2018年5月27日日曜日

6/8 勉強会:インターネットベットによる払戻金は一時所得に該当 他

1.貸室工事代金の一部を必要経費と認める

■前提
・納税者:不動産貸付業を営む個人
・本件会社:納税者とその妻が取締役の不動産管理会社
・賃貸管理委託契約書:「現状回復工事を含むリフォーム工事」を業務委託する旨の明示的な記載がない

■納税者の処理
・賃貸管理委託契約に基づく貸室リフォーム代金として、
 H22年分264万円、H23年分200万円を不動産所得の必要経費に算入した。

■課税当局の主張
・貸付リフォームは委託業務に含まれておらず、本件会社は当然に納税者所有物件のリフォーム工事等を行う義務は負わない。
・よって、納税者は貸室リフォーム代金を必要経費に算入できない。

■東京地裁の判断
・本件会社が行ったリフォーム工事は納税者との合意に基づき行われ、かつ、
リフォーム工事の都度その費用が納税者に請求されていたものと推認することが相当である。
・よって、支払債務が確定し、工事等の実施が発生し、金額を合理的に算定することができる部分については
必要経費に算入できると判断した。




2.プロデュース社の粉飾決算めぐり監査法人に約6億円の賠償命じる

■概要
・プロデュース社(2008年10月27日上場廃止)における粉飾決算訴訟
・社長、粉飾指南した会計士は実刑
・上場前から粉飾。粉飾時の監査法人がその後吸収合併により消滅
・株価:粉飾発覚直前33.4万円→最終取引日305円(下落率99.91%)
・吸収合併した監査法人に対し損害賠償を求める株主訴訟を提起
・東京地裁:株主らの訴えを棄却
・東京高裁:株主らの訴えを支持。監査法人に約6億円の損害賠償を命じた

■争点
・監査法人に免責を認める余地
⇒無過失を主張していたが、粉飾時の監査法人の代表社員=故意であることは明らか
⇒なし
・株主が受けた損害額
⇒取得株価全額(対象会社は破産手続開始決定を受けているため、株の評価額はゼロ。市況の変化による下落分=無視してよいほど微々たるものと推認)






3.インターネットベットによる払戻金は一時所得に該当

■事例
・インターネットを介して行う賭け(主にスポーツ試合を対象)により得た払戻金が一時所得、雑所得のどちらに該当するか?

■内容
・納税者は数年にわたり、1年間に300日以上ベットを行っていた
・1日の最大ベット数は55回
・各ブックメーカーのウェブサイトや一般報道情報を基に、金額等を個別に判断していた
・各年分のすべての年分において収支が損失であり、毎年損失額は増加していた

■結果
・賭けにより得た払戻金は一時所得に該当と判断
・報酬ポイント(賭け業者との取引金額に応じて付与される)を現金に引き換えた収入についても一時所得に該当と判断
(論拠)
・負けているため「営利を目的とする継続的行為」とはいえない
・独自の条件設定と計算式に基づいた賭けではなく、賭け方に偶然の要素が強く、継続的かつ確実に利益を上げることは困難
・報酬ポイントには有効期限があり、現金に引き換えるかは不確定であり、「営利を目的とする継続的行為」とはいえない
⇒「営利を目的とする継続的行為」といえないので雑所得には当たらない






4.1億円以上の仮想通貨収入は331人

【国税庁の公表】
公的年金等以外で雑所得に係る収入金額が1億円以上ある人数は549人(前年は238人)
このうち仮想通貨取引によるものと判別できた人数は331人

【平成29年の確定申告、前年との比較】
申告者数:2,198万人(前年比+1.3%) / 所得金額:41兆4,298億円(前年比+3.4%)
納税額:3兆2,037億円(前年比+4.6%) / 所得金額1億円超の申告者:23,093人(申告者数の0.1%)

■セルフメディケーション税制
医療費控除の適用を受けた人数:750万人(前年比+3.6%) (うちセルフメディケーション税制適用者2.6万人)

■その他
・マイナンバー記載率:所得税83.5%、贈与税82.1%



5.企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等の公表について

■特定の状況または取引における取扱い
収益認識に関する会計基準等では、11の特定の状況または取引について適用される指針を定められている。主なものを1つ紹介する。

■本人と代理人の区分
→企業が取引の本人に該当する場合には収益費用を総額表示、代理人に該当する場合には収益費用を純額表示する。
→本人か代理人かの判断基準は、顧客に財又はサービスを移転する前に、企業が当該財又はサービスを支配しているかどうかにより、判断される。
→支配しているかどうかは、約束の履行に主たる責任を有しているか、在庫リスクを有しているか、価格設定について裁量権を有しているか等により判断する。
→支配していると判断された場合は、財又はサービスを自ら提供しているとし、本人に該当し、支配していない場合には、他の当事者による財又はサービスの提供を手配するのみのため代理人に該当する。







6.今週の専門用語

■実務対応報告第18号の改正案
国際財務報告基準(IFRS)第9号「金融商品」を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合、連結決算手続上、当該資本性金融商品の売却損益相当額及び減損損失相当額を当期の損益として修正すること。
・適用時期
平成31年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する。早期適用も可能。また、平成32年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用することも容認しているが、その場合はその旨の注記が必要になる。

■有価証券報告書の虚偽記載(金商法違反)
重要な事項につき虚偽記載のある有価証券報告書を提出した物
個人・・・10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(またはその両方
法人・・・7億円以下の罰金

■特例承継計画
事業承継税制の適用を受けるために提出が必要になる計画書。
・提出期限は平成30年4月1日から平成35年3月31日までに都道府県庁に提出。
・国の認定を受けた「認定支援機関」の指導及び助言を記載する必要がある。
・計画書に記載された特例後継者でも、まだ株式の贈与等を受けていない者であれば、その後の変更申請により変更することが可能。




7.賃上げ・設備投資促進税制 おさらい

■適用要件
①賃金要件1
⇒継続雇用者給与等支給額が対前年度比3%以上増加(中小は1.5%以上増加)
なお、「継続雇用者」とは「前期と当期の各月すべてに給与等の支給を受けた
国内雇用者(一般被保険者のみ)をいう。

②賃金要件2
⇒雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超えていること
なお、改正前は「要件」として規定されていたが、改正後は「前提」
という扱いになっている。

■控除額
雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超える金額×15%
なお、いわゆる「基準期間」の雇用者給与等支給額は計算の要素から除外されることに
なった。







8.有価証券等の譲渡にかかる内外判定が改正

H30年度税制改正で、
有価証券等を譲渡した場合における消費税の内外判定の基準が改正

■有価証券の譲渡に伴う内外判定
・従来
⇒有価証券が所在していた場所で判定
・改正後
⇒振替機関等の所在地で判定。
※株券等の電子化(無券面化)に伴い、
券面のない有価証券等は所在場所がないため内外判定ができなかったため。

■改正後の有価証券等に係る内外判定
(1)振替機関等が取扱う有価証券又は権利がある
⇒YES:振替機関等の所在地で判定(例:上場株式、債券など)
⇒NO:(2)へ
(2)券面の発行が有価証券である
⇒YES:有価証券が所在していた場所で判定(例:非上場株式)
⇒NO:権利または持ち分に係る法人の本店又は主たる事務所の所在地で判定(例:出資者に係る権利など)





政策保有株式の縮減

・取引先の株式を互いに持ち合うことで、経営の安定化を図る政策保有株式
 ⇒近年は縮減の方向「公正な競争を妨げている」
・縮減をめぐって会社と株主とで意見が対立する事例あり。
 ソレキア(JASDAQ上場)は
  株主:政策保有株式すべての売却を止める
  会社:現状維持
  ⇒「安定的・長期的な取引関係の構築等の観点から、中長期的な企業価値向上等に資すると判断している」とコメント





10.2018年4月IASBの審議状況 のれん

・現行基準では企業結合時に識別可能な無形資産の認識を要求
⇒無形資産の識別にはコストがかかるという指摘あり
⇒耐用年数を確定出来ない無形資産をのれんに含める(=識別しない)ことが提案
⇒ただしのれんに他の無形資産も含まれるため、のれんの中身がブラックボックステスト化する懸念も
⇒結果、一部の無形資産をのれんに含める検討は今後継続しないことが支持された





11.在外子会社・関連会社

■円換算方法
・資産および負債=決算時の為替相場
・株主資本項目/その他の包括利益累計額
 (1)株式取得時の項目=株式取得時の為替相場
 (2)株式取得後に生じた項目=発生時の為替相場
・新株予約権=発生時の為替相場
※ただし、新株予約権に係る為替換算調整勘定は、新株予約権に含めて表示
 よって結果的には、決算時の為替相場で換算した結果と同じ
・収益および費用
 (1)親会社との取引以外=原則:期中平均相場、例外:決算時の為替相場
 (2)親会社との取引=親会社が換算に用いる為替相場
  ※この場合に生じる差額については、当期の為替差損益として処理
■資本連結の取り扱い
・在外子会社の投資と資本の相殺消去の結果生じたのれん
=原則:支配獲得時(みなし取得日を用いる場合には当該みなし取得日)に外国通貨で把握
 のれんの期末残高:決算時の為替相場にて換算、のれんの償却額:原則期中平均相場にて換算
※ここで生じた為替換算調整勘定は被支配株主持分への振替処理は行わない







12有償ストックオプションを付与する場合に適用する会計基準についての制度見直し

■従来
以下のどちらの基準を適用すべきか不明確だった
(1)ストックオプション等に関する会計基準(以下、SO基準)
(2)複合金融商品適用指針
⇒実務上は(2)を採用する会社が多かった(費用負担がないため)。

■制度見直し
平成30年4月1日以後に従業員等に有償SOを付与する場合の取扱いが決定
⇒基本的にはSO基準を適用
⇒SOが従業員等から受けたサービスの対価として用いられないことを立証可能なら、SO基準を適用





13.6つの原則で事前に防ぐ「不祥事予防のプリンシプル」のポイント

不祥事がまれな事象でなくなった現状において、上場会社で不祥事の発生そのものを予防する取り組みが実効性をもって進められる必要性が高まっている。
不祥事予防のプリンシプルには原則1から6が挙げられている。

1.実を伴った実態把握
⇒自社のコンプライアンス状況を正確に把握する
⇒現場のレポートや内部通報等による情報が経営陣に確実に連携される必要がある

2.使命感に裏付けられた職責の全う
⇒コンプラ違反発覚時は、責任の所在を明確化し的確に対処することが求められる。
⇒監査・監督機関には経営陣の選任/解任プロセスに関わる権限もあるため、使命感をもって対処する必要がある

3.双方向のコミュニケーション
⇒現場と経営陣とがコンプライアンス意識を共有するためにも、中間管理職の意識と行動が極めて重要である。

4.不正の芽と察知と機敏な対処
⇒不正の芽は常に存在しているという前提にたち、コンプライアンス違反を早期に把握する
⇒一方的な押し付けには留意

5.グループ全体を貫く経営管理
⇒近時の不祥事は親会社本体ではなく、グループ会社で起きることが多いため、子会社/孫会社をカバーする監査機能が求められる。

6.サプライチェーンを展望した責任感
⇒仕入先/販売先でコンプライアンス問題が発生した場合、当事者意識をもって対応することが求められる
⇒仕入先/販売先の業務状況をモニタリングすることも重要である。






14.慰安旅行における福利厚生費と交際費の判断基準

■裁判事例
・日帰り慰安旅行
・年に1回、全従業員を対象に開催
・飲食代は、1人当たり12,000円
・その他コンサート等の費用を含めた支出総額は、約2,700万円(1人当たり約28,000円)
⇒当該慰安行事は福利厚生費として損金算入が認められるか。

■判断要素
 以下を要素を総合して、社会通念上一般的か判断。
・当該法人の規模、事業状況等
・行事の目的、参加者の構成、開催頻度、内容、参加者1人当たりの費用等

■裁判所の判断
 交際費等には該当せず、福利厚生費として全額損金算入できると判断。
⇒判断ポイント
 ・経緯や目的について、経営難から再建した経緯を踏まえ、従業員に感謝を伝えるとともに、
  従業員の一体感、労働意欲の向上させることにあったことを認定
 ・女性社員割合が多く、全員参加が可能な慰安旅行として、日帰り旅行にせざるを得ない状況を認定
 ・慰安目的を達成するために、質や等級を上げ、非日常的な要素が含まれているのが通常と判断
 ・上記等を踏まえ、頻度や金額に対しても社会通念上一般的と判断

■税務調査対策
 どのような経緯・目的で慰安旅行を開催するのかを証拠として残すことが重要
⇒具体的な対策
 ・検討、協議過程を議事録に残す
 ・開催経緯や目的等を開催案内文書やメール、社内掲示板等に残す 等






15.新規事業開発に対する、投資段階での事業価値評価と参入方法・資金調達の検討

■概要
事業開発の成功確率を上げるために、投資決定段階でどのような点に留意して評価を行うべきか、また事業価値評価を行う際の基本的な事項と留意点について考察。

■事業計画策定の際の6つの問い
(1)その事業に取り組む意義があるか(戦略との整合性)
(2)顧客を獲得できるか(市場の成長性・規模、既存事業と比較した際の新規性、競合他社との差別性)
(3)儲かるのか(利益率・額、投資額)
(4)本当に実現できるのか(実行組織、誰がやるか、ビジネスモデル・事業計画、事業成立に不可欠な要素、撤退基準)
(5)自社の強みは活かせるか(自社の強み)
(6)簡単に真似ができないか(参入障壁)

■6つの問いに対する考慮事項
・(1)について
⇒自社の指名・ビジョン・戦略と整合しているか。会社の衰退期には、事業に対する価値判断そのものを見直すこともあり。
・(2)について
⇒誰に、何の価値を、なぜ当社から購入してもらうのか。
・(3)~(6)については、以下の3つを考慮して検討を行う。
キャッシュ・フロー・シミュレーションによる事業価値評価
 →DCF法(割引現在価値法)が最も多く利用されている。中でもNPV法(正味現在価値法)が主流。状況に応じて、回収期間法、IRR法などの他のNPV法を組み合わせて検討を行う。
  割引率はWACC(加重平均資本コスト)を用いる。
参入方法
 →本格的な参入方法として、自社開発とM&Aが重要な選択肢となる。前者は事業開発に必要な資源取得のための費用がかかる。後者は買収費用、デューデリジェンス費用、M&Aアドバイザリー費用、買収後の統合費用(PMI)等の費用がかかることに留意。
資金調達
 →自己資本や借入等について、最適資本構成を考慮して資金調達を行う。









16.・デロイト トーマツ コンサルティングが、日本企業の海外M&Aに関する意識・実態調査を行い、調査結果を公表。

・2017年10月~12月に経団連加盟企業を中心とした約1,360社にアンケートを実施。有効回答数145。

・調査結果によると、海外M&Aについて、「成功」と回答した割合は37%、「失敗」は21%。

・経営トップの関与度合いが、成功企業と失敗企業で大きく異なる結果に。

・「その場で意思決定を行える会議体を有し、スピーディに意思決定を行っていた」
 ⇒ 成功企業では79%が「強くそう思う」または「そう思う」
  失敗企業では31%

・「必要な知識・情報を収集し、主体的にM&Aに取り組んでいた」
 ⇒ 成功企業では86%が「強くそう思う」または「そう思う」
  失敗企業では38%







16.上場廃止基準(マザーズ)

主に以下に抵触すると上場廃止となる。
・株主数⇒400人未満(上場後10年間は150人未満)
・流通株式数⇒2,000単位未満(上場後10年間は1,000単位未満)
・流通株式時価総額⇒5億円未満(上場後10年間は2.5億円未満)
・流通株式比率⇒5%未満
・直近1年間の売上高⇒1億円未満
・時価総額⇒10億円未満となった場合で、9か月以内に10億円以上にならないとき
・債務超過⇒1年以内に解消すればOK
・有報等の提出遅延⇒法定提出期限の経過後1か月以内に提出しない場合
・虚偽記載又は不適正意見
・その他⇒銀行取引の停止、破産手続 ・再生手続・更生手続、完全子会社化など



















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2018年5月20日日曜日

5/18 勉強会:仮想通貨における相続時の課税関係が判明 他

1.退職者を被保険者とする支払保険料も損金算入可

■法人
・社内規程(がん規程)に基づく従業員に対する福利厚生の一環として、
法人を契約書及び受取人、従業員(退職者を含む)を被保険者とする終身がん保険契約を締結した。
・法人税確定申告の際に、がん保険に係る支払保険料を損金に算入した。
※がん規程の内容:退職後5年間、退職者ががんになった場合に、退職者に見舞金または弔慰金を支払う。
※終身がん保険契約の内容:掛け捨てであり満期返戻金はない。解約の場合は解約返戻金あり。

■課税当局
・退職した従業員を被保険者とするがん保険に係る支払保険料は業務関連性が認めれられないとし、
損金不算入とする課税処分を行った。

■国税不服審判所の裁決(平成29年12月12日)
・退職した従業員に係る支払保険料を損金不算入とした課税処分を取り消した。
⇒本件のがん保険契約は、従業員の福利厚生を目的とし、治療費補助等制度に基づく見舞金または弔慰金の原資とするために締結されたものであると認定。
⇒退職者支払保険料は納税者の業務との関連性を有し、業務の遂行上必要と認められるため損金に算入できるとした。





2.実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」について

■仮想通貨の期末評価
・売買目的有価証券の評価に近い考え方
・活発な市場が存在するかどうか
⇒存在する:時価評価/存在しない:取得原価評価
(活発な市場の要件)
・継続的に価格情報が提供される取引所
・十分な数量、頻度で取引
・売手と買手の希望価格が著しく離れていない

■仮想通貨の売買損益の認識時点
・売買の合意が成立した時点

■開示
・売買損益はPL上純額表示
・注記(仮想通貨利用者を想定)
(1) 期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額
(2) 期末日において保有する仮想通貨について、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の別に、仮想通貨の種類ごとの保有数量及び貸借対照表価額

■適用時期
・2018年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用
・早期適用も可能
⇒最短は2018年3月期決算での適用が可能
(この5月上旬にIRされた会社の中にも適用しているところがあるかも…)





3.仮想通貨における相続時の課税関係が判明

■相続税法上の取り扱い
・仮想通貨は課税対象
⇒相続税法上、経済的価値のある財産を相続した場合、相続税の課税対象となる
⇒仮想通貨は資金決済法で財産的価値があると規定されている

■相続人がパスワードを知らない場合
・仮想通貨は課税対象
⇒真偽の判定が難しい
⇒課税しないのは課税の公平性の観点から問題あり

■取得費加算の特例※
・適用するかどうかは検討中
⇒土地や株式の譲渡による所得は譲渡所得に区分されるが、仮想通貨は雑所得に該当するため
※相続した土地や株式などを3年以内に譲渡する際には相続税額を資産の取得費に加算することができる制度





4.相続開始前の預金引き出しは隠ぺいと認定

■概要
・平成24年に死亡した母(亡母)の唯一の相続人が相続開始前に亡母名義の口座から5,180万円引出
・医療費や療養施設への支払(約300万円)をする一方で、1,070万円を相続人の預金口座に入金
・残りの3,810万円を現金の金庫内に保管
⇒納税者名義口座への入金額1,070万円+自宅保管現金3,810万円=4,880万円
を相続財産として申告していなかったとして、重加算税を含む課税処分を行った。

■納税者の主張
・亡母名義口座の預貯金は、平成19年に亡くなった父の未分割の相続財産(納税者のもの)である

■東京地裁の判決 ⇒ 納税者側の敗訴
・預貯金の名義は亡母であり、固有の財産である年金の入金があった
・亡母名義の国債の償還、利息の入金があった
・預貯金口座の通帳、カードは亡母自らが管理していた
⇒預貯金等は全て亡母に帰属すると判断。

■隠ぺいと認定した理由
・預貯金は相続財産になると知っていて、申告する必要があると認識していた(意図有り)
・相続開始前に亡母の医療費などの支払を大幅に上回る現金を引出した(特段の行動)
⇒重加算税の処分は適法と判断





5.税負担20%以上でも経済活動基準判定

■平成30年改正でCFC税制に導入されたキャピタルゲイン特例
→譲渡された株式を「内国法人や内国法人に係る部分対象外国関係会社」に再移転する場合には適用あり
→同特例の適用局面では、制度適用基準は関係ない点に注意
→外国関係会社の租税負担割合が20%以上、さらには30%以上でも、経済活動基準の適合性判定必要





6.福利厚生費と交際費等との区分

交際費⇒得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対する、接待、供応、慰安、贈答な
どの行為の為に支出する費用。
・交際費に該当する金額は一人、5,000円以上(会議費との区別する目安の金額)
・接待時の送迎のタクシー代を自社で負担した場合、金額に関係なく交際費となる・
・お土産代

福利厚生費⇒従業員の福利厚生のための費用。従業員に公平に支給される給料以外の費用。
・金額は常識の範囲内
・従業員の慰安のために行わる運動会、新年会、旅行など
・従業員等またはその親族等のお祝いやご不幸などに際して、一定の基準に従って支給さ
れる金品に要する費用。




7.東京高裁 役員退職金の過大判定で国が逆転勝訴

原審の「平均功績倍率×1.5」基準が2審で排斥された裁判

■判示内容
・功労加算は極めて特殊な事情がある場合に限り考慮すべき
⇒特殊な事情があれば平均功績倍率に加え功労加算を考慮するという点を
裁判所が認めた格好

・最終報酬月額には既に「功労加算」が反映されていると考えられる
⇒よって平均功績倍率をさらに1.5倍等する必要はない

・平均功績倍率を超える数値を採用する類似法人があっても合理的
⇒平均値を用いることの合理性を支持しており類似法人に平均値を超える
倍率を採用する法人がいても問題はない






8.近年は消費税も税務調査の重点項目に

消費税に係る税務調査は法人税の調査に付随して行われていたが、
近年は消費税をメインとする税務調査も行われている

主な調査箇所の
・個別対応方式を採用している企業に対し、
「課のみ」、「非のみ」、「共通」の区分が適否であるか。
・課税仕入れにかかる取引契約書等の内容より用途区分に誤りがあるか否か。




将来CF等の「割引率」の決定

(1)固定資産の減損損失の「測定」における使用価値の算定
・将来CFが見積値から乖離するリスクについて
 ⇒将来CFで調整か割引率で調整かの両方の方法あり
 ⇒将来CFが税前概念なので割引率も税前概念で
 将来CFで調整:国債利回り
 割引率で調整 :以下を総合判断して採用
   ①資産に固有の収益率(社内ハードルレート等)
   ②資本コスト(WACC)
   ③市場平均の収益率(類似物件の還元利回り等から推計)
   ④ノンリコースローンの借入利率

(2)リース料総額の現在価値の算定
 「貸手の計算利子率」を知りうる場合⇒当該利率
 「貸手の計算利子率」を知りえない場合
 ⇒借手の追加借入に適用される利率
  ※新規長期借入の利率、リース期間と同一期間のスワップ・レートに借手の信用スプレッドを加えたレート

(3)資産除去債務の算定
 ・貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率
 ※将来CFが発生するまでの期間の国債利回り等。

(4)退職給付債務
・期末における安全性の高い債券の利回り
・退職給付支払ごとの支払見込期間を反映させる
・各事業年度で見直し

(5)貸倒懸念債券の貸倒見積高
 ・債券の発生当初の約定利子率または取得当初の実効利子率
 ・実効利子率=“CFの現在価値=債権の取得価額”となる利率





10.あずさ、新日本、トーマツ、PwCあらたの4大法人が、監査先企業の取引状況をオンラインで確認するシステムを共同開発(4法人で日本の上場企業約3600社の7割超の監査を担当)。


・あずさ、新日本、トーマツ、PwCあらたの4大法人が、監査先企業の取引状況をオンラインで確認するシステムを共同開発(4法人で日本の上場企業約3600社の7割超の監査を担当)。

・日本の大手法人が監査業務の共通化に踏み切るのは初めてで、世界でも例がない試み。

・確認を郵送ではなく、企業が金額をオンライン入力する方法を検討。監査する側、される側ともに決算に関わる負担を軽くする。

・重要だが、差別化の必要がない作業は業界で共通化し、各法人が不正会計のチェックや仮想通貨など新分野への対応に経営資源を集中させる狙いがある。

・今後、共同出資会社の設立などを経て、早ければ2年後をメドにシステムを稼働させる。

・共同システム稼働後は、中小監査法人や個人の会計事務所の参加も想定。





11.従業員持株会

1.概要
・従業員から会員を募り、給与から天引きされた拠出金によって株式を共同購入
・会員の拠出額に応じて持分を配分

2.運営上の留意点
(1)設立時期
株価が低い上場準備の初期段階で設立することが有利

(2)運営方式
多くは証券会社に委託(組合方式)

(3)会員の範囲
自社従業員○、子会社(50%超保有)従業員○
関連会社×、役員×

(4)株式の割当て
上場前は、既存株主からの移動、第三者割当増資などの資本政策を考慮し、計画的に行う必要がある。

(5)非弾力性
ストックオプションのような個人の貢献度に応じた弾力的な調整ができない。

(6)金商法との関連
株主数を一人株主とするため、以下の要件が必要。
・株主名簿に持株会の理事長名義で登録
・議決権行使は持株会の理事長が行使
・配当金は持株会でプールし、株式購入資金として再投資する仕組みとする。

(7)株価
一般的に、未上場会社の従業員持株会での株式移動価格は、
配当還元価額方式あるいは他の方式との併用による低廉な株価を採用。























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