2019年1月30日水曜日

1/25 勉強会:収益認識基準に伴う法人税と消費税の相違点 他

1.相続開始直前の現金引出し、当局は「故意の隠蔽」に照準

■重加算税の賦課要件
・当初から所得を過少に申告することを意図
・その意図を外部からも伺い得る特段の行動をしている
・その意図に基づく過少申告をしたような場合

■東京高裁平成30年7月11日判決
(1)事件の概要
 納税者は、被相続人名義の各預金口座から相続開始前に現金を引出した。
納税者は誤解して出金したものであると主張。これは隠蔽に該当するか?
(2)裁判所の判断
 一連の行為は、下記のような故意に課税標準又は税額の計算の基礎となる事実の一部を隠す行為であり、
隠蔽に該当すると認められる。
・納税者は、預貯金を被相続人の相続財産として申告する必要があることを認識していた
・納税者は、相続税課税の対象となるのは相続開始時の被相続人名義の預貯金であって、
それ以前に引き出してしまえば相続税を軽減できるという単純な考えを有していた








2.条件付き取得対価の返還の会計処理が決定

■来期(今年)の組織再編から適用
・2019年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される組織再編から
・遡及適用はなし

■業績に応じて対価の一部が返還されるときの会計処理
・条件付き対価の返還が確実となり、時価が合理的に決定可能となった時点で、取得原価から減額
・追加的に認識するのれん又は負ののれんは企業結合日時点で認識又は減額されたものと仮定
⇒返還があった期首以前の期に係る償却額・減損額は当期の損益として処理






3.マンション仕入税額控除否認の学術的・理論的検証(1)

■超消費税の問題
超消費税:仕入税額控除が制限されることにより摩擦的に発生する税

例)税額控除ができず、販売価格に転嫁されていくケース
(A社⇒B社⇒C社⇒消費者と商品が販売されていく場合)
A社:仕入40、売上60、利益20、納税額4.8
B社:仕入60、売上84.8、利益20、納税額6.8
C社:仕入84.8、売上111.6、利益20、納税額8.9
消費者:仕入120.5

・消費税の合計額は最終的に20.5になり、本来の消費税は8なので差額の12.5は消費税とは言い得ない
⇒超消費税
・マンション仕入税額控除否認問題でもこれと同様のことが起きている





4.税理士に対する資料不提示で秘匿認定

~確定的な脱税の意志に基づきあえて不提示の場合は重加算税の対象と判断~

■概要
納税者:不動産収入を得ており、毎年税理士に確定申告手続きをお願いしていた。
税務当局:税務調査にて申告していない不動産収入を指摘、重加算税の処分を下す。
賦課理由:申告すべき不動産収入を「仮装又は隠ぺい」したと判断
→これに対して納税者は「申告漏れであり、意図したものではない」と主張

■裁決(納税者側敗訴)
・税理士に対する資料の不提示(所得の秘匿):過少申告を意図して行動したものかどうかを検討

・納税者は指摘された不動産収入の土地建物は自己名義ではなく、納税者の母親であった。
・収入そのものがある事実を税理士に相談もしていなかった。
→以上の事から所得を秘匿する意図をもって「外部からもうかがい得る特段の行動」をとったと結論
 重加算税の処分は適法とされた







5.時価算定基準案が決定、現行実務に一定の配慮も

■概要
・ASBJは「時価の算定に関する会計基準(案)」を公表
・公正価値測定に関するガイダンス及び開示を定めるもの
・適用は平成2020年4月1日以後に開始する事業年度等の期首から
・IFRS13号「公正価値」の内容を全て取り入れる
→現行実務に一定の配慮有り

■求められる開示項目
・時価レベル(Lv1~3)毎の残高
・時価算定に用いた評価技法及びインプットの説明(Lv2~3)
・レベル3に関する各種情報

■その他
・期末前1ヶ月の市場価格の平均価額は使用できなくなる
・市場価格のない株式等の従来通り取得原価(現行実務に配慮)






6.個別対応方式の用途区分、仕入日で判断

居住用建物の仕入税額控除否認問題、平成26年10月23日の名古屋地裁の判決

■事例
・本件建物は事務所及び住宅と有する建物
・課税期間の終期であるH23年8月31日時点では、事業用賃貸に係る賃料収入あり。
・居住用賃貸に係る賃料収入はなし(契約の締結はあったものの、賃貸借の始期は同年9月1日より)
・納税者は「課税仕入れの日が属する課税期間の終了時点」で判断。
・賃料収入の課税売上しか生じてなかったので、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」として申告。

■判決
事務所及び住宅を有する建物として設計・建設され、貸し付けられることが予定されていたことから「共通対応」に該当
⇒個別対応方式の適用上の用途区分の判定時点を「課税仕入れの日」と判断。






7.今週の専門用語

■売上税(取引高税)
・製造、卸、小売りといった複数の取引段階の各段階ごとの売上金額を課税標準として課される消費税のこと。
⇒多段階消費税という点では、付加価値税である日本の消費税と同じ。しかし、売上税には仕入税額控除の仕組みがないため、後の段階になるほど税負担が重くなり、各取引段階の企業に不公平が生じるといった問題がある。

■インプット
・市場参加者が資産、負債の時価を算定するときに用いる仮定のこと。例えばボラティリティやリスクに関する調整が該当する。
・時価のレベルはレベルに応じて決定する
⇒レベル1のインプット(時価の算定日に企業が入手できる活発な市場で、同一の資産(負債)に関する相場価格で調整されていないもの)
レベル2のインプット(観察可能なインプットの内相場価格以外のもの)
レベル3のインプット(観察できないインプット)




8.管理組合とアンテナ収入

■概要
マンション管理組合Aは携帯電話会社Bとの賃貸借契約に基づき
マンション屋上の一部を賃貸し、設置料収入を得ていた。

■争点
(1)マンション管理組合Aは法人税法上の「人格のない社団等」に該当するか
(2)マンション管理組合Aの設置料収入は「収益事業」に該当するか
※「人格のない社団等」については「収益事業」を営む場合に限り法人税の
納付義務を負う

■東京高裁判断
(1)について
管理組合Aは団体としての組織を備えており、総会の議事は組合員の議決権の過半数で決する
とされていることなどから、法人税法上の「人格のない社団等」に該当する
(2)について
設置料収入を管理組合Aの予算案・決算に加味して総会で承認されていること、区分所有者に分配
されていないことなどから、本件貸付事業は管理組合Aが主体となって行った収益事業に該当する

■ポイント
本件は、マンション管理組合がアンテナ設置のために行った賃貸が法人税法上の収益事業として
課税対象となることが判断された初めての事例である。
⇒今後、管理組合に対する注意喚起がされていくものとみられる






「中小企業者」の見直しは2019年4月開始事業年度の見込み

平成31年度税制改正大綱において、中小企業者の判定の一部が変更となる。

■中小企業者の判定
・資本金1億円以下の法人
・下記みなし大企業に該当しない法人

■みなし大企業(=中小企業者に該当しない)
資本金1億円以下の法人ではあるが、
(1)株式の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人
(2)株式の3分の2以上を大規模法人に所有されている法人
※大規模法人とは資本金1億円超の法人
⇒大規模法人に50%以上株式を保有されている法人は「中小企業者の特例」を受けられない

■大規模法人の範囲が改正
・現行⇒資本金1億円超の法人
・改正後:
⇒資本金1億円超の法人
⇒大法人の100%子法人
⇒100%グループ内の複数の大法人に株式の全部を保有されている法人

■中小企業者に該当しなくなった例
A社:大法人(資本金5億円超)
B社:A社の100%子会社(資本金1億円以下)
C社:B社の100%子会社(資本金1億円以下)

・現行:C社は中小企業者に該当
⇒B社の資本金が1億円超でないため

・改正後:C社は中小企業者に該当しない
⇒B社がA社(大法人)の100%子法人に該当するから。

適用年度は2019年4月1日以後開始事業年度からスタート予定








10.IFRS適用(クボタ)

■前提

・クボタは1976年から米国会計基準を適用
・エンロン事件以降、米国会計基準の適用を疑問視。
・2013年にSEC登録廃止。

■IFRS適用に向けた主なスケジュール

・2015年~
海外子会社に合わせる形で決算期を12月に統一
差異が明確な項目についての検討開始(減価償却を定額法に変更、無形資産、退職給付)

・2016年~
監査法人との打ち合わせ、論点洗い出し

・2018年12月期第1四半期より任意適用開始

■重要な論点

①工期が短い工事案件の収益
⇒短くても、完成基準から進行基準へ

②工事契約における履行義務の識別
⇒義務を個々に識別できるか検討した結果、「統合的なサービス」である旨を監査法人と確認

③変動対価の見積もり方法
⇒ 値引き等の変動対価は収益に織り込む。見積もり方法をIFRSに合うように見直し。





11.時価の算定に関する会計基準等の公開草案を公表

■時価の算定に関する会計基準(案)
・企業会計基準委員会(ASBJ)が1月11日に「時価の算定に関する会計基準(案)」を公表
⇒金融商品の時価のガイダンス及び開示に関して、国際的な会計基準等との整合性を図る。
⇒適用は2020年4月1日以降開始する事業年度。早期適用も可。

・現行の基準では、金融商品会計基準等で時価の算定は求められているが、算定方法の詳細な記載なし。
⇒国際的な比較可能性が損なわれている。

・基本的な方針は、IFRS第13号の定めをすべて取り入れる。
⇒統一的な方法を用いることで、国内外の企業の財務諸表の比較可能性を向上させる。

・時価の算定にあたって使用された評価技法は毎期継続して適用。
⇒変更する場合は「会計上の見積りの変更」として処理。






12収益認識基準に伴う法人税と消費税の相違点

■収益認識をめぐる法人税と消費税の改正点の相違
(従来)
・会計、法人税、消費税ともに収益は、原則として取引単位で計上
(収益認識基準)
・履行義務単位で計上、法人税もおおむね容認
・消費税は原則として取引単位で計上
⇒会計、法人税および消費税で収益計上が同一でない可能性あり
※例①商品販売と2年間の保守サービスを一体で契約した場合の収益計上
 会計及び法人税=当期11,000、翌期1,000
 消費税=当期12,000、翌期0
※例②自社ポイントの付与による収益計上
 会計及び法人税=当期9,000、※ポイント1,000を繰延べ
 消費税=当期10,000






13.新収益基準下における契約実務上のポイント

①ステップ2(履行義務の識別)でのポイント
⇒黙示の約束がある場合は、明示して契約書に盛り込む。
※履行義務(約束)には、取引慣行等も含まれるため、契約書から全ての約束を識別できるようにする。

⇒複数の約束を区分したくない場合は、それぞれの付随性・関連性を強化した文言とする。
※基準上、一つの契約の中であっても、ある約束が他の約束と区分して識別される場合は、収益の認識をそれぞれで認識することになるため、会社の戦略に応じて、契約内容をアレンジすることを検討する。
例:パソコンの販売契約の中には、パソコンを引渡す約束の他、保守の約束が含まれる。

②ステップ5(履行義務の充足)でのポイント
~収益を一時点で認識する場合~
⇒顧客がいつ資産に対する法的所有権を有するかを明示する
※資産に対する支配を顧客に移転した時点で収益を認識するため、法的所有権がいつ顧客に生じるか、契約に明示させることが必要となる。
※検収規定や買戻し規定を設ける場合は、特に注意が必要





14.収益認識基準対応で契約を見直す際の留意点

・契約見直しの検討ステップ
現在の契約内容を精査し、新収益認識基準での収益認識の考え方を整理する
→自社の希望する収益認識タイミングとならない場合、契約内容を検討する
→契約内容を変更する場合、相手方と契約変更を交渉する
→変更後の契約内容を経理担当者、営業担当者等と会計処理方法を周知・共有する

・検討の見直し時期
2021年4月1日以降に開始する事業年度からのため、約2年間の時間的猶予あり
→ただし、契約内容の変更は相手方を巻き込む話となり、簡単に変更できない可能性がある
→早期に自社の収益認識整理+希望する計上タイミングが整理し、交渉を進める必要がある







15インセンティブ報酬と期間の計算

■インセンティブ報酬の計算期間
(1)事前確定届出不要の譲渡制限付株式の交付時期
 決議の日から1月を経過する日まで
(2)業績連動給与に係る株式の交付期間
 業績連動指数の数値が確定した日の翌日から2月を経過する日まで
(3)税制適格ストックオプションに係る行使可能期間
 付与決議の日後2年を経過した日から、当該付与決議の日後10年を経過する日まで

■具体例(決議の日を6/28とする)
(1) 「…日から1月を経過する日まで」について
 ・「…日から」という言い回しの場合、起算点が午前零時でない限り、初日は算入されない
 ⇒6/28の翌日である6/29を起算日して1ヶ月の期間をカウント
 ・「経過する日(満了日)」は、7/28の午後12時となる
⇒月の途中から期間計算する場合、最後の月における起算日の応当日の前日をもって期間が満了するため

(2)「…日の翌日から2月を経過する日まで」について
 ・「翌日」は午前零時から始まるものと考えられるため、6/29を起算日とする
 ・「経過する日」は上記(1)と一緒
 ⇒2ヶ月を経過する日は、8月の応当日(8/29)の前日である8/28となる

(3)「日後2年を経過した日」「日後10年を経過する日まで」について
 ・「決議の日後」は「決議の日」(X1/6/28)は含まず、X1/6/29を起算日として2年をカウント
 ・「経過した日」については、「経過する日」の翌日を指す
 ⇒X1/6/29を起算日として2年を経過した日となるのは、経過する日(X3/6/28)の翌日であるX3/6/29となる






15.システムによる情報セキュリティ

1.ソフトウェア資産管理
・主な運用プロセスは、管理対象となるソフトウェアを選定し、それを管理台帳に登録、対象コンピューターやソフトウェアの紐付けを実施。
・ソフトウェアに関するライセンス情報なども同時に記録する。
・利用状態の把握が重要で、場合によってはこれらソフトウェアの利用申請や承認までできるシステムもあり。

2.デバイス管理
・USBメモリや外付けハードディスクドライブなどの外部記憶媒体、
タブレット、スマートフォンなど、Wi-Fiなどの無線ネットワークに接続して利用する端末などが対象。
・USBメモリなどは手軽である一方、簡単にデータを持ち運べたり、紛失の問題があり。
・情報漏洩を防止するため、システムとして多くはUSBメモリを端末に装着した段階で「どの端末がアクセスし、重要機密にアクセスしたか」がわかるようになっている。

3.ログ管理
・障害が発生した場合などに早期解決ができるだけではなく、「いつ・誰が・何を」したのかわかるようにすることが可能。
・そのため、システム障害が起きた場合にその問題点を発見することができるようになる。
・社内イントラだけでなく、外部サービスに対するインターネットに関しても、ログを保管し管理していくことが必要。

4.セキュリティ管理
・業務上関係のないソフトウェアを使用したり、サイトに書き込んだり、企業のセキュリティポリシーに反する行為が行われた場合にアラートを発信して知らせる機能がある。
・上場企業の多くが、不適切な操作に関するポリシー規約を作っており、場合によっては操作そのものを禁止することも可能。
・登録にない端末の接続や許可IPアドレス以外への通信行為、メール送信制限、指定ファイルの操作など、
社内のセキュリティを脅かす行為に関して管理できるようにする必要あり。


























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1/18 勉強会:ファイナンスの手法 他

1.平成30年度末で期限到来する法人税関係の租税特別措置は?

主な項目は下記の通り。
■延長
・中小企業者等の法人税率の特例(800万円以下15%) ⇒2年延長
・研究開発税制 ⇒2年延長
・中小企業投資促進税制  ⇒2年延長
・特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却等 ⇒2年延長
・中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却等 ⇒2年延長

■廃止(平成31年3月末までで)
・中小企業等の貸倒引当金の特例(公益法人等や協同組合等の繰入限度額の割増措置)
 ※平成35年3月末までの間は経過措置あり








2.時価算定、平成33年3月末の適用も可能

■公開草案が近く開示
・現在の日本基準において、時価(公正価値)の開示基準は定められていない。
・国際基準との整合性の観点から公正価値についての算定方法をまとめた基準
・2019年1月中に公開草案が開示予定

■適用時期
・2021年3月末から早期適用が可能になる見通し(早期に国際基準との整合性を図りたい趣旨)




3.ムゲンエステート社裁判、雲行きに変化

■居住用建物に係る消費税の仕入税額控除に関する裁判
・販売用の賃貸マンションの仕入が課のみ仕入になるか、共通仕入になるか
・昨年9月時点では同社の敗訴が濃厚だった
・課税当局の消費税法の解釈の変更は租税平等主義に反する旨を主張し、弁論続行が決定
・以前に却下された「課税売上割合に準ずる割合」も別の方法で申請したところ承認
・準ずる割合を用いれば追徴税額は減少するが、同社は全額控除を求めて裁判続行






4.個人版事業承継税制での小規模宅地特例の適用は

■個人版事業承継税制
・個人事業者の集中的な事業承継を促すため後継者が事業用資産を先代から承継した際に課される
 贈与税、相続税の負担を10年間(H31,1/1~H40,12/31)の限定で大幅に軽減する制度

■小規模宅地の特例
・個人が相続または遺贈により取得した財産の内、事業に供されていた宅地等の一定の面積部分
について相続税の課税価格を最大で80%減額できる計算の特例
→相続開始前3年以内に贈与により取得した場合、相続時精算課税に係る贈与により取得した場合は対象外 

■上記2つの税制の適用は選択制
・事業の用に供している宅地の事業承継税制による納税猶予を受けた場合、特定事業用宅地等に係る小規模宅地特例は併用不可だが居住用宅地であれば併用が可能となる見通し







5.収益認識など、改正法人税基本通達の趣旨説明が公表

■概要
・平成29年度及び平成30年度の税制改正を踏まえた「法人税基本通達等の一部改正について」の趣旨説明のHPを平成30年12月26日に公表
・平成29年度改正では、役員給与等や中小企業経営強化税制等を解説
・平成30年度改正では、収益認識会計基準の導入に関して解説





6.老人ホームに入居中に自宅を相続した場合の小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法第69条の4)の適用について

【事例】夫婦が亡くなるまで老人ホームに入居していたケース
・被相続人甲は亡くなるまで有料老人ホームに入居。介護保険法第19条≪市町村の認定≫第1項に規定する要介護認定を受けている。
・家屋を所有していた配偶者乙が亡くなった後、被相続人甲が相続している。
・本件家屋は被相続人甲が有料老人ホームに入居した後は、空家となっていた。

【特例を受ける要件】
■本件宅地等を居住の用に供していて、空家であったこと。
■被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、老人ホーム等に入所していた。
■被相続人が有料老人ホーム等に入居して居住の用に供されなくなった直前の利用状況で判断する。
⇒本件家屋及び本件宅地等を長男が相続する場合、特例の適用を受けることができる。




7.平成31年度税制改正大綱で明らかとなった「過大支払利子税制」の改正内容と実務への影響

・過大支払利子税制とは、所得に比して過大な利子の損金算入により法人の課税所得を圧縮させることを防止することを目的とした税制。

■改正の概要
・国外の関連者等への利子の支払いに加えて、国外の第三者への利子の支払いも対象に
・調整所得金額から配当等の益金不算入額等を除外
・損金算入限度額を調整所得金額の50%→20%へ
※調整所得金額は法人課税所得に減価償却費、国外関連者に関する純支払利子、益金不算入の受取配当等の額の加算等の調整を加えた金額

■実務への影響
・借入に関しては、適用対象となる利子等からは受領者において日本の課税所得となる利子等が除外された。新たに適用対象に含まれるのは、グループ外の外国法人、非居住者からの借入に対する支払利子等となる。
・社債に関しては、国内債についてみなし課税対象利子等の額により対象外支払利子等の額を算定する場合に、支払利子等の5%が適用対象になる。







8.国税庁照会 雇用契約の終了と従業者引継要件

■概要
・A社がB社を合併
・A社とB社には資本関係なし
(適格合併の要件として従業者の80%以上の引継が必要)
・合併前日においてB社従業員全員が雇用契約を終了し、退職金を支給、合併日付で
 A社と新たに雇用契約を締結

■照会内容
上記のように,被合併法人の雇用契約が合併法人に承継されていない場合でも,本件合併は
従業者引継要件を満たすと考えて良いか?

■回答
従業者引継要件は,おおむね80%以上に相当する数の者が「合併後に合併法人の業務に従事することが
見込まれていることのみ」規定している。

このことを踏まえれば,雇用契約が必ずしも合併法人に承継されることまでをその要件とはしていないものと考えられる。

よって,本件は被合併法人とその従業者との間の雇用契約は合併前日に終了するものの従業者の80%以上が新たな雇用契約を締結し
引き続き合併法人の業務に従事することが見込まれていることから、従業者引継要件を満たす。






医療費控除の明細書と医療費通知

H29年度分の所得税の確定申告より、
医療費控除の適用を受ける場合、2つのやり方で申告が可能となった。

■医療費控除の明細書の添付
・領収書の添付に代え、「医療費控除の明細書」の添付で申告可能
・領収書は提出不要となったが、5年間保存する必要あり

■医療費通知の添付
・健保組合等が発行する「医療費通知」の添付で申告可能。
・「医療費控除の明細書」の添付及び領収書の保存が不要

■併用
「医療費控除の明細書」と「医療費通知」を併用して申告することも可能







10.監査人の交代理由の開示

・監査人交代の際、交代理由を記載した臨時報告書の提出が求められる。
・2008年から2017年の交代959件のうち、687件が「任期満了」。
・監査人は毎年任期が満了するため、「任期満了」では理由にならない。
・「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」では、より踏み込んだ交代理由の記載を強制する仕組みを議論中。
・「監査報酬や会計処理に関する見解の相違」があった場合、具体的な対立点を記載するようが求められる、としている。





11.収益認識基準に対応した法人税基本通達のポイント

■収益の帰属時期
・法人税22条の2(平成30年度改正)
⇒原則:資産の販売等に係る目的物の引渡し、又は役務の提供の日
  容認:一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に準拠、かつ近接日

・棚卸資産の販売等に係る収益の帰属時期
⇒原則:引渡日
⇒引渡日の例示列挙として新たに「着荷日」「船積日」を追加(他の例示列挙は「出荷日」「検収日」)。
  逆に「検針等により販売数量を確認した日」は削除され、「近接日」として取り扱う。

・固定資産の譲渡に係る収益の帰属時期
⇒棚卸資産の販売等と同様、法人税法22条の2の適用対象となる。







12固定資産の減損に対する監査対応ポイント

■概要
・減損検討プロセスは非常に重要
・減損の評価ルールを整備し、将来CFの算定のもとになる情報については根拠を整理する
・監査法人と減損に関して、何をどこまで対応すべきか事前に協議しておくことが必要
■グルーピングの決定
・グル―ピングは非常に重要(原則、毎期継続)
・事業セグメントより大きくなることはないといわれている
・グルーピングの単位が大=減損の影響が広範囲
・監査においては、減損の判定単位を決めた根拠を明示しておくことが必要
■減損の兆候の識別
・監査においては、減損の兆候を社内で具体的にルール化しておくことが必要
 例:2期連続赤字であるが翌期が黒字見込みの場合、経営環境や社内の指標をもとに独自に減損の兆候判断指標とする場合等
■減損損失を認識するかどうかの判定
・将来キャッシュ・フローのベースである事業計画の妥当性や合理性が重要視される
・事業計画に関する根拠を明確にする必要がある
■減損損失の測定
・回収可能価額、特に使用価値の算定にあたり、監査法人と使用する割引率を協議する
・事後的に見積りで使用した事業計画について実績と比較する





13.収益認識基準~「契約」の意義から読み解く~

■前提
基準の適用範囲⇒顧客との「契約」から生じる収益

■「契約」とは
定義:法的な(A)権利及び義務を生じさせる当事者間における取り決め(B)(一部略)
⇒法的な概念に基づくことが前提(A)
⇒書面、口頭、取引慣行等により成立する(B)

■契約の5要件のうち「契約に経済的実質がある」とは
定義:企業の将来CF(C)のリスク、時期または金額が変動すると見込まれること
⇒契約に基づく義務の履行の対価が現金であることを前提

■契約」の5要件のうち「対価を回収する可能性が高い」とは
定義:回収できない可能性よりも回収できる可能性が高い場合
※(参考)IFRS・USGAAPとの可能性についての比較
IFRS(50%)<JGAAP(51%)<USGAAP(70%)





14.棚卸資産の評価に対する監査対応ポイント

収益性が低下した場合、棚卸資産の評価(帳簿価額)に反映する必要があるため、
会社は棚卸資産の評価ルールを作成する。

■棚卸資産評価の基礎
・評価単位
評価単位が大きくなると評価減が適切に判定できない可能性がある。
→原則品目単位で評価を実施する。
→投資の成果を適切に締めることができる場合はグルーピングして評価可
→複数のA製品専用部品がある場合、A製品として採算管理等をする場合はグルーピング可

・評価方法
棚卸資産の評価として、1-正味売却価額、2-滞留または処分見込み、3-再調達原価が挙げられている。

■監査対応ポイント
・棚卸資産評価資料の網羅性、正確性
評価資料と試算表の一致確認や棚卸資産集計プロセスを監査人と事前合意しておく

・正味売却価額の妥当性
時価がない場合、期末日前後の販売実績等を用いることが多い
→販売実績がない場合等、判定用いる売価が時価を反映していない可能性がある
→今後の販売見込等も含めて売価(時価)を決定する必要があり、監査人と事前合意をしておく

・事後的な確認
近年、時価として採用した売価が実績とどれだけ乖離していたか検討することを監査人から厳しく求められる
→見積と実績し、見積の精度を確認し、評価ルール見直しの可否を検討する必要がある。

■IFRSのポイント
原価と正味実現可能価額のいずれか低い額で評価
→正味実現可能価額=日本基準の正味売却価額
→2年超滞留した棚卸資産を50%評価減するといった規則的に評価減する方法は認められていない。









15会計上の見積もりの監査への対応ポイント

(1)会計上の見積もりのために使用した仮定の合理性、不確実性
・見積もりのために使用した仮定や会社としての判断根拠を明確にしておく必要がある。
・見積もり時に将来の事業計画等を使用する場合、過去の事業計画との実績の比較等による事業計画の実現性等も明確にしておく必要がある。

(2)会社としての見積もり方法の確立
・会計基準に記載さている条件等に沿って、可能な限りルールとして見積もり方法を具体的に定めておく必要がある。

(3)会計上の見積もりに使用するデータの性格性および網羅性
・見積もりにあたって使用したデータがそもそも正確かどうかを確認するとともに、必要なデータが全て網羅的に見積もりの範囲に含まれているかどうかを確認する必要がある。

(4)事後的な確認
・事後的な確認として、行った見積もりとその後の実績との比較を行い、見積もり実施時点にといて見積もった情報が実績とどれだけ乖離しているかを確認する必要がある。
・見積もりと実績に差異があったとしても、最善の見積もりを実施した場合、誤謬として過去の数値の訂正にはならない。

(5)外部の専門家の利用
・外部の専門家を利用したとしても、見積もりに対する責任は経営者にある。
⇒実際にどのような見積もりを行ったか等を会社が把握しておく必要がある。
 また、使用する外部の専門家の詳細を監査法人と事前に共有しておくことも重要。

(6)監査法人とのコミュニケーション
・監査法人と定期的にコミュニケーションをとることが重要。
⇒決算前には、継続監査において毎期求めてくるような事項は事前に準備しておく必要がある。
 (例)事業計画は年度の期末決算前には固まっていると思われるので、決算前に事業計画について、妥当性を示して合意を得ておく必要がある等





15.ファイナンスの手法

ファイナンス手法/持分比率の変動/資金調達/発行済株式数の増加
1.株主割当増資/×/○/○
2.第三者割当増資/○/○/○
3.株式分割/×/×/○
4.株式併合/×/×/×(減少)
5.株式無償割当/×/×/○
6.株式売買等による移動/○/×/×(変動なし)
7.新株予約権/権利行使前:×、権利行使後○/○/○
8.DES/○/×/○

1.株主割当増資
株主間の不利益がないため、上場前規制は特になし。

2.第三者割当増資
持分比率が変動するため、上場前規制あり(継続保有要件など)。

3.株式分割、4.株式併合
外部株主を入れる前に、実行されることが多い。

5.株式無償割当
3.株式分割との相違点は以下。
・株式分割は同一の種類の株式数が増加、株式無償割当は同一または異種の株式の交付が可能
・株式分割は自己株式も増加、株式無償割当は自己株式に割当が生じない。
・株式分割は自己株式の交付は生じない、株式無償割当は自己株式の交付が可能

8.DES(デット・エクイティ・スワップ)
金銭債権の現物出資
短期間に実行可能、債権者側も事業再生を目的として活用























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