2014年9月28日日曜日

9/26 勉強会:受配規定見直しにらみ子法人株買集めも 他

1.塾講師等に支払う報酬の「給与所得」該当性

【事例】
A社が、塾および一般家庭に対して、講師や家庭教師を派遣
・講師や家庭教師とは業務委託契約を結び、個人の能力に応じて対価を支払っていた
⇒対価の支払は給与所得に該当するか

【判決】(控訴審)
・給与所得に該当する(事業所得には該当しない)
・講師は、A社の示した『業務従事期間と条件』の下業務を行い、家庭教師は、A社の『指導期間、指導回数、スケジュール』に従い業務を行っている
⇒講師・家庭教師に、独立性なく、A社の監督下に置かれている
⇒実質は雇用契約に類する形態であり、事業所得には該当しない


2.受配規定見直しにらみ子法人株買集めも

■受取配当の益金不算入規定
・現行の益金不算入割合
①持分割合100%→全額
25%以上100%未満→負債利子額を除く受取配当の全額
25%未満→50

27年度税制改正の検討案
①持分割合100%→全額
33or50%以上100%未満→益金不算入割合縮小?
③少数株主持分以上33or50%未満→益金不算入割合縮小?
④少数株主持分未満→益金不算入不可?

⇒改正を見越して、分散した子法人等の株式を買い集める動きが出ている。


3.「給与等」は賃金台帳の支給額で計算可

 ⇒所得拡大促進税制の「給与等」

①福利厚生費
・「給与等の範囲」=給与所得+通勤手当+福利厚生費
・ただし、実務上福利厚生費は賃金台帳に載らないから算出が困難
 ⇒賃金台帳の金額で算出してもOK

②資産の取得に含めた給与額
・「対象となる給与」=損金の額に算入した給与等の支給額
・自社製造品の棚卸資産や自社開発のソフトウェアを仕掛計上
 ⇒損金になっていない
 ⇒継続して「給与等の支給額」に含めている場合は損金でなくてもOK


4.税理士報酬の請求をめぐる最近の訴訟トラブル

●トラブル1(税理士勝訴)
<事例>
・無償で申告書を作成していたが有償へ切り替えた
・その際契約書は作成せず、提案書のみ送付していた(顧問先より返答なし)
・その後未払報酬の一部は返済したものの、それ以降は返済なし
・顧問先に対し支払い請求訴訟

<論点>
・税理士との顧問契約締結の契約書なし
・税理士が一部の支払を除き金銭を受け取らなかったため、無償で業務を行う旨の合意があったと主張

<結論>
・報酬額の提案書を顧問先に送付
・有償期間中は税理士が申告書を作成していた
・顧問料を一部支払っていた
この3点より有償の顧問契約が成立していたと認定。
また未払報酬が存在している状況で税理士が申告書作成を行っている点で、税理士が報酬の支払いを免除したと認める証拠はなし
⇒顧問先に支払を命じた

●トラブル2(税理士勝訴)
<事例>
・期限後申告をして無申告加算税50万円が賦課された
・申告報酬料200万円が未払い
・期限後申告は税理士に過失があるので、無申告加算税分を相殺すべきと主張

<論点>
期限後申告は税理士側又は顧問先側どちらに過失があるか

<結論>
顧問先内において役員の対立があり、社長が決算書を承認しなかったことが原因

⇒顧問先側の事情によるため、未払報酬料全額を支払うよう命じた。


5.アジア上場⑥

中国上場
◆市場の構成
上海証券取引所・・大企業向け
・メインボードのみ

シンセン証券取引所・・・中小企業向け
・メインボード
・中小企業ボード
・創業ボード

◆主な特徴
・上海+シンセンの時価総額は世界3位・アジア1位
・人民元で取引するA株と米ドル(上海)・香港ドル(シンセン)で取引するB株がある
・企業は上海・シンセンの上場市場の選択が出来ない(同時上場も不可)
・外国企業の直接上場は認められていない

◆上場のメリット
・現地での宣伝効果が高い
・人民元の直接調達が可能(人民元建ての借入には規制がある)
・インセンティブプランの導入が可能(SO等を導入し、賃金上昇を抑える効果)

◆上場に関する基準
・上場申請の際は、申請を支援する証券会社をスポンサーとして任命しなくてはならない。
⇒日本の主幹事証券制度
・スポンサーは上場後のディスクロージャーに関しても法的責任を負う


6.消費税:簡易課税制度のみなし仕入れ率の改正

∇改正内容
            改正前     改正後
金融業・保険業 第4種(60%)  第5(50%)
不動産業     第5種(50%)  第6(40%)
⇒平成2741日以後開始事業年度より適用

∇経過措置
平成26930日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する場合には、適用開始事業年度から2年間は旧みなし仕入れ率を適用できる。

(例1)提出日 平成26930日 
    適用開始事業年度⇒平成2741日~平成28331
    翌事業年度(平成2841日~平成29331日)まで旧みなし仕入れ率を適用

(例2)提出日 平成26331
    適用開始事業年度 平成2641日~平成27331
    翌事業年度(平成2741日~平成28331日)まで旧みなし仕入れ率を適用


7.法人税:過大役員給与は総額で判定

定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与の要件を満たす役員給与であっても、過大な部分は損金不算入とされる。

•実質基準
•形式基準
のうち、多い金額と支給額を比べて判定する。

支給額の総額を用いて判定する。
①定期同額300万円×12+事前確定6400万円
②定期同額30万円×12+事前確定9640万円
では過大役員給与の判定では同列に扱われる。


8.監査等委員会設置会社の取締役の報酬

・監査等委員会を置く会社
H26年度改正で成立(2014.6.20成立)
H274月又は5月には施行予定
・置くかどうかは定款自治
・公開会社&大会社は以下の3択に
  監査役会設置会社
  委員会設置会社
  監査等委員会設置会社
・監査委員である取締役の報酬は他の取締役とは別で決定


9.電気料金4割上昇の内訳

・東電が発表している家庭用モデル料金
20113月:6,251円→20149月:8,477
35.6%の増加

・増加内訳
太陽発電促進+14
再生可能エネルギー促進+217
料金改定+359
消費税+230
燃費調整+1,407

・「料金改定」=原子力発電が火力発電に変わったことによる、燃料使用「量」の変化
「燃費調整」=燃料「単価」の変化

2011年からドルベースで原油価格が33%上昇、円安

・原子力発電を元のように稼働させても、電気料金が元に戻るわけではない





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2014年9月19日金曜日

9/19 勉強会:東証:ライツ・オファリングの制度見直し 他

1.海外信託を利用した孫への生前贈与スキーム、納税者敗訴

■平成25年度改正前
 ・贈与者:国内に居住 受贈者:国外に居住の場合
  国内財産にのみ贈与税を課税
  国外財産については、日本において贈与税が課税されない

■平成25年度改正後
 ・贈与者:国内に居住 受贈者:国外に居住の場合
  国内財産、国外財産ともに贈与税を課税


相続税・贈与税における新株予約権の評価

■財産評価基本通達に評価方法が規定されている新株予約権の範囲
①新株予約権のうち、下記を満たすもの
A)無償で発行されたものであること(②は除く)
B)その目的である株式が上場株式または気配相場等のある株式であること
C)課税時期が権利行使可能期間内にあるものであること

②上場新株予約権

■相続税・贈与税における新株予約権の評価方法
①=(株式の価額-権利行使価額)×行使時の株式数・・・本源的価値
②=金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格等


3.通達から読む生産性向上設備投資促進税制

■制度おさらい
・一定規模以上の生産性が向上する設備を取得した場合
 H28.3.31までに事業供用⇒即時償却 or 5%の税額控除
 H29.3.31までに事業供用⇒50%の特別償却 or 4%の税額控除

・税制を受けるには金額の判定があるので注意
 ⇒機械160万円以上、工具器具備品120万円以上 等

■ポイント①
・補助金収入による圧縮記帳を行った場合
 ⇒圧縮記帳後の金額により取得価格要件判定をする

■ポイント②
・基本的に貸付けのために購入した資産は対象外
 ⇒自社製品の加工等のため、下請け会社に貸与するなら適用可能

■ポイント③
・中小企業投資促進税制との組み合わせ(※①即時償却or710%の税額控除)
 ⇒期中に増資をして中小企業から大企業になった場合でも、中小企業のうちに資産を取得、事業供用しておけば※①の適用可能


4.純額方式等はベンチャー税制適用時限定

・投資事業有限責任組合の事業から生ずる損益
⇒分配割合に応じて、各組合員に帰属する
⇒税務上の帰属方法は下記の3

①総額方式:割合に応じた収入、費用、資産、負債を計上
②純額方式:割合に応じて損益のみを計上、その分出資金を増減
③中間方式:割合に応じて収入、費用を計上、その分出資金を増減

⇒原則は、①総額方式(②、③は課税上弊害がない場合のみOK
⇒②純額方式は、資産が帳簿に計上されないため、資産の評価損の損金算入が認められなかった裁判事例あり

26年度改正のベンチャー投資促進税制
⇒一定要件のもと、②純額方式、③中間方式の適用を原則認めている
⇒上記税制の適用を受けない投資事業有限責任組合投資は、いままでどおり、②、③は例外適用

※一定要件:財務諸表にベンチャー投資促進税制の適用銘柄を明記することなど


5.著作権の評価、新作の印税収入は控除不可

■事例
相続に伴う著作権の評価方法について、
()著作権の評価方法(財産評価基本通達148)
著作権に係る課税時期の属する年の前年以前3年間の印税収入の額を基に算定する。
ただし課税の公平の観点から正当な理由がある場合には、通達の定めによらない評価方法をもって算定することができる。

  請求人の評価方法
前年以前3年間の印税収入の算定にあたり、相続発生後に生じる新作の著作権印税収入を含めないで算定した結果、通達による評価額よりも低い価額で評価

  理由
著作権者(被相続人)が生存していたと想定した場合の価値に伴う著作権印税収入と死亡後の価値に伴う著作権印税収入では大きな差額が発生するため、相続開始前と同水準の価値による印税収入は見込めない、すなわち価値は0円と判断をした。


■論点
相続開始前と後による著作権の価値変動が、通達とは異なる評価方法を採用する正当な理由として認められるか否か

■結論
正当な理由と認められない

■理由
著作権者又は相続人のどちらかが行使するかによって、著作権の価値変動による印税収入額に大きな差が発生したとしても、通達の評価方法は変動があることを前提した方法(=年平均額で算定)であるため、正当な理由に該当しないと判断をした。


6.消費税:一身専属の資格に係る事業の承継

(相続があった場合の特例の適用について)
<事例>
・医師である夫が死亡
・相続人は妻、相続した建物で不動産賃貸業を開始
・診療所は勤務医であったA(相続人でない)が承継

1.消費税の申告
相続人である妻が死亡日から4か月以内に夫の消費税を申告納付する。
また、速やかに「個人事業者の死亡届出書」を提出する。

2.妻の基準期間における課税売上高
夫の事業(医業)を承継したものでないため、基準期間における課税売上高はゼロ(免税)となる。
※妻が医師で診療所を引き継いだ場合は「相続があった場合の特例」が適用される。

3.診療所を引きついだA
Aは相続人でないため、「相続があった場合の特例」は適用されない。
よって基準期間における課税売上高はゼロ(免税)となる。


7.法人税:定期同額給与の業績悪化改定事由に該当しないものとされた

(事例  東京地裁) 

■事実関係
A社とB社は関連会社であり、A社からB社へ多額の手数料を支払っていた。
B社は債務超過状態。A社の業績に問題はない。
B社の債権者XA社に対し、A社の役員報酬を減額してB社への支払手数料を増額することを要請し、A社はこれに応じて役員報酬を減額した。
•このA社の報酬改定に至る経緯が業績悪化改定事由に該当するか、税務当局との間で争われた。

■東京地裁の判断
•該当しない。税務当局の主張を認めた。
A社の業績は悪化していないのが理由。
A社とB社は一体であり、個別の業績で判断すべきでないというA社の主張は退けられた。


8.東証:ライツ・オファリングの制度見直し

9/3、東証は「新株予約権証券の上場制度の見直しについて」を公表
・ライツ・オファリングにおいて、既存株主に不利益が生じる事例が散見されるため見直しが行われる。

新株予約権証券の上場基準の見直し
①増資の合理性に係る評価手続(ABのいずれか)
 A:証券会社による審査
 B:株主総会決議

②経営成績及び財政状態に係る基準(CDに該当するとアウト)
 C:直近2期連続の経常赤字
 D:直前事業年度または四半期会計期間末で債務超過


9.平成263月期「有報」要点分析

トピック
・退職給付会計基準の適用
・単体開示簡素化への対応

事例
・退職給付
 -退職給付見込額の期間帰属方法を変更する会社が目立つ
 -期間定額基準(従来の日本基準)から給付算定式基準(IFRSの方法)へ
・単体開示簡素化(注記の省略、製造原価明細書の省略等)
 -全て適用せず一部だけ簡素化する事例あり


10.会計システムの構築に際しての留意点

 ⇒品質、コスト、納期のバランスを意識すること。
・システム要件をあれもこれも盛り込まない
・システムプロジェクトの残り時間を意識する
・現状業務のままでいいのか考える


11.収益性改善・経営基盤強化を実現するM&A

国内市場の縮小、競争の激化等により当事企業の売上高増加が極めて困難な状況を前提とした場合、外部環境に影響を受けやすく実現可能性が不確かな売上シナジーよりも、むしろ自助努力により達成可能性が高いコストシナジーやキャッシュフローシナジーの実現が重要

①シナジー効果の実現
⇒統合によるシナジー効果の期待を理解し、実現に向けた体制構築が重要

②利害関係にとらわれず全体最適化
⇒マネジメント。従業員の統合のあり方のみならず、株主等の利害関係等の利害の整理のあり方についても検討し同時に達成

③買収価格
⇒買収会社の株式を対価とする場合、将来のシナジー効果の実現により値上がり機会があるため、プレミアムは通常なし
⇒現金を対価とする場合、将来のシナジー効果の実現により値上がり機会がないため、プレミアムを考慮


12.経理:信託を用いた流動化スキームの会計処理

【内容】金銭以外の投資信託の会計処理について
①委託者兼当初受益者が複数
 ⇒ 信託に対して支配等がなければ、オフバランス可能
 ⇒ 有価証券に準じて処理

②委託者兼当初受益者が単数
 ⇒ 引き続き当該信託財産を保有しているとみなして処理(オフバランス不可)
 ⇒ ただし、譲渡などして、受益者が増えた場合には、有価証券に準じて処理も可能


13.税務:欠損法人に係る繰越欠損金等の制限

【内容】欠損金または含み損の資産を持つ会社の合併時の留意点
  越欠損金がある場合
特定支配日から5年以内に適用事由(※1)に該当
 ⇒ 適用事業年度(※2)以前の欠損金使用不可

(※1) 特定支配日以前に事業の全てを廃止見込である場合など
(※2) 適用事由に該当した事業年度

  定支配時に含み損のある資産がある場合
 適用事業年度から3年以内(※3
 ⇒ 譲渡等による損失が損金不算入

(※3)特定支配日から5年を経過する日のいずれか早い日


14.ソニー凋落の影で スーパーチープ携帯の台頭

・ソニーがエリクソン買収時ののれんを一括償却。
・サムスン、アップルもスマホ事業は苦戦
(世界シェア2013.4-62014.4-6:サムスン32.6%→25.2% アップル:13.4%→11.9%)

・中国メーカーが台頭
(サムスン、アップルの500ドルスマホに対して、中心価格帯は200ドル)


・製造を請け負う台湾の鴻海は、「使わなくなったアップル用製造ライン」で中国メーカーのスマホを量産。









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9/12 勉強会:消費税:税率改正後の簡易課税計算留意点(75%ルールの適用) 他


1.27年度税制改正要望

各省庁の要望のまとめ
■金融庁の要望:ジュニアNISAの創設
 ・NISAの若年齢層版(0歳~19歳未満が対象)
 ・18歳までは、払い出しを原則禁止
 (払い出しをした場合は過去の利益に対して課税を行う)
 ・年間80万円までの投資を無税で行える
 ・資金拠出者は親や祖父母などを想定
 ・20歳以降はNISAに自動引き継ぎ

■文部科学省の要望:教育資金一括贈与の恒久化など
 ・教育資金の一括贈与をした場合の非課税摘要期限が201512月末まで
  ⇒これを恒久化する
 ・教育費の範囲に通学費用を含める
 ・贈与者の範囲に叔父、叔母、篤志家などを含める
  ⇒受贈者の範囲拡大も要望あり

■国土交通省の要望:住宅取得等資金非課税制度の延長、拡充
 ・適用期限の3年間延長(現在:201412月末まで)
 ・非課税枠を最大3,000万円まで拡大(2014年は1,000万円まで)

■経済産業省の要望:事業承継税制の拡充
 ・事業承継税制…非上場株式等の贈与税の納税猶予制度のこと
 ・2代目から3代目への再贈与についても納税猶予制度が適用できるように
  ⇒現状は、初代が健在で2代目から3代目への贈与があった場合、初代から2代目への贈与税の納税猶予制度が打ち切られて2代目に贈与税の納税義務が発生する


改正会社法における社外取締役・監査役の留意点

・改正会社法では社外取締役の義務付けは見送り
→ただし株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明すること、事業報告及び株主総会参考書類において理由を記載の必要有り

■留意点
・対象は上場会社に限らない
→公開・大会社である監査役会設置会社であって、有価証券報告書提出義務を負う会社が対象

・平成273月末決算時に未選任の場合、株主総会で説明不要か?
→平成276月の総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明必要

・親会社からの受け入れはNG
→改正後は下記該当者は社外取締役の要件満たさない
①親会社の業務執行者等、②兄弟会社の業務執行者等、③業務執行者等の近親者
※既に親会社を退職の場合はOK
※改正法施行前に選任している場合は、3月決算であれば平成286月の総会までに選任すればよい


3.執行役員への就任に伴う退職金

■事例
 ・合併により転籍してきた総務部長が執行役員になる
 ・執行役員の就任に伴い退職金が出る

■この退職金は退職所得になるか?
 ⇒下記要件を満たせば退職所得となる。

 ①執行役員退任時の退職金は、執行役員になる前の勤続期間を加えないこと
 ②委任契約であること
 ③執行役員退任後、使用人としての再雇用の保証が無いこと
 ④執行役員就任後の報酬・福利厚生等は役員に準ずること

■退職所得控除の計算に係る勤続年数は?
 ⇒合併前の期間を含む。
  ただし、包括承継でない時(一度退職してから新会社へ再雇用)は含まない

 ※退職所得の計算
  (退職金-退職所得控除)×1/2

 ※退職所得控除の計算
 ・勤続20年まで 40万円×年数
 ・勤続20年超  800万円+70万×(年数-20)
  ⇒20年の場合は800万円、21年の場合は870万円


4.航空機リース事業、TH税制がネックに

【1】タックスヘイブン(TH)税制とは?
①低税率国(法人所得税率20%以下)に所在する子会社の法人税率
TH税制が適用されない場合(子会社に事業実態がある場合)
 ⇒低税率国の税率
TH税制が適用される場合(子会社が節税目的と判定される場合)
 ⇒日本の税率

TH税制の適用除外要件
・事業基準、実態基準、管理支配基準、非関連者基準(or所在地国基準)4要件
(すべて満たせば適用除外)
・事業基準とは、「子会社の主たる事業が、株式保有事業・航空機リース事業等でないこと」
⇒航空機リース事業を行う子会社は、事業基準を満たさず、TH税制が適用されてしまう

【2】27年度改正での議論
LCCブームにより、航空機事業が賑わっている
・海外の航空機リース会社を買収し、子会社化する事例も発生
・一定の要件を満たす(低税率国で事業を行うことに経済合理性のある)航空機リース事業は、事業基準を満たすこととできないか


5.評価対象会社が保有する土地の時価を公示価格で算定

■事例
相続に伴う株価算定において評価対象会社が保有している土地の時価は、どの金額を用いて算定するか
 
■論点
<請求人の主張>
 不動産鑑定士による評価額を基に算定

<原処分庁の主張>
路線価を0.8で割り戻した価額を基に算定

■結論
請求人及び原処分庁の主張を共に斥け公示価格をもとに算定した金額で評価する。

■理由
・請求人主張の算定方法は、あくまでも鑑定士による評価のため合理性を欠く。
 
・原処分庁の算定方法は合理的な算定方法ではあるが、路線価はあくまでも公示価格と同水準の価格の80%程度を目途に定められたものであるため、割り戻した価額が必ずしも正しいとは限らない。
(他に算定方法がない場合は採用しても問題なし)

・公示価格は国交省による正常な価格であり、取引事例が多々あることから合理性があると判断


6.アジア上場④

韓国取引所(KRX
◆市場の構成
・有価証券市場・・・日本でいう本則市場
・コスダック(KOSDAQ)・・・新興市場

◆主な特徴
・市場規模はアジア4位(上位は東京、香港、上海)
・審査期間が比較的短い
・業種別ではIT分野の比率が高い

◆上場に関する形式基準
・直近3事業年度分の財務諸表及び監査意見
・韓国内の支店の設置や韓国人の取締役選任を義務付けていない
・韓国国内で開示実務を補助する者を選任する義務あり(外注も可)
IFRSUSGAAP、韓国会計基準の選択適用

◆上場した日本企業
SBI子会社2
ネプロ(現在は廃止)
クリック証券は上場承認後、取りやめ


7.消費税:税率改正後の簡易課税計算留意点(75%ルールの適用)

75%ルールの判定方法>
⇒事業種類別の合計額で判定する(税率別で判定しない)

■設例    4%   6.3%     合計
2種売上  1,000  29,000  30,000
4種売上  1,000     800   1,800
     合計  2,000  29,800  31,800

この場合、75%の判定は合計額(30,000/31,80094.3%)で行う。
税率別に判定しないので注意。

【参考】
75%ルール・・・2以上の事業を行っている場合にその事業の課税売上の占める割合が全体の75%以上である場合、他の事業についてもその事業のみなし仕入率を適用することができる。


8.法人税:接待飲食費の50%損金算入(基本的には屋形船接待も対象)

・飲食を伴う接待が50%損金算入の対象になるかの判断は、
  その主たる目的が飲食であるかどうかにより判断する。

■屋形船は?
→基本的には対象
屋形船は船で遊覧するが、基本的には船内での飲食がメインと考えられるため。
ただし、例えば花火大会等のイベントと接待の実施日が重なるケースでは、花火鑑賞ではなく食事が主目的であることの説明が必要と思われる。

※カラオケボックスやキャバクラでの接待も、主目的が飲食であればOKカラオケやホステスとの歓談がメインの場合は対象外


9.長期解消将来減算一時差異

・会計と税務の相違のうち、いずれ解消するもの=一時差異
・一時差異のうち、翌期以降損金になるもの=「将来減算一時差異」
 ※例 減価償却超過額、賞与引当金等

・長期解消将来減算一時差異=建物の減価償却超過額&退職給付引当金
 ⇒区分3や区分4但し書きの会社は「概ね5年」分しか回収可能とみなされないが、長期解消将来減算一時差異は5年を超えた期間も◯となる。


10.加速する調剤M&A

・公表されている国内調剤薬局の売却店舗数
2011年:50件弱
2012年:50件弱
2013年:200件弱
2014年:(17月)150件弱

M&A増加の理由
①今年4月の診療報酬改定(薬価のマイナス改定)
②「24時間・在宅対応」に対する加算
→中小では対応困難
→数千万円から、億円単位の営業利益を出している薬局でも売りに出てきている










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