2018年1月27日土曜日

1/26 勉強会:中小企業はIoT投資減税と固定資産税特例との重複適用可 他

1.中小企業はIoT投資減税と固定資産税特例との重複適用可

■対象となる投資
⇒「データ連携・利活用により生産性を向上させる取組」
・データ収集機器(センサーなど)
・データ分析より自動化するロボット・工作機械
・データ連携・分析システム(サーバー、AI、ソフトウェア)
・サイバーセキュリティ製品

■内容
・主務大臣が認定した事業計画に含まれる設備投資(最低投資合計額5,000万円)について、
 30%の特別償却または3%の税額控除(法人税額の15%が上限)
・国内投資のみ
・中古資産対象外
・一定の賃上げ※を行った企業は5%の税額控除可 ※平均給与等支給額の対前年度増加率3%以上
・大企業も適用可
・業種制限なし
・適用は施行日から2021年3月末までの3年間

■固定資産税の特例措置
・要件※を満たせば、課税標準が最初の3年間は最大でゼロから2分の1以下に軽減される
 ※労働生産性を年平均3%以上向上させるなど
・IoT投資減税と固定資産税の特例との重複適用可
・中小企業のみ対象



2.平成30年度組織再編税制改正の留意点

■スピンオフの「準備」として行うグループ内再編の適格化
・平成30年度税制改正で見直し:株式分配型のスピンオフ
・手順
(1) 新設分社型分割または単独新設現物出資で完全子法人を切り出し
(2) その後、当該子法人の株式全部を親会社の株主に現物分配
⇒現行:完全支配が適格株式分配の直前まで継続することが適格要件

・実務上の要求:
(1) 現金出資による完全子法人(受皿会社)を設立したうえで、親会社の事業を吸収分割により移管
(2) その後、当該子法人の株式全部を親法人の株主に現物分配したい
⇒平成30年度税制改正により、受皿会社に事業を移転する場合の吸収分割も適格となる。

■従業者引継(継続)要件、事業継続要件の緩和
・現行:組織再編後に従業者や事業の再移転が見込まれる場合には継続要件を満たさず、不適格に。
・改正:再移転先が100%グループ内であれば、当該組織再編を税制適格として取り扱う



3.従業員再雇用で退職金の損金算入認める

■事例
・従業員への退職金に対する損金算入の可否が争われた裁判
⇒退職した事実があったかどうかが争点
(前提)
・従業員に退職金4000万円を支給
・従業員は退職日の翌日付で同じ会社に再雇用されている
・退職後再雇用され、その後約2年3か月勤務

■審判所の判断
・退職の事実があったと判断し、全額損金算入を認める
(理由)
・再雇用は後任者への引継ぎであり、不自然なものではない
・再雇用後の勤務内容は退職前と同様であるが、給与や保険などの待遇面は変更
・退職金4000万円も不相当に高額ではない
(平均月収98万円×勤続年数28年×功績倍率1.5倍=4116万円)



4.収益認識基準に関する会計基準、建設関係の2つの設例を削除へ

■ASBJが検討している企業会計基準公開草案に出ている設例が削除される方向
⇒設例14:長期建設契約における支払の留保・設例30:設備工事のコストオン取引は日本建設業連合会などの意見を踏まえて削除される方向となった。

■削除される理由
⇒設例14は建設業においてマイルストーンによる支払は日本で一般的ではない。工事契約に関する会計基準による実務対応が広く定着しており、新たに包括的な収益認識に関する会計基準は必要ないという意見を反映したもの
⇒設例30は取引の前提条件が一般的な取引実態とは異なっている為。また、コストオンという言葉は業界によって、会社によっても捉え方が異なる為、この列例だけがコストオン取引であるという誤解をされかねないので削除すべきであるという意見を反映したもの。



5.固定資産の減損損失の戻入れ

「固定資産の減損損失の戻入れ」は、日本基準では認められていないが、IFRSでは認められている。
IFRSによりを作成公表している日本企業では、どのような経緯や理由で戻入れを行っているか、事例を紹介する。

■アンリツ
過去に閉鎖を決定し、減損損失を認識した建物構築物について、本社地区の使用計画を一部見直し、継続使用することに変更したことにより、当該減損損失の戻入れを行った。
→計画が変更されたことにより、回収可能価額が回復した事例である。

■日本板硝子
過去に閉鎖を決定し、減損損失を認識したイタリア(ベニス)に所在のフロートガラス製造ラインについて、再稼働を決定したことに伴い、回収可能性を再評価した結果、戻入が発生した。
→こちらも計画が変更されたことにより、回収可能価額が回復した事例である。

■すかいらーく & すしろーグローバルホールディングス
過去に収益力の低下により、減損損失を認識した店舗について、収益力が回復したことにより店舗減損損失の戻入を行っている。
→状況変化により回収可能価額が回復した事例である。
→毎期数店舗の減損損失を認識し、戻入れも行っている。



6.裁判例:利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当


■概要
・A社は子会社Bから「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」を受けた
・効力発生日は双方同じ日とされていた
・A社は利益剰余金対応分については受取配当等の益金不算入、資本剰余金対応分について有価証券譲渡損等を計上して申告を行った
・課税庁側は全体が「資本の払戻し」にあたるとして更正処分を行った。

■論点
「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」について一部を剰余金の配当、一部を資本の
払戻しとして処理してよいか?

■裁決(東京地裁)
「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」は全体が資本の払戻しとなる

(理由)
・法人税法23条(剰余金の配当)は利益剰余金のみを原資とするものに限定されている
⇒利益剰余金と資本剰余金双方を原資とする場合はこれに該当しない

・財務省公表の「平成18年度税制改正の解説」において、「資本剰余金と利益剰余金の双方を
同時に減少して剰余金の配当を行った場合には全体が資本の払戻しとなる」と記載されている

ことから、一部を剰余金の配当、一部を資本の払戻しとしたA社の処理については否認された。



国税庁 H29年分の確定申告の留意点を公表

国税庁HPにてH29年分の確定申告の留意事項を公表
・医療費控除
(1)「医療費控除の明細書」の提出が必要となり、
提出等が求められていた医療費の領収書は今年分より提出が不要。※5年間自宅で保管する必要あり
(2)健保組合等から発行された「医療費通知」を提出する場合は、
明細書の記載や領収書の保管も省略可能となる。

・一時所得、雑所得
本業とは異なる副収入を得る方が増加している。
競馬等のギャンブルから生じた所得 ⇒ 一時所得(一部例外は雑所得)
ビットコイン等の仮想通貨の売却等による所得 ⇒ 雑所得

・その他の注意喚起
ふるさと納税の申告漏れ
予定納税額(法人でいう中間納付額)の記載漏れ
復興特別所得税の記載漏れ
添付書類の提出漏れ

<仮想通貨は国外財産調書の対象外>

「国外財産調書」と「財産債務調書」も所得税の確定申告と同様に3/15が提出期限となる。
※1 国外財産調書とは
12/31時点で合計5,000万円を超える国外財産を有する居住者が提出すべき書類。
※2 財産債務調書とは
確定申告書を提出する者で、所得金額が2,000万円超、かつ、
12/31時点で合計3億円以上の財産(土地・株等)を有する者が提出すべき書類

■海外で保管しているビットコインの取扱い
(1)国外財産調書
ビットコインが国外財産に該当するか否かの内外判定は、「財産を有する者の住所」で判断。
⇒居住者が海外の仮想通貨取引所で保管している場合、
国内財産と判定されるため、「国外調書」の提出は不要
(2)財産債務調書
国内外の財産を記載する必要があるため、
海外の仮想通貨取引所で保管しているビットコインについても記載が必要。
※ビットコインの時価総額は1日の間に価額が大きく変動するため、
取引価額など合理的な方法で算出する必要あり。



8.平成30年度改正:給与所得控除・公的年金等控除・青色申告特別控除・基礎控除

給与所得控除と公的年金等控除を一律10万円引き下げる。さらに青色申告者に係る青色申告特別控除についても10万円を引き下げる。
そしてすべての所得に適用される基礎控除を10万円引き上げる。 
※以下すべて平成32年分以後からの所得税に適用

■給与所得控除
⇒最低55万円から年収に応じて段階的に増加し上限額は、年収850万円超で195万円となる。
ただし一定の要件を満たす子育て世帯・介護世帯(一定の調整控除あり)は上限額の引き下げなし。
■公的年金等控除
⇒控除額を一律10万円引き下げる。
(1)公的年金等の収入金額が1,000万円超についての控除額195万円5千円の上限を設定。
(2)公的年金等の雑所得以外の合計所得金額が1,000万円超2,000万円以下
⇒一律10万円引き下げる
(3)(2)の合計所得金額が2,000万円超
⇒一律20万円引き下げる。
■青色申告特別控除
 ⇒控除額を55万円とする。
ただし、次の要件を満たせば控除額65万円を控除できる。
・その年分の事業に係る主要簿を電磁的記録により備え付けること。
・その年分の所得税の確定申告書、B/S、P/L等を提出期限までにe-taxで申告すること。

■基礎控除
 控除額を一律10万円引き上げを行う。
⇒48万円とする。
 ただし合計所得金額により制限あり。
⇒個人の合計所得金額2,400万円超2,500万円以下では、段階的に基礎控除額が逓減する。 
 2,500万円超については基礎控除の適用なし。



9.在外子会社の税効果会計

・米国の税制改革法が2017.12.22に成立、法人税率の大幅引き下げが実現
 ⇒米国に在外子会社を持つ日本企業にとって税効果にどのような影響があるのか論点となる
・税率変更があった場合、在外子会社では新税率でDTAやDTLを計算し直す。
⇒米国の法人税率引下げの適用開始日は2018年1月1日以降だが、いわゆる「成立日基準」により、2017年12月期決算から新税率を織り込んで税効果の計算を行う



10.米国特許訴訟の傾向とリスク

・コンペティター間の訴訟からNPE(*)による訴訟に移行し、日本企業も巻き込まれる可能性がある。
(*)不実施主体=特許権者でありながら、自ら特許発明の実施を行わず、専ら他者に対する権利行使により利益を得ようとする者をいいます。
・米国特許訴訟には高額の費用、予見可能性の低さ、高額の賠償金等のリスクがある
・米国特許制度には固有のルールがあり、それを知らない日本企業が違反を犯すと厳しいペナルティがある可能性がある



11.資本的支出と修繕費の区分

■招集通知の発送前WEB開示
ガバナンスコードでは、招集に係る取締役会決議~招集通知を発送するまでの間に開示を推奨
⇒招集通知の納品・内容確認後にWEB開示を行っている会社がほとんであり、改善の余地あり

■招集通知のメール送信
現法下では株主の承諾が必要であり、発送手続の負担大
⇒承諾不要とするよう、法制審議会で審議中
※ネット上で招集通知情報が入手できるため、株主の要請は低い・・・

■総会参考書類の電子化
定款により、参考書類、事業報告の一部、SS、個別注記表、連結計算書類はWEB開示で株主提供とみなし
⇒実際は注記表の開示がほとんど。SS、連結SS、業務の適正を確保するための体制、の公開も増加傾向

■議決権行使の電子化
会社が用意した特定のサイトにおいて、議決権を行使する運用
⇒まだまだ低調ではあるが、海外機関投資家からのニーズは高い

■その他
・総会のリアルタイム中継⇒中継会場では議決権行使不可のため、事前通知必要
・議決権行使結果、総会で使用したスライド、株主との質疑応答を公開する事例も多い。


12.米国特許訴訟に平時から備えておくべきこと

・米国特許訴訟は多額の費用と時間を要する
⇒米国でビジネスを展開する場合、特許調査を行い、リスク分析をすることが重要
※故意による侵害の場合、現実の損害の最大3倍まで増額される。

・ディスカバリへの備えが必要
⇒不要な法律問題に関する文書を作成しない
 法律問題について、メール相談ではなく口頭相談する
 文書化する際は秘匿特権を確保する。
 不要な文書を廃棄する

※ディスカバリ=証拠の開示を求める手続き
※秘匿特権=弁護士との法律問題に関するやりとりした文書。開示を拒める。



13.為替予約における会計処理の変更におけるポイント

■為替予約の会計処理方法
ヘッジ会計の要件を満たす場合、「原則処理」または「振当処理」の2つを選択適用
※選択した処理は、会計方針として決定し、ヘッジ会計の要件を満たす限り継続適用が必要

■論点
振当処理は実務への配慮から経過措置として認められているため、いったん独立処理を採用した後に振当処理へ変更することは、本来の趣旨認められない
⇒正当な理由による会計方針の変更に該当するかの判断がポイント

■正当な理由による会計方針の変更に該当するかの判断
次の要件が満たされているとき、会計方針の変更が認められる

①会計方針の変更が企業の事業内容または企業内外の経営環境の変化に対応して行われるものであること
②会計方針の変更が会計事象等を財務諸表に、より適切に反映するために行われるものであること

※上記に加え、監査人は下記の事項を総合的に勘案する必要あり
・変更後の会計方針が企業会計基準に照らして妥当であること
・会計方針の変更が利益操作等を目的としていないこと
・会計方針を当該事業年度に変更することが妥当であること

■仕訳の影響
(例)為替予約等の契約が外貨建取引等の前に締結されているとき

振当処理の場合、外貨建金銭債権債務等に為替予約相場による円換算額を付すことが認めれる(実務上の煩雑性を考慮)



14.国土交通省が、旅行業法施行規則の一部を改正する省令案に関する意見募集を開始。

てるみくらぶの破綻を受け、第一種旅行業者を対象に、更新登録の際、企業が公認会計士等により提出書類と総勘定元帳等を突合した結果を添付書類に追加することを求める。

更新登録は5年おきに必要。

第一種旅行業者:海外、国内で募集型企画旅行を実施可能。 
第ニ種旅行業者:国内で募集型企画旅行を実施可能。 
第三種旅行業者:所在地に隣接する市町村で募集型企画旅行を実施可能。



15.IPO準備段階におけるM&Aの留意点

1.リスクを抱え込まない
買収後にリスクが顕在化してはNG
潜在的なリスクがないかDDで洗い出し、解消のメドが立たなければ、M&Aの回避もあり得る。

2.資本政策
IPO準備段階では、資本政策が非常に重要
計画に織り込んでいないM&Aが生じ、
資本政策が当初計画と大きくずれるような時には、M&Aを見送る選択肢もある。
M&Aの結果として、会社組織や管理体制が変化する場合があり、
その変更部分は追加で審査対象となる。

3.実施時期
極力、直前々期から申請期は避けた方が無難
ただし、不採算部門の切り離しや子会社の整理を目的とする組織再編のM&Aは、
上場審査において、ポジティブに評価されるケースもある。










◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

2018年1月22日月曜日

1/19 勉強会:子育て世帯配慮措置は夫婦別々に適用可、医療費控除Q&A 他

1.子育て世帯配慮措置は夫婦別々に適用可

・給与収入850万円超の給与所得控除額の上限を195万円に引き下げる
 (現行:1,000万円超で220万円上限)
・ただし23歳未満の扶養親族又は特別障害者がいれば負担増が生じないように配慮
 (給与収入(1,000万円超の場合は1,000万円)から850万円を控除した金額の10%を控除できる)
・夫婦別々に適用可能
・平成32年(2020年)以後の所得税から適用



2.役員退職金の過大判定で東京地裁が注目判決

■納税者
・建材金物の製造販売の事業者
・役員の死亡退職慰労金として4.2億円を支給
・計算式:最終月額給与240万円×勤続年数27年×功労倍率6.5(役員倍数5.0×功労加算1.3)

■税務署
・独自に抽出した同業類似法人5社の平均功績倍率が3.26
・役員退職慰労金の適正額を2.11億円として、2.09億円が不相当として否認。更正処分。

■地裁の判断
・特段の事情がない限り平均功績倍率の1.5倍(本件:4.89)で適正額を算出すべき

■判断の基準
・類似法人の妥当性(地域性、同業種、売上規模(0.5倍~2.0倍)、退職事由、訴訟などが関係していない)
⇒原則、類似法人の平均倍率を使用
・ただし、相当程度のかい離は認めるべき
⇒1.5倍までは適正との判断基準(算定根拠や合理的な理由は示されておらず、根拠のない数値という批判あり)



3.介護付き有料老人ホームの消費税課否判定で一部取消裁決

■有料老人ホームの消費税課否判定
・介護保険の給付対象となる介護サービスは非課税
・利用者の特別な希望により行われる個別的な介護サービスは課税

■食事の提供
⇒課税取引
理由:介護保険法において「食事の提供」は含まれていないから

■洗濯及びドライクリーニング
⇒非課税取引
理由:日常生活上の世話又は支援に該当と判断

■通院介助
⇒課税取引
理由:本件では老人ホームの定めた協力医療機関以外の医療機関を受診する際の送り迎えであるため、個別的な介護サービスに該当と判断



4.要件を満たしていない医療費通知は医療費控除に使えない!?

平成29年度税制改正で医療費控除を受ける際の手続きが簡素化
■改正内容
医療費の領収書に基づいて必要事項を記載した「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付して提出が可能
つまり、医療費の領収書の提出が必要なくなることとなる(領収書は5年間の保管義務有り)

また、「医療費通知(お知らせ)」を添付する事で「医療費控除の明細書」の記載を簡略化できる。
但し、この「医療費通知」には下記の6項目の記載がなければ確定申告で利用する事が出来ないので留意
①被保険者の氏名
②療養を受けた年月
③療養を受けた者
④療養を受けた病院、診療所、薬局等名称
⑤被保険者が支払った医療費の額
⑥保険者等の名称

■経過措置
平成31年分の確定申告までは従来通りの提出方法でも可能

■医療費通知(又はお知らせ)を利用する際の留意点
・上記の①~⑥の記載が欠けている医療費通知書でも確定申告書で利用可能?
⇒①~⑥すべての項目が無いと利用不可
・通知書に記載がない医療費の支払いがある場合
⇒該当する医療費の領収書に基づいて「医療費の明細書」に記載する
・医療機関にて窓口での支払が無い場合(自己負担の記載がある場合)
⇒医療費控除は実際に支払った医療費が対象なので、減免された分は(実際に支払ったとはされない)計算の際は減免分を控除することに留意
・補填された金額の記載方法
⇒通知書に自己負担分の減免前の金額が記載されている場合は、通知書に減免等された金額を追記する
・記載されている金額が実際の負担額と異なる場合
⇒窓口では10円未満は四捨五入のため実際の支払額との差額が発生する為、実際の支払額を医療費控除額として計算する
・医療費通知書に空欄がある場合
⇒前述のとおり①~⑥の記載がない通知書は確定申告では利用不可のため、領収書に基づき明細書を作成して提出するか、医療費通知書の空欄を補完記入する事で記載要件を満たす事になる



6.平成29年分所得税確定申告のチェックポイント

平成29年分所得税の確定申告が、2月16日からスタート。
申告納税期限は、3月15日。

■給与所得控除の上限額の引き下げ
給与所得控除の上限額が適用される給与収入が、1,000万円(控除額220万円)に引き下げられる。
参考:平成27年1,500万円(控除額245万円)、平成28年1,200万円(控除額230万円)

■セルフメディケーション税制の創設
自分と生計を一にする家族が支出した「特定一般用医薬品等購入費」が、1万2千円を超える時は、その超える部分の金額の所得控除を受けることができるようになる。(8万8千円が限度)
⇒一定の健康の保持増進及び疾病の予防への取組(健康診断や予防接種等)をしていることが必要。
⇒保険金、損害賠償金などで補塡される金額がある場合には、それを相殺する。
⇒従来からの医療費控除との選択適用となる。
なお、医療費控除を選択する場合には、「セルフメディケーション税制」対象となっている「特定一般用医薬品等購入費」を医療費に含めることができる。

■(事業所得)年の中途で業務の用に供した減価償却資産等の償却費の特例
月割計算を行う資産の対象に営業権が含められた。




7.医療費控除Q&A

国税庁より医療費控除に関する手続きについてのQAが公表された

■主な内容(抜粋)
・制度改正の内容について
Q:どのような改正があったのか
A:(改正前)医療費の領収書を確定申告書に添付
 (改正後)医療費控除の明細書を確定申告書に添付し、領収書は自宅に5年間保存

・記載の簡略化について
Q:医療費控除の明細書の記載を簡略化できる場合があるようですが
A:医療保険者から発行される、次の6項目の記載がある「医療通知」を添付
  する場合には記載を簡略化できる。また、領収書の保存も不要となる。
<記載項目>
(1)被保険者等の氏名
(2)療養を受けた年月
(3)療養を受けた者
(4)療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
(5)被保険者が支払った医療費の額
(6)保険者等の名称

・経過措置について
Q:経過措置があるようですが
A:平成29年から平成31年の各年分については従来の「領収書添付方式」による申告も可。
  なお、一部の支払について「明細書方式」をとるなど方式の併用は不可のため注意



8.特別徴収税額通知はマイナンバー記載不要

H30年度税制改正大綱に明記されたことを受け、
地方税法の改正が行われH30.1.1に施行。

■改正前
H29年分の特別徴収税額通知に、
事業主の法人番号等や従業員の個人番号が記載され通知された

■改正後
紙ベースで特別徴収税額通知を受ける場合、
マイナンバーは記載されないこととなった。(法人番号及び個人番号ともに)
※電子で受ける場合は記載されることとなる。



9.国税庁:納税者が配偶者控除等を受ける場合に提出すべき書類の取り扱い(新3項目)を追加

■控除対象となる配偶者が非居住者である場合
給与所得者の配偶者控除等申告書には「親族関係書類」及び「送金関係書類」を給与支払者に提出が必要。
⇒すでに給与支払者に対して扶養控除申告書を提出する際に「当該関係書類」を提出済の場合は提出不要。

■給与所得者の配偶者控除等申告書を電子データ保存の特例を受ける場合の承認
給与支払者は、既に源泉徴収に関する記載すべき事項の電磁的方法による特例の承認を受けている場合。
⇒新たに承認を受ける必要はない。

■給与所得者の配偶者控除等申告書のマイナンバーの記載について
給与支払者と従業員との間での合意に基づきマイナンバーを確認し相違がないことを当該申告書の余白にその旨を記載をしている場合。
⇒改正前の配偶者特別控除申告書と同様に記載不要である。

※補足として平成30年分以後の年末調整から「給与所得者の配偶者控除等申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書」は、従来の兼用様式から分割様式の新様式となる。



10.契約の結合/収益認識に関する会計基準案

・ステップ1:顧客との契約を識別する
⇒同一の顧客と「同時」または「ほぼ同時」に締結した複数の契約について、
 下記3つの要件のいずれかに該当する場合には当該複数契約を単一契約とみなして処理する

①複数の契約が同一の商業的目的を有するものとして交渉されたこと
②1つの契約において支払われる対価の額が、他の契約の価格または履行により影響を受けること
②複数の契約において約束した財またはサービスが、第29項から31項に従うと単一の履行義務となること

⇒現行の日本基準では工事契約および受注制作のソフトウェアを除き、契約の結合に関する定めは存在しない



11.会社法改正で、株主提案権の乱用的行使を制限へ

・過去には野村ホールディングスの総会で「トイレをすべて和式に」など100件の提案があり、こうした事例を念頭に企業が株主提案の制限を判断しやすくする。

・株主が提案できる議案数を5までにする案と10までの案を併記。
・米国では1株主につき提案は1つ。ドイツは提案内容で制限。
・判例に基づき、企業が内容によって提案を制限できる判断基準も示す。他の人の名誉を侵害したり困惑させたりする目的などの提案を例示する。

 ・株主提案権を行使できる要件は見直さない方向(株主の議決権の1%以上、または300個以上の議決権を6カ月以上前から保有)。



12.3C分析

1.顧客(Customer)、2.競合(Competitor)、3.自社(Company)の3つの視点から事業環境を分析
事業計画を立案する上での環境分析として、使用されることが多い。

1.顧客分析
・市場概要の把握
・ニーズの把握
・顧客行動の把握

2.競合分析
・競合他社の特定
・新規参入の動向
・代替品の動向

3.自社分析
・バリューチェーン分析
・強み、弱みの分析
・ポジショニング分析








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

2018年1月12日金曜日

1/12 勉強会:平成30年度税制改正大綱のポイント 他

1.中小企業もターゲット簡易な移転価格調査とは

■税務当局が簡易な移転価格調査(簡易TP)に力を入れている
・独立企業間価格(ALP)
(1)原則:独立価格比準法、原価基準法等で算定
(2)金利事案及び本来の業務に付随して行われる役務提供=移転価格事務運営指針により簡便計算が可能
⇒(2)を移転価格調査(簡易TP)という

■簡易TP対象の金利事案とは
(1)無利息または低利率による金銭の貸付け
(2)高利率での金銭の借入れ
⇒簡易TPでは、借手が銀行等から借り入れたとした場合の利率、貸手が銀行等から借り入れたとした場合の利率、貸付金相当額を国債等で運用するとした場合の利率を使用可能
ただし算定した金利にスプレッドが加算される

■簡易TP対象の本来の業務に付随して行われる役務提供とは
・無償または低額な対価を受領している本来の業務に付随して行われる役務提供のうち、条件を満たすもの
⇒原則:比較対象取引が存在しない場合=総原価の額(直接費+間接費)が独立企業間価格
例外:役務提供に要した費用が、当該役務提供を行った事業年度の原価または費用の相当部分を占める場合または役務提供の際に無形資産を使用する場合等は、簡易TP使用可能


2.外国法人の法人税申告は別表一に注意

H28.4.1以後開始事業年度より、
外国法人が法人税申告を行う場合は、「別表一の三」を使用すること。
※外国法人は12月決算が多いため、H29年12月期の決算法人より注意する必要あり。

別表一の三には、新たに「恒久的施設の有無及び種類」欄が新設。
⇒恒久的施設がある場合は、支店・建設作業場・代理人のいすれかに○を記載する必要あり。

所得金額については、恒久的施設帰属所得とその他の国内源泉所得とに区分して税額を算定することになる。


3.自社株対価MA、非取得会社の課税無関係

■自社株対価M&A
TOBで売却に応じる株主に対価として自社株を交付すること
⇒譲渡益が生じると納税資金が必要になり、株主が資金繰りのためにTOBに反対するという懸念があり、日本ではあまり利用されていない

■30年度税制改正(措置法)
・要件
自社株対価を行う法人が、改正産業競争力強化法に基づく「特別事業再編計画(仮称)」による認定を受けた場合
・内容
被取得会社の株主における旧株式(被取得会社株式)の譲渡損益を繰り延べる

■狙い
自社株を対価としたTOBを活発にし、企業の内部留保を賃上げ・設備投資の原資として使用させることが狙い


4.最大ゼロの新固定資産税の特例措置

平成30年度の税制改正の1つ、中小企業へ向け償却資産税の特例措置

■実施要項
対象者:大企業の子会社を除き、資本金額1億円以下の法人、従業員数1000人以下の個人事業主のうち、計画の認定を受けた者
対象地域:各自治体が策定した導入基本計画の同意を受けた市町村(業種や地域などの制限なし)
対象設備:現行の特例措置とほぼ同じ
その他の要件:新品であること、生産・販売活動に直接使用されるものであること
固定資産税:課税標準を3年間ゼロ~1/2に軽減(現行法は3年間1/2に軽減)

■留意点
固定資産税は地方税であるため、そもそも条例が定められていなければ、特例措置の適用を受けることが出来ない。また条例が定められたとしても各市町村で異なっている可能性があることに留意


5.所得税 納期特例 承認取消しでも不納付加算税は課されず

■源泉所得税納期の特例
従業員(給与等の支払を受ける者)が常時10人未満の場合、源泉所得税の納期限を半年ごとと
することができる特例

■承認の取り消し
従業員(給与等の支払を受ける者)が常時10人未満でないことが判明した場合には承認が取り消される。
この場合、取り消しがあった日の属する月の翌月10日までに、特例により繰延べている源泉所得税全額の
納付が必要となる。

例:5/10に承認取り消し
⇒1/1~5/31までに支給した給与にかかる源泉所得税を6/10までに納付しなければならない

■不納付加算税との関係
上記の場合において、1/1~4/30までの支給給与にかかる源泉所得税は未納付の状況(たとえば1月支給給与にかかる源泉が2/10に納付されていない)となるが、6/10にまでに納付すれば不納付加算税は課されないこととされている。また、承認が過去に遡って取り消された場合でも源泉所得税そのものは納付済であるため、この場合も不納付加算税は課されない。


6.ウーバーについて

・日本では白タクは厳しく規制されているが、ロンドンのウーバー運転手(約5万人)はアフリカ・中東出身者が多く、カーナビ付き自家用車で送迎する自営業者のように見える
 ⇒生活費を稼ぎたい運転手と顧客ニーズを配車アプリで仲介するマッチング・ビジネス
・世界70カ国で配車サービスを展開するウーバー・テクノロジーズ社だが、最近はロンドンでは強い逆風にさらされている。
・運輸局がウーバーの免許更新申請を拒否した
・労働裁判所は「運転手を従業員として扱い、最低賃金と休日手当を保証すべし」との判決をだした
 ⇒顧客の割り振りも運賃もウーバーが決めているから実質的にウーバーの従業員と見なされた


7.M&A取引のクロージング前に生じた事態への対処ポイント:想定外の事態へ対処するための検討ポイント

■サイニング後クロージングまでの間に生じることが想定される事態
(1) サイニング時には想定されなかった事実の発生
・表明保証違反に該当するような新事実の発覚、発生
・第三者による重要な訴訟の提起 等
(2) 想定外の従業員の対応
・M&Aへの反対からの退職 等
(3) 想定外の当局の判断
(4) PMI作業の遅延
・思いのほか作業量が多い 等

■対応
問題解消に向けた努力をしたうえで、
・クロージング延期の要否の検討
・最終契約上の権利行使の検討
・修正契約の締結の検討


8.平成30年度税制改正大綱のポイント

■所得拡大促進税制の拡充
・賃上げと設備投資の要件を満たした場合、賃上げ額の15%の税額控除が認められる
・上記に加え教育関連費の増加を同時に満たした企業は控除率が20%に引き上げられる
・中小企業者は要件を緩和するとともに、最大で賃上げ額の25%の税額控除が認められる

■個人所得課税
・給与所得控除と公的年金等控除が10万円引き下げられ、代わりに基礎控除が同額増額される
・給与収入が850万円を超える場合の給与所得控除の上限額が195万円となる
・年金収入が1,000万円を超える場合に、公的年金等控除につき195.5万円の上限額が設けられる
・基礎控除について2,500万円超でゼロとなる
・2020年分以後の所得税、2021年分以後の個人住民税から適用

■新税の創設
・2019年1月7日以後に日本から出国する場合、国際観光旅客税が出国1回について1,000円課税される
・2024年度より森林環境税が新設される。一人年額1,000円として市町村が個人住民税と合わせて賦課徴収する

■納税環境整備
・2020年4月1日以後開始事業年度より、資本金1億円超の大法人の法人税等や消費税の申告について電子申告が義務化される
・年末調整につき、2020年10月1日以後に提出される保険料控除申告書からは、保険会社の電子署名が付されたデータ添付による電子申告が認められる
・年末調整につき、2020年10月1日以後に提出される住宅ローン控除申告書からは電子申告が認められる


9.M&A 最終契約前のポイント〜前提条件〜

通常のM&A取引において設けられることの多い主要な前提条件
(1)表明保証の正確性、相手方当事者の義務の遵守
(2)許認可の取得、当局への届出
(3)チェンジ・オブ・コントロール(※1)条項を含む契約に関する相手方の同意の取得
(4)重要な役職員の確保
(5)違法状態の是正
(6)MAC (※2)

(※1)取引先との契約などにおいて、対象会社の株主や代表者といった支配権が変更したときに、その契約に解除事由が発生したり、事前又は事後に、契約の相手方に対して、通知又は届出を行わなければならないとする規定
(※2)対象会社の経営状態に重大な悪影響を及ぼす事由が生じていないこと)


10.重要な税務上の欠損金が生じている場合のDTA回収可能性

当期において重要な税務上の欠損金発生した場合、基本的に分類4or5。

■分類4の場合
翌期の一時差異等加減算前課税所得(以後、加減算前所得)の見積額に基づいて、翌期の一時差異等のスケジューリングの結果、当期DTAを見積もれる場合は、回収可能。

■分類5の場合
原則としてDTAは回収不能。

■分類4&5共通
スケジューリングの結果、加算差異の解消見込額と相殺可能な減算差異の解消見込額があれば、回収可能。
⇒指針の分類は収益力に基づく加減算前所得により判断する指針。
⇒将来加算一時差異の十分性の観点から、DTAの回収可能性があると判断できるケースもありうる。


11.持分法適用関連会社にならない場合の会計上の留意点

・売却損益
連結子会社株式を全部売却した場合、子会社に対する支配を喪失し、連結財務諸表から除外される。
連結子会社後に獲得した利益剰余金を個別財務諸表の子会社株式売却損益に加減する。

・資本剰余金
追加取得による持分変動により生じた資本剰余金は、子会社が連結の範囲から除外されても、
その資本剰余金は連結財務諸表に計上され続ける。
⇒追加取得は親会社と子会社の非支配株主との間の取引であり、子会社に帰属しないため。

・取得関連費用
子会社株式の売却に際して、取得関連費用を売却損益の修正として処理する。


12.連結範囲の検討時における子会社判定

■子会社判定の位置づけ
・子会社であるか否かの判定後、一定の検討を経て連結の範囲が決定
・子会社と判定されなかった企業は、関連会社の判定を行い持分法の適用を検討

■子会社判定の枠組み
自己が所有する議決権割合の判定等を踏まえ、下記の様に判定を行う。
①50%以上所有
⇒支配
②40%以上50%以下所有
⇒緊密な者+同意する者=過半数or取締役会の直接的・間接的支配⇒支配
③40%未満
⇒緊密な者+同意する者=過半数and取締役会の直接的・間接的支配⇒支配


13.被相続人が施設に入居していた場合等の小規模宅地等の特例の適用

・ケース1 要介護認定を受けた被相続人が特別養護老人ホームへの入所前までに居住していた建物(相続開始直前まで空き家)は、相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当し、特例の適用を受けられるか。
⇒ 受けられる。

・ケース2 ケース1で、生前要介護認定を申請していたものの、認定を受けたのが相続開始後の場合はどうなるか。
⇒ 要介護認定を受ければ、申請の日に遡って効力を発生するので、特例の適用を受けられる。

・ケース3 相続人は被相続人と同じ家に居住していたが、相続開始時点で海外支店に転勤していた。この場合、当該宅地は特定居住用宅地等である小規模宅地等の特例の適用対象に該当するか。
⇒ 転勤という特殊事情が解消した時は、起居を共にすることになると認められる場合は該当する。


14.MBO後の再上場時における上場審査

1.MBOと再上場の関連性
MBOと再上場はそれぞれ独立した行為であり、両者の間に必ずしも高い関連性があるとは限らない。
⇒上場審査では、主導者(経営者・株主)の同一性・連続性、MBOから再上場までの期間の長短などを確認。

2.プレミアム配分の適切性・MBO実施の合理性
(a)MBO時に株主の判断の前提となる手続きが公正に行われた上でMBOが成立していれば、問題なし。
⇒上場審査では、MBO時の手続きのMBO指針への準拠性などを確認。

(b)再上場時から見て、MBO時の計画とMBO後の進捗との間に乖離がある場合であっても、
再上場時にその理由について合理的に説明することができるのであれば、問題なし。
⇒上場審査では、当該説明が十分に説得力のあるものかどうかなどを確認。

■今週の新規上場会社
該当なし






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供