2019年3月25日月曜日

3/22 勉強会:IFRS導入プロジェクトの進め方 他

1.継続企業の前提の判断規準が新規テーマ

⇒財務会計基準機構の基準諮問会議が、継続企業の前提の判断規準について、
企業会計基準委員会に検討すべき新規テーマとするよう提言することを決定した。

・昨年7月に公表された改訂監査基準では、監査報告書の「経営者及び監査役等の責任」区分において、
経営者は継続企業の前提に関する評価を行い必要な開示を行う責任があることを新たに記載することを求めている。

・日本の会計基準において、経営者に継続企業の前提に基づき財務諸表を作成することについて評価する責任があり、
どのような場合に継続企業が前提として財務諸表を作成すべきかについて明文規定がないため、
会計基準を開発することについて有用性が認められると判断した。






2.国際会計基準と解釈指針

■用語の整理
・国際会計基準(IAS)と国際財務報告基準(IFRS)
⇒設定時期・設定主体の違いだけで優先順位はなし。今後はIFRSのみが作成。IASは増えない。
・国際会計基準(IAS)と同解釈指針(SIC)
・国際財務報告基準(IFRS)と同解釈指針(IFRIC)
⇒最近公表のIFRSは基準書+結論の根拠で構成、記載内容が充実している。
⇒IFRIC(解釈指針)は、基準書の中に盛り込まれてしまうケースが多いため、多くが廃止されている



3.仕入先が価格増拒否でも"買い叩き"か

■改正転嫁対策ガイドライン
取引先からの対価引上げの要請がないことを理由として「対価を据え置く」場合も「買い叩き」に該当

■問題点
・企業が個人の地主から駐車場を税込5万円で借りている
・10月以降、税込50,926円に価格の引き上げを申し入れ
・地主が端数を面倒がり、価格の変更に応じない
⇒ガイドラインによると、この場合も「買い叩き」に該当するように読める



4.軽減税率対策補助金、対応レジの導入期限が迫る

■9月30日までに導入し、12月16日までに申請
補助率は、2/3以内とされていたが、3/4以内に拡充。
早めにレジを導入したものの、改修が必要になった場合は再度補助金の申請が可能。

■軽減税率対象の補助金はA~C型に分かれる
A型:小売業におけるBtoC向けのレジ導入、機器の入替等。
B型:電子受発注システムの改修など 卸売業者等BtoB向けのもの
C型:区分記載請求書等へのシステム等の導入費用





5.年金振込後の預金差押えを適法と判断

■事例
・年金生活者である納税者は固定資産税2,000円を滞納
・前橋市はH28年4月15日に納税者名義の預金残高約9万円のうち2,000円の払戻請求権(預金債権)の差押処分を行った。
・同日14日の預金残高は465円だったが、年金が降込まれたことにより約9万円となった。
・納税者は、差押処分は年金の差押えを禁止した国税徴収法の趣旨に実質的に反する違法なものとして取り消しを求めた。

■判決
・前橋市は直近に確認したH27年6月までの納税者名義預金の取引履歴をみると預金残高が常に2,000円(滞納額)を下回っていたわけでは必ずしもないから、差押処分の直前に預金残高が2,000円を下回っていることを認識していたとまで言えない。
・預金残高2,000円が差し押さえられたからといって、その額が直ちに納税者が困窮に陥るおそれがある額であったということはできない。
⇒納税者の請求を棄却。



6.海外取引調査で着目、アンダー・オーバーバリュー

■アンダーバリュー
真実の取引価額より低い価額で税関へ申告して輸出(輸入)を行う取引。例えば、真実の取引価額100のところ税関への申告は70というように過小額で輸出したように装うこと。
主に輸出相手先側で高い関税を課されることを回避するために行われることがある。

■オーバーバリュー
真実の取引価額よりも高い価額で税関へ申告して輸出(輸入)を行う取引。例えば、日本の輸入法人が海外の取引相手から輸入する際に真実の取引価額100のところ、税関への申告は130という過大価額で輸入したように装うこと。
主に特定品目の輸入関税(差額関税制度)を回避する目的で行われることがある。




7.消費税:工事進行基準の適用

■長期大規模工事の工事進行基準適用
法人税:強制(請負対価10億円以上の工事など)
消費税:任意適用

■新税率との関係(経過措置あり)
前提:契約は2019年9月30日以前、完成引渡しは同年10月1日以後

(1)工事完成基準による場合
10月1日以後売上計上のため10%
(2)工事進行基準による場合
9月30日以前の売上計上分:8%
10月1日以後の売上計上分:10%

なお、同経過措置を適用した場合には,相手方に対して,経過措置を適用した旨や経過措置の適用を受けた
部分の対価の額を書面で通知することが必要





8.消費税の経過措置:3月までの契約で税理士報酬も対象

・月額顧問報酬 ⇒ 経過措置の対象外
・申告書作成報酬 ⇒ 経過措置の対象
・上記が区分されていない ⇒ 経過措置の対象外

■月額顧問報酬
役務提供時期が
・9月分まで ⇒ 8%
・10月分から ⇒ 10%

■申告書作成報酬、スポット業務
役務提供時期が
・9月分まで ⇒ 8%
・10月分から ⇒ 10%
ただし、2019/3/31以前に契約した分で10月以降納品は8%が適用される
※自動更新も同様

(例)12月決算法人、3月中に契約期間の自動更新
⇒2019年12月決算の申告書作成報酬は8%で請求すること。

■経過措置の対象となる主な取引
・乗車券や入場料金の販売取引
・電気・ガス・水道・通信サービス料金の継続供給取引
・工事や製造、ソフトウエア等の請負契約
・賃貸借契約やリース契約
・冠婚葬祭に関するサービスの売買取引
・書籍や物品の予約販売に関する取引
・通信販売による取引
・特定新聞の販売取引
・有料老人ホームに関する介護サービスの提供取引
・家電リサイクルの再商品化に関する取引
※5%⇒8%に増税した際の経過措置とほぼ変わらず。





収益認識基準 返金が不要な顧客からの支払い

たとえば、スポーツクラブの入会手数料はいつ収益認識するか?

(会計)
・基本的には「将来の財またはサービスに対する前払いと考えられ、当該財またはサービスが提供された時に収益を認識する」
・入会時に教材やスポーツ用品を支給するようなケースでは、入会時に収益認識するが、
 それ以外の場合は、たとえば年間契約であれば1年間にわたって収益認識する。

(法人税)
・原則は入会時に収益認識。
・「加入の継続期間、利用する頻度」等、対応する収益期間を明確に説明できる場合は、その期間に亘って収益認識することが認められる。

(消費税)
・支払いを受けた時点で認識。





10.ASBJが「すべてのリース資産・負債を認識する基準」開発を提案

・ASBJ(企業会計基準委員会)は3月8日、「すべてのリース資産・負債を認識する会計基準の開発に着手する」旨の提案を行った。
⇒「IFRS16号」、「US-GAAPTopic 842」では原則すべてのリース資産・負債を認識する。
⇒これらとの国際的な比較可能性、財務諸表利用者のニーズ、J-GAAPに対する信頼性を確保するため。

・基本的には借手の会計処理を改正する方向(下記を中心に審議)。
 ①サービスを含むリースに関して対象とする取引の範囲
 ②延長オプションがある場合の比較可能性を担保する方策
 ③重要性に関する定め
 ④連結財務諸表と単体財務諸表の関係

・一部、貸手の会計処理についても検討
 ①収益認識会計基準との整合性
 ②IFRS16号等において改正された、借手・貸手に共通のもの





11.IFRS導入プロジェクトの進め方

IFRS導入プロジェクトは長期間に渡るため、いくつかのフェーズにわけて進める
⇛各社の導入目的や事業環境を考慮した内容で進めることが重要
⇛経理部門以外も巻き込むため、プロジェクトの全体管理、関係者間のコミュニケーションも重要

2010年前後に将来の強制適用を見据えてIFRS導入準備を進めた会社が多かった
⇛改めて導入プロジェクトを進める場合は導入目的、基本方針を明確にする
⇛プロジェクト中止時と現時点では事業環境やIFRSの会計基準も変化しているため、再度調査することが必要
⇛リースは2010年前後と比べると大幅に改訂されており、過去の判断が適切ではなくなっているケースもありうる
⇛現状とIFRSの差異洗い出しが重要となる

フェーズ1:影響度調査
現行会計処理とIFRSとの差異が財務数値、業務プロセス、ITに与える影響度合いを把握する
⇛業務プロセスやITに与える影響が大きい場合、経理以外の協力が不可欠となる
⇛影響を受ける部署の範囲や対応に要する時間を考慮して課題の優先付けをしていく
⇛影響が多岐に渡る場合、IFRS導入の社内コンセンサスを得ることもが重要














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3/15 勉強会:軽減税率 店内飲食の一部持ち帰りの判断方法の続報 他

1.減損損失するか否かの見積り開示も

・ASBJは、見積りの不確実性の発生要因の開示の充実に向けて会計基準開発の検討を行っている。
・会計上の見積りの範囲に、不確実性の程度が高い会計上の見積りも含めるかが論点となる。

■資産及び負債や収益及び費用等をF/Sに計上するか否かを判断する際に行う見積り
Ex.固定資産について減損の兆候があるものの、認識の判定の結果、減損損失を計上しないと判断した場合
⇒F/S利用者のニーズがあると考えられることから、当該見積りが含まれる旨を明確化する方向で検討。

■注記を作成する過程において行われる見積り
Ex.金融商品や賃貸等不動産の時価に関する開示を作成する際において行われる見積り
⇒F/Sに影響を及ぼさないことから、当該見積りは含めない方向で検討。





2.米国会計基準を適用している日本企業(のれんと耐用年数を確定できない無形資産の計上と減損テスト

■米国基準を適用して連結財務諸表を作成している日本企業
・2018年12月末時点で13社(うち9社が時価総額トップ100に入っている)

■非償却となる無形資産
・のれん
・耐用年数を確定できない無形資産(商標権等)

■開示:減損テストの方法の事例
(1) のれん
・定性分析により、公正価値が帳簿価額を下回っている可能性が50%超である場合は定量判断
・定量判断は2つのステップで判断
・1.報告単位全体で、公正価値と帳簿価額とを比較し、潜在的な減損の把握
・2.営業権の暗示された公正価値と帳簿価額とを比較し、公正価値が下回る場合は公正価値まで評価減

(2) 耐用年数を確定できない無形資産
・定性分析により、減損している可能性が50%超である場合は定量判断
・定量分析:無形資産簿価と公正価値を比較して、公正価値が下回る場合は公正価値まで評価減



3.理事長への貸付金処理めぐり法人敗訴

■事例
・税務調査で指摘された使途不明金を理事長に対する貸付金として計上
・貸付金に係る金銭消費賃借契約は締結済
・会社と理事長間で退職慰労金を貸付金の返済に充てることが同意(契約書に記載なし)
・退職金規程を作成後、理事長は現金を受領し、それを貸付金の返済として会社に送金

■争点
・税務署は現金支給が理事長の給与等に該当するとして、源泉税の支払いを命じる
・会社は、現金支給は退職慰労金を担保とした貸付けのため、給与所得ではないと主張

■判決
・給与所得(臨時賞与)に該当し、源泉税の納付義務あり
(理由)
・会社と理事長間で「退職慰労金を担保として貸付けをする」旨の契約がない
・退職慰労金の他に理事長には貸付金の返済をする資力がなかった
⇒返済のために退職金の前払いを受けたと考えるのが適当





4.個人番号照会スキームが今国会で実現へ

■31年度税制改正
マイナンバー法:行政手続きにおける、特定の個人を識別するための番号の利用に関する法律
住民基本台帳法(住基法):外国人住民にも住民票が作成しやすくするために改正
⇒上記の改正案の成立を前提に「ほふり」が本人からではなく直接、住基ネットから個人番号を提供できるようにする仕組みが導入される予定。

■税務署も個人番号収集可能に
前述の改正に合わせ、税務当局もほふりを経由して個人番号を共有する事が出来るようになる。
しかしながら、「税制改正」と「マイナンバー法&住基法の改正」は別物である為、今国会での成立が危ぶまれていたが、マイナンバー法及び住基法の改正は、今回の税制改正に組み込まれており、成立すれば個人番号照会スキームが完成する。

施行開始日:平成32年4月1日より





5.全商法の犯則調査でもサーバ等を差押え

・国税通則法や刑事訴訟法等と同様、証拠収集・分析手続きに関する規定を導入。
⇒金融商品取引法には同様の規定はなし
⇒電磁的記録等(サーバ等)の必要なデータの確実な取得等のため

具体的には・・・・
①電磁的記録に係る差押えの執行方法柔軟化
②パソコン接続サーバ保管の自己作成データ等の差押え
③電磁的記録保管者への記録命令付の差押え
④差押え等を受ける者への協力要請
⑤通信履歴の電磁的記録の保全要請
⑥館手等の嘱託の木手を導入



6.未払役員報酬の解決金に係る源泉税の求償権行使を認めず

■概要
・未払役員報酬請求訴訟における和解により支払った解決金について、税務署から役員給与と認定された上で源泉所得税の納税告知処分を受けた原告会社が被告元役員に対して、所得税法規定による求償金の支払いを求めた裁判。

■判決
・東京地裁は原告会社の請求を棄却した。
・理由としては和解に弁護士が訴訟代理人として関与し、税務処理全般に関与する税理士も当然存在していたことから解決金という名目にとらわれず、実質的に賞与と認定される可能性があることは予期しうると指摘。また、別件訴訟における和解は内容的に解決金の支払いをもって役員報酬に係る一連の紛争を終局的に解決するものとしてその後の一切の清算はしないという双方の合理的な意思が前提になっていたものというべきであると指摘した。




7.簡易課税:事後選択特例

■提出期限
(原則)
適用を受けようとする課税期間の初日の前日
(軽減税率導入にともなう特例)
2019年10月1日から2020年9月30日までの日の属する課税期間においては
その期間中に提出すれば簡易課税の適用が受けられる

⇒この特例はあくまでも軽減税率制度導入後1年間に限った時限措置
⇒簡易課税選択届出書の事後選択特例の適用を受けようとする事業者は、
本年7月1日からその届出書の提出が可能





8.軽減税率 店内飲食の一部持ち帰りの判断方法の続報

2019年10月1日より消費税が10%へ
飲食料品等の販売は、
・店内飲食(外食) ⇒ 標準税率の10%
・自宅に持ち帰る ⇒ 軽減税率8%

消費税の納税義務は、「譲渡等をした時」に確定する。
⇒販売時の目的で標準税率か軽減税率か決まる。
⇒販売後に、消費者の目的が変わっても税率変更はされない

■適用税率の判断基準は
一取引ごとに判断する。
例1 A,B,Cを個別に販売 ⇒ 個々で適用税率を判定
例2 A,B,Cをセットで販売 ⇒ 全体で適用税率を判定

ただし、セット販売時に顧客が一部を店内で飲食したいと意思表示があった場合、
純粋な持ち帰りとは異なるので、標準税率(10%)が適用される

■例
・たこ焼き屋で8個入りのたこ焼きを購入
・購入時に1個だけ店内で食べる
⇒店内飲食のため標準税率(10%)が適用
⇒たとえ残りの7個を持ち帰るとしても、
持ち帰り分と店内飲食分の個数の利率などで判断しない





株式の保有状況の改正(開示府令)

・2019年3月期から株式の保有状況について下記を開示。
(1)政策保有株式の保有の合理性の検証方法
(2)個別開示の銘柄数 30 ⇒ 60

・(1)の詳細
⇒ 保有目的、保有の効果、取締役会等における検証の内容
⇒ 純投資と政策投資の区分の基準や考え方





10.監査人の交代 3年連続の増加

・2018年の監査人交代件数は175件
⇒対象は2018年1月1日~2018年12月31日までに監査人を交代した全上場会社

・監査法人の合併等の除外事項を除くと114件(3年連続の増加)
⇒業種別では下記の通り(()内は全体に占める割合)。
 ①卸売業     15件(13.2%)
 ②情報・通信業 14件(12.3%)
 ③サービス業   14件(12.3%)

・東証一部、JASDAQでの交代が多く、大手監査法人から中小監査法人への移行も多い。
⇒市場別では下記の通り(()内は全体に占める割合)。
 ①東証一部     37件(32.5%)
 ②JASDAQ      30件(26.3%)
 ③マザーズ     20件(17.5%)

⇒2018年7月に太陽有限責任監査法人と優生監査法人が合併した影響から、東証一部での交代が多かった。

・主な交代理由は「任期満了」が大半。
⇒より具体的に記載している事例では、「監査期間の長期化」、「監査報酬等の契約の折り合いが合わず」というケースが多い。

・東証は2019年1月に「会社情報適時開示ガイドブック」を改訂。
⇒監査人の異動理由について、実質的な内容を開示することが求められている。





11.事業報告等と有報の一体的開示のポイント

■H30/12/28に関係省庁より、一体的開示にあたっての記載例が2つ公表
・現在の有価証券報告書をベースにしたものが1つ、事業報告書をベースにしたものが1つ
⇒有価証券報告書をベースにしたものが主流になる見込み
■記載例(有価証券報告書ベース)
・有報の項目に事業報告等のみで記載していた内容を追加した有価証券報告書を作成
⇒総会提出の事業報告等としても有報としても使用可能なもの
・株主総会招集通知の発送期限までに開示
 ※有報の一部事項が完了しない場合、一旦事業報告等として開示し、別途有報の全項目を満たした上で有報として開示することも考えられる

(有報へ追加すべきと考えられる主な事項)
・経営指標等の「営業利益」
・経営成績等の状況の概要において、「主要な借入先の状況」、「資金調達手段」
・役員の状況へ「会社役員の担当や重要な兼職」
・コーポレートガバナンスの「内部統制の運用状況」、「社外役員の主な活動状況」、「社外取締役及び社外監査役の報酬を区分して記載」




12経過措置の適用時やIFRS任意適用時の新収益基準上のポイント

■(経過措置)遡及適用しなくてもOK、ただし注記が必要
①新収益基準の適用=会計方針の変更なので、原則として遡及適用が必要
②経過措置として、遡及適用した影響額を期首利益剰余金に加減することでもOK
③その場合、比較情報について期間比較可能性が確保するため、変更前の会計方針によった場合の、当期における影響額の注記が必要

■(IFRS)個別上は新基準、連結上はIFRS(15号)が適用されるため、基準差に注意
例1:金融商品の取得時等に受取る手数料⇒IFRS上は適用範囲、新基準上は範囲外
例2:リース判別の詳細なガイダンス⇒IFRS上はあり、新基準上はなし※
※リース基準が適用されるリース取引を、各収益基準の適用範囲から除外することは共通





13.改正税効果会計基準の会計処理ポイント

■会計処理の変更点
・個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱い
→連結財務諸表における子会社株式等に対する投資に係る将来加算一時差異の取扱いに合わせ、繰延税金負債を計上する取扱いに見直された。

・(分類1)に該当する企業における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い
→「原則として回収可能性がある」と、「原則」が追加されている。
→将来において税務上の損金に算入される蓋然性が低いときに、当該子会社株式の評価損に係る繰延税金資産の回収可能性はないと判断することも考えられることを明確にするもの

■開示
・流動固定分類を行わず、繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示することに変更

■注記事項の追加
・評価性引当額の内訳に関する情報
→内訳に関する数値情報、および定性的な情報の開示
・税務上の繰越欠損金に関する情報
→繰越期限別の数値情報、定性的な情報の開示
・連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における注記事項



14.税率差異分析の考え方

有価証券報告書を作成する際、法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との間に重要な差異がある時には、当該差異の原因となった主要な項目別の内訳を注記しなければならない。

■税率差異が出る原因となる項目の例
①永久差異
⇒税効果会計の調整対象とならない。
②住民税均等割
⇒均等割は実効税率に関係なく均等にかかる税金であり、税効果会計で調整できない項目。
③評価性引当金
⇒スケジューリング不能であり、一時差異だが繰延税金資産を計上しないため。
④適用している実効税率の違い
⇒税率差異の注記において基準とする法定実効税率は当期の法定実効税率。
 一方、税効果会計においては、一時差異が解消・消滅する将来の法定実効税率を使用するため。
⑤親会社と子会社の実効税率が違う
⇒親会社が外形標準課税適用会社だが、子会社は適用されない場合等
⑥連結決算でののれん償却額
⇒連結決算上は、費用で計上されるが、税金が減っていないということになるため。
⑦特別控除
⇒均等割りと同様に、法人税の課税所得と連動しないため。

上記等の税率差異が出る項目を網羅的に収集するためには、法人税等の総勘定元帳を精査し、期末の税金計算以外で計上されている項目を洗い出すことが有用。





15子会社上場時の親会社からの独立性

・上場審査に関する取扱い
子会社上場においては、通常の審査項目に加えて、親会社からの独立性確保の状況について、
以下の4項目に適合しているか否かを確認する。

確認趣旨としては、親会社の利益を優先させ、
申請会社(子会社)の株主(親会社以外の株主)の利益が阻害される
危険性がないかを確認するため。

1.申請会社または親会社等が一方の不利益となる取引行為を強制し、または誘引していないこと
2.申請会社と親会社等の間で、通常の取引条件と著しく異なる条件で、営業取引を行っていないこと
3.申請会社が事実上、親会社等の一部門と認められないこと
⇒営業活動を申請会社自ら行っているか、事業活動が親会社等に大きく依存していないか
4.親会社等の企業内容開示の状況
⇒親会社等が未上場会社である場合、「親会社等状況報告書(親会社等のF/Sや事業報告)」等の開示が求められる。




16IFRSの特徴

■考え方
IFRS:原理・原則を明らかにし、例外規定は極力認めていない。解釈や運用は企業判断による。
⇛原則主義。企業がIFRSの原理・原則を踏まえた上で判断していく必要があり、採用根拠や判断基準を合理的に説明する必要がある。
日本基準:具体的な規定や数値基準を設けている
⇛細則主義。企業が実務対応報告や適用指針などのガイダンスにそって判断していくので、会計処理の説明責任は小さい

■重視する指標
IFRS:財産価値(純資産)
⇛期首から期末までに増加した財産価値を重視(資産・負債アプローチ)し、包括利益を重視。BS重視
⇛時価が重視されるため、公正価値アプローチが採用されている
日本基準:純利益
⇛収益から費用を差し引いた純利益を重視。PL重視
⇛取得原価主義が考え方の根本にあるが、時価評価概念も取り入れらており、IFRSに近づいている










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3/8 勉強会:祖父会社株を対価の三角合併等も適格に 他

1.関連基準に関係なく注記の詳細は定めず

・企業会計基準委員会は「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」
に関する注記情報の会計基準を開発中。

・関連会計基準等の定めの有無に関係なく、会計方針の開示における重要性の判断基準及び注記事項に
関する詳細は会計基準には記述しない方針。





2.祖父会社株を対価の三角合併等も適格に

■今回の税制改正
・祖父会社株式を対価とする三角合併等が適格組織再編に。

■例を使った説明
・上場A社⇒100%⇒非上場B社⇒100%⇒非上場C社のグループ
・C社が三角合併をしようとすると、現状はB社株式しか使用不可・・・流通性低く、現実的でない
・改正後:A社株式を対価にした三角合併が可能に
・分割や株式交換なども同様の改正が行われる




3.コーポレート・インバーション対策税制

■コーポレート・インバーションとは
・実態のある会社が軽課税国に外国法人を設立し、その外国法人が最終的な親会社になるように組織再編を行う租税回避行為
・三角合併解禁(2007年)に伴って対策税制が導入された

■三角合併におけるコーポレート・インバーション対策税制の例
・外国企業(A社)が日本に子会社(B社)を作り、その子会社を媒介して日本企業(C社)を買収(←三角合併)
・C社には合併対価としてA社の株を譲渡
⇒A社にもB社にも事業の実態がない場合、非適格合併として取扱い、株主に対して譲渡益課税が行われる




4.旧広大地に通達に構造的瑕疵は認められず

■広大地とは
 その地域における標準的な宅地の地積に比べて「著しく地積が広大」な宅地で開発行為を行おうとした場合、
 「公共公益的施設用地の負担」が必要な土地
 ⇒広大地は評価額の算出及び計算がかなり簡単であるが、適用可能かどうかの判定が非常に難しい。

■東京地裁平成30年9月判決
土地の相続評価を巡り、納税者が広大地には構造的な瑕疵があることから不動産鑑定士による
鑑定評価額により評価すべきと主張した税務訴訟
・納税者側の主張
 地積を適切に評価できない構造的な瑕疵があり、H29年の税制改正では、この構造的瑕疵があった為
 改正したものだから、旧広大地通達による評価ではなく不動産鑑定士による評価額にて評価すべき
■判決:納税者側の敗訴
 旧広大地通達の改正は実際の取引価額と相続税評価額の乖離を解消と要件の明確化を図るもの
 構造的な瑕疵があったという前提での納税者の主張を斥け一般的な評価方法で評価すべきと判断







5.個人版事業承継税制、担保の“みなす充足”規定はなし

平成31年税制改正で創設される予定の個人版事業承継税制(H31.1/1-H40.12/31)
 相続等により特定事業用資産を取得し事業を継続していく場合、認定相続人の相続税額のうち特定事業用資産の課税価格に対する相続税の納税を猶予される。
⇒担保適用を条件に納税猶予の適用が認められる。

■特定事業用資産の対象
土地(400㎡まで)、建物(800㎡まで)
機械・器具備品、車両・運搬具、生物、無形償却資産など

■個人版事業承継税制に「みなす充足」の規定がない理由
⇒法人同様にすべての特定事業用資産を担保に提供してしまった場合には事業を継続することが困難になってしまう可能性がある

■個人の担保提供
不動産、国債・地方債、税務署長が確実と認める有価証券・保証人の保証など
※担保として提供する財産の価額は、納税猶予の相続額及び猶予期間中の利子税額の合計額に見合うことが求められる。

■法人の場合のみなす充足
対象非上場株式等のすべてを担保として提供した場合、必要担保額に見合う担保の提供があったものとみなされる。提供している非上場株式の価額が下落しても追加で担保提供をもとめられることはないが、全部又は一部に変更があった場合には適用されなくなる。




6.見えてきた新たな連結納税制度

■概要
・来年度の税制改正では、連結納税制度が抜本的に見直されることが既定路線となっているが、2回の「連結納税制度に関する専門家会合」を経て「個別申告方式」の採用が示唆されている。

■背景
・経団連のアンケートによれば、申告の事務負担や税務調査等の事後の修正事務負担が増えたという回答が多かった。
⇒本来の目的である損益通算による節税効果より、事務負担が判断材料となっていることから企業にとっていかに重いものであるか示されている。

■個別申告方式
・個別申告方式が導入されると、連結納税制度開始又は連結納税グループ加入時の時価評価や欠損金持込制限も不要ないしは大幅緩和が必要になる。また、修正申告や更正が連結グループ一部で発生した場合にその影響が他のすべての法人に及ぶという企業を悩ませてきた現行制度の問題点も解消することになる。





7.賃上税制:中小企業向け まとめ

■賃金要件
(1)当期の雇用者給与総額(A)>前期の雇用者給与総額(B)
(2)当期の継続雇用者給与総額が前期の継続雇用者給与総額に比し1.5%以上増加

■税額控除額
上記の(A)-(B)×15%(法人税額の20%を限度とする)

■控除上乗せ
当期の教育研究費が前期の教育研究費に比し10%以上増加している場合は税額控除を
15%⇒25%に上乗せ

■用語
<継続雇用者>
⇒前期及び当期のいずれの給与支給月においても給与の支給をうけている者で
そのすべての期間において雇用保険の一般被保険者であるもの




8.所得税等の確定申告書の提出期限と留意点

■申告期限
・所得税 ⇒ 2019/3/15(金)
・贈与税 ⇒ 2019/3/15(金)
・消費税 ⇒ 2019/4/1(月)
※納付期限日も同上。振替納税を選択した場合を除く。

■各書類の提出日
・税務手続きに関する書類 ⇒ 税務官庁等に書類が到達した日
・納税申告書等 ⇒ 書類が郵送された日又は通信日付印が表示された日

■各申告による提出日
・窓口提出
⇒所轄税務署に提出した日又は時間外収受箱に投函した日
・e-tax
⇒受信通知に表示される受付日時が提出日
なお確定申告期間中であれば、土日祝日を含む24時間申告可能。
・郵便又は信書便による提出
⇒通常の封筒、レターパックや書留での提出は通信日付印が提出日
⇒ゆうパックやゆうメールでの提出は到着日が提出日






企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等

・繰延税金資産及び繰延税金負債の表示方法を改正、また注記事項について所要の改正。

・「分類1」について、「原則として繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとされ」⇒「原則として」が加わった。
 分類1であっても、子会社株式を保有し続ける等、例外的に回収可能性がないケースがあることを明示。

・繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示、
 繰延税金負債は固定負債の区分に表示。
(関連した資産負債の分類に基づいて、流動・固定を区分表示することはなくなった)。

・注記について下記を変更。
 (1)「税務上の繰越欠損金」の額が重要な場合、「税務上の繰越欠損金」と「評価性引当額の内訳」に分けて表示。
 (2)「税務上の繰越欠損金」については、「回収可能と判断した理由」を記載。
 (3)「評価性引当額の内訳」については、重要な変動が生じた場合、変動の主な内容を記載。






10.業績連動報酬の内容説明

・金融庁が1月31日に「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」を公布・施行。
⇒有報等の記載事項について3つの改正
 (1)財務情報及び記述情報の充実
 (2)建設的な対話の促進に向けた情報の提供
 (3)情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組

・(2)の1つとして、役員の報酬について、報酬プログラムの説明、プログラムに基づく報酬実績等を記載することが求められている。

・具体的に記載が求められる事項(例示列挙)
 ①業績連動報酬と業績連動報酬以外の報酬等の支給割合の決定方針がある場合は、その方針
 ②業績連動報酬に係る指標
 ③②の指標を選択した理由、報酬額の決定方法(役職ごとに異なる場合は、その内容も記載。)




11.株主総会に関する規律の見直しのポイント
■株主総会資料の電子提供制度
(現行法)
・招集通知、株主総会参考書類、計算書類および事業報告は、原則書面で株主へ提供しなければならない
 例外でインターネットによる提供方法が認められているが、株主個別の承諾が必要
(新設予定の要綱)
・自社HP等にて掲載することにより、株主個別の承諾を得ることなく、株主総会参考書類等を株主に提供したものとみなす
⇒定款の定め、登記が必要(電子提供措置をとる旨) ※上場企業は原則として義務となる
⇒招集通知は書面での提供が必要
⇒電子提供措置の期間は、株主総会の日の3週間前の日または招集通知を発した日のいずれか早い日から総会の日後3ヶ月を経過する日まで
 ※現行の2週間前より早くなる
⇒株主の書面交付請求権は設けられる

■株主提案権の制限

・議案は10に制限(10超の場合、会社は拒絶可)





12改正会社法のポイント~役員報酬関連~

①取締役個人別の報酬等の内容の決定方針を決定する必要
対象:一定の監査役会設置会社および監査等委員会設置会社の取締役会
趣旨:企業価値向上のインセンとしての有効性を検証させる

②取締役の報酬として株式(SO)を発行(行使)する場合は、金銭の払込みなしでもOK
対象:上場会社
趣旨:現行の実務がまわりくどく※、これを明瞭化させる
※現行の株式報酬⇒払込に金銭必要⇒報酬支払請求権を現物出資させている
※現行のSO報酬⇒行使に金銭必要⇒行使価額を1円として付与している

③1名以上の社外取締役の選任が義務付けられる
対象:一定の監査役会設置会社





13.用語から読み解く収益認識会計基準

取引価格の算定(ステップ3)
「変動対価」、「返済負債」「重要な金融要素」

■変動対価
・変動対価とは、顧客と約束した対価の内、変動する可能性がある部分
→取引価額に変動対価が含まれる場合、顧客から得られる対価を見積もる必要がある。
・見積方法
→最頻値又は期待値による方法(より適切に予測できる方法)

■返金負債
・返金負債とは、顧客から受け取った又は受け取る対価の一部あるいは全部を顧客に返金すると見込む場合、受け取った又は受け取る対価の額のうち、企業が権利を得ると見込まない額
→返金負債が取引価額に見込まれる場合、返金負債を認識する必要がある。例えば、商品を10個販売し、2個の返品が見込まれる場合、売上計上8個、返品負債2個を認識する。

■重要な金融要素とは
・契約に重要な金融要素がある場合には、対価の額に含まれる金利相当分の影響を調整する必要がある。




14.IPO準備会社の会計監査の要否

■会社法上の大会社に係る取扱い

(1)大会社とは
・以下のいずれかに該当する株式会社をいう。
①最終事業年度に係る貸借対照表の資本金が5億円以上
②最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部の合計額が200億円以上
⇒大会社においては、会社法に基づき、会計監査人の設置が義務づけられている。
※最終事業年度とは、株主総会で承認または報告された計算書類のうち、最も直近の計算書類に対応する事業年度をいう。
(2)期中に大会社の金額要件を満たした場合における実務対応
 当該事業年度に係る定時株主総会において、会計監査人の設置に係る定款変更及び会計監査人の選任を同時に決議するケースが多くみられる。

■会計監査人を任意設置した場合の取扱い
・会社法上、会計監査人の設置が義務付けられていない会社でも、IPOに備えて事前に会計監査人を任意設置する場合があり、会計監査の要否に係る取り扱いが問題となる。

(例)IPOに備え、3月決算の会社が、2019年2月における臨時株主総会で定款変更を行い、会計監査人を任意設置する場合
⇒任意設置の場合についても、会計監査人設置会社に該当するため、2019年3月期から会計監査人の監査が必要。
 また、株主総会の招集通知において、会計監査人の監査報告を提供することが必要になる。





15内部監査実施上のポイント

(1)内部監査の対象部門
⇒社内全部署および全関係会社(実質的に支配の及ばない会社を除く)を対象。
⇒監査サイクルは原則として1年を1サイクルとして全監査対象部門の監査を実施。

(2)業務監査を中心とした内部監査の実施手続
⇒一定の品質確保のため、監査手続書を作成。
⇒監査項目は、経理業務、人事総務業務、職務権限等、 内部牽制上必要な項目を網羅する必要がある。

(3)財務報告に係る内部統制報告制度のモニタリング
⇒上場会社に求められ、従前の業務監査・会計監査を主体とした 内部監査に内部統制評価におけるモニタリング機能を追加。
⇒内部統制の整備・運用状況を検討、評価し、必要に応じて、その改善を促す。




16IFRS16号:リースの条件変更

不動産リースにおいては下記の条件変更が行われる可能性がある。
・範囲の増加
・期間の延長
・対価の変更

■範囲の増加
オフィススペースの拡張(同じビルの別フロアを借りる等)の場合、拡張スペースのリース料が独立価格で決まっている場合は、
拡張スペースを新たなリースとして会計処理する
⇛新たなリース資産(使用権)として会計処理する
⇛当初の契約は調整しない。

■期間の延長、対価の変更
契約期間を延長した場合、当初契約の契約満了日ではなく、契約期間延長に合意したタイミングで会計処理をすすめる
対価の変更時はリース料の支払時ではなく、対価の変更に合意したタイミングで会計処理をすすめる
⇛両方とも条件変更前後のリース債務の差額分、使用権資産の調整をする(損益は生じない)











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