2014年3月29日土曜日

3/27 勉強会:平成26年3月期税務申告の要点解説 他

1.節税対策

   役員、従業員の賃貸物件について、
住宅手当又は法人の社宅契約についてどちらがよいか。

住宅手当⇒給与課税される

社宅契約⇒家賃は法人経費となる。
       従業員は家賃の半額を給与から天引きされる。

  手当でもらうと源泉税へのインパクトがあるが、社宅契約をすると源泉税への影響はない。

   法人契約による中古車の固定資産の減価償却費
4年型落ちの中古車を買うと、購入額の全額が損金算入される。
(期中の購入は月数按分が必要)


2.法人税:損害賠償請求権の益金算入時期

(仕訳イメージ)
損害賠償請求権/請求権収入

■取引先等「他の者」から支払われるもの
原則:支払を受けることが確定した事業年度
特例:実際に支払を受けた日
⇒後の訴訟によって金額が確定することが一般的であるため上記特例が認められている。

■自社従業員の不法行為(横領など)によるもの
原則:その不法行為が発生した事業年度
特例:なし

⇒税務調査等で事後的に発覚するケースが多いが、発覚した日の
属する事業年度に益金算入することはできない。
(理由)帳簿を確認すれば、不正が発生した事業年度に容易に認識できるはずであるため。


3.法人税:50%損金算入の対象になる接待飲食費の範囲

接待飲食費に該当すれば、50%損金算入が認められる。
以下の取扱いは飲食費の5000円基準と同様とされる。

•得意先への差入れの弁当代
→接待飲食費に該当

•飲食店で得意先に渡されるお土産代
→接待飲食費に該当する

•得意先の人数等
→得意先の参加者が1人であってもOK

•親会社の役員等への接待にかかるもの
→接待飲食費に該当する

•観劇、ゴルフ、旅行に付随する飲食費
→接待飲食費に該当しない


4.平成26年度税制改正が税効果会計に与える影響

・平成26年度改正 3月末までに成立&公布予定
①生産性向上設備投資促進税制
H25年度改正の「生産等設備投資促進税制」とは別の税制
H26.1.20-H26.3.31までに要件を満たす資産を取得した場合、H26.4.1以降の事業年度で適用できるという経過措置が設けられる予定
⇒一時差異に該当

②所得拡大促進税制
H25改正で創設、H26改正で要件緩和
H26.3期において、改正前×、改正後◯の場合、H27.3期も要件◯であれば、H26.3期分をH27.3期に上乗せできる。
 この上乗せ分が一時差異に該当

基準年度:3月決算 H25.3期(H24年度)
        6月決算 H25.6期(H24年度)

③地方法人税
・税源移譲が目的なので実効税率は動かさないよう調整されるのでは?

■比較
(1)H26年度改正 生産性向上設備投資促進税制
 ・先端設備 or 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備
 ・投資利益率が年15%以上
 ・経産省へのチェック必要
 ・ソフトウェア70万円以上等の最低金額は決まっている。

(2)H25年度改正 生産等設備投資促進税制
 ・その期の取得価額>償却費
 ・今期取得/前期取得>110%
 ・30%特別償却or3%税額控除(法人税の20%限度)


5.デューデリジェンス

()財務DDの着眼点
・ヒトの買収 ⇒ 当該技術者を継続雇用できるか
・モノの買収 ⇒ 所有権に瑕疵がないか
            共有状況やライセンスの状況
            知的財産に関する紛争の有無
・顧客の買収 ⇒ 顧客基盤の承継可能性

()法務DDの着眼点
・スタンドアローン化に伴う問題点の有無
 ⇒ 売主グループから離脱して支障があるか
   独り立ちして支障がないか
・TSA(TransitionServicesAgreement)
 ⇒ 売主側に取引の実行後も協力する義務を負わせる契約


6.平成263月期税務申告の要点解説

Ⅰ法人所得計算に関するチェックポイント
■減価償却費
 ・生産等設備投資促進税制、中小企業等設備投資促進税制
  →貸付用資産、所有権移転外のリース資産は対象外
  →特別償却を選択する場合、他の特別償却との重複適用がないか
■交際費
 ・中小法人については、800万円まで損金算入しているか
■貸倒引当金
 ・中小法人と金融機関等以外の法人は損金算入限度額を
  従前の損金算入限度額の12まで(経過措置)としているか
■欠損金
 ・支配関係がある法人間でみなし共同事業要件を満たさない適格合併があった場合
  引き継ぎ制限される被合併法人の欠損金等の範囲を確認したか
  (グループ法人間での資産譲渡により生じた譲渡等損失が絡むものが追加された)
■過大支払利子税制
 ・平成263月期より適用開始
■中小企業税制
 ・中小法人  …資本金1億円以下の法人
         資本金が5億円以上の法人の100%子会社を除く(直接、間接を問わず)
 ・中小企業者等…資本金1億円以下の法人
         大規模法人(資本金が1億円超)に発行済み株式等の50%以上、または複数の大規模法人に発行済み株式等の23以上を所有されている法人を除く

Ⅱ法人税計算に関するチェックポイント
■雇用関連税制
 ・所得拡大促進税制
  →給与等支給額が基準事業年度より5%以上増加しているか
  →5%基準を満たさない場合は、平成26年度税制改正の要件を満たすか
 ・雇用促進税制
  →税額控除額を1人あたり40万円としたか
 ・所得拡大促進税制と雇用促進税制は有利選択をしたか
■復興特別法人税
 ・課税期間の見直しがあり1年前倒しで廃止(今期まで)
 ・復興特別所得税は平成491231日まで課税あり
■税効果会計
 ・法人の実効税率が改定
  →平成2641日以後開始事業年度…35.64%(外形標準課税適用あり・東京都)

Ⅲその他の重要項目に関するチェックポイント
■消費税
 ・短期前払費用処理を行った費用の消費税率が8%の場合
  →仕入税額控除の方法を確認したか


7.IFRS適用におけるM&Aの会計処理(ソフトバンク事例)

・日本基準に比べ、IFRSの方が認識される無形資産の種類が多く、金額も大きい 
⇒孫社長が、買収した米国Sprint社の周波数ライセンス等を高く評価し、簿価より約3兆円高く測定

・無形資産が多く計上される分、計上されるのれんも日本基準よりも少なくなる

IFRSではのれんは非償却。耐用年数が確定できない無形資産も非償却
SBでは、IFRSを適用しのれんの償却をストップしたことにより、年間約800億円の利益アップ

・日本基準 :期間損益計算を重視し未実現利益を排除
 IFRSや米国基準 :M&Aで拡大する企業の為の基準であり、公正価値による測定が中心


8.退職給付会計における簡便法から原則法への変更

■留意点
①変更理由(2種類)
・会計方針の変更に該当場合
・事実の変更に該当する場合

②差額の処理
・会計方針の変更に該当場合
 →遡及適用+注記
・事実の変更に該当する場合
 →一時の損益(営業費用)+追加情報


9.生産性向上設備投資促進税制

【対象設備、要件】
①最先端設備
 ⇒最新モデル、生産性が年平均1%以上向上、最低取得価格以上
②生産ラインやオペレーションの改善に資する設備
 ⇒投資計画における利益率が年平均15%以上、最低取得価格以上

【適用スキーム】
①最先端設備
 ⇒設備取得後、証明書(1)をメーカーに発行してもらう
②生産ラインやオペレーションの改善に資する設備
 ⇒設備取得前に、確認書(2)を経済産業局に発行してもらう

(1)生産メーカーが工業会に承認してもらい、発行する
(2)会計士か税理士が「投資計画案」「事前確認書」を作成し、それを経済産業局に提出し許可が下りれば発行される


10.牛丼並盛り 価格改定

(従来)吉野家、松屋、すき家 280
(今後)吉野家→300円、松屋→290円、すき家→270

・消費税増税の中で、松屋は実質価格据え置き、すき家は値下げ、吉野家は実質値上げ
・吉野家は、「中身の改良を行って付加価値増、価格増」
・売上に占める「牛丼並盛り」比率は、吉野家5割、松屋4割、すき家はそれ以下。
・吉野家としては、「牛丼並盛り」で儲けたいが…。


11.アイフォーン人気、日本は異常?

・アイフォーンがシェアトップの国は日本と、アメリカだけ

・アメリカでのスマホシェアは40% 対して日本はスマホ新規契約の7割がアイフォーン
・アイフォーンは他国では高級端末(平均的なアンドロイド端末が276ドル、アイフォーンは650ドル)
・日本では、他社乗り換えで実質0円のためアイフォーンが普及

→今後は販売報奨金の引き下げでシェアが落ちる?







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2014年3月26日水曜日

3/20 勉強会:所得拡大促進税制の拡充 他

1.裁決事例紹介:過去の事前通知対応誤りは、後の調査に影響せず

【事例】
・過去の税務調査の事前通知について、税務署に不手際あり
 ※税務調査は実施されず

・数年後、税務調査を実施するも、請求人は、「過去の不手際について謝罪が無い限り、調査に協力しない」と主張
 ※4ヶ月に渡り、調査についての協力を依頼したが、応じてもらえず

・やむを得ず、税務署は帳簿書類調査、
請求人の取引先に対する調査を実施し、更正処分とした
・請求人が、税務調査手続きを違法として審判所へ

【判断】
・刑罰法令に触れたり、公序良俗に反する程度に至った場合に、税務調査が違法と言える
・過去の税務署対応の誤りは、その後の調査に影響しない
⇒調査手続きは適法と判断


2.所得拡大促進税制の拡充

■所得拡大税制とは
・給与支給額を増加させた場合、基準事業年度からの増加額の10%を税額控除する制度 (法人税額の10%(中小企業者等は20%)が控除限度額)

・下記の要件をすべて満たす必要がある
 ①その事業年度の雇用者給与支給額が基準事業年度の雇用者給与支給額より5%以上増加していること
 ②その事業年度の雇用者給与支給額が前事業年度より減少していないこと
 ③その事業年度の1人あたりの平均給与が前事業年度より減少していないこと

■平成2641日以降に終了する事業年度について
 ・要件①の5%の増加要件を緩和
  平成25年度から平成26年度 2
  平成27年度            3
  平成28年度から平成29年度 5% 
 ・適用期間を2年間延長(平成303月末まで)
 ・平均給与の比較対象を、継続雇用者に対する給与に見直し
  …退職者、新規採用者を含まなくてよい

■留意点
 ・基準年度とは平成2541日以後開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の前事業年度(3月決算法人なら平成253月期)
 ・その事業年度に適用できなくても翌事業年度において適用できる可能性はあるのでデータの準備をしておく(雇用者給与支給額、1人当たりの平均給与)
 ・雇用促進税制とは選択適用となる


3.政府が見解、話題のビットコインとは?

・ビットコイン=インターネット上で取引される仮想通貨。
・政府の見解=ビットコインは通貨には該当しない。
・税法=所得税法、法人税法、消費税法等に定める課税要件を満たす場合には、課税対象となる。

しかし・・・
匿名での取引が可能であり、課税することは困難。

今後は・・・
現状、規制あるいは保護する法律はなく今後の対応は不透明。


4.のれんを償却の場合は減損テストも修正

現在、以下のルールに則って、それぞれ処理が行われている。
・日本基準・・・20年以内のその効果の及ぶ期間に渡って償却
IFRS・・・定期的な償却は行わず、毎期減損テストを実施
IFRSにおいても本来は減損の兆候がある場合に回収可能性を見積もるのが原則であるが、のれんに関しては償却をしないため、例外的に減損テストを強制している。

上記を踏まえ、検討中の日本版IFRSにおいては以下の点を検討している。

・のれんの償却を行う場合は、他の資産同様に、減損の兆候がある場合にのみ回収可能性を検討する。
・のれんの非償却を前提として、広範な開示が要求されているが、のれんを償却する場合は、①償却方法・期間②償却費の計上されているPLの項目・償却額を開示に追加するなど、開示に関しても検討がなされている。


5.転嫁対策法・立入検査の現状と対応策

■平成262月までの課税当局の指導件数は300件超
【指導の原因】
・減額、買いたたき
・利益提供の要請
・本体価格での交渉拒否

■立入検査の流れ
→立入検査→指導・助言→措置請求→勧告・公表→独占禁止法による対応

■立入検査の対応
・立入検査後、多くのケースで指導・助言が行われるためこれに従うことが重要
・指導・助言に従わない、違反額が多額である場合は措置請求以後の手続きに移行


6.相続税:相続税額の2割加算と養子

■相続税額の2割加算対象者
相続で財産を取得した者が、
①被相続人の一親等の血族(父・母・子)
②配偶者(妻・夫)
以外の者である場合相続税額が2割加算される。

■養子はどうなるか?
①子の配偶者が養子となっている場合等⇒加算なし(1親等の血族とみなす)
②代襲相続人である孫が養子となっている場合⇒加算なし(子とみなす)
③単なる孫が養子となっている場合⇒加算あり←ここだけ例外

■まとめ
養子は一親等の血族とみなされるため、原則として加算の対象外。
但し、単なる孫が養子となっている場合は加算の対象となる(もともと2親等であるため)


7.法人税:借地権設定に係る収益の帰属時期

■土地の賃借を行う際に権利金を収受する取引慣行があるエリアがある。
 関係会社間取引においては権利金の授受を行わないケースもあるが、借地権の無償取得として収益計上漏れの指摘を受けるリスクが有る。

■無償取得の場合は借地権設定時(建物着工時等)の事業年度に収益計上をされるため、建物着工から数十年を経過しているようなケースでは更正期間が経過しているため税務上の否認リスクは低い。

■借地上の建物の立替えが行われた場合にも借地権は継続しているものと考えられ、更正期間経過の判定にあたっての起算日は変更されないものと思われる


8.事業税率変更と実効税率

H26年度改正による復興税廃止により東京都で資本金1億円超の法人の場合
 38.01%⇒35.64%となる。

・地方法人税の新設⇒実効税率への影響なし

H2610月以後開始事業年度から
  地方法人特別税の税率引き下げ、法人事業税率の引き上げが行われる。
 ⇒事業税には超過税率があるため、実効税率が変わる

H263月末までに「超過税率が上がる内容の都税条例の改正・公布」があれば、実効税率変わる=税効果への影響あり


9.クックパッド 日の丸レシピサイトが狙う世界の食インフラ

 (国内)
・料理レシピだけではなく、サービス内容を拡充
→「やさい便」:野菜の定期宅配
  「料理教室」:料理教室の検索サイト
  「漢方デスク」:漢方、薬膳の総合ポータルサイト

(海外)
・日本のレシピを順次英訳

・海外からの投稿体制も







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2014年3月17日月曜日

3/14 勉強会:消費税率引上げ、施行日前後の留意点 他

1.消費税率引上げ、施行日前後の留意点

(経過措置)
①指定日(H25/10/1)前に契約等が必要な経過措置
・工事の請負、資産の貸付

②施行日(H26/4/1)をまたぐ取引に適用される経過措置
・乗車券、定期券、スポーツ観戦年間シート 
⇒ 3月迄に購入すれば、4月以降利用分も5%
・電気、水道、ガス、電話料金       
 ⇒ 4/1をまたぐ分は、5%
(注)ネット料金で毎月定額となっているもの⇒ 経過措置適用なし
 ※多段階定額は、経過措置適用あり


2.新設法人の納税義務判定

■平成25年度改正
・新設法人の消費税の納税義務免除の特例規定
・平成2641日以後適用

■概要
・新設法人を設立
・(新設法人の発行済み株式数の50%超を保有する)親会社がいる
→新設法人の消費税の納税義務判定は次で判定する
 ①新設法人の資本金額…資本金の額が1,000万円以上か未満か
 →以上なら納税義務あり、未満なら②へ
 ②親会社の基準期間に相当する期間の課税売上高…5億円超か以下か
 →5億円超なら納税義務あり、以下なら納税義務なし

■例示 
・前提
 A社:資本金1億円 H253月期の課税売上高6億円
 B社:A社の100%子会社 平成2641日設立、3月決算
B社の資本金が2,000万円の場合の納税義務判定
 B社の資本金で判定
 H273月期 2,000万円≧1,000万円 よって課税事業者
B社の資本金が300万円の場合の納税義務判定
B社の資本金が1,000万円未満のためA社の基準期間に相当する期間で判定
 H273月期 6億円>5億円 よって課税事業者


3.反面調査で非違発覚、無予告調査移行リスクも

   反面調査→実地調査のケース
Q:反面調査を受けた結果、当社に不正所得などがあった場合、
日を改めて事前通知等が行われるのか?
A1:反面調査を実施した税務署=当社の管轄税務署の場合
    原則=改めて事前通知
    例外=事前通知なく実地調査が可能であり、
反面調査からそのまま当社の調査に移行するケースも考えられる。
A2:反面調査を実施した税務署≒当社の管轄税務署の場合
    管轄部署の統括官に対して早期着手を依頼される。

   行政指導→調査のケース
Q:行政指導の結果、実地調査が必要となった場合、事前通知等が行われるのか?
A:改めて事前通知がされる。


4.IFRS任意適用のポイント

◆任意適用要件の緩和
従来の要件から、
・上場していること
・国際的な財務活動又は事業活動を行っていること(資本金20億円以上の連結子会社を有している事など)が削除された。

結果、任意適用可能会社が600社→4,000社に増加

◆現在の適用状況と今後の展望
・適用及び適用予定企業 28
・製薬業、商社が多い
・ある業界における1社が口火を切れば、他社が追随するケースが多い

IFRS適用会社において20143月期より強制適用される会計基準
①従業員給付
・数理計算上差異の即時認識
・過去勤務費用の即時費用処理
・期待運用収益の廃止
・年金資産の開示

②連結FS 共同支配の取決め 他の企業への関与の開示
・支配が一時的な会社、SPCの特例→IFRSでは連結対象
JVの比例連結の廃止

③公正価値測定
・測定に用いるインプットに応じて、レベル1(市場価格等)~3の階層に分けられる(レベルが大きくなるにつれ主観性が増す)。
・経常的に公正価値で測定される項目(公正価値で測定される金融資産・負債、投資不動産等)と非経常的に公正価値で測定される項目(減損が生じた場合等)それぞれに開示の規定を定めている。

④公表済未適用の会計基準の開示

⑤ヘッジ会計の改訂
・ヘッジの有効性の数値基準(80125%)廃止
→ヘッジ手段と対象の経済的関係、信用リスクによる影響度合等、客観的指標で判断する
・金融項目だけでなく、非金融項目もヘッジ対象とできる。
・ヘッジコストもその他包括利益を通じて、純損益に按分。


5.機関投資家の受託者責任原則が明らかに

■『日本版スチュワードシップ・コード』決定
※スチュワードシップ・コードの発祥は英国
【内容】
・機関投資家の適切な受託責任を果たすため
・機関投資家と企業間の『建設的な対話』を可能にすることを重視

【今後の動き】
・金融庁はスチュワードシップ・コードの受け入れ表明を行う機関投資家のリスト作成
・対象は投資顧問、投資信託、信託銀行、生命保険会社


6.裁判事例:相続税と所得税の二重課税ついて

■概要
【財産A
取得価額100 相続時の時価150 譲渡時の時価200
相続人Bは相続により取得した財産Aを譲渡し、譲渡益100に対し所得税が課された。

   相続時⇒時価が課税対象
財産の時価150に対して相続税が課されている
⇒実質的に価値増加分50に対して課税済

   譲渡時⇒時価と取得価額の差額に課税
価値増加分100に対して課税
50は相続時に課税されているから二重課税では?

■東京高裁
二重課税ではない。
(判断理由)
相続税は相続により生じた経済的価値の移転に対して税を課すものであり、価値増加分に対して税を課す所得税とは性質が異なる。
よって譲渡益100に対する課税は同一の経済的価値に対する二重課税とは言えない。
⇒最高裁に上告中


7.法人税:債権譲渡があったときの取り扱い

例:銀行がA社に対する債権10,000円をB社に100円で売却したケース
 A社における取り扱い
 ・処理なし。
 ・当該債権についての時価(新旧債権者における回収期待額)は100円と考えられるが、これに基づいて債務者A社において債務の時価評価は行うことはしない。

※将来的に債務を時価評価する会計ルールが導入される余地はある。  
ex)市場で流通している自社の社債について、市場買付にかかるコストの見込額まで債務評価益を計上する。等

B社における取り扱い
 ・100円を取得価額とする。額面と取得価額の差額9,900円について取得時には収益計上しない。
 ・取得価額を上回る回収が実現した際に、その都度回収益を収益計上する。
 ・額面と取得価額の差額のうち利息相当部分については、利息法または定額法により毎期収益計上する。


8.のれんの一時償却&減損

【一時償却】
 個別財務諸表上、子会社の超過収益力が減少し、同社株式の減損を実施した場合
 ※金融商品会計基準に従って子会社の財政状態を基礎に評価

【減損処理】
 連結財務諸表上、固定資産の減損に起因してのれんの減損が認識された場合
 ※子会社の事業単位を基礎に回収可能性を判断して評価


9.単体開示簡素化案のポイント

(改正案の方針)
①会社法の要求水準に合わせる
②開示業務の負担軽減(二重作成の解消)
③単体開示のみの会社は改正案の対象外

(主な改正点)
①本表(BS、PL、株主資本等変動計算書)
 →会社法の水準に合わせるため新様式を規程
②注記
 →連結財務諸表で十分な情報が開示されている場合は免除
 →免除規定を設ける
③製造原価明細書
 →連結財務諸表でセグメント情報を注記している場合は免除

(適用時期)
平成263月期決算(予定)
(平成262月日本公認会計士協会は金融庁に改正案に対する意見書を提出)


10.固定資産における会計上の見積りのポイント

①減損の兆候の検討
 ⇒営業活動の損益又はCFが概ね過去2期マイナス(当期の見込が明らかにプラスの場合はセーフ)、又は前期と当期以降の見込が明らかにマイナスとなる場合は該当。

②減損の判定や測定に使用する将来CFの見積り
 ⇒過年度の見積りと実績に比して、大きな乖離はないか(ある場合は差異内容が説明可能か)?

③減損の判定や測定に際して将来CFを見積もる期間
 ⇒資産又は資産グループの主要な資産の経済的耐用年数


11.今期気を付けたい税効果会計のポイント

所得拡大促進税制
 ①平成26年度税制改正では、
     ・適用期限が平成283月期に+2年延長(結果、平成27.3期から平成30.3期まで)
    ・法人の雇用者給与等支給増額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が緩和
   ・摘要は平成273期~

 ②繰延税金資産の調整
  当期(平成26.3期)の税額控除相当額について来期において実際に法人税額の控除を受けるためには、来期も改正要件を満たしている必要があるため、計上可否と回収可能性について留意する


12有給休暇引当金の考え方

⇒決算時に日給×未消化の有給休暇日数で算出する負債性引当金。
 IFRSでは有給休暇引当金が採用されている

【有給休暇引当金の計算方法】
 ・有給休暇年10日、うち2日使用⇒繰越8
 ・日給2万円
 ・引当金の計算方法
  (日給)2万円×(繰越日数)8日×(有給消化率)20%=32,000

【ポイント】
 ・「未消化の有給休暇は給料の未払い」という考え
 ・従業員の労働と人件費の計上のタイミングを一致させることが目的
 ・日本は未消化の有給休暇が多いが、消化率が低いので費用のインパクトは軽


13.ソフトバンク 綱渡りの米国市場攻略

【当初計画】3位のスプリントを買収後、4位のTモバイルを買収し、両者を統合

ここに来て問題が…

・米国当局が、現在4社ある通信大手を3社に減らすことに難色。
・その間にTモバイルの業績が急伸 → 買収総額が急上昇?
・スプリント単独でも、「米国版家族割引導入」「ソフトバンクとの共同調達による端末仕入れ価格下げ」など奮闘しているが、1位ベライゾン、2AT&Tには遠く及ばす…





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2014年3月7日金曜日

3/7 勉強会:所得税:住宅ローン控除の留意点 他

1.ゴルフ会員権に係る損失の税務

ゴルフ会員権を譲渡した場合、
①譲渡益 ⇒ 総合課税
②譲渡損 ⇒ 他の譲渡所得(土地・建物除く)と内部通算
          ⇒ さらに損失が残る場合は、
        ・~H26.3.31 総合課税される他の所得(給与等)と通算
        ・H26.4.1~  切り捨て

※リゾート会員権も同じ取扱い

2.平成26年度税制改正 AOAに基づく帰属主義

AOAとは
 ・PEの帰属所得の算定方法としてOECDが承認した方法という意味
 ・機能的分離企業アプローチといわれるもの
 →PEの果たす機能及び事実関係に基づき、外部取引、資産、リスク、資本をPEに帰属させ、PEと本店等との内部取引を認識し、その内部取引が独立企業間課価格で行われたものとしてPE帰属所得を算定する

■機能的分離企業アプローチと関連企業アプローチ
 ・関連企業アプローチとは、PEを企業の一部と捉える
  →内部取引を認識しない
 ・機能的分離企業アプローチとは、
    PEを本体から独立した別の企業と捉える
  →内部取引を認識する

■帰属主義になった場合の税務申告
 ・今まで  本店が獲得した国内源泉所得+PEの国内事業所得
 ・これから PEの国内事業所得+PEが獲得した第三国源泉所得


3.会計処理めぐる株主代表訴訟、役員らの賠償責任を認めず

■裁判事例
SPCを利用した信託受益権の譲渡取引を「売却取引」と判断したことが適法か否かが問題となり、役員らに対して損害賠償を請求する株主代表訴訟を起こした。

SPCを利用した信託受益権の譲渡取引が「売却取引」、「金融取引」のいずれであるか?
金融庁=売却取引は違法、課徴金納付命令
裁判所=売却取引は適法、役員の任務懈怠を認めず

(スキーム)
創業者YがビックカメラとA社を100%支配。
ビックカメラ単体のSPCに対するリスク負担割合5%
A社がビックカメラの子会社に該当する場合は30%超。

(参考)特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針
譲渡人のリスク負担割合が5%を超えると「金融取引」として取り扱われることとなる。(第5項、第13項)

■仕訳例
(売却取引)
現金預金 100/固定資産 80
                  固定資産売却益20
(金融取引)
現金預金 100/短期借入金(預り金)100


4.LPSとは

●LSPとは
Limited Partnership(リミテッドパートナーシップ)の略
「投資事業有限責任組合」と呼ばれているもので、ヘッジファンドのように、以前は、主としてオフショア地域に設立されていた投資組合(投資ファンド)などのことを指すことが一般的で、株式会社と比較して設立手続きが簡単な上、税制上のメリットがある。

●今回の論点
英領バミューダ諸島の法律で組成されたLPSは日本の租税法上の法人に該当するか。
米国デラウェア州LPSが法人に該当すると判断され、課税された判例がある。
・地裁→該当しない
・高裁→該当しない
デラウェア州LPS法の規定に該当する規定が、バミューダ法にはないため現在、国が上告しており判断は最高裁へ


5.不正取得による電子化株券も没収可能に

・金融商品取引法改正
■犯罪行為(インサイダー取引等)によって得た財産等の没収
・【現行】有体物のみ犯人から没収可能
→無体財産(電子化株券等)は対象外
→電子化株券の売却益などは犯人に帰属
・【改正】有体物及び無体物も犯人から没収可能

■内部統制報告書提出による公認会計士監査
・新規上場後「3年間」は公認会計士監査を要しない(提出義務は有り)
※資本金100億円以上、または負債1,000億円以上の会社は免除期間なし

■大量保有報告書制度
・適用範囲から自己株式除外
・損害賠償請求者の範囲拡大
→すでに株券を処分した者も対象
3月中旬までに国会提出予定


6.所得税:公益法人等への寄付に係る非課税制度の見直し

■現行
①法人に対して財産を贈与した場合の原則
(例)簿価100 時価200の資産を法人に贈与した場合
⇒キャピタルゲイン100に対して課税される。
※実際は「贈与」であり、「譲渡」ではないが「譲渡」とみなす(みなし譲渡課税)

②公益法人に対して贈与した場合
⇒非課税

H26年度税制改正
公益法人に株式を譲渡した場合に、その公益法人が発行済株式の1/2超を保有することになる場合は非課税としない。
<改正要旨>
株式を関連の公益法人等に移管して相続税を減らすスキームを規制する。


7.所得税:住宅ローン控除の留意点

●借換時の留意点
・住宅ローンの借換をした際には、借換後のローンにも住宅ローン控除の適用を受けられる。ただし、借換後のローンの償還期間が10年以上である必要がある。
・当初のローンとの通算で判定することはできない。

●繰上げ返済時の留意点
・繰上げ返済により、契約当初から完済までの期間が10年未満にならないように注意が必要。


8.会社法改正法案 キャッシュアウト

・キャッシュアウト:現金を対価とする少数株主の締め出し
・全部取得条項付種類株式用いる手法が多い
 ⇒常に株主総会特別決議 必要
 ⇒時間的・手続き的コスト大きい

・「特別支配株主の株式等売渡請求」を創設
・特別支配株主が他の株主の全員に対して売渡請求すること
 ※取締役会の承認必要(総会決議不要)
  少数株主保護:差止請求、無効の訴えが法定、価格決定の申し立て
・特別支配株主:議決権の90%以上(親と子で孫の90%以上を保有するケースも含む)、自然人もOK
・新株予約権も含むことができる
・新株予約権付社債の場合、社債部分も含めて売渡請求する必要あり
・開示:事前開示&事後開示


9.新興国市場に参入する「2段階M&A」

①新興国へ進出する際に2段階M&Aを行う企業が増えてきている。
 (アフリカ、中東、アジア等) 

②2段階M&Aとは
・直接現地企業を買収せず、現地企業を傘下に持つ欧米等の企業を買収

③主なメリット
・新興国地域における経営ノウハウの獲得
・新興国市場への確実な参入
・事業基盤(免許、人脈、顧客等)、ノウハウの獲得 等


10.デューデリジェンスについて

DDはなぜ必要か
 ⇒M&Aを進めるべきかどうか、進めるとしていくらにするのか、
      を買主が考える為
DDのタイミングと期間
 ⇒基本合意書締結後に開始、最終契約書締結までに終了が一般的
 ⇒小規模案件や急ぎの案件は2週間程度が一般的
 ⇒大型案件は2ヶ月程度が一般的


11.小規模事業者持続化補助金

①対象者:小規模事業者
卸売業・小売業…常時使用する従業員の数  5人以下
サービス業(宿泊業・娯楽業以外)…常時使用する従業員の数  5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業…常時使用する従業員の数 20人以下
製造業その他…常時使用する従業員の数 20人以下

②対象事業:経営計画に基づき、商工会議所の支援を受けながら実施する販路拡大等のための事業

③対象となる取組み例
(1)
広告宣伝
・新たな顧客層の取り込みを狙い、チラシを作成・配布
(2)
集客力を高めるための店舗改装
・幅広い年代層の集客を図るための店舗のユニバーサルデザイン化
・和式トイレから洋式トイレへの改装、座敷の掘りごたつ化
(3)
商談会・展示会への出展
・新たな販路を求め、国内外の展示会へ出展
(4)
商品パッケージや包装紙・ラッピングの変更
・新たな市場を狙って商品パッケージのデザインを一新

④補助率・補助額ですが、
・補助率 補助対象経費の2/3以内
・補助額 上限50万円(雇用を増加させる取り組みは上限100万円)


12.従業員賞与・役員賞与支給に係る期末の会計上の留意点

→債務確定しているか否かがポイント
■従業員賞与
①賞与支給額が確定している場合
 ・当期に帰属する分…未払費用
 ・臨時的な要因…未払金

②賞与支給額が確定していない場合
 ・見込額のうち当期に帰属する分…賞与引当金
  ※合理的に見積もることが出来る場合のみ

■役員賞与
①報酬限度額の範囲内で取締役決議により決定する場合
 ・確定している額…未払役員賞与(報酬)

②株主総会の決議事項とする場合
 ・決議事項とする額…役員賞与引当金
  ※合理的に見積もることが出来る場合のみ


13.(中国)中央政府の工場爆破令

・中国では長らく地方指導者の実績を「経済成長」で評価してきた
・その結果の過剰投資が、「環境問題」「地方政府の不良債権問題(シャドーバンキング)」「過剰生産設備」を産んできた
・河北省の粗鋼年産能力は7.8億トンだが、稼働率は7割。国際市場の価格暴落にも寄与。
・中央政府が河北省の鉄鋼工場を爆破、その様子を全国放映。
・当面、中国は経済成長よりも構造改革を優先するとの見通し。







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