2017年9月25日月曜日

9/22 勉強会:組織再編税制の大改正ほか

1.セルフメディケーション税制に関するQ&A

Q1:どんな税制か?
・平成2911日~平成331231日までの間に、OTC医薬品の支払対価合計が12千円を超えるとき、その超
えた金額(上限:88千円)について所得控除が可能

Q2:従来の医療費控除との関係はどうなっているか?
・同時利用は不可。ご自身で選択適用

Q3:対象の医薬品は?
OTC医薬品(約1,500品目)、厚生労働省のHPで掲載

Q4:「健康の保持増進及び疫病の予防への取組として一定の取組」の「一定の取組」とは?
・申告対象の1年間に申請者本人が、対象の健診や予防接種等を受けること
対象例:人間ドック、各種健診、インフルエンザ等の予防接種、勤務先で実施の定期健康診断、メタボ健診
対象外例:市町村が住民サービスとして実施する健診、任意で受診した健診(全額自己負担)

Q5:「一定の取組」の証明方法に必要な証明書類は?
・領収書または結果通知表(氏名・取組実施の年・事業者もしくは市町村の名称または医療機関の名称が記載さ
れたもの)
※結果通知表はコピー可、健診結果部分は不要
※必要事項の記載がない場合、勤務先または保険者に別途証明書の発行を依頼する必要あり

Q6:控除対象額は税込or税抜?
・税込金額


2.収益認識基準適用なら延払基準は使えず

・収益認識に関する会計基準では、割賦販売に関して、「商品又は製品の販売時」に収益を認識することを要求
※従来より、割賦金の回収期限の到来の日、又は、入金の日に収益を認識する、割賦基準が認められてきた

・収益認識に関する会計基準の導入に伴い、「延払基準の方法による経理」が不可
※法人税法上、割賦販売に関して、延払基準で処理する場合、「延払基準の方法による経理」が必要

・収益認識に関する会計基準の導入後に行う割賦販売に関しては、
法人税法上も「商品又は製品の販売時」に収益(益金)の全額を計上する必要あり


3.有償新株予約権の行方

2017/5/10付で有償新株予約権の会計処理の草案を公開したが、
パブリックコメントとして約250件超の問い合わせあり。

■公開草案による有償新株予約権の会計処理
SOに関する会計基準」で規定された無償発行の新株予約権と同様に、
従業員から払い込まれる金銭の対価や労働のサービスの対価として付与されると整理され、
役職員等への報酬として費用計上される

上記の会計処理方針に対し反対コメントが203件。
うち70件近くが有償新株予約権の発行企業からの意見

■主な反対意見
・有償新株予約権は金銭を対価とし損失が発生する可能性のある投資制度。
⇒新株予約権者が公正価値について金銭により対価を支払っていれば報酬性はない
IFRSとの兼ね合い(両会計基準間にギャップあり)
公開草案:勤務条件がなく業績条件がある有償新株予約権を報酬として費用計上
IFRS:権利確定条件として勤務条件がある場合に限定し報酬を費用計上

■今後
パブリックコメントによる反対意見を考慮せざる得ないため、
当初10月に想定されていた正式な会計処理案の公表が遅れる可能性があり


4.監査部会で「監査報告書の透明化」を検討へ

・現行の監査報告書は財務諸表適性性の表明以外の監査人の見解の記載は限定的
・英国では監査人が着目した虚偽表示リスクなど、監査上の主要な事項を監査報告書に記載
EUでも同様の制度を今年から導入予定


5.CFC税制を巡る課税取消しも納税者による国家賠償法の訴えは斥けられる

■概略
CFC(ControlledForeignCompany)税制を巡って、所得税の更正処分等の取消を勝ち取った納税者が、この
更正処分等は税務署長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽さず漫然と行った違法な課税処分であるとして国を
相手に国家賠償法により損害賠償を請求する民事訴訟を提起した。
■納税者の主張
調査官らは、納税者が取消訴訟においてCFC税制が適用されない要件を満たすことを証明する文書や、その文書
に記載された情報を把握・認識していたにも関わらず、不十分で不適切な資料に基づき課税要件を満たさない違
法な課税処分を行ったと主張。
■結果
納税者の訴えは斥けられる(東京地裁)
理由:国家賠償法上の適用上違法とされるのは、CFC税制の適用除外要件の有無に関する資料の調査・収集に
おいて(税務職員の権限等の)一定の限界はあることを前提に、納税者の税務調査に対する協力状況などの諸状況
に照らして「通常遂行することが期待される税務調査」をすることなく更正処分等をした場合であるべきと判断
された。
■上記、東京地裁の判断について
調査官らは調査の際に、納税者の具体的な事業活動の内容・程度・管理体制や運営等の実態に関する各種資料の
提供を受けるとともに、納税者の周辺から事情聴取し回答を得ていた。適用除外要件の有無を判断材料となる事
項について多岐にわたる調査を行っていたことから通常遂行されることが期待される税務調査をしており、また
決算書等の情報から総合勘案して適用除外基準を満たしていないと認定判断したことは合理性を欠くものではな
いと指摘した。
一方、納税者は調査に対し、自ら積極的に資料を収集し提出することをしていないなど調査官の調査に協力せ
ず、適用除外要件に係る具体的な事情を明らかにしようとはしていなかったと指摘された。


6.ビットコインの課税関係

■ビットコインに係る利益
原則:雑所得
(事業として継続的に行う場合は事業所得)

■概要(いずれも値上り益に課税)
・日本円等に換金⇒換金時に雑所得として課税
・資産を購入⇒購入時に雑所得として課税
・他の仮想通貨とのトレード⇒トレード時に雑所得として課税
(参考)
採掘(PC上で一定の作業をする見返りに交付される)も原則として雑所得として課税

■損益通算等
・総合課税の雑所得内でのみ内部通算が可能
FX所得との通算不可(FXは申告分離課税のため)

7.大改正の組織再編税制 押えておきたい実務ポイント〈3

■株式継続保有要件の見直し(共同事業を営むための適格合併等に該当するための要件)
・改正前の概要
株主等の数が50人未満の被合併法人(特定被合併法人)の場合
⇒持株割合80%の継続保有要件あり

・改正の内容
支配株主(被合併法人等を支配する株主)が対価株式の全部を継続して保有すれば良い
⇒例えば持株割合70%の支配株主が継続して保有する見込みで、それ以外の株主が譲渡を予定していても要件を
充たす、改正前は×

・適用時期
平成29101日以後に行われる合併等について適用

■分割型分割における完全支配関係継続要件・支配関係継続要件の見直し
・当事者間の完全支配関係がある場合の分割型分割
⇒分割後に分割法人と分割承継法人との間に完全支配関係が継続する見込みが不要となった

・同一の者による完全支配関係がある場合の分割型分割
⇒同一の者と"分割承継法人"との間に同一の者による完全支配関係が継続する見込みは必要、分割法人との間に
同一の者による完全支配関係が継続する見込み不要とされた

・効果
継続したい事業あるいは買収先が引き受けたくない事業を適格分割により他の会社に切り出した上で(自社グ
ループ継続)、子会社株式を売却できる

・適用時期
平成29101日以後に行われる分割について適用


8.原価回収基準

・収益認識基準ではステップ5にあたる「履行義務の充足」で履行義務が一定の期間にわたって充足されると判
定された場合、履行義務の進捗に応じて収益を認識する
・合理的に進捗度を見積もれない場合はどうするか?
⇒回収が見込まれる費用の額で収益を認識する取り扱いを定めている=原価回収基準
(例)
・サービスの提供が期限より遅延して完了するケース
⇒遅延したら報酬減額=収益の額が確定できない
⇒現時点までの発生原価=収益として認識する
・原価回収基準に懸念の意見あり
⇒日本の工事基準では工事の進捗度を合理的に見積もれないのに収益を認識するのは合理性が無いとして原価回
収基準は採用されていない。
⇒この工事基準の考え方と反する



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2017年9月16日土曜日

9/15 勉強会:サラリーマンに大幅増税? 他

1.平成29年度税制改正がM&Aに与える影響

■主な改正
・分割型分割における支配関係継続要件が見直し
⇒支配株主による分割承継法人に対する支配が継続することは要求されるものの、分割法人に対する支配が継続することは要求されなくなった
⇒子法人の特定の事業を整理することが容易になった
・100%子会社が親会社に対して分割型分割を行う場合
⇒移転した資産に対する親会社による支配が継続しているため、支配関係継続要件が要求されないことになった
※分割後における同一の者と分割法人との間の完全支配関係の継続が見込まれることは不要となった

■影響(筆者見解)
・オーナー企業において影響が大きいと考えられる
・一部の事業のみを買収する場合、「事業譲渡」「会社分割」が多い
 オーナー企業に対するM&Aでは「オーナー企業株式譲渡」が課税面で有利と言われており、採用が多かった
※ただし短期的な視点での課税しか考慮されていない点等、最近の実務では有利性について疑問が指摘され始めている
※特に不動産M&Aでは、不動産会社を購入したほうが不動産を購入する際に生じる不動産取得税および登録免許税の負担が生じない効果あり
⇒改正によって容易に税制適格要件を満たすことが可能となり、影響が大きいと考えられる



2.財務改善計画で子会社解散も、債権放棄額の損金算入を認めず

■訴訟概要
親会社である納税者がその企業グループの財務改善計画の一環として、子会社2社(A社・B社)の事業を別の子会社(C社)に譲渡した際に行った債権放棄額(10億円)の損金算入の可否について争われた

■訴訟論点
(1)法人税法基本通達9-6-1(4)「金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ」
(納税者の主張)
・A社及びB社は実質的な債務超過の状態が3年間継続していること等から、本通達の適用により貸倒損失として損金算入可と主張

(裁判所の見解)
・債務者と債権者側の事情、経済的環境等の諸事情を踏まえた総合的な検討により、社会通念に従ってその金銭債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかであるか否か判断すべき
⇒下記事由等を踏まえ、本件債権の全額が客観的に回収不能であったとは言えず、法人税法基本通達9-6-1(4)の適用はなく、貸倒損失として損金算入不可と判断

・A社は売上高が漸次増加し、預金も約5千万円存在している一方で、借入金は納税者及びその企業グループの法人を債権者とするものしかないこと
・B社は売上高約4億円・売上総利益3千万円の水準を維持し、借入金の大半は納税者を債権者とするものであったこと
・C社に事業譲渡後も事業継続と経費削減等により収益改善(約3千万円)が見込まれていたこと

(2)法人税法基本通達9-4-1「子会社等を整理する場合の損失負担等」
(納税者の主張)
・本通達の適用により寄付金には該当しない(損金算入可)と主張

(裁判所の見解)
・経済的な利益を無償で供与等したにもかかわらず、寄付金に該当しないと認められるのは、法人がより大きな損失を被ることを避ける為に客観的に必要な費用等であって、その費用としての性質が明白で、明確に区別し得るものである場合に限定すべき
⇒下記事由等を踏まえ、本件債権放棄が経済合理性の観点から特段の必要性があったとは認め難く、寄付金に該当しない(損金に算入する)ものとは認められないと判断

・債権放棄当時、A社及びB社は倒産の危機に瀕した状況に至っていたとは言えないこと
・債権放棄はメインバンクからの要請を受けたものではないこと
・A社及びB社の整理に際して、債権放棄しなければより大きな損失が生じるといった事情も伺われないこと



3.現物分配型スピンオフ税制の拡充を検討

現物分配型スピンオフとは、業績不振の子会社を切り離す目的で、子会社の株式を親会社の株主に現物分配し、親子関係を兄弟関係とする組織再編のこと。

H29年度税制改正で現物分配型のスピンオフ税制が導入。
主にスピンオフの準備段階で、親会社の事業を単独で新設分社型分割又は新設現物出資により子会社として切り出した場合に「税制適格」に該当する。

上記以外の手段(吸収分割)で親会社の事業を切りだす手法もあるため、H30年度税制改正でスピンオフ税制の拡充を検討中。


4.公募増資巡るインサイダー取引と認めず

■事案
・証券会社の営業員が上場企業T社の公募増資の情報を資産運用会社役員に伝達
・公募増資の発表前に役員がT社株式を売却
⇒課徴金納付命令を受けた役員が不当として提訴

■インサイダー取引とは
会社関係者等や第一情報受領者が上場会社等に関する重要事実を知りながら、公表される前に株式の取引を行うこと  

■高裁の判決
(国側の主張)
・営業員はアナリストや募集担当者と接触し、複数の断片的な情報を組み合わせることで公募増資の事実を認識している

(判決)
・アナリストの「(T社は公募増資を)やってもおかしくない」という発言は、公募増資の決定を伝えるものであるとは言えない
・募集担当者から営業員に情報が伝播した証拠もない
⇒営業員が重要事実を職務に関し知ったとは言えないので、インサイダー取引とは認められない


5.再エネ投資促進税制等

・再エネ投資促進税制
 グリーン投資減税(エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)が平成30年3月31日で適用期限切れとなる。経済産業省はこのグリーン投資減税を見直し、平成31年度末までの2年間の租税特別措置の要望を出している。

・現物分配型スピンオフ
 スピンオフ税制の拡充の検討が始まる。スピンオフとは、企業の一部を分離 独立させ事業展開を行うこと
 現物分配型スピンオフとは当該子会社の株式を親会社の株主に分配することにより親子関係から兄弟関係とする組織再編のこと

・新しい日本のための優先課題推進枠
 国税庁の別枠要求予算、KSK(国税総合管理)システムと集中電話催告システムを統合し、徴収事務の効率かを図る予算と、国税システムの改修費用を要望している。


6.残余財産と未収還付税金

■解散による期限切れ欠損金の利用
解散時において「残余財産がないと見込まれる」場合に利用可能

■残余財産がないと見込まれることの判定
⇒一般に実態BS(資産負債を時価で評価して作成したBS)において債務超過である場合が該当する

■未払法人税等及び未収還付税金の取り扱い
未払法人税等:期末時点で計上し、負債に含めた上で「債務超過」かどうかを判定する

未収還付税金:期末時点で計上し、資産に含めた上で「債務超過」かどうかを判定する
⇒源泉所得税が法人税から控除しきれない場合などは注意が必要



7.<税務相談>法人税《企業版ふるさと納税を社長の出身地の自治体に行った場合の適用の可否等》

■相談内容と回答
・寄附する市は、当社の社長の出身地であるというだけで特別の関係はない
・この場合その寄附金は会社が負担すべきではなく社長に対する給与であると認定されるようなことはないか?
回答⇒出身地の地方公共団体に対する寄附であっても会社が負担してよい

■考え方
・原則、寄附により設けられた設備を専属的に利用すること、その他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められる寄附金は損金算入の対象外

・特定寄附金を受けた地方公共団体にあっては、寄附の代償として以下は禁止されているため、特別の利益はない
1.補助金を交付すること
2.低利貸付けを行うこと
3.入札・許認可において便宜を与えること
4.低廉価額で財産を譲渡すること
5.その他経済的利益を供与すること

・社長独断ではなく、取締役会などの機関決定をして、法人の寄附として支出するのであれば法人が負担して問題ない

8.未使用の商品券等

・百貨店などの小売業が自社で商品券等を発行した場合、現金受領額を負債計上する。
・長期間使用されていない商品券等に関する負債は、期限がないものでも負債の一部を取り崩し収益認識している。
・この収益認識した商品券等が将来利用された場合に備えて、過去の使用実績から「商品券回収損引当金」や「商品券等引換損失引当金」等の科目で引当計上する。
・収益認識の新基準案では、商品券の「非行使部分」は企業が将来において権利を得ると見込む場合(非行使で収益認識すると見込み場合)、顧客の権利行使のパターンに比例して収益を認識する。
 その他の場合は「使用される可能性が非常に低くなったと判断された時点」で収益認識する


9.長期請負契約に関する実務ポイント

■収益認識基準案での収益認識時点
・約束した財又はサービスを顧客に移転する
・財又はサービスの支配(≒資産を自由に使えて便益のほとんどすべてを享受する権利)を顧客が獲得する

■工事完成基準の原則的要件(いずれも満たさないこと)
・工事進行につれて顧客が便益を享受
・工事進行につれて資産が生じる又は資産の価値が増加、合わせて顧客の支配も拡大
・工事進行によって発生した資産は別の用途に転用できない、かつ、作業完了部分について請求権あり(強制力のある権利)
⇒いずれかを満たすと原則的には工事進行基準

■代替的取扱い
・重要性が乏しい場合、工事契約の期間がごく短い場合⇒完成基準でOK
・ただし、具体的な数値のバーはなし

■現状からの変化
・新基準の原則的取扱いによると現行工事完成基準によっている契約でも工事進行基準にしなければならい契約が発生する可能性あり


10.リコールをめぐる会計処理・開示のポイント

■引当金計上
・計上時期:引当金の4要件を満たしたとき
⇒当期以前に販売済みの製商品に安全上の問題等が発生したことを原因として、将来当該製商品を回収するために費用が発生する可能性が高く、その金額を販売数量や過去の経験値等に基づき合理的に見積もることができる場合

・金額:リコールへの対応に関する諸々の費用
⇒リコールプランに基づき企業が負担することが見込まれる回収費用、補修・交換費用等

■偶発債務の注記
リコール方法や対象数が明確になっていないため金額を合理的に見積ることが困難であるが、被害の質・重大性等を勘案するとリコールを実施する可能性が高く、将来において事業の負担となる可能性がある場合には、偶発債務として注記を行う


11.TMKの課税の特例

■TMKとは
・特定目的会社は、資産の流動化に関する法律(資産流動化法)に基づき資産の流動化に係る業務を行うために設立される社団法人。略称は、TMK(tokutei mokuteki kaisha)
■課税
・支払配当金は法人税上は損金不算入、ただしTMKの利益配当は一定の要件のもと、損金算入可能
⇒TMKは特定資産から得られた利益をそのまま投資家に配分するための機能のため、一定の要件のもと認めらる
・要件は大別して、対象法人の要件と対象事業年度の要件の2つ
・それぞれの要件を全て満たせば損金算入可能
・主な要件として、配当可能利益の90%超を配当する
⇒これにより、投資家に対する課税との関係上、二重課税が回避可能



12.BEPS防止措置実施条約の概要(上)

■目的
国際タックスプランニングによる、税源浸食及び利益移転(通称BEPS)を防止する「租税条約」に関連する措置を、締約国間の既存の租税条約に導入する。

■効果
租税条約は個々の国間で取り決める必要があったが、本条約の締約国間では、BEPS防止措置を、同時かつ効率的に実施することが可能になる。(※日本は2017年6月に署名)

■規定化されたBEPSプロジェクト
・行動02(ハイブリッド・ミスマッチの効果の無効化) 
・行動06(租税条約の濫用防止)
・行動07(恒久的施設認定の人為的回避の防止)⇒本記事では記載なし
・行動14(相互協議の効果的実施) ⇒本記事では記載なし

■BEPS行動2(ハイブリッド・ミスマッチの効果の無効化)の規定化
・第3条
両国で課税上の取扱いが異なる団体(透明体)から生じる所得について、一方の国で課税される場合は、当該団体をその国の居住者の所得とみなす。(二重非課税の防止)

・第4条
両国で居住者となる団体については、実質的な経済活動の場所等を鑑み、どちらかの居住者となるかを決定する。(二重課税の防止)

■BEPS行動6(租税条約の濫用防止)の規定化
・第6条
締結する租税条約の前文において、当該租税条約が租税回避・脱税を通じた二重非課税や税負担慶全の機会を創出するものではないことを共通明記する。



13.書面添付制度のメリット・デメリット

■書面添付制度
書面添付制度とは税理士または税理士法人に付与された権利で、申告書に以下のような項目を記載した書面を添付。
・申告書内容にどのような所見を持っているか
・会社からどのような税務相談を受け、回答したか

■書面添付制度のメリット
・税務調査の省略または効率化
⇒書面添付した場合、記載内容についての意見聴取が行われ、疑問点が解決すれば税務調査省略。
調査に移行した場合でも、論点整理等がされており、調査時間の短縮/負担軽減
・修正申告時の加算税回避
⇒意見聴取時に自主的に修正申告した場合、原則として加算税の対象とならない。

■書面添付制度のデメリット
・書面添付を継続しないと税務調査を誘発される
・記載内容により税務調査が誘発される

■書面添付制度の活用状況
低い


14.サラリーマンに大幅増税?

・自民党の宮沢税制調査会長が報道各社のインタビューに答えた。
・来年度の税制改正で、「給与所得控除」など、所得税の控除制度の見直しを検討する考えを示す。
・給与所得控除について、国際的に見て非常に高い水準となっていることや、サラリーマンと実質的に同じように仕事している自営業者に恩恵が生じておらず、格差があることを問題視。



15.内部監査実施上のポイント

(1)内部監査の対象部門
⇒社内全部署および全関係会社(実質的に支配の及ばない会社を除く)を対象。
⇒監査サイクルは原則として1年を1サイクルとして全監査対象部門の監査を実施。

(2)業務監査を中心とした内部監査の実施手続
⇒一定の品質確保のため、監査手続書を作成。
⇒監査項目は、経理業務、人事総務業務、職務権限等、内部牽制上必要な項目を網羅する必要がある。

(3)財務報告に係る内部統制報告制度のモニタリング
⇒上場会社に求められ、従前の業務監査・会計監査を主体とした内部監査に内部統制評価におけるモニタリング機能を追加。
⇒内部統制の整備・運用状況を検討、評価し、必要に応じて、その改善を促す。










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2017年9月8日金曜日

9/8 勉強会:離婚に伴う財産分与に対する第二次納税義務の適用 他

1.税効果会計の一部改正案、内容面での変更はない方向

■「税効果会計に係る会計基準」の一部改正(案)
・「分類1」に該当する企業について
現在:原則として、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする
案:一定の要件を満たした場合には繰延税金資産を認識しないことを原則とする表現へ

・表示の変更
案:繰延税金資産および繰延税金負債のすべてについて非流動項目に表示(※IFRSと同様)

・注記事項の追加
(1)評価性引当金の内訳に関する数値情報
(2)評価性引当金の内訳に関する定性的な情報
(3)税務上の繰越欠損金に関する繰越期限別の数値情報
(4)税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報

2.金融商品のエンドースメントは修正なし

・企業会計基準委員会は147月に改正されたIFRS9号「金融商品」のエンドースメント手続※を開始しているが、「削除又は修正」はしない方向
※国際会計基準審議会が作成したIFRSが日本企業に適合するように、個別基準の内容を詳細に検討し、必要に応じて一部の内容を削除又は修正すること

・今年6月までに国際会計基準審議会から公表された、その他のIFRS等※についても、エンドースメント手続を実施しているが、いずれも「削除又は修正」はしない方向

※「株式に基づく報酬取引の分類及び測定」(IFRS2号の修正)

3.離婚に伴う財産分与に対する第二次納税義務の適用

■事例
・納税者が夫協議のうえ離婚。
・納税者は離婚に伴い、夫が相続により取得した宅地を財産分与により取得(3,000万円相当)
・夫は相続税等を約2億円滞納中。
・国税局が滞納者()に対する徴収手続を進める中で、納税者が第二次納税義務者に該当するか否か検討
・財産分与が無償譲渡に該当すると判断し、納付告知処分を行う
・納税者は審査請求を受けるも棄却されたため、裁判所に納税告知処分の取り消し訴訟を提起

■争点
財産分与で取得した宅地が、不相当に過大な無償譲渡に該当するか否か

■裁判所判断
・離婚に伴う財産分与であっても「譲渡」に該当する。
・財産分与時の宅地の評価額が約1.9億円であるため、財産分与相当額の6倍を超える譲渡であること
3,000万円を超える部分は不相当に過大な財産分与と認めざる負えないことから、この財産分与(譲渡)は「著しく低い対価による譲渡」と判断し、納税者に対する第二次納税義務は適用と判決が下された

4.30年度改正で"事業の買換え特例"を検討

・企業の事業ポートフォリオの見直しを推進するための施策として導入を検討

■事業の買換え特例とは(検討段階)
・事業の買換えをした場合に課税の繰り延べを可能にする
・既存事業を譲渡した場合に生じる譲渡益に対応する圧縮損を計上し、新たに購入した事業の取得価額を圧縮する仕組み
⇒現行の買換え特例(土地や建物等の事業用資産が対象)に「事業そのもの」の買換えを追加する内容

■適用要件(検討段階)
・産業競争力強化法による事業再編計画等の認定を受けること
・事業の売却と購入をセットで行うこと
・事業の譲渡と購入が一定の期間内に行われること
・譲渡する事業と購入する事業の関連性があること

5.グループ子法人の法人税留意点

■中小法人等の優遇税制
(1)軽減税率 所得800万以下について税率15
(2)留保金課税の不適用
(3)貸倒引当金の損金算入可
(4)800万円以下の交際費損金算入可
(5)繰越欠損金を所得限度で使用可
(6)欠損金の繰戻還付適用可

■中小法人等とは
期末資本金1億円以下でかつ大法人(資本金5億円以上)による完全支配関係がない法人をいう

(参考)
■親会社が外国法人の場合
資本金が5億円以上かどうかは子法人の期末日における売買相場の仲値で換算した金額により判
⇒為替相場により5億円を前後するケースがあるので注意

6.返品権付き商品の販売

・出版業や医薬品製造業などを中心に翌期以降に返品される可能性がある商品を販売した場合、返品が予想される商品の利益部分を見積もって「返品調整引当金」を計上している。
・収益認識の新基準では返品が見込まれる商品については「返品負債」を計上し、返品商品を回収する権利として資産を計上する。
(数値例)
100円の商品を100個販売(仕入単価60円)
5個の返品が予想される

(現行基準)
 現預金 10,000円 / 売上高10,000
 売上原価 6,000円/ 商品 6,000
 引当金繰入 200円/ 返品調整引当金 200

(新基準案)
 現預金 10,000円 / 売上高 9,500円 
          / 返金負債 500
 売上原価 5,700円/ 商品 6,000
 見積返品資産 300

7.M&Aにおける米国F-4登録をめぐる対応ポイント

■F-4とは
・Form F-4
・米国内で証券の募集又は売出をするに先立ちSECに証券を登録するが、その際に用いる様式
・日本国内でのM&Aであっても米国株主が一定割合以上存在する場合には提出が必要

■主な記載要項⇒総じて負担が激増
・M&Aの内容に関する平易なQ&A、M&Aのサマリー
・リスク要因
・両当事者の監査済FSその他財務情報(原則として過去2事業年度分)
・M&Aの背景事情、交渉の過程
・M&A契約における合意内容の説明
・財務アドバイザーのフェアネスオピニオン
・両当事会社の事業の状況
・両当事会社の経営者による財務・経営状況の検討と分析
⇒財務諸表に関する開示の負担が大きい。IFRS又はUSGAAPで作成。JGAAPで作成されている場合は、USGAAPに対する適切な調整を加える必要あり
⇒SEC登録後も年次報告書や臨時及び期中報告書等の作成・開示が必要

■回避するために
・除外規定の利用(下記すべて満たす必要あり)
(1) 対象会社が海外民間発行体であること(米国からみて海外)
(2) 対象会社における米国株主の持株比率が10%以下であること(以下、10%ルール)
⇒分母が「発行済株式総数-自己株式-買収会社及び関連会社が保有する株式数」となる点注意
(3) 米国株主が他の株主と同等以上の取引条件を与えられていること
(4) 一定の情報開示等がなされること
⇒M&A公表のプレスリリースや総会招集通知等の英訳等(いずれも簡潔で負担は軽微)

・取引スキームの変更
(1) 株式を対価とするM&A取引が×なので、現金対価とすれば回避可能
(2) 共同株式移転等の共同新設型のスキームでも回避できる余地あり(上記10%ルールは当事会社全体に対して適用される)

8.「連結・企業結合」に係る論点・問題点

■支配獲得・喪失に係る会計処理
①段階取得に係る損益
処理
・支配獲得時において過去に取得した子会社株式をすべて時価評価&差額を当期の損益として処理

問題
・売却せず投資が継続している株式の評価損益が計上される
・過去の期間に係る含み損益が一度に表面化され損益額が多額になる

②支配喪失時の会計処理の整合性
処理
・売却後に残った株式は個別財務諸表上の簿価に修正する
・修正差額は「連結除外に伴う利益剰余金減少高又は増加高」してS/Sに表示

問題
・支配獲得時(時価評価)の処理と不整合
・IFRSの取扱いと差異が生じている(公正価値評価&差額は損益)

■共通支配下等グループ内取引の処理
①のれんの処理
処理
・子会社同士の合併で、合併対価が現金とされるような場合に、移転資産及び負債と支払った現金の差額としてのれんが計上される

問題
・グループ内の取引によってグループ全体の持分は変動しない為、 このような取引で計上されるのれんは必ずしも超過収益力を示さない(個別F/S上の話)

■連結範囲
①関係基準の再整備の必要性
問題
・実態が類似する取引であっても、事業体の法的形態の違いによって会計処理が異なるケースが生じる懸念がある。
・関連する会計基準や適用指針等が多岐に渡ることで、実務上検討すべき事項を網羅的に把握することが困難

②国際的な基準との整合性
問題
・日本基準では一定の投資企業が有する投資は子会社としない旨が定められているが、
 IFRSにおける投資企業の概念ではさらに投資を公正価値評価することが求められている
・日本基準では本人、代理人の検討ルールがなく、他社の為に代理人として意思決定を行い、当該事業体から生じる利益はほとんど得ていないような事業体も連結対象となる可能性がある
・特別目的会社の定義が連結基準と金融商品会計基準とで異なっている為、連結の範囲や開示の取扱いに漏れが生じる可能性がある


9.有価証券届出書における第三者割当の場合の特記事項

①平成22年4月より開示が義務化
・企業の判断で株主の権利が希釈化
・支配権の所在が経営陣自信によって恣意的に選択
・コーポレート・ガンバナンスの観点から、看過できない重大な問題をはらんでいる
②昨年、税法上の特定譲渡制限株式を発行者である提出会社(関係会社)の役員に割り当てる場合は免除
・割当先や目的が明確であるため
・ほかに、パフォーマンスシェアや株式報酬等として割当する場合も含む


10.期末をまたぐ有価証券の売買処理の実務

■上場株式:約定日基準(以下、売買目的有価証券を前提)
・売手:契約日に有証をオフバラ、売却損益を計上
・買手:契約日に有証をオンバラ
※継続適用を条件に、修正受渡日基準可
・売手:契約日に売却損益のみ計上、受渡日に有証をオフバラ
・買手:契約日は処理なし、受渡日までの時価評価差額を計上、受渡日に有証をオンバラ

※契約から受渡までの期間が長期の場合、先渡契約とみなしてデリバ処理
・売手:受渡日までは、通常の有証の時価評価に加え、先渡契約の時価評価
受渡日には、有証をオフバラ、時価評価差額は売却損益、約定価格との差額はデリバティブ損益

・買手:受渡日まで、先渡契約の時価評価(売手と損益方向は逆)
受渡日には、有証を時価でオンバラ、約定価格との差額はデリバティブ損益

■非上場株式:受渡日基準
・売手:契約日は処理なし、受渡日に有証をオフバラ、売却損益を計上
・買手:契約日は処理なし、受渡日に有証をオンバラ


11.デリバティブ取引の税務上の留意点

■税法におけるデリバティブ取引の定義
⇒税法と会計のデリバティブ取引の範囲は同じ
(デリバティブ取引について税法独自の定義はなし)

■税法における原則的な取り扱い
⇒期末時点の未決済のデリバティブは時価評価し、事業年度の損金又は益金算入し、翌期に洗替

■税務上のヘッジ処理
⇒会計上のヘッジ会計と同様の処理

■税務上のヘッジ処理の適用要件
・帳簿記載要件
①デリバティブ取引等がヘッジ対象資産等に係る損失額を減少させるために行ったものである旨
②ヘッジ対象である資産、負債及び金銭
③ヘッジ手段であるデリバティブ取引の種類、名称、金額、ヘッジ期間
④その他参考となるべき事項
⇒会計上のヘッジ会計の文書と税務上の帳簿記載要件は必ずしも一致しないので留意が必要。

・有効性の判定
会計上は省略できる場合があるが、税務上は省略不可。

■為替予約の振当処理、金利スワップの特例処理
⇒税法と会計で大きな違いなし。



12.同業者団体が役員に払う日当の税務上の扱い

・同業者団体が役員に払う交通費の実費及び日当は旅費交通費として扱って良いか。
・交通費の実費は旅費交通費としてOK。
・日当は給与所得として源泉徴収の対象となる。
・そもそも「日当」は「業務上の旅行に際して通常必要とされる少額の雑費等に当てるための資金として供給されるもの」。
・本ケースの日当は「毎月開かれる理事会等への出席に対して支払われるもの」で、いわゆる日当に該当せず。


13.三様監査

1.「監査役監査」、「会計監査人監査」「内部監査」の3つの監査のこと
⇒それぞれの目的、主体は異なるが、監査対象や手続きに重複する部分がある。
そのため、監査人が連携することが重要である。

2.三様監査の比較
・監査役監査
法律:会社法第381条、第436条
主体:監査役
目的:株主及び債権者保護の目的で、取締役の職務の執行を監査
種類:会計監査、業務監査

・会計監査人監査
法律:会社法第436条、第444条、金商法第193条の2
主体:公認会計士(監査法人)
目的:株主及び債権者保護の目的で、(連結)計算書類、(連結)財務諸表、内部統制を監査
種類:会計監査

・内部監査
法律:なし
主体:会社の従業員等
目的:企業の経営活動に資する目的で、経営者の指揮の下に、業務部門の体制・活動全般を監査
種類:会計監査、業務監査

3.上場審査における取扱い
申請書類において、各監査人の連携について以下の記載が求められる。
・市場:共通
・申請書類:Ⅰの部
・記載内容:コーポレート・ガバナンスの状況
⇒内部監査、監査役監査及び会計監査の相互連携、これらの監査と内部統制部門との関係について記載

・市場:マザーズ
・申請書類:各種説明資料
・記載内容:内部監査について
⇒三様監査(監査役監査、内部監査、監査法人による監査)の連携状況について記載

・市場: JASDAQ
・申請書類:JQレポート
・記載内容:監査役(監査委員会)監査
⇒内部監査との連携について記載









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