2017年12月24日日曜日

12/22  勉強会:給与所得控除、給与収入850万円で上限 他

1.固定資産税の負担調整措置等は存続

■現状の商業地等の固定資産税について
・負担水準(=前年度の課税標準額÷今年度の評価額)をもとに、今年度の課税標準額を決定
・3年に1度の固定資産税の評価替えによる価格の上昇に伴う税負担を調整する措置あり
⇒負担水準70%以上=今年度の評価額の70%に引き下げ
 60%以上70%未満=前年度課税標準額と同額に据え置き

■平成30年度税制改正
・商業地等に係る固定資産税の負担調整措置等がH33年3月31日まで延長
・土地等の取得に係る不動産取得税の税率の特例なども3年間延長
⇒これまでの負担調整措置が存続


2.不動産販売取引は収益認識会計の対象

・「収益認識に関する会計基準(案)」では、「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」の対象となる不動産の譲渡に係る会計処理は、連結の範囲等の検討と関連する為、同会計基準の適用範囲外としている。

・不動産販売を主たる事業としている企業が営業目的で不動産を投資信託又は投資法人に売却する場合、不動産流動化実務指針が適用されない営業目的の不動産の売却である為、収益認識会計基準の適用範囲に含まれる。

・不動産販売を主たる事業としている企業が不動産賃貸業も行っており、当該賃貸不動産を固定資産として保有し売却する場合、企業の通常の営業活動ではない不動産の売却であり、顧客との契約ではない為、収益認識会計基準の適用範囲に含まれない。


3.紙の特別徴収義務者用通知、個人番号記載なし

個人住民税の特別徴収義務者用(会社保管のもの)につき、個人番号を記載するか否か検討されている。

・eLTAXで通知される場合
⇒個人番号が記載される(地方税法で規定)
・紙ベースで郵送される場合
⇒個人番号は記載されない

現状、電子(eLTAX)の利用状況が乏しい。
紙ベースで通知される場合、企業の守秘・保管コスト等を考慮して個人番号の記載が不要とされた


4.給与所得控除、給与収入850万円で上限

■30年度改正
・給与所得控除と公的年金等控除を10万円減額
・基礎控除を10万円引き上げ(38万円⇒48万円)
・基礎控除は合計所得が2400万円超から金額を逓減させ、2500万円超は適用なし
・給与所得控除の上限の見直し※
(年収1000万円超は220万円が上限⇒年収850万円超は195万円が上限)
※22歳以下の子どもがいる子育て世帯や要介護3以上の高齢者等がいる介護世帯には適用なし
・青色申告特別控除を10万円引き下げ(65万円⇒55万円)ただし電子申告すれば10万円上乗せ

■適用
平成32年以後の所得税に適用

■影響
・年収850万円以下のサラリーマンには影響なし
・年収1000万円の会社員は、年間4.5万円の増税
・個人事業主で所得が2400万円超の場合は増税
・青色申告事業者が電子申告した場合、控除額が10万円UP


5.平成30年度税制改正の全容

1.生産性革命税制(賃上げ。生産性向上のための税制)
○対象企業:大企業
 中小企業は適用対象外とされた

○適用条件(下記の①と②を満たすこと。従来の所得拡大促進税制の要件が緩和)
平均給与等支給額が前年度比の3%以上
税額控除の要件とされている「基準年度」という考えが廃止され、前年との比較に変更される。
② 国内設備投資額が減価償却費の90%以上
 「損金経理した」減価償却費であり、「国内設備投資」は建物やソフトウェアも入る見込み。

○税額控除
 税額の20%を限度として、給与支給総額の対前年度増加額の15%(下記の要件満たせば20%)
 一定の教育訓練費の増加を要件に控除率を20%にアップする。

2.IoT投資減税
□対象企業:すべての法人

□適用条件
生産性向上実現のための臨時措置法(仮称)の要件を満たすものとして認定された計画に基づく投資
 (※臨時措置法は来年度の通常国会での立法が予定されている為、仮称となっている)
 認定されるための要件:①社内におけるデータ連携やセキュリティへの投資、②生産性向上目標の達成
 労働生産性:年平均の伸び率2%以上、投資利益率:年平均15%以上の達成または達成見込み

□税額控除
 該当する投資した資産につき30%の特別償却または3%の税額控除(賃上げ3%以上達成で5%に増加)
 ※但し、最低投資額の合計が5,000万円以上であること。

3.ムチ税制(下記の要件をすべて満たした場合、税額控除の適用が停止)
●対象企業:大企業のみ
中小企業は適用対象外とされた

●適用条件
①平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額以下
国内設備投資額が減価償却費の10%以下
 ※①、②を満たしても所得金額が前事業年度以下の場合は適用対象外となる。

●措置の内容
 一部の租税特別措置法の適用を停止する。
 上記の適用を停止される特別措置法は具体的に決定されていないが、研究開発税制、地域未来投資促進税制、IoT投資減税が適用停止の対象になるのではないかとされている。


6.グループ法人税制留意点 寄付金の損金不算入

■寄付金の損金不算入、受贈益の益金不算入とは
100%グループ内において、寄付をした法人側で寄付金を全額損金不算入とし、寄付を受けた法人側で受贈益を全額益金不算入とする制度

■留意点
・法人による完全支配関係がある場合のみ適用
⇒個人による完全支配関係の場合には適用なし

(例)
個人AがB社とC社の100%株主である場合に、B社がC社に贈与をするとC社の受贈益は全額課税される

・寄付修正が必要(別表で調整)
グループ内で寄付金の損金不算入(受贈益の益金不算入)取引が行われた場合、その株主法人はそれぞれの子会社株式の帳簿価額を修正しなければならない
⇒寄付の当事者ではない株主法人側で調整が必要なため調整もれしやすい

・税務上の帳簿価額がマイナスになることもある
⇒親法人における帳簿価額を超える金額の贈与があった場合には上記寄付修正により税務上の帳簿価額がマイナスになる(ゼロ限度ではない)ので注意


7.熊本不服審判所 議決権行使の状況から類似業種比準方式を適用すると判断-納税者の配当還元方式が適用できるとの主張を棄却

■事案
納税者の父が死亡
納税者及びその同族関係者(請求人グループ)が取引相場の無い株式を相続
⇒配当還元で評価
請求人グループの議決権割合30.12%
経営者グループ26.20%
X 29.24%

■請求人の主張
Xは経営者グループに属する者の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者と認められる
⇒経営者グループは50%超となり、請求人グループは同族株主以外の株主に該当し、取得した株式の評価は配当還元方式が採用される

■審判所の判断
Xは以下より経営者グループの同族関係者には当たらない
したがって、原則的評価で類似業種比準方式が採用
1.経営者グループやその関連法人と相互に株式を保有していない
2.議決権行使に当たり、社内で稟議書の決裁を了した後、その決裁内容に従い議決権を行使している
3.経営者グループの意思と同一の内容の議決権を行使するとの契約又は合意をしていない
4.経営者グループに属する者に対する白紙委任を行った事実はないこと


8.政策保有株式の開示

・企業間で持ち合う株式に関しては、有価証券報告書とコーポレートガバナンス報告書において次の情報開示が求められている
・全体の銘柄数および貸借対照表計上額の合計額(有報)
・資本金の1%超または上位30銘柄に係る銘柄、株式数、計上額、保有目的(有報)
・政策保有に関する方針等(CG報告書)
⇒政策保有株式はかねてより一般株主との利益相反(株主総会の形骸化)が起きやすいとして縮減が進められてきた。
※保有目的については「取引関係の維持・強化のため」等の抽象的な理由を記載することが多い


9.特別利害関係者等との不動産の賃貸借

(1)特別利害関係者等と申請会社との間で不動産の賃貸借取引が行われている場合、原則として上場前に当該取引を解消することが必要である。
ただし、以下の諸条件をすべて満たす場合は、取引の継続が認められることもある。

1.当該不動産が、生産設備及び営業用設備等、申請会社の主要施設に係るものではなく、重要性が乏しいと判断されるものであること。
2.当該不動産の価格が比較的高額で、資金的な面から、早期に申請会社または特別利害関係者等が買い取ることが困難な状況にあること、または解消することに経済的合理性がないこと。
3.適当な代替物件がないこと。
4.取引条件が不動産鑑定士の評価または近隣の類似物件の相場に基づく等、適正と判断されるものであること。

上記の点においては、証券会社等を交えて事前に十分に検討しておく必要がある。









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2017年12月16日土曜日

12/15 勉強会:仮想通貨、帳簿価額との差額は当期損益 他

1.「仮想通貨、帳簿価額との差額は当期損益」

■ASBJは実務対応報告公開草案「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取り扱い(案)」を決定
・H30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用(早期適用可)
(活発な市場が存在する場合)
⇒市場価額に基づく価額をもってBS価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益とする(活発な市場が存在しない場合)
⇒取得原価をもってBS価額とし、取得原価と処分見込価額との差額は当期の損失とする
※市場価額=仮想通貨の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は販売所における取引価額

(売却取引を行う場合)
⇒売却収入-売却原価=PL表示する

(注記)
(1)期末日に保有する仮想通貨のBS計上額の合計額
(2)預託者から預かっている仮想通貨のBS計上額の合計額
(3)期末日に保有する仮想通貨について、活発な市場が存在する仮想通貨と存在しない仮想通貨の別に、仮想通貨の種類ごとの保有数量及びBS価額



2.収益認識、連結のみの先行適用は不可

・ASBJが検討している「収益認識に関する会計基準(案)」は、平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用(平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用可能)
・収益認識会計基準は、基本的に連結F/Sと個別F/Sにおいて同一の会計処理を定めることとしている為、連結F/Sと個別F/Sで異なる適用時期を設けることは想定されていない

≪マイナス金利、“ゼロ”の利用も当面可能へ≫
・ASBJは、実務対応報告第34号※について平成30年3月31日以後も適用可能とする公開草案を決定
※「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」
・退職給付債務等の計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りが期末においてマイナスとなる場合、当面の間、「利回りの下限としてゼロを利用する方法」と「マイナスの利回りをそのまま利用する方法」のいずれの方法も容認



3.消費税の軽減税率導入でインボイスの政令事項の手当て

H31年10月1日に消費税率が10%へ引き上げ。引き上げに伴う軽減税率制度も導入予定。

■簡易課税制度の見直し
農林水産業のみなし仕入れ率につき、現行70%⇒80%引き上げ

■適格請求書等保存方式の政令事項等の整備
軽減税率の導入に伴い、10%取引に該当するもの、8%取引に該当するものが混同する場合あり。
購入者が納税計算を行うのは大変であるため、販売事業者に対し、区分された税率が記載されたインボイスを作成することを義務付ける方針


4.国税庁、仮想通貨の所得計算方法を示す

・給与所得がある人で仮想通貨に関する所得が20万円以下の場合は確定申告不要

■所得の計算方法
(1)仮想通貨の売却
・4BTCを200万円で購入。0.2BTCを11万円で売却
11万円-(200万円÷4BTC)×0.2=1万円

(2)仮想通貨での商品の購入
・4BTCを200万円で購入。0.3BTCで16万円の商品を購入
16万円-(200万円÷4BTC)×0.3=1万円

(3)仮想通貨と仮想通貨の交換
・4BTCを200万円で購入。1BTCで時価60万円の他の仮想通貨を購入
60万円-(200万円÷4BTC)×1=10万円

(4)仮想通貨の追加取得
・移動平均法を用いる(継続適用を条件に総平均法を用いてもOK)

(5)仮想通貨の分裂
・所得は生じない

(6)仮想通貨に関する所得区分
・原則、雑所得
・仮想通貨による収入により生計を立てていることが客観的に明らかである場合は事業所得

(7)損失の取扱い(通算)
・雑所得以外の所得との通算は不可

(8)仮想通貨の証拠金取引(FX)
・外貨FXのように申告分離制度の適用はなし(総合課税で申告)

(9)マイニング(採掘)による取得
・時価から必要経費を差し引いて計算
・採掘により取得した仮想通貨を売却、使用した場合の取得価額は時価を用いる



5.大企業は電子申告義務化へ

■平成32年4月1日以降から資本金1億円超の法人は国税、地方税とも義務化へ
・当初は31年度からとされていたが、企業の準備期間に配慮している。
・1億円以下の法人は義務なし
・連結納税を採用している場合は連結親法人の資本金が1億円超か否かで決定する。

■義務化の対象となる書類の範囲
・勘定科目内訳明細書:記載内容が簡略化される
・提出データ形式:excelベースのCSVファイルでの提出が認められる。
・PDFファイルの場合:紙原本保存が不要になる(但し一定以上の解像度で保存要件は設けられる)

■その他変更点
・経理責任者の自署押印制度が廃止(電子に限らず、紙申告でも同様)
・電子署名範囲が変更:法人の代表者から委託を受けた当該法人の役員・社員による署名も可能になる。
・サイバー攻撃を受けた場合の宥恕規定:電子申告不能になった場合、紙申告でも可能となる。

■問題点
・企業側は紙申告の文化が根強い場合、承認経路や管理体制の変更が求められる。
・多様化するPCデータに対応が税務署側が対応できるのかどうか。



6.税務の動向 30年度改正案

■所得税改正(案)
基礎控除の引き上げ(38万円⇒48万円)、給与所得控除の引き下げに伴い下記を改正する
・配偶者控除、扶養控除の見直し(合計所得金額38万円以下⇒48万円以下を対象にする)
・配偶者特別控除の見直し(合計所得金額85万円以下⇒95万円以下を対象とする)
・青色申告特別控除の見直し(控除額を65万円⇒55万円にする)
 
■所得拡大税制の改正(案)
・給与等支給増加額基準⇒基準年度方式を廃止し、対前年度比較とする
・給与等支給総額基準⇒変更なし
・平均給与等基準⇒(大企業)前年比2%以上の増加に加え、国内設備投資を行うことを要件とする


7.仮想通貨と法定調書

・法定調書⇒納税者の所得を捕捉する資料情報、税務署への提出が義務付けられている
・仮想通貨⇒現在、法定調書は定められていない
⇒税務当局はその取引で生じた所得を捕捉することができるのか?
・仮想通貨はブロックチェーン(譲渡等の事実が記録された台帳のようなもの)技術を利用。 そのため、その取引内容を調べることができるといわれている
・税務調査等で必要に応じ取引業者等に利用者の情報を求めることも考えられ国税当局が仮想通貨に係る所得を捕捉することは可能と考えられる
・なおアメリカでは、ビットコイン取引など約250の取引に情報報告義務が課せられている


8.仮想通貨の会計処理等に関する当面の取り扱い案

・仮想通貨交換業者:登録制度導入&財務諸表監査が義務付け
①仮想通貨交換業者+仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の処理
・保有する通過に活発な市場が存在する場合
 ⇒“市場価格=時価”で貸借対照表価額とする。簿価との差額はPL認識
・保有する通過に活発な市場が存在しない場合
 ⇒取得原価で貸借対照表価額とする。処分見込価額が簿価を下回る場合は損失認識する。

②仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の処理
・預かったときの時価で資産認識する=同額の負債(返還義務)も認識する
・期末は①と同様に評価替え(資産も負債も同額で評価替えする)


9.企業統合に関する実務論点

■IFRS-企業結合の会計処理の流れ
・すべての企業結合は取得法により会計処理
※IFRS上の企業結合の定義:事業に対する「支配を獲得」すること
・ステップ
(1) 取得企業の識別 ⇒ 被取得企業の「支配を獲得」する企業(平たく言うと親会社になる会社)
(2) 取得日の決定 ⇒ 「支配を獲得」した日
(3) 識別可能取得資産および引受負債の認識及び測定
⇒取得日における資産負債、非支配持分を認識。公正価値で評価
(4) のれん又は廉価取得に係る利得(いわゆる負ののれん)の認識及び測定
⇒取得資産-引受負債-取得対価-非支配持分で算定

■論点1 被取得企業のリストラクチャリング計画が企業結合の会計処理に及ぼす影響
・上記(3)の引受負債の他に「リストラクチャリング負債」を認識
・企業結合の一部とみなされるならのれんに影響。みなされないなら結合後取引として損益に影響
・日本基準で企業結合の一環として負債計上される可能性があるものでもIFRSで別個の取引として処理する結論になることも多いため、要注意

■論点2 条件付対価の会計処理
・例 アーンアウト条項(一定の条件が達成されることを条件に、追加で対価を支払う方法)
・企業結合の一環として処理する条件付対価(のれん処理)なのか、企業結合とは別個の取引(一時の損益)なのか判断する必要あり



10.みなし役員の認定・不認定をめぐる税務上の留意点

■みなし役員とは何か
・相談役、顧問、それに類する者で、経営に従事していると認められるもの
⇒経営に従事しているとは例えば、取締役会等に出席して事業計画の策定や経営に関する重要案件の決定に参画しているかどうかなど

■みなし役員をめぐる税務処理の裁判例
・登記もなく出資もない代表者親族の営業担当者への役員賞与
⇒専ら営業活動の中心となっていたため、みなし役員認定
⇒法人税法上の役員の範囲の認定にあたっては、形式上よりも、その従事する職務の実質に基づき認定すべきとし、みなし役員として認定された


11.IFRS 今期から適用となる基準とアジェンダの決定の概要

■未実現損失に係るDTAの認識
・保有している負債性金融商品の公正価値が市場金利上昇の影響により下落したことによる損失は将来減算一時差異を認識
→元本の回収は税務目的で報告される課税所得を増加も減少もさせないため、元本の回収は非課税事業であり、公正価値が下落しても将来減算一時差異は発生しないという意見もあった
→IASBの審議結果は、報告期間の末日現在の資産の帳簿価額と税務基準額との比較のみに依存
→帳簿価額に生じ得る将来の変動には影響されないという考えのものと、当該未実現損失に対して将来減算一時差異が生じている事を明確化された


12.上場会社の少数株主保護

会社に対する投資判断:会社への信任(⇔非上場会社では経営者に対する個人的信任)
⇒少数株主保護の必要性が大きい

■開示規制
①取引所の規則(上場規程411、施行規則412)
→支配株主等に関する一定事項を開示

②取引所の企業行動規範(12条の2)
→適時開示対象の重要取引に支配株主が関与する場合
→当該取引が少数株主にとって不利益でないとする、第三者意見を入手する義務

③会社法による事業報告開示(施行規則118V)
→RP取引に関する留意事項等を開示

■ガバナンスコードによる規制
①社外取締役の重要性(原則4-7)
→少数株主の支店を企業経営に反映させる役割を担っている

②株主とのコミュニケーション(原則5-2)
→増配請求等の軋轢が生まれないよう、総会以外の場でのコミュニケーションを促進


13.リストラクチャリングに課する実務論点

■IAS37号 - 引当金、偶発負債及び偶発資産
IAS37号では以下の要件を全て満たす場合は引当金を認識しなければならないとされている。

・企業が過去の事象の結果として現在の債務(法的または推定的)を有してる。
・当該債務を決済するために経済的便益を有する資産の流出が必要となる可能性が高い。
・当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である。

但し、必要以上に早期にリストラ引当金が計上されるのを防ぐため、推定的債務がいつ発生したかを判断するためのガイダンスを設けている。

具体的には、期末日に前にリストラ計画が役会承認されていても、公表が期末日後になる場合は期末日時点の推定的債務は発生しておらず、リストラ引当金の認識はできない(後発として開示するか否かの検討は必要)。

費用面では企業の継続的活動と関連がないものに限定される。
従業員の再教育、新システムへの投資:☓
解雇人員への解雇費用、リストラに伴うリース解約費用:○

■IAS36号 - 資産の減損
リストラ計画の役会での意思決定が減損の兆候に該当する場合がある。
リストラにより既存のCGUから新たなCGUを区分して認識するか否かの検討が必要とある。
※CGU = 資金生成単位 = 独立したキャッシュ・インフローを生成する最小の識別可能資産

■IFRS5号 - 売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業
リストラによる非流動性資産や事業の売却をする場合、該当資産等が売却目的で保有する非流動資産及び資産グループに分類するかの検討が必要

14.連結の範囲が変動する場合の表示・開示

(1)経理状況
・連結又は持分法適用の範囲を変更した旨及び理由の表示
・事業年度の末日が親会社の決算日と異なる子会社と連結した場合
⇒内容、連結子会社で仮決算が行われたかの記入
(2)連結株主資本等変動計算書(以下、連結S/S)
・従来から連結S/Sを作成しており、当期にある子会社の重要性が増加した場合
⇒当該子会社の取得後利益剰余金はS/Sの当期の変動に「新規連結に伴う増加」等で表示
(3)連結キャッシュ・フロー計算書(以下、連結C/F)
・非連結子会社を新たに連結した場合の連結開始時点の現金同等物の残高
⇒連結C/Fの「現金及び現金同等物の期首残高」に加算・減算形式で独立表示
⇒新たな会社を連結した場合は、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に「子会社株式の取得による支出」等の科目により表示
(4)連結包括利益計算書
・重要性がなく、連結の範囲に含めていなかった会社を連結範囲に含めた場合
⇒内訳項目の増減額は、連結包括利益計算書のその他の包括利益に含まれない。


15.IPO企業の規模比較

東証の各市場の上場会社規模を比較すると以下の通り。
単位はすべて億円、金額は各市場に上場している会社の中央値。
データは2014年~2016年
(市場)売上高/経常利益/純資産の額/初値時価総額/IPO時のファイナンス規模
(東1)1,074/72/318/882/491
(東2)152/11/45/82/25
(マザ)19/2/5/100/11
(JQS)63/3/13/52/7





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2017年12月9日土曜日

12/8 勉強会:賃上げ+投資に消極的で全租税適用NGも 他

1.有償新株予約権の会計処理が正式決定へ

■ASBJが検討中の実務対応報告「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」がほぼ固まった
・適用時期:平成30年4月1日以後 ※公表日以後の早期適用可
・会計処理
⇒従業員から払い込まれた金額=純資産の部に「新株予約権」
 企業が従業員から取得するサービス=その取得に応じて「費用計上」、権利の行使または失効が確定するまでの間、純資産の部に「新株予約権」
 権利行使され新株を発行した場合=新株予約権計上額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替える
※平成30年4月1日より前に付与したものについては、注記を要件に従来の会計処理を継続できる

・その他
⇒適用初年度において、これまでの会計処理と異なる場合及び注記により従来の会計処理を継続する場合には、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」として取り扱う
⇒遡及適用する場合の新株予約権に対応する払込資本の増加額は「その他資本剰余金」に計上


2.ポイントの未使用残高を未払計上で損金算入は可能か?

■論点
顧客の購入金額に応じて付与するポイントサービスについて、そのポイントに係る未払計上額(未使用残高の増加分)を損金算入出来るか

■審判所の見解
・ポイントを付与された顧客が当該ポイントを使用出来るのは、次回以降の会計時
・付与時において具体的な給付原因となる事実の発生は認められず、使用時において初めて具体的な債務が確定
⇒付与時において法人税基本通達2-2-12(債務の確定の判定)、9-7-3(金品交換費用の未払金の計上)いずれの要件も充足せず損金算入出来ない


3.賃上げ+投資に消極的で全租税適用NGも

H30年度税制改正において、H29年度に適用期限を迎える所得拡大促進税制につき、適用期限延長及び大企業向け限定でバージョンアップした制度が導入される予定

■ポイント
「賃上げ」と「設備投資」に着目
・積極的に行う企業は法人税の負担を引き下げ。
・消極的な企業は全ての措置法の適用が受けられなくなる可能性あり
⇒「大企業向け」の措置。賃上げのみでは×。あくまでも賃上げ+設備投資。

■優遇措置
・法人税率 ⇒ 現状未確定
・賃上げ ⇒3%以上の賃上げ

中小企業は現状の規定が存続される予定


4.仮想通貨の保有数量等を注記へ

■注記内容
<対象>
仮想通貨交換業者が期末日において保有する仮想通貨及び預託者から預かっている仮想通貨
<内容>
(1)貸借対照表価額の合計額
(2)「活発な市場が存在する仮想通貨」と「活発な市場が存在しない仮想通貨」の別に仮想通貨の種類ごとの保有数量及び貸借対照表価額

■理由
・価格変動リスクが外国通貨や金融資産と比べて大きい
・仕組み自体に消失、価値減少リスクが存在
・同じ種類の仮想通貨でも取引所によって価格が異なる
⇒投資家が仮想通貨の単価を把握できるようにするため

■適用
・H30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用
・早期適用も可


5.国家間での相互協議が進まず移転価格税制の処理が長期化

■相互協議が長期化
 相互協議とは、租税条約に適合しない課税を排除する為に条約締結国と解決を図るための手続き
 国税庁の発表によると、28年度の事案発生件数は162件、処理件数が171件となった。
 相手国との合意、納税者への対応が早まっているように見えるが、問題が長期化してしまい処理しきれずに繰越となってしまっている件数が約450件、また1件の処理にかかる期間が伸びているのが現状(24か月以内の処理を目指しているが、実際は28~30ヶ月を要している)

■長期化の原因は?
 国別繰越件数:米国25%、中国20%、韓国9%、インド9%、英国8%
 繰越件数の約4割がアジア圏であり、1件の処理期間も平均で36か月と長期化している
 相手国の経験不足、税務当局の人材不足が主な原因となっている。


6.グループ法人税制 実務の落とし穴 譲渡損益の繰延べ

■譲渡損益の繰延べ
完全支配関係のある内国法人間で譲渡損益調整資産※を譲渡した場合、譲渡法人でその譲渡損益を繰り延べる制度。譲受法人側で譲渡、除却等があった場合に譲渡損益を実現させる。
※固定資産、土地、有価証券等でその帳簿価額が1,000万円以上のもの
 
■ポイント
・帳簿価額:税務上の帳簿価額をいう⇒別表加算がある資産は加算後の金額となる
・棚卸資産は原則除くが、棚卸資産である土地は対象となる
・譲渡対価:時価により譲渡損益を計算する
・完全支配関係があっても外国法人は対象外
・完全支配関係がなくなった場合には譲渡損益を実現させる
・再譲渡先がグループ内であっても譲渡損益を実現させる⇒再譲渡先に制限なし
・100%グループ内の適格合併の場合には合併法人が繰延べられている損益を引き継ぐ


7.国税庁 質疑応答事例を更新し25事例を追加-内1つを紹介

確定申告書の提出期限の延長の特例制度について(原則の期限から最大2ヶ月)
■延長が認められるケースのポイント
・原則
延長を受けるには、定款に定時株主総会の招集時期が記載され2ヶ月を超える旨が明らかであることが必要
また税務署に届出を申請する必要がある

・定款に定時株主総会の招集時期の定めがない場合で、提出期限の延長の特例制度の適用可のケース
※前提として、議決権の基準日を設定する(召集時期は未設定)、定款変更が行われているケース
⇒議決権行使の基準日を定めた場合、基準日から3カ月以内に議決権行使
⇒3月決算法人が5月31日を基準日とした場合、総会は2ヶ月を超えることになる

1.定款変更議案の株主総会参考書類の「提案の理由」として事業年度終了後3カ月後に定時株主総会を招集することが記載
2. コーポレートガバナンス報告書の「集中日を回避した株主総会の設定」欄に事業年度終了後3カ月後に定時株主総会を招集することが記載
3.その他変更後の定時総会の招集月が明らかとなる書類(招集時期の変更を決議した取締役会の議事録など)が確認できる


8.適時開示

・上場会社はTDnetの「適時開示情報閲覧サービス」や自社のWebサイトで様々な情報を開示している
・主にPDF形式でアップされている
・開示する前にPDFファイルの「文章のプロパティ」に注意したい
・開示の内容とは無関係な情報が含まれたままアップされている例が散見された
・Web上で公開する前にプロパティ情報の確認が必要。


9.クロージング・PMI段階での留意ポイント

■クロージング段階における留意点
・第三者からの差止めリスク
⇒クロージング前に第三者との間で協議、問題を解消する必要あり
・独占禁止法上の排除措置命令リスク
⇒独禁法上の届出が必要な場合、届出期間が満了していること
・許認可の取扱い
⇒許認可の取得が短期間でできないケースを考慮
・労働者の取扱い
⇒労働条件の変更等の説明にどの程度の期間を要するのか等を事前に確認

■PMI段階における留意点
・役職員のリテンションプラン
⇒現金報酬と株式報酬をどのように組み合わせるか
・PMI時点におけるリスクアセスメントの実施
⇒リスクの洗い出し&リスク対応


10.子会社・関連会社の留保利益に係る繰延税金負債

■連結子会社の留保利益に係る税効果
1.配当受領を解消事由とする場合
・子会社の留保利益のうち、将来の配当により親会社において追加納付が発生すると見込まれる税金額を親会社のDTLとして計上
・ただし親会社が子会社の利益を配当しない方針を採っている場合など、配当に係る課税関係が生じない可能性が高い場合には税効果を認識しない

2.投資の売却を解消事由とする場合
・将来加算一時差異につきDTLを計上
・ただし親会社が投資の売却を親会社自身で決めることができ、かつ、予測可能な期間に売却を行う意思がない場合には税効果を認識しない

■持分法適用会社の留保利益に係る税効果
1.配当受領を解消事由とする場合
・持分法適用会社の留保利益のうち、将来の配当により追加納付が発生すると見込まれる税金額を投資会社のDTLとして計上
・持分法適用会社に留保利益を半永久的に配当させないという投資会社の方針がある場合等には税効果を認識しない

2.投資の売却を解消事由とする場合
・投資会社がその投資の売却を自ら決めることができることを前提として、予測可能な将来の期間に売却する意図がない場合には、税効果を認識しない


11.基本合意書締結段階での留意ポイント

■締結する理由
・当事者間の論点・争点の明確化
・スケジュールの明示・共有
・一定の事項について合意することで、成立の確度を上げる
・基本合意締結段階で公表する場合は、以後のDDが行いやすい
■適時開示
・原則、基本合意締結段階で開示
・例外として、一定の合意でしかなく、成立見込が立つものではない、公表することで成立に至らない場合は開示を行わないことも許容
※法的拘束力の有無だけで判断されない
■破棄した場合のリスク
・法的拘束力を付さなくても、相手方に損害を被らせないようにする信義則上の義務がある
・義務に違反して損害があれば、「契約締結上の過失」に基づく責任として、債務不履行責任等を負う可能性あり


12.M&A検討段階でのインサイダー情報管理とその他留意点

■事例分析
金商法違反事例の過半数はM&Aに絡むインサイダー取引によるもの
⇒インサイダー情報の管理の徹底を意識

■情報がインサイダー情報として成立するとき
⇒特定の機関がM&Aを決定したとき
※特定の機関:会社の実質的な意思決定機関であれば足りる
※正式な意思決定機関(取締役会等)による決定よりも前に、実質的な決定がされるのが通常
※決定:決定されたかどうかがポイントであり、M&Aの実現可能性は関係ない

■インサイダー情報の管理方法
徹底的な関与従業員の絞り込み(役員と所管部署の一部)

■その他留意点(1)
・M&Aが既存契約の相手方との関係で問題が生じないか(競業避止義務違反が実務上多い)
・M&Aが既存契約の解除事由(チェンジオブコントロール条項)がないか

■その他留意点(2)
・親会社が子会社株式を売却する場合、子会社の非支配株主を保護する配慮
⇒親会社が子会社株式を売却する場合、子会社は自身のDDに協力するのが通常
⇒but子会社に非支配株主がある場合、DD協力は子会社役員の善管注意義務違反を問われることあり


13.ガンジャンピング規制のポイントとその対応

ガンジャンピング
=M&A時に独占禁止法が一定の時期まで実行することを禁止している行為をフライングで実行してしまうこと。
企業結合/カルテル規制の2つの規制に対する違反があげられる。

■企業結合規規制
一定の要件を満たすM&Aにはクロージング前に競争当局(公正取引委員会その他海外競争当局)の承認が必要。
=競争当局の承認が降りる前に禁止行為を実行するとガンジャンピング該当。
※一定の要件=買主サイドの売上200億円超、売主サイドの売上高50億円超

■カルテル規制
クロージング前に競争上の機密情報の交換を行った場合等にガンジャンピング該当。

■具体的なガンジャンピング
・DD時に競争関係にある商品の販売価格や製造コスト等、競争上の機密情報を交換する(カルテル規制)
⇒一定の対応策を取れば、機密情報の交換が認められる(機密情報の受領者を当該事業に関与しない役員や外部アドバイザーに限定するなど)。
・競争当局の承認、クロージング前に調達価格を統一する(企業結合規制、カルテル規制)。
・クロージング前にシナジーを得るための投資を実行する(カルテル規制)。
・M&A当事者間の取引価格を独立当事者間における取引条件から乖離したものにする(企業結合規制)
・契約締結からクロージングまでの間の行動に対して、クロージングと同視される支配を対象会社に及ぼす誓約条項を設ける(企業結合規制)。
⇒「通用の業務の範囲」を制限するような誓約条項が該当する可能性がある(競争関係にない商品の新規取引実行時に承認が必要とする等)。



14.デューデリジェンス(以下、DD)実施段階での留意ポイント

■目的
M&Aを実施する際に売却対象事業等に内在する問題点を調査・検討する手続き

■記録の管理、売主側の情報開示
・買主側が要求した(開示されるべき)情報を売主側が提出していなかったという紛争が多い
⇒開示資料、インタビュー内容の記録の管理が重要
・近時ではVDRの設置が増加
⇒オークション形式のM&Aに便利

■情報の交換
・ガンジャンピングの問題
⇒情報交換に関するプロセスの透明化、適切な情報遮断措置の対応が重要

■買主における他社の営業秘密の侵害リスク
・売主から買主への情報開示により不正競争防止法上の営業秘密の保護が受けられなくなるリスク
⇒DDの過程で競合会社由来の情報が売却対象事業等由来の情報との混入を防ぐ管理措置及び競合対象会社由来の情報のみ提供させることができるかの確認が重要

■コンプライアンス違反の発見
・対象会社においてコンプライアンス違反の調査を受けている場合、事実を買主に開示することで、捜査妨害等に問われるリスク有
⇒発覚した段階でM&Aのプロセスを中断することが多い
⇒リスクを飲み込んででも実施したい場合は最終契約の中で対応者、課徴金や罰金等の負担割合の合意が重要


15.IPOマーケットの現状

・マザーズは市場第一部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場。
⇒ マザーズに上場して10年が経過すると、市場二部に変更するか、マザーズで上場継続かの選択が求められる。

・国内IPO件数はリーマン・ショック後の2009年に底入れ。
⇒ 2009年:19件、2010年:22件、2011年:37件、2012年:48件、2013年:58件、2014年:80件、
2015年:98件、2016年:86件、2017年(9月まで):58件

・最近のIPO企業の規模(売上:中央値)
⇒ 東証一部 1,074億円、東証二部 154億円、JASDAQスタンダード 63億円、マザーズ 19億円


16.監理銘柄・整理銘柄

・監理銘柄
上場銘柄が上場廃止基準に該当するおそれがある場合、その銘柄を一定期間、監理銘柄に指定して売買が行われる。

⇒上場廃止になると、証券取引所での売買が行われなくなるため、そうなる可能性が高い銘柄を投資家に周知させるのが主な目的

・整理銘柄
上場廃止基準に該当し上場廃止が決定した場合、整理銘柄として銘柄の売買が行われる。

⇒上場廃止になると流通性が著しく低下するため、投資家に注意を促すために設けられた制度
⇒上場廃止が決まった場合に、直ちに取引停止にすると投資家の売買の機会が著しく狭められてしまうため、原則として1カ月間整理銘柄に指定された後に上場廃止となる。









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2017年12月2日土曜日

12/1 勉強会:関信局 28事務年度における法人税等の調査事績公表 他

1.税賠事故 ケーススタディ 居住用財産譲渡損失

■概要
・依頼者Aは平成25年6月に居住用財産を先行取得し、住宅ローン控除の適用を受けた
・平成26年10月旧居住用財産を譲渡した
・譲渡損失を損益通算できるか顧問税理士に相談したところ、ローン控除をうけているため適用不可といわれ、適用しないで確定申告をした
・平成28年2月、顧問税理士が調べなおしたところ適用可と判明
・更正の請求を検討したが、譲渡年の確定申告に書類添付要件があり請求不可は判明
・税賠請求事案となった
 
■ミスのポイント
税理士が居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例における適用要件を誤って認識していたこと

■予防策
・居住用不動産については特例が多いうえ、数年分の有利不利判定が必要なケースがあるため、条文ベースで慎重に検討を行うべきあった
⇒思い込みによる判断のみで進めず、必ず条文の裏付けをとるよう注意する


2.関信局 28事務年度における法人税等の調査事績公表

■調査概要
・法人税⇒海外取引法人等をマーク
 実地調査件数11,050件
 申告漏れ所得金額1,017億円
 調査による追徴税額197億円
・法人消費税⇒消費税還付申告法人をマーク
 実地調査件数10,717件
 調査による追徴税額 53億円
・源泉所得税⇒海外取引法人等をマーク
 実地調査件数13,124件
 調査による追徴税額 32億円

■調査事例
1.架空の請求書で外注費を計上
⇒架空の請求書の発行を依頼し、作業実態のない架空外注費を計上
2.給与を業務委託費に仮装
⇒従業員給与をダミー法人に対する業務委託費に仮装し仕入税額控除し、消費税額を圧縮
3.多額の利益を得ていながら無申告
⇒売上の多くを別名義の預金口座等に入金、帳簿書類を破棄していた
4.架空のコンサルティング料を計上
⇒実態のない海外子会社に対する架空のコンサルティング料を計上
5.開発費に係る源泉徴収を行わず
⇒租税条約の規定に基づいた源泉徴収を行っていなかった


3.ギフト配送契約

・IFRS第15号では、商品の支配が顧客に移転した後の出荷・配送活動は「別の履行義務として識別」するものとしている。
・配送中の商品に対して危険負担(災害などで商品が破損した場合のリスク)を負っている会社は2回に分けて収益を計上する
・ただ、日本国内の配送なら出荷と着荷の期間が短いため分割する重要性は薄い。
・収益認識基準の適用指針案93項では、商品の支配が顧客に移転した後の出荷・配送活動は「契約を履行するための活動」として「履行義務を識別しないことができる」と明示された。


4.JICPA、会社法と金融商品取引法の開示及び監査の完全一元化を提言

・事業報告等と有価証券報告書の記載内容の整理・共通化・合理化を更に推進
⇒将来的には、完全に開示書類を一本化することが望ましい

・一本化された開示書類を株主総会前の適切な時期に提供すべき。


5.学生起業からの上場に成功した事例の傾向

(上場の期間は2001年~2016年9月)

1.人材かITに集中
学生からでもマネタイズしやすい事業領域、パソナやリブセンス、mixiなどの人材系か、ドリコム、クックパッドなどのIT系か、人材かITからスタートしている企業がほとんど。

2.短期マネタイズが可能な事業から開始
今ほど資金調達がしやすい環境ではない時期に立ち上がった企業が多いからか、Webの受託開発など、短期マネタイズがしやすい事業から開始している企業が多い。

■主な成功事例一覧
・株式会社パソナグループ
(創業者:南部靖之/創業者株式シェア:約35.41%)
・ぴあ株式会社
(創業者:矢内廣/創業者株式シェア:約20.98%)
・株式会社ドリコム
(創業者:内藤裕紀/創業者株式シェア:約38.77%)
・株式会社ミクシィ
(創業者:笠原健治/創業者株式シェア:約43.2%)
・クックパッド株式会社
(創業者:佐野陽光/創業者株式シェア:約43.57%)
・株式会社リブセンス
(代表取締役:村上太一/創業者株式シェア:約48.91%)









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