2016年10月30日日曜日

10/28 勉強会:業種別税務調査の対策ポイント 運輸・交通・通信業 他

1.公益法人に財産を贈与した場合の非課税課税制度の留意点

■非課税課税制度
・一定の法人に対する寄付について贈与税を課税しない制度
・外国法人、人格のない社団等は除外

■適用が認められない場合
・町内会や自治体への寄付(対象法人ではないため)
・自己の作品の寄付(事業所得の対象のため)
・寄付をした土地の上に建物を建設して居住(寄付者の私的利用)
など


2.顧問先の不正資金流出めぐり、税理士法人に損害賠償命じる

【事案】
会社よりA社に対する仮払金を縮小したい旨の相談を受ける
税理士法人は以下の処理を実行
【期末】未払金(×社)/仮払金(A)⇒他社に対する未払金と相殺
【期首】仮払金(A)/未払金(×社)⇒期首に洗替えで復活
⇒これにより資金流出を見逃し、隠ぺいに加担したと損害倍所を請求される。

【東京地裁】
税理士法人は適正な財務書類を作成する義務ありと判断。
本ケースでは義務違反あり、ただし、資金流出との因果関係なしと判断。

【東京高裁】
東京地裁同様、適正な財務書類を作成しなかった点、義務違反あり
⇒不適正な財務書類が提出されて、総会で不正の兆候を把握する機会を逸した
 加えて、税理士法人による財務書類の適正さを表明する書類あり
 義務違反との因果関係ありと判断

結論⇒総会後1ヶ月の資金流出額×2(8割は過失相殺)を税理士法人へ損害賠償を命じた。
なお、会計操作が税額に関係しない、という言い訳は通用しなかったとのこと。


3.ディスクロージャーワーキング・グループとは?

・企業と投資家の建設的な対話促進の観点から企業の情報開示のあり方を検討する金融庁の審議会
4/18の報告書では
・決算短信について、「経営方針」の開示を不要とすることなどを提言
・四半期決算短信の廃止は実現せず
⇒ただし今後見直しが行われる可能性が高い


4.所得拡大促進税制の適用失念に救済なし

期限内申告書に必要書類を添付していなかった原告法人が更正の請求による特別控除の適用を求めた税務訴訟

(参考) 所得拡大促進税制の適用を受けるために必要な手続き
・雇用者給与等支給増加額及び控除を受ける金額を確定申告書等に記載
・金額の計算に関する控除明細を申告書に添付

■判決
当初申告書に控除明細の添付が無い場合、法人税額の特別控除は適用できない。


5.5年・8割雇用維持要件、見直しの可能性

事業承継税制適用の要件が平成29年度税制改正で見直される見込み

■事業承継税制の継続要件
・「5年間にわたり、雇用を平均8割維持しなければならない」という要件が達成出来ず事業承継税制の適用の見送っている企業が多い
・「5年間」要件は変わらないまま、「8割」要件が引き下げられる見込み

【参考】事業承継税制の継続要件で厳しいと回答されたものTop4
(1)従業員数8割を5年間平均で維持すること
(2)すべての対象株式を継続保有していること
(3)資本金等を減少することが出来ないこと
(4)資産管理会社に該当していないこと


6.会計方針の変更(先入先出法から総平均法への変更)

■過年度遡及会計基準の適用と申告調整について会計方針の変更をした場合、会計上、遡及適用する
⇒会計上の利益剰余金期首残高をそのまま別表五()に反映した場合、前期の期末利益積立金額と当期の期首利益積立金額が不一致
⇒当期の期首利益積立金額を組替表示して申告調整

(設例)
・棚卸資産の評価方法を当期から先入先出法から総平均法へ変更
・前期の評価額:先入先出法の場合 550、総平均法の場合 500
・総平均法に変更した場合、当期における棚卸資産期首残高50減少⇒売上原価50過少⇒利益50過大

()                   
利益積立金額       前期末   当期首 
棚卸資産(過年度遡及)           50
繰越損益金          650     600
差引合計額          650     650

(会社処理)
なし

(税務処理)
売上原価認容 50 / 棚卸資産(過年度遡及) 50

(修正処理)
売上原価認容 50 / 棚卸資産(過年度遡及) 50

(別表調整)
別表四    減算(留保) 売上原価認容50
別表五()Ⅰ 減算    棚卸資産(過年度遡及)50


7.フェア・ディスクロージャー・ルール導入へ

証券の発行企業等が重要かつ未公表の内部情報を、第三者に選択的に開示することを禁止するルール
※欧米では既に導入済み

・金融庁がタスクフォースを設置し検討中。
・罰則も含め、規制を法令か証券取引所の規則で定めるのか。
・上場企業と機関投資家との建設的な対話が重要視されるなかで、導入にあたり企業が委縮することのないような制度設計にする予定


8.高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例

・高額特定資産…税抜きの取得価額が1000万円以上の固定資産&棚卸資産
・高額特定資産を取得等した事業年度後の2年間は、免税や簡易課税の適用ができない(原則課税が強制)
H28.4.1以降に取得等した場合に適用
※ただし、H27.12.31までに締結した契約分は適用しない

(1)自己建設のケース
・原材料、経費などの課税仕入の累計が1000万円以上となった期間で、高額特定資産を取得等したとなる
・上記取得等した期間の翌期から、完成日を含む3年の期間は、原則課税が強制適用

(2)建設中に簡易課税適用期間があるケース
・建設中の簡易課税期間は、課税仕入の累計には加算しない

)
H29年 原則 材料等600
H30年 簡易 材料等600
H31年 原則 材料等600 (累計が1000万を超え、取得等したと判断)
H32年 原則強制 建物完成
H33H34年 原則強制


9.所得税:ディスカウント債の課税関係

H2811日以後の譲渡から課税関係が変更されているので注意

■ディスカウント債とは
通常よりも利率が低く、発行価額が額面金額より低く設定されており、償還時には額面で償還されるといった特徴を持った公社債。世界中で発行されている。

■課税関係
H271231日以前譲渡
⇒譲渡益は非課税、損失の場合は損益通算不可

H2811日以後譲渡
⇒譲渡益は申告分離課税、損失の場合は損益通算可


10.【法人税】非適格分割による資産調整勘定の発生の有無とその処理

■事例
 ・分割法人から、ある事業に係る資産時価10億円および負債は12億円を引き継いだ。
 ・負債の方が多いため、対価はゼロとしていた。
 ・[ゼロ円][10-12億=△2億円]の差額[2億円]は会計上営業権とし、10年で償却していた。
 ・税務上は会計処理を是認しているが、問題はあるか?

■問題点
 ・差額2億円は資産調整勘定なので、税務上は5年強制償却が必要。
 ・過年度で償却不足の状態なので、更正の請求が必要。

■寄附金認定のリスク
 ・2億円が分割法人に対する寄附に該当する旨の指摘を受ける可能性がある。
 ・単なる救済ではなく、事業の対価として妥当であったことの裏付が必要。


11.無償取得事由

・特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)
・条件を満たせば譲渡制限が解除される株式
・条件を満たさない場合、株式没収
 株式没収の要件を「無償取得事由」という
・「無償取得事由」を定めることが税務上損金算入の要件
「無償取得事由」
 ・勤務条件:在籍年数等
 ・業績条件:中長期的な業績目標の達成等


12.種類株式の税務上の評価

1. 種類株式が上場しているケース
⇒通常の上場株式と同様に評価
※普通株式とは異なる銘柄の株式として取り扱う

2. 種類株式が非上場のケース
国税は、非上場株式の原則的な評価方法として、下記の方法を示している。
・類似会社比準方式(財基通183
・純資産価額方式 (財基通185

上記の原則的な評価方法を基に、種類株式の内容に応じて、下記のように評価を行う。

(1)配当優先株式
・類似業種比準方式を用いて評価する場合
⇒配当優先の影響を評価の際に考慮する。
※計算要素の一つである「一株当たり配当金額」にて、配当優先の影響を反映
・純資産価額方式を用いて評価する場合
⇒配当優先の影響を評価の際に考慮しない。

(2)無議決権株式
⇒原則として、議決権の有無は考慮しない。
⇒ただし、同族株主が相続、遺贈する場合には、納税者の選択により下記の方法で評価可
・議決権株式 …  原則的な評価方法の105%
・無議決権株式 … 原則的な評価方法の95%
※議決権の有無で株式の価値に差が生じると考えられるため。

(3)社債類似株式
⇒利付公社債と同様に評価(財基通197

(4)拒否権付株式
⇒通常の普通株式と同様に評価


13.業種別税務調査の対策ポイント 運輸・交通・通信業

■資本的支出の調査
固定資産の保守関連費用⇒異常に増加⇒資本的支出に該当するものがないか確認が入念になされる

■貯蔵品の調査
保守費用に関連して調達した部品等で未使用なものは貯蔵品として資産計上する必要あり

■営業所の調査
・運送収入関係、原価関係
・人件費
・事故費

■運輸・交通・通信業によくみられる指摘事項の例
・完了していない修繕工事費用の繰上計上
⇒税務調査対策よりも営業所、部門のために費用化(予算消化)を急ぐインセンティブあり
⇒内部統制の整備⇒無理な予算消化をしなくても担当者の責任にならないような体制に。
・貯蔵品の除外


14.親会社が過年度に減損した土地を子会社に譲渡した場合の税効果

(前提条件)
P社の取得価額100
・過年度減損額△20(税務上否認)
⇒会計上の簿価80、税務上の簿価100
S社への譲渡価額110
 ⇒会計上の売却益30、税務上の売却益10(課税関係完了)
・法定実効税率30

■グループ法人税制適用なし
(連結仕訳)
固定資産売却益30/土地30

税効果①:課税関係が完了している一時差異について税効果(10×30%)
DTA3/法調3

税効果②:課税関係が完了していない一時差異について税効果(20×30%)
DTA6/法調6

■グループ法人税制適用あり
P社単体仕訳)
現金預金 110 / 土地80
          / 固定資産売却益30

税効果①:課税関係が完了している一時差異について税効果(10×30%)
法調 3 DTL 3

(連結仕訳)
固定資産売却益 30 / 土地 30

税効果②:個別上計上した税効果を消去
DTL 3 / 法調 3

税効果③:課税関係が完了していない一時差異について税効果(20×30%)
DTA 6 / 法調 6


15.機関設計ごとの監督体制

■指名委員会等設置会社における監督体制
(1)取締役会
・業務執行の監督機関
※取締役は業務執行×、執行役が業務執行をする
※ただし執行役と取締役の兼務◯(監査委員にはなれない)
(2)職務執行の監督
・執行役の監督は取締役会+各委員会

■監査役設置会社における監督体制
(1)取締役会
・重要な業務執行の決定を取締役に委任
(2) 職務執行の監督
・監査役の監査→業務執行の適法性
・取締役会の監督→業務執行の妥当性
※監査役設置会社における取締役会は業務の執行と監督をするため、モニタリング方にはなじまない


16.種類株式の会社法上の基本ポイント

■種類株式(9種類、各種説明は省略)
剰余金配当※、残余財産分配※、議決権※、譲渡制限、取得請求
権、
取得条項、全部取得条項、拒否権、取締役・監査役選解任
※非公開会社:株主ごとに異なる取扱いを認める属人的定めOK

■手続
①定款変更
総会特別決議(+種類総会決議)
場合によっては株主全員同意

②種類株式の発行
非公開会社:総会特別決議
公開会社:総会特別決議(有利発行)、取締役会に委任可(非有利発行)
※実務上は全て総会特別決議を経ることが多い

③反対株主の株式買取請求
譲渡制限、全取得条項の場合のみ
予め反対の意思表示+実際に総会で反対


17.(相続税)取引相場のない株式の評価

相続開始「直後」の決算書を評価に使えるか?

(純資産価額方式の場合)→使える。
・原則は、相続開始時点で仮決算。
・ただし、直前期決算から、著しい変動がないことを前提に直前期決算を使える。
・時期が近い等の理由から、相続開始「直後」の決算書も使える。

(類似業種批准方式の場合)→使えない。
・直前の決算書を使うことが原則。
・国税庁が毎年6月に発表している「比準要素」は、過年度の決算書を基に計算されているため。
・相続開始「直後」の決算書を利用することは、意図的な操作となりうる。


18.従業員持株会

1.概要
・従業員から会員を募り、給与から天引きされた拠出金によって株式を共同購入
・会員の拠出額に応じて持分を配分

2.運営上の留意点
(1)設立時期
株価が低い上場準備の初期段階で設立することが有利

(2)運営方式
多くは証券会社に委託(組合方式)

(3)会員の範囲
自社従業員○、子会社(50%超保有)従業員○
関連会社×、役員×

(4)株式の割当て
上場前は、既存株主からの移動、第三者割当増資などの資本政策を考慮し、計画的に行う必要がある。

(5)非弾力性
ストックオプションのような個人の貢献度に応じた弾力的な調整ができない。

(6)金商法との関連
株主数を一人株主とするため、以下の要件が必要。
・株主名簿に持株会の理事長名義で登録
・議決権行使は持株会の理事長が行使
・配当金は持株会でプールし、株式購入資金として再投資する仕組みとする。

(7)株価
一般的に、未上場会社の従業員持株会での株式移動価格は、配当還元価額方式あるいは他の方式との併用による低廉な株価を採用。

2.関係会社管理の具体的方法
1)関係会社管理部署の明確化
特定の部署にて一元的に管理する方法がある。
ただし他の各部署のサポートを受けていく必要はあり。
関係会社の重要性の度合いに応じて決定。
申請会社の内部監査の対象に関係会社を含めることも重要。

2)関係会社管理規程の作成
規程には、関係会社の範囲、管理責任者の権限と責任の範囲、申請会社の承認事項および申請会社への報告事項等を定める。
月次ごとに報告書を入手し、適切にフォローできる体制を確立する必要がある。

・承認事項
中長期計画
年度予算
重要な契約・取引など

・報告事項
月次BS,PL(予実対比)
月次資金繰り表(予実対比)
年度決算書

税務申告書など









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2016年10月22日土曜日

10/21 勉強会:休眠会社の整理作業が開始、役員変更の登記漏れに要注意 他

1.グループ法人税制外しに132条が適用

・意図的にグループ法人外しをし、資産の譲渡損失を認識した中小企業について課税当局から同族会社の行為計算否認が指摘されている事例が複数件判明

・グループ法人外しとは、100%子会社の株式のごく一部を他者に保有させる行為

・グループ法人内では以下の取扱等が強制適用される
 グループ法人内での資産の譲渡について、譲渡損益を繰り延べる
 グループ法人内で配当の受け取りがあった場合、その全額を益金不算入とする
 グループ法人内での寄附については、支払側、受取側のいずれも損金、益金を認識しない


2.事業譲渡と退職給与負債調整勘定(譲受法人:(翌期の処理))

■事例
ABへ事業の一部を譲渡
転籍者に係る退職給付引当金500(有税)も移転
翌期、転籍者が退職、退職給与負債相当額は200とする。

B (譲受法人)の会計処理
()退引 500 / ()現金 500

B (譲受法人)の税務処理
退職に伴い
退職金⇒損金算入
退職給与負債調整勘定⇒取り崩して益金算入

()退職給与 500 / ()現金 500
()退職給与負債調整勘定 200 / ()退職給与負債調整勘定取崩益 200

⇒したがって税務調整は以下となる。
()退職給与 500 / ()退引 500
()退職給与負債調整勘定 200 / ()退職給与負債調整勘定取崩益 200

■別表調整
別表四
⇒退職給与500(減算・留保)
⇒退職給与負債調整勘定取崩益200(加算・留保) 

別表五()
⇒退職給付引当金▲500
⇒退職給与負債調整勘定200

別表五()
⇒調整なし


3.仮装隠ぺいと重加算税をめぐる最近の裁決事例

・太陽光発電設備の取得費を引渡しがあった課税期間ではなく、その直前の課税期間で課税仕入とした
⇒重加算税の対象となる仮装行為に該当するか否か?

■概要
・請求人はA社へH263月期に太陽光発電設備に関する設置工事を発注および課税仕入とした
・請求人は消費税申告書と共に提出した添付書面には、H26131日付の請求書が添付されていた
・請求書は請求人が作成したもので、欄外に「工事完了はH26331日迄とする」旨が記載されていた
・設置工事はH26715日に完了し引き渡された

■国税不服審判所
・請求書はあくまで工事代金を請求する書面であり、引渡しに関する書面ではない
・請求書がH26131日付で作成されていることから「工事完了は331日迄とする」との記載は工事完了の予定日が記載されただけ
・請求書がH263月期終了後に日付を遡って作成されたなどの事情は見いだせない
⇒よって請求書を作成したことをもって、引渡し日を仮装したとは到底認められない
⇒重加算税の処分取り消し


4.休眠会社の整理作業が開始、役員変更の登記漏れに要注意

■休眠会社とは
最後の登記から12年を経過している株式会社
※平成28年度(今年度)の場合、平成161013日以降に登記がされていない株式会社

■みなし解散の登記
平成281213日までに(1)又は(2)が無い場合、登記官が職権で解散の登記を行う
(1)役員変更等の登記申請
(2)まだ事業を廃止していない旨の届出

(1)補足
平成28年は会社法施行から10年。
公開会社ではない株式会社で取締役又は監査役の任期を10年にしている会社も今年は役員の変更登記が求められる


5.睡眠貯金事務手続きは一般に公正妥当な会計処理

請求人(農業協同組合)の睡眠貯金事務手続きの基準は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に該当するか否かで争われた事例

■睡眠貯金事務手続き
・最終取引日から10年経過した残高10,000円以上の口座
・貯金者に送付した郵便物が宛先不明等で返送された
10年+6ヶ月経過した日が属する事業年度の収益とする

⇒だが請求人は、行方不明や相続人のいないことが明らかでなった口座でない限り、収益と計上すべきでないとし、これらの睡眠貯金を収益計上していなかった

■判決⇒課税庁勝利
・他銀行等においても睡眠貯金事務手続きに定める収益計上基準が広く採用されている
・仮に収益計上を行ったとしても、その後に貯金者が判明し、払戻請求権の行使がされればそれを費用に計上すればよい


6.工事費用、改良費か必要経費で注目裁決

■賃貸用土地の造成工事に係る費用
⇒不動産所得の計算上、必要経費に算入できるか

(1)請求人の確定申告:必要経費に算入

(2)原処分庁の判断:必要経費に算入不可
∴改良費に該当し、資産の取得費に含めるべき

(3)請求人の主張:必要経費に算入可
∴原価、もしくは、販管費に該当

(4)国税不服審判所の判断:工事費用の処理は、工事の具体的な内容に従って判断すべき
(a)外溝造成工事(1):改良費
∴土地の形質を変更し改良する工事である
(b)土留め工事(2)、境界等整備、土壌汚染調査:必要経費に算入
∴土地の改良及び価額を増加させる工事ではない
(c)乗入側溝改修工事(3):繰延資産に該当し、償却費を必要経費に算入
∴工事を行うことにより請求人が借地権設定契約に基づき賃料を得られる(便益を受けられる)ようになり、その効果が支出以後1年以上に及ぶ
⇒原処分庁の請求人に対する更正処分等の一部を取り消し

(1)掘削、埋め戻し、整地
(2)隣接地との境界ブロックの撤去及び積み直し
(3)上地に接する県道の歩道部分の切り下げ、復旧


7.馬券を多数購入も経済活動の実態を有さず

■東京地裁事例
・毎週かつ大量に馬券を購入(15002000回、3年間で約2.6)
・開催日のほぼすべてで馬券を的中させ払戻金を獲得。年単位の収支は赤字。
・納税者は経済活動であるとし「雑所得」を主張も、馬券の購入行為が一般的な購入行為と質的に変わりはないため、「一時所得」として、外れ馬券は必要経費に該当しないと判決が下された。

■上記事例の控訴審
・納税者の主張
⇒営利目的とする継続的行為(=雑所得)にあたるか否かの判断は、馬券購入行為の「期間・回数・頻度」を最も重要な考慮要素とすべきと主張

・高裁の判決
馬券購入行為の「期間・回数・頻度」とその他の事情との間に優劣はない。一部を考慮して判断するのではなく、総合的に判断することが妥当。
⇒地裁判決を全面的に支持し、納税者の控訴を棄却した。


8.リスク分担型企業年金、IFRSと同様

【リスク分担型企業年金】
・確定給付型(DB)と、確定拠出型(DC)の中間の制度
・企業は固定の拠出額に加えて、将来の運用難対策資金(リスク対応掛金)を拠出する
・リスク対応掛金の範囲を超えて積立金が目減りした場合は、従業員の手取りが減る
⇒企業は拠出が増える代わりに、将来のリスクを限定できる

【会計処理上の扱い】
・企業の拠出義務の範囲により判定
・拠出義務が完全に限定的であれば、DCと同様の処理
・限定されずに拠出義務を追っている場合は、DBと同様の処理
IFRSでも取扱いは同様


9.登記申請:株主リスト添付の留意点

■概要
28101日以降、登記事項につき株主総会の決議を要する場合には、議決権数の上位10名(または議決割合が2/3に達するまで)の株主を記載した「株主リスト」の添付が必要となる。
 
■主な留意点(QA
(1)保有議決権数が10位の株主が複数いる場合⇒10位の株主すべての記載をする
(2)株主総会に出席しなかった株主も記載するか⇒記載する
(3)株主リストを「別表2」で代用することは可能か⇒不可
(4)101日前に総会決議をし、当期がそれ以後になる場合も添付が必要か⇒必要
(5)株主Aが死亡したが株主総会時点で相続人が誰か分からない場合は誰を記載するか⇒株主A


10.【所得税】未承認薬と医療費控除

従来は混合診療の場合、保険診療分を含む全体に健康保険は適用されなかった。
H28.4.1以降は混合診療の場合にも保険診療部分に保険適用を受け易くなった。
これにより混合診療が増加すると考えられる。

混合診療の場合、医療費控除の適用上注意が必要となる。
()未承認薬を使用する混合診療を受けた場合、
 診察分  :医療費控除可能
 未承認薬分:医療費控除の対象外


11.子会社投資に係る税効果

・連結BS上の子会社投資簿価>個別BS上の投資簿価
 ⇒一時差異となる。
 ⇒投資後の子会社の留保利益、為替換算調整勘定等が内容
・「親会社により投資売却の意思決定がなされた場合」等に繰延税金負債を計上する
・連結と個別とで差異あり
連結税効果指針
・「投資売却を親会社自身で決定でき、予測期間に売却意思なし」の場合には繰延税金負債を計上しない
個別税効果指針
・「支払いが見込まれない場合」等を除き一律で繰延税金負債を認識する、と規程されている
⇒個別を連結に合わせる提案あり。


12.事業再生の現実 4/4

事業再生スキーム濫用(詐害)のリスク

1.事業再生スキームが濫用とみなされ、訴訟などを受ける状況となってしまう要因
・債権者に対し、事業再生スキームを行うことについて、事前説明等を実施し、理解してもらう手続きをしていない。
・債権者に仁義を通していない。

2.濫用防止のための法律上の手当
(1)モデルケース(第二会社方式)
・新会社を設立し、旧会社の事業資産と事業負債を新会社に移す。
⇒移された資産と負債の差額を対価として、旧会社に支払う。
⇒旧会社は清算し、新会社で事業再生を図るスキーム

(2)法律上の手当
・法人格否認の法理
⇒旧会社と新会社とに支配関係+債務を免れる等の不当な目的
⇒新会社と旧会社は同一の会社とみなす。
⇒旧会社の債権者は保有する債権の全額を新会社にも請求できる。

・履行請求
⇒旧会社の残存債権者を害することを知っており、悪意があったなどが要件
⇒新会社に移された資産の総額を限度とし、旧会社の債権者は新会社に請求ができる。

・詐害行為取消権
⇒旧会社の残存債権者を害することを知っており、悪意があったなどが要件
⇒旧会社の債権者は、裁判所に対し、新会社へ旧会社から事業資産を移す取引を取り消すよう請求できる。
⇒新会社は旧会社に、移された資産全て又は相当額を旧会社に返還しなければならない。
⇒旧会社の債権者からすると、弁済原資が増える。


13.関係会社の管理方法

1.関係会社管理の必要性
業績不振の関係会社がある場合、上場審査上は合理的な再建計画がない限り精算等をする必要が出てくる。
関係会社の経営成績や財政状態の状況などをタイムリーに把握し、適切な指導・改善ができるような管理体制を確立することが必要である。

2.関係会社管理の具体的方法
1)関係会社管理部署の明確化
特定の部署にて一元的に管理する方法がある。ただし他の各部署のサポートを受けていく必要はあり。
関係会社の重要性の度合いに応じて決定。
申請会社の内部監査の対象に関係会社を含めることも重要。

2)関係会社管理規程の作成
規程には、関係会社の範囲、管理責任者の権限と責任の範囲、申請会社の承認事項および申請会社への報告事項等を定める。

月次ごとに報告書を入手し、適切にフォローできる体制を確立する必要がある。









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