三者割当に関する法改正 他

1.審判所、貸倒れの認定で債権者側の事情を重視

■まとめ
・審判所が貸金等の全部または一部の切捨てに関する基本通達に解釈を示した
・注目は、審判所が法令解釈において、興銀最高裁判決を引用し債権者側の事情を重視した判断を行った点
・「債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる 経営的損失等」の視点に基づいた検討を行っている


2.中小企業投資促進税制、取得価額の合計額判定に注意

■中小企業投資促進税制の上乗せ措置の適用を受ける際の対象設備の取得価額に注意!
・中小企業投資促進税制の対象となる「①特定機械装置等」の判定と生産性向上設備投資促進税制の「②特定生産性向上設備等」の判定について
⇒それぞれの制度において行い、いずれにも該当した減価償却資産が中小企業投資促進税制の上乗せ措置の対象となる

⇒この場合、②の判定を行う上では、①における合計額の判定上、対象外となった資産も含める!

※中小企業投資促進税制の上乗せ措置とは?
中小企業者などが、該当期間内に、特定機械装置等のうち「②特定生産性向上設備等」に該当するものの取得等をして条件を満たせば、即時償却又は7%(特定の中小企業者などについては10%)の税額控除ができる。

※制度参考(国税庁HPより)


3.小規模宅地特例の手続要件、柔軟な取扱いは認められるか?

■小規模宅地の特例
 ・相続や遺贈によって取得した土地のうち、一定要件を満たせば相続税の課税価格を5080%減額して良い制度
 ・特例を受けるためには要件が複数必要

■特例対象宅地が複数ある場合
 ⇒相続人全員の同意を証する書類の提出が必要

■今回の事例
 ・Aさんが遺言で宅地を相続した
 ・他の相続人が遺言を不服とする訴訟を起こしている
 ・Aさんが他の相続人の同意を受けられないまま、小規模宅地の特例を適用する申告書を提出
 ・税務署が全員の同意を受けていないと更正処分


4.企業会計基準委員会が税効果会計の適用指針を開発中

⇒基本的に、委員会報告66(DTAの回収可能性に関する監査上の実務指針)の内容を踏襲する方向

■一方で、会社分類(2号・3)の要件について変更する方向
変更前:「経常的な利益」ベース⇒変更後:「課税所得」ベース

たとえば、会社分類2号の要件は、
 当期及び過去(概ね3年以上)連続して、
 変更前:ある程度の「経常的な利益」が生じていること
⇒変更後:「課税所得」が安定的に生じていること
(臨時的な原因により生じたものを除く)

■変更理由
(1)他の会社分類との整合性を図るべき
 (他の会社分類は「課税所得」で判断)
(2)DTAの回収可能性は本来、将来減算一時差異と比較し
 十分な「課税所得」があるかどうかで判断すべき
 (「利益」ではなく)


5.未払賞与、通知なければ損金と認めず

■使用人賞与の損金算入要件
・支給額を支給を受ける者全員に対し通知していること
・通知額を通知した使用人に対し事業年度末から1月以内に支払うこと
・支給額を通知した事業年度で損金経理していること

上記3要件をみたしていれば、使用人への賞与が未払いであっても損金算入可能。

■定期賞与の支払いの場合は?
(結論)
給与規定により従前より職員に周知されていたとしても、上記3要件を満たしていなければ損金算入はできない

(理由)
・定期賞与であっても、業績等により支給割合が変更される余地があること
・給与規定で定められていても、使用人は具体的な支給額を把握できない。
 また周知されていることが通知があったとはいえない

夏季賞与や冬季賞与が支給される月の前月に、事業年度末(主に6月決算、11月決算)をむかえる会社は注意が必要となる
H27122日判決の事例であり、控訴中である。


6.不動産譲渡代金の減額は、「貸倒れ」によるもの

■審判所事例
・請求人がX社へ土地を譲渡
・譲渡代金は分割支払い
・途中で支払いが滞ったため、代金の一部を減額する覚書を締結
⇒減額分をどう取り扱うか?
 -請求人 :貸倒れであり必要経費
 -原処分庁:単なる債権放棄であり、必要経費にはならない

■結論
・必要経費算入OK
・下記、貸倒れの要件を満たしている
 (1) X社は債務超過の状態が相当期間継続している
 (2) 弁済を受けることができなと認められる
   ※実際、支払いが滞っていた
 (3) 書面により債務免除の通知を出している
   ※覚書を締結していた


7.相続税:小規模宅地特例と事業の規模

<事業>の規模は適用する特例で異なる
特定事業用宅地等の特例…不動産貸付業以外の事業が対象
貸付事業用宅地等の特例…不動産貸付業が対象

・特定事業用宅地等(特定同族会社事業用宅地等)の場合
⇒事業と称するに至らない規模のものは含まれない
 少なくとも所得税法上事業所得に該当する規模が必要

(参考)売電のため太陽光発電設備を設置
○周辺の除草など一定の管理なされている…所得税法上「事業所得」に該当
×とくに管理をしていない…所得税法上「雑所得」に該当

・貸付事業用宅地等の場合
⇒事業の規模は問わない。所得税法上の「事業的規模」を満たさない貸付でもOK


8.法人税:支払先が明らかにされていない支出の税務処理

一般的に考えられる税務処理は以下のいずれか
(1)使途秘匿金
 ・【損金不算入】とした上で、【支出額の40%の税金】がかかる。
 ・実務で使う機会は皆無。

(2)役員賞与
 ・【損金不算入】となるほか、【源泉徴収漏れ】が問題となる。
 ・対象の支出が社長個人の費用に充てられているケースが多いため、実態に合致することが多い。
 ・実務でよく使う。

(3)役員貸付
 ・翌年の定期同額給与を増加させることで回収原資を作り出すことができる。
  実質的に期ズレで損金不算入可能。
 ・状況に鑑みて可能であれば、この処理を使いたい。


9.評価性引当額について

・繰延税金資産(DTA)は将来、課税所得を減少させ、税金負担額を減額すると認められる範囲でのみ計上可能
・その範囲を超える部分は控除しなければならない
・評価性引当額=回収可能性が無いと判断し控除した金額のこと

・評価性引当額は
 「DTA及びDTLの発生原因別の主な内訳」において開示される。

⇒合計額が一括で記載されるため、どの部分が回収不可能なのかわかりにくいとの声あり
⇒内訳を開示する案が検討されている。


10.支配株主が新たに現れた場合の第三者割当に関する法改正

1. 現行法の第三者割当の手続
・発行可能株式数の範囲内での株式の発行
・有利発行でない
⇒ 上記を満たせば、取締役会決議で募集株式の発行が可能

2. 改正内容
支配株主(総議決権の50%超を保有する株主)が新たに現れる場合、下記手続を実施しなければならない。

(1) 株主に株式発行にかかる事前情報の通知又は広告
(2) 総議決権の10%以上を有する株主が反対した場合には、株主総会決議を要する。
※ただし、緊急性を要する場合には、株主総会決議は不要
※緊急性を要するとは、財政状況が悪化した場合など

3. 留意点
 支配株主が新たに現れる場合には、通常の手続とは異なるため留意が必要。


11.仮装払込を行った場合の責任と株主の地位について

1. 仮装払込をした引受人及び取締役の責任を規定
(1) 仮装払込をした引受人
⇒ 会社に対し、出資額の全額の払込が義務
(2) 仮装払込に関与した取締役
⇒ 引受人と連帯して、出資額の全額の払込が義務
※現行法では、責任を定めた規定なし

2. 仮装払い込みをした引受人は株主か
⇒ 出資額の全額を払い込むまで、株主の権利を行使できない。


12.本年株主総会の実務対応ポイント

■関連法規の適用時期
 会社法:5月1日施行(5月1日以後開催される定時株主総会から適用)
 CGC:6月1日適用開始
 ※CGC=コーポレートガバナンスコード
 ※今回の記事で触れている改正で主に対象となるのは上場会社

■総会の実務対応ポイント
(1) 社外取締役を置くことが相当でない理由への対応(()は説明が必要な場合)
  ・定時株主総会での説明(事業年度末に社外取締役を置いていない場合)
  ・事業報告への記載(同上)
  ・株主総会参考書類への記載(取締役選任議案を付議し、かつ、総会後に社外取締役が存しない見込の場合)

(2) CGCとの関連
 (株主総会と関連する項目)
  ・招集通知の発送日前ウェブ掲載
  ・議決権電子行使プラットフォームの利用等や招集通知の英訳を進めるべき旨が規定されている
   平成276月株主総会でこれらを実施しない場合には、しない理由の開示が必要になるのでは?
 (議案・機関と関連する項目)
  ・独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきと規定
   確保しない場合には、しない理由の開示が必要となる
 (報告書の提出)
   CGCの各原則を実施しない場合の理由等の開示が必要(コーポレートガバナンス報告書)
   遅くとも定時総会の6か月後までに提出


13.改正会社法要点(ガバナンス)

・多重代表訴訟の制度
 会社グループ最上位の会社の株主が、完全子会社の中で特に重要な完全子会社の取締役や監査役等の責任を訴えにより追求できる

・旧株主による責任追及等の訴えの制度
 株式交換等の効力発生日で株主であれば、株主でなくなった場合でも責任追及等の訴えの提訴を請求できる


14.公開買付(TOB)について

1)特徴
・買付者があらかじめ、買付期間、数量、価格津の条件を提示して市場外で不特定多数の株主に応募を勧誘
⇒不特定多数に応募をかけるのは
・例えば過半数超の獲得を目的とする場合、つまり支配権を有することが出来る場合は、市場価格以上の価格で買うメリットがある。
 この市場価格以上の部分が支配権プレミアムと呼ばれる。
 仮に一部の大株主だけから買い取ると、他の株主は売却機会が与えられなくなり不平等になる。
 よって、(2)のルールに基づき公開買付が義務付けられる。

2) 強制公開買付(主な場合)
5%ルール
 直近60日間のなかで、11名以上から市場外で買付し、買付後の所有割合が5%を超える場合

3分の1ルール
 市場外による買付を行って、買付後の所有割合が3分の1を超える

3)買付条件
・期間は20営業日~60日営業日
・いったんTOBスタートすると撤回は×
・株主に不利な条件に変更も×


15.グローバル節税 「コーポレートインバージョン」

・「タックスヘイブン税制」
⇒ タックスヘイブンにある【子会社】の利益に対して適用される
⇒ タックスヘイブンに【親会社】を作っても適用対象外

・「コーポレートインバージョン】
⇒タックスヘイブンに親会社を設立し、節税を行う手法

・コーポレートインバージョンに対しては、タックスヘイブンの【親会社】株式を保

有する国内の株主に対して留保金課税を行う、等の手法で租税回避対策が取られている。








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