2017年7月28日金曜日

7/28 勉強会:社長交代で電子証明書の取得間に合わず 他

1.移転価格文書化の個別照会、事実関係異なれば課税リスクも

・7月から移転価格制度の個別相談窓口が各国税局に設置されている
 移転価格税制については元々「事前確認制度(APA)」が用意されていた⇒違いは?
(APA)
・税務当局が事実関係の確認を行ったうえで移転価格審査を行う。
・税務当局の立場から確認をしており、事前確認の内容に適合した申告であれば税務調査の必要なし。

(個別相談窓口)
・企業から提出された資料等の事実関係を前提として検討および回答を行う。
・またAPAより短期間での回答(数か月)を目指す。
・事実関係確認のため税務調査の場合も。

※国税庁は6月に「移転価格ガイドブック」を公表



2.今週の専門用語

■電子証明書
・申告書等の作成者が署名者本人である事を確認するためのもの
■電子署名
・電子申告のデータが改ざんされていない事を署名者が保証するもの



3.収益認識導入が企業に及ぼす影響

■企業会計基準委員会が「収益認識に関する会計基準」の公開草案を決定
⇒公開草案は、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の基本的な原則(下記参照)を取り入れている上、連結F/Sだけでなく個別F/Sにも適用される為、これまでの実務が大きく変わってしまうのではないかという懸念あり

■代替的な取扱いの容認
・非連結F/S作成会社や一部の業種・業態の企業に影響が及ぶ可能性はあるものの、これまでの日本企業の実務等に配慮し、重要性等に関する代替的な取扱いを容認
⇒企業への影響を一定程度に軽減する措置

■強制適用時期
・平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用
⇒システム改修の準備期間等を考慮し、企業に一定の配慮

■収益認識会計の基本となる原則(下記5つのステップ)
(1)顧客との契約を識別する
(2)契約における履行義務を識別する
(3)取引価格を算定する
(4)取引価格を契約における履行義務に配分する
(5)履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する

■現行の日本基準又は日本基準における実務の取扱いが認められない会計処理
・顧客に付与するポイントについての引当金処理
・返品調整引当金の計上
・割賦販売における割賦基準に基づく収益計上



4.功績倍率による退職給与は損金算入OK

国税庁が7/14付で法人税基本通達等の一部改正を公表。
主に役員給与改正などを含む29年度税制改正に対応したもの。

・業績に連動する退職給与は、
「業績連動給与」の損金算入要件を満たさない限り損金不算入。
ただし功績倍率法に基づく退職給与は、「業績連動給与」に該当しないため損金算入可。

基本通達の改正により、役員給与の損金算入及び不算入を明確化にした



5.社長交代で電子証明書の取得間に合わず

・早ければH30年申告分から「大法人」は電子申告が義務化

■電子申告義務化に向けた課題
(1)電子証明書の発行時期の問題
・上場会社は確定申告の期限直前に株主総会が開催されることが多いため、株主総会で社長が交代した場合、電子証明書の取得が間に合わないケースが多々発生

(2)大企業の定義が決まっていない
・大法人の子会社の中小法人を大法人に含めるかどうか
・連結子法人である大法人を地方税においてどう取り扱うか



6.国税局照会事例 一般財団法人が設立時に受けた寄付について

■概要
病院経営を行っている一般財団法人Aは平成29年10月設立予定のB財団に対して、病院経営の一部を引き継がせるために医療機器を贈与する予定である。
この場合の法人税法上の取り扱い(収益事業の損益)はどうなるか?

■照会内容
財団が病院経営に必要な医療機器を贈与により取得し、その後処分したときの損益は<収益事業の付随行為>として収益事業にかかる損益となる。
そのため、医療機器の贈与による受贈益についても収益事業にかかる損益となるのではないか?

■国税局回答
この受贈益は収益事業にかかる収益に該当しない。

(理由)
公益法人等が固定資産を取得するために受ける補助金は、その固定資産が収益事業に供されるものであったとしても収益事業の益金に算入しないこととされている。本件贈与による取得は実質的に固定資産取得のための補助金等と同様の性質である。
したがって、収益事業にかかる収益に該当しない(課税なし)



7.裁判例・裁決例:一時的空室部分”巡り5か月の空室を長期間と判断

■質疑応答事例でのアパート等の空室が一時的かどうかの判断
(1)各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか
(2)賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか
(3)空室の期間、他の用途に供されていないかどうか
(4)空室の期間が課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であったかどうか
(5)課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうか
などの事実関係から総合的に判断

■今回の大阪高裁の判断
一時的空室部分該当性の判断に当たっては、現実の賃貸状況、取り分け、空室期間の長短を重要な要素として考慮しなければならない
各空室部分が「継続的に賃貸の用に供されている」状態にあるという理由のみで上記例外的な取扱いを認めることはできない。
本件各空室部分の空室期間は、最も短い場合でも5か月であり、「例えば1か月程度」にとどまらずに、むしろ長期間に及んでいるといえるから,「一時的」なものであったとはいえない
⇒空室期間が重要と示されるも総合判断であることは変わらず



8.株主優待引当金

・株主優待に備える目的で「株主優待引当金」を計上する事例がある
・株主優待は配当ではなく費用として処理する
(剰余金の配当手続によるものではない、優待内容が所有株数に完全には比例しないため)
・優待内容を期末日以前に株主に公表済で、将来発生する費用を過去の利用実績から合理的に見積もることができる場合
 ⇒引当計上する
 ※利用時に売上値引きや交際費として扱う例あり。
・税務上は原価以上の対価を得ていれば交際費には該当しない。



9.保有資産が遊休状態となった場合の留意点

■事例
・製造業だが製品の販売が芳しくなく、ラインの操業を停止。
・その後の操業開始の目途は立っていない。
・減損の検討が必要かどうか、具体的な考え方は?

■減損検討が必要か
・必要(減損の兆候あり、と判断される)
⇒基準「当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化」に該当
・不要な場合もあり(1年以内の場合は「兆候なし」と主張できる余地あり)
⇒基準「資産をほとんど利用しなくなってから間もない場合で、将来の用途を定めるために必要な期間に当たる場合」

■具体的な方法
(1) 回収可能価額は?
⇒正味売却価額(使用価値はゼロ)

(2) グルーピングは?
⇒しない(キャッシュを生まないため)



10.社債による資金調達時の対話のポイント

■株式や融資に比べ、普通社債の発行による資金調達のメリットは何か?
・調達コストが低い
・株主構成の変化、既存株主の議決権比率の低下を避けられる
・融資に比べ多額の資金調達が可能
・市場での認知度を上げる効果がある

■劣後債・ハイブリッド債にはどのようなメリットがあるか?
・株主構成の変化、既存株主の議決権比率の低下、株価の下落といった新株発行のデメリットを生じさせることなく、規制資本を積み増すことが可能となる点で、銀行や保険会社にとって有用な資金調達手法
・規制上、格付上、会計上の資本性が認められる資金調達でありながら、支払利息の損金算入が認められる

■劣後債・ハイブリッド債にはどのようなデメリットがあるか?
・普通社債と比べ、商品設計が複雑であり、規制当局や格付機関との協議が必要となる



11.種類株式による資金調達時の対話のポイント

■種類株式による資金調達の場合、そのような商品設計が可能か?
・目的に応じて組み合わせ可能
⇒剰余金配当(※)、残余財産分配(※)、議決権、譲渡制限、取得請求権、取得条項、種類株主総会
(※)実務上多い
⇒取得請求権を用いて、優先株式から普通株式への転換を図ることで、半永久的なエクイティ出資者にイグジットの機会を与えることが出来る
■銀行借入や普通社債ではなく、社債型優先株式を用いる理由は?
・一定の日に金銭償還されるのでデッドに近い性質を有する一方で、優先配当権(累積型・非参加型)および残余財産分配権(非参加型)がある。既存株主の議決権比率に希薄化の影響なし
・銀行借入や普通社債だと自己資本比率が下がるが、社債型優先株式は自己資本比率が上がる
(参考)剰余金の配当については、所定の優先株主配当金以外に普通株主配当を受けられる参加型と、所定の優先株主配当しか受けられない非参加型がある



12.通貨オプション取引の会計

■オプション取引とは
(1)特定の商品を
(2)定められた期日に
(3)定められた価格で
(4)「買う」または「売る」
の4条件を満たす「権利」を売買するデリバティブ取引の一つで、「権利」の対価としてオプション料を支払う。

■オプション取引の会計処理(買手)
・前提
種類:1,000ドルのプットオプション
オプション料:1ドル=3.8円
決算日オプション価格:1ドル=7.1円
権利行使価格:1ドル=120円
権利行使日の価格:1ドル=113円

(1)通貨オプション契約締結時
買建通貨オプション 3,800円 / 現金 3,800円
⇒権利購入のため、資産計上をする。

(2)決算日(時価評価益)
買建通貨オプション 3,300円  / 為替差損益 3,300円
⇒デリバティブ取引のため、時価評価する(翌期首に洗替)。

(3)通貨オプション権利行使日
現預金 7,000円 / 為替差損益     3,200円
        / 買建通貨オプション 3,800円
⇒権利行使価格により生じた利益(1,000ドル×(120-113)=7,000円)からオプション料(3,800円)を控除したものが営業外費用として処理される。



13.会社法上、株主が議決権の行使期限は「基準日から3か月以内」

・株主総会は「事業年度終了後の一定の時期」に開催すればよいため、3月決算の場合、(定款を変更して)基準日を1か月後倒しすれば7月開催も可能。
・ほとんどの会社は決算日と基準日を同じにし、総会は6月開催。⇒決算日と基準日を別日にすると、株主を2回確定する必要あり。

・ニイタカ(5月決算)が、基準日および株主総会開催日を変更。
(基準日) 従来:5月末 ⇒ 6月末
(株主総会)従来:8月末 ⇒ 9月末

・IRによれば、変更の理由は下記の通り。
(1)猛暑の時期の株主総会開催を避けることにより、会場にお越しになる株主様の熱中症等のリスクを低減するため。
(2)定時株主総会の開催日を柔軟に設定することにより、株主様との建設的な対話を促進するため。



14.与信限度額の管理

・実際の与信額が与信限度額を超過していないかどうかについては、継続的にチェックを行う必要がある。
・1社に対して複数部門と取引している場合は、名寄せする必要がある。
・与信限度額を超過しないためには、以下の観点からシステムによる管理が望まれる。
⇒与信超過時は受注入力できないことにより、与信枠を広げる場合の事前承認が徹底される。
⇒受注・入金状況がタイムリーに反映され、管理ミスが防げる。
・与信超過を未然防止するために一定のアラーム基準(例:与信限度額の80%)を設け、与信額がアラーム基準を超過した場合は管理部門より営業部門へ通知し、与信限度額を増額すべきか否かの検討を促す必要がある。












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2017年7月21日金曜日

7/21 勉強会:税務の動向 外国人留学生国籍別租税条約 他

1.会社法上、株式の無償発行が可能とされる方向

・現在、会社法で不可である株式の無償発行(取締役の報酬として)が可能になるよう検討中
・税務上、損金算入可否は不明であり企業のニーズは未知数
⇒業績連動給与に該当=算定方法を有価証券報告書等で開示するなどの要件あり
・有利発行規制(会社法1993項)の適用の要否が問題
・現行の譲渡制限株式で十分との声もあり
⇒事前確定届出給与として損金算入が可能


2.今週の専門用語

■最終親会社
・企業グループの構成会社等のうち、
他の構成会社等の「議決権の過半数」等を支配するもの
・国別報告事項(CbCR)の提出義務者


3.CbCRへの多国間評価で課税上お墨付き

■価格調整金等とは
企業が既に行った国外関連取引に係る対価の額を、後々に移転価格上適正な価格である独立企業間価格に変更するため支払う金額

⇒当該支払が合理的と認められない場合は寄附金課税がされる

(裁決事例)
・寄附金課税されない
…原材料の価格高騰が原因で遡及して取引価格を改定
 ※他社も同様の改定が必須かつ事前の取り決め必須

・寄附金課税される
…国外関連者の財務支援目的や支払額の根拠がないケース


4.賃貸借・使用貸借の判断を巡る最近の税務トラブル

使用貸借とは、当事者が相手から無償で物を借りて、使用等したのちに返還する契約

■事例
・A社(納税者の関連法人)所有の土地建物につき、B社(第三者)との間で賃貸借契約あり。
・納税者がA社より代物弁済にて建物を取得。
・建物につき、納税者とA社間で賃貸借契約を締結。年480万円収入あり
・A社は土地建物をB社に転貸し、再度賃貸借契約を締結。年3,000万円収入あり
・納税者は不動産収入として480万円とするが、同金額を超える固定資産税や減価償却費を必要経費としていた
・原処分庁は納税者とA社間の契約は、「賃貸借」ではなく「使用貸借」とする課税処分を行った

■不動産所得の法令解釈
不動産等の貸付による所得を不動産所得とする。
すなわち、納税者がA社に不動産等を使用収益させて、その対価を得ることを目的とする行為から生じる所得と解する。

■審判所の判断
・納税者とA社間の契約が、代物弁済後に行われている。
⇒租税回避目的のために契約が行われたと考えられる。
・不動産収入年480万円が固定資産税の半分にも満たない。
また転貸したB社から賃料の5分の1にも満たない。
⇒本来の使用を目的として対価を得ていると判断できない。

以上より、「賃貸借」ではなく「使用貸借」と判断され、不動産の収入及び固定資産税等の必要経費双方ともに算入されないとされた。



5.選択同意書なければ小規模宅地特例NG

■小規模宅地特例とは
・生活基盤を維持するために処分しがたい宅地について、評価額を減額(相続税を減額)できる特例
・特例を受けるためには特例対象宅地を取得した全ての相続人の選択同意書が必要

■事案
A区土地 ⇒遺言により長男が相続決定
B市土地 ⇒未決定(長女ら共同相続人あり)
※A区土地とB市土地のどちらも特例対象宅地等に該当

(1)A区土地を相続した長男は、選択同意書の提出の必要があるか?
(2)未分割財産は申告期限後3年以内に選択同意書を取得すれば特例適用可、というただし書き規定が適用されるか?

■判決
(1)選択同意書は提出必須
⇒B市土地には共同相続人がいるので、選択同意書が必要
(2)ただし書き規定の適用不可
⇒A区土地が未分割財産ではないため適用不可

■実務上の対応策(例)
・特例対象宅地すべての相続人を1人にする
・A区土地も相続が決まってないことにして、3年以内に分割協議をまとめる



6.税務の動向 外国人留学生国籍別租税条約

■アルバイトに対する源泉徴収
原則として源泉徴収が必要
ただし、外国人留学生のうち、租税条約が締結されている国の留学生については一定の届出を要件に源泉徴収義務が免除される。

■国別租税条約締結の有無()内は全留学生に占める当該国の割合
中国(31.8%)○
ベトナム(15.9%)○
フィリピン(11.8%)○
ブラジル(9.8%)○
ネパール(4.9%)×
韓国(4.4%)○
ペルー(2.4%)×
インド ×
パキスタン ○
バングラデシュ ×

■提出書類
給与等の支払者を経由して、
・租税条約に関する届出書
・在学証明書
の提出が必要



7.国税庁「法人事業概況説明書」を抜本改訂

・平成30年4月1日以後終了事業年度分から新様式
・海外子会社の名称・出資割合などの記載欄が追加
・PC利用状況はより具体的に ⇒ 調査効率化目的
・経理の状況欄で社内監査欄を追加
・特別利益、特別損失欄を追加



8.総額表示、純額表示

・日本基準では収益に関し売上と仕入を純額で表示するか総額で表示するかについての一般的な定めはない
・唯一、ソフトウウェア取引において、リスクない委託販売の手数料収入は「総額表示は適切でない」とされているのみ
・IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」では、 本人=総額表示、代理人=純額表示、とされている。
・判断のポイント
 顧客に移転される前に、「財又はサービス」を企業が支配しているか否か
 約束履行責任、在庫リスク、価格設定の裁量権 など



9.日本公認会計士協会は18日、女性会計士活躍促進協議会のポータルサイトを開設

・女性会計士の割合は、米国は5割、シンガポールは6割。
・日本は合格者が2割程度、(結婚や出産などで自ら会員登録を抹消する例も多いため)会員登録ベースでは14%。


10.与信限度額の設定

1.信用調査会社の評点をもとにした算出方法
・メリット
与信限度額の設定が容易にできる
・デメリット
信用調査会社の評点がない会社や、評点が低い会社については、当該方法を用いた与信枠は設定できない
信用調査会社としては、帝国データバンク、東京商工リサーチなど

2.「純資産」を基準とした算出方法
純資産を基準に、「この程度であれば、焦げ付いたとしても影響が小さい」という「一定割合」を設け、そこに格付による「ウエイト」を加味して管理する方法
・計算例
純資産× 一定割合(5%~30%)× 格付ウエイト(例:S=1.7 A=1.3 B=1.0 C=0.7 D=0.5 E=0)
一定割合は10%が一般的といわれている
・メリット
純資産の範囲で設定するため、倒産した場合でも配当を受けられる可能性が高い
・デメリット
純資産の少ない企業では利用しづらい

3.自社の「売上債権」を基準とした算出方法
自社の売上債権を基準に、「一定割合」を設け、そこに格付による「ウエイト」を加味して管理する方法
・計算例
自社売上債権× 一定割合× 格付ウエイト
・メリット
取引先数が多い企業では使い勝手がいい
・デメリット
取引先1社1社に対する依存度が高い企業では使いづらい
売上の変動幅が大きい企業には適さない

4.取引金額をもとにした算出方法
想定取引額(例:過去1年間の月平均売上高×債権回収サイト月数)
・メリット
取引実態を反映した金額の設定が可能
・デメリット
季節変動他、取引額が増加するたびに与信枠の見直しが必要になる








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2017年7月15日土曜日

7/14 勉強会:収益認識、消費税の税込処理はできず 他

1.未来投資戦略2017から読む税務・会計・会社法

■税務
・個人所得税の基礎控除等の人的控除等を週にかかわらず税負担の軽減額が一定となるよう検討中
⇒現状、高所得者ほど税負担の軽減効果が大きくなる仕組み
2020年までに大法人の電子申告利用率を100%へ(中小法人は85%へ)

■会計
・短期間に決算短信、事業報告、有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書と4つの異なる開示書類があり、投資家にとってわかりにくい。よって重複開示の解消等が検討される。

■会社法
・退任した社長、CEOが就任する相談役、顧問等について、氏名、役職、地位、業務内容等を開示する制度を創設する方向へ


2.会計士協会、交代した監査人にヒアリングを実施へ

下記書類の監査対象会社数の増減理由記載箇所を現行の自由記載から選択肢形式に変更
・登録事務所概要書変更事項届出書(会社数及び会社名)
・監査契約会社リスト変更事項届出書
これで把握した交代理由を踏まえ、必要と認めた場合は、交代理由等をヒアリングする方向


3.四半期報告書 作成上の留意点(平成296月第1四半期提出用

(1)「経営方針」等の重要な変更等の記載に係る留意点
・従来、決算短信の記載内容とされていた「経営方針」について、開示府令が改正され、有価証券報告書の記載内容とされた
⇒四半期報告書上、「経営方針」等に重要な変更等があった場合、その内容を記載
※平成2941日以後に開始する事業年度に係る四半期報告書について適用

(2)リスク分担型企業年金に関する留意点
・平成291月、リスク分担型企業年金※導入
※運用リスクを事業主と加入者で柔軟に分け合う確定給付企業年金
・実務対応報告「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」を公表
⇒リスク分担型企業年金のうち、企業が掛金相当額の他に拠出義務を
実質的に負っていないものは、退職給付会計基準に定める確定拠出制度に該当
※平成2911日以後、適用

(3)改正実務対応報告「連結F/S作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」
⇒本改正により、本実務対応報告の対象範囲に修正国際基準(JMIS)等に準拠した連結F/Sを作成し有価証券報告書により開示している国内子会社等も含められた。
※平成2941日以後開始する連結会計年度の期首から適用

(4)改正実務対応報告「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」
(3)と同様


4.退職金RSとPSUの組み合わせ増加も

RSとは、リストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式)
PSUとは、パフォーマンス・シェア・ユニット(業績条件達成後に株式を付与する制度)

自社の役員報酬制度として、退職金としての譲渡制限付株式報酬とパフォーマンス・シェア・ユニットの組み合わせを、導入・検討する企業が増加している。

■導入や検討する理由
・退職金とすることで、役員の所得税負担が軽減。
・譲渡制限付株式報酬で譲渡制限の解除等が退任時の場合、退職給与として損金算入することが可能。
・H29年度税制改正で、PS型の株式報酬も損金算入することが可能

今後、RSとPSUの組み合わせが役員報酬の標準モデルとなる可能性あり



5.収益認識、消費税の税込処理はできず

収益認識に関する会計基準(案)では、消費税の税込方式は採用不可
⇒消費税は第三者のために回収される金額であるため収益認識しない

強制適用に関しては、2~3年先からといった案が出ているようだが、税込処理を採用している企業はシステム変更が必要となるので注意!


6.措置法税額控除 職権による控除額の増額可に

■従来の流れ
(1)調査による更正により所得が増加⇒修正申告
(2)法人税額が増加したことにより試験研究費等の税額控除限度額が増加
(3)更正の請求により還付をうける⇒更正の請求

■29年改正
調査による増額更正により、租税特別措置法の税額控除限度額が増加する場合には、職権更正により控除額を増額できることとなった。

(従前)
建付け上は2回の手続き(修正申告+更正の請求)が必要
(改正後)
修正申告時に控除額を増加させて申告(更正の請求不要)

■留意点
上記規定は当初申告時に税額控除を適用するための別表を添付していることが要件となるため、当初申告時に別表添付がない場合は適用されない
(=遡って添付があったことにはなるわけではない)


7.今週のFAQ<札幌高裁判決(低解約返戻金型保険の一時所得の支出金額

■質問
個人が法人から生命保険契約の契約者の地位を3172,400円で承継
理事長Aの一時所得の計算上、3172,400円は「その収入を得るために支出した金額」として控除されるのか?

■回答
控除される
⇒収入を得た個人が自ら負担した支出は控除できる
⇒それまで法人が支払っていた保険料は控除できない(二重控除になるため)


8.監査人交代時の意見表明

・監査人の交代は、臨時報告書及び適時開示による開示が必要
臨時報告書では
・「異動に至った理由及び経緯」を記載 
・退任する監査人が「その理由及び経緯に対する異動公認会計士等の意見」を表明する
 従来の交代理由は「任期満了」が多かった。
・東芝に対して新日本有限責任監査法人が行った意見表明
 「同社が組織的な隠蔽工作を行ったことで、監査を十分に行うことができなくなった」
・オークファンに対して有限責任あずさ監査法人が行った意見表明
 「会社から監査業務への理解を得られないため、契約継続は困難」


9.会計不正が発覚した際の税務手続のポイント

■過年度に過大な売上計上があったケース
・決算の修正と修正損の損金算入の可否
⇒過年度損益修正損を当期で計上…税務上は前期以前の損失。当期は加算調整必要。
⇒税務上は更生の請求が必要(ただし、粉飾決算の場合、前期修正を行った期の申告書が提出されることが要件)
⇒消費税は当期の減額としてよい。

■従業員による横領が発覚したケース
・横領、その後損害賠償を受けた ⇒ 両建計上
・横領=架空経費の計上 ⇒ 加算税+重加算税の論点あり


10.平成29年度税制改正・外国子会社合算税制の改正

■合算対象とされる外国法人の判定方法の見直し
・「外国関係会社」の判定においては「50%超を直接及び間接に」所有するかどうかで判定されていたが、50%超の連鎖関係があるかどうかで判定されることになった。
・居住者又は内国法人が外国法人の残余財産のおおむね全部を請求することができる等の関係がある場合におけるその外国法人も「外国関係会社」の範囲に含まれることになった。
・外国関係会社が特定外国子会社等に該当するかどうかを判定するための租税負担割合基準(20%未満のトリガー税率)が廃止される。
ただし、租税負担割合が20%以上の場合は本規定の適用除外とされる項目が追加されるため、実質20%未満の判定は残ることとなる。

■適用除外基準(経済活動基準)の見直し
・経済活動基準のうち、下記のいずれかを満たさない外国関係会社について、合算課税の対象となる。
 事業基準
 実体基準及び管理支配基準
 非関連者基準
 所在地国基準

■部分合算課税の見直し
・もともと対象となっていた配当や利子などの範囲について見直しがされるとともに、有価証券の貸付の対価、デリバティブ取引損益、外国為替差損益や無形資産等の譲渡損益等も資産性所得に含められることとなる。
・資産性所得の合計が1,000万円以下である場合は、資産性所得合算課税の適用除外とされていたが、今回の改正で2,000万円以下となる。

■特定の外国関係会社に対する合算課税
・外国関係会社のうちペーパーカンパニー等については、合算課税の対象とされる
(適用除外基準の判定をすることなしに合算課税の対象となる)。



11.四半期報告書作成上の留意点

企業と投資家との建設的な対話を促進することを目的として開示資料の見直しが行われた
■「経営方針」等の重要な変更等の記載に係る留意点
(1)概要
従来の短信記載⇒有報記載
四半期報告書については、「経営方針」等に重要な変更があればその内容を記載
平成29年4月1日以後から適用
(2)財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析
当四半期連結累計期間において、経営方針等に重要な変更があったとき、または新たに定めた時はその内容を記載する必要がある(新設)



12.管理会計の課題と将来像(大きな話

■よく見られる課題
⇒適切な意思決定や業績評価をサポートするツールであるべきところ・・・
・形骸化している。
・一般的に良いと言われる手法を採用しているが、会社の性質に合っていない。
・事業の変化に合わせられていない。
・現場にプレッシャーを与えるツールになっている。

■今後の社会と経営課題
・情報の多様化、加速化⇒統制の限界⇒現場判断の必要性増加。
・市場ニーズの多様化に対し、スピーディに反応できる現場力を生み出せるか。

■今後の管理会計に求められる姿
・個々の従業員が自律的かつ柔軟に意思決定できる環境を提供すること。
・その判断で得られた業績を適切に評価できる材料を提供すること。



13.金利スワップ取引の会計

・金利スワップ
⇒金利変動リスクのヘッジ目的に利用される。

・会計処理は3パターン
(1)原則的処理
⇒時価評価し、評価差額をPLヒット。デリバティブの会計処理の原則。
(2)繰延ヘッジ
⇒時価評価し、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで繰延
例外的な処理であるため、事前テスト、事後テストが求められる(本当にリスクヘッジできているか)
(3)特例処理
⇒ヘッジ対象(借入等)と金利スワップを一体とみなし、時価評価しない。
金利スワップにより変動利率を固定化又は固定利率を変動化する目的から、ヘッジ対象と金利スワップを一体として処理する特例処理が認められていると考えられる。



14.資本金1億円以下の有名企業

・資本金1億円の会社で有名な企業は下記。
 ⇒ 日本マクドナルド(資本金1億円、東証1部上場日本マクドナルドホールディングスの子会社)
 ⇒ ジャパネットたかた(資本金1億円、非上場)
 ⇒ アイリスオーヤマ(資本金1億円、非上場)
  ⇒ ヨドバシカメラ(資本金3千万円、非上場)

・日本マクドナルド、担当者のコメント
 ⇒ 法人税法上は大法人で、メリットは受けていない(大法人に該当する持ち株会社の100%子会社であるため)。
  ⇒ 一方、住民税均等割と事業税(外形標準課税の対象外)などにメリットはある。
グループ全体で最適な資本政策をとって顧客価値向上への投資と株主還元に資する利益の最大化を行っている。

・2017年、新たに7社の上場企業が資本金を1億円以下に減資。
 ⇒ IRで「節税目的」と明記する企業も。

・平成 31 年度より、「前 3 事業年度の平均所得金額が 15 億円を超える企業」は、資本金 1 億円以下であっても各租税特別措置を受けることができなくなる。
 ⇒ 法人税の軽減税率の特例(所得 800 万円以下に 15%)、 研究開発税制、所得拡大促進税制など
 ⇒ ただし、外形標準課税の適用基準はいまだ資本金のみ。近い将来見直される可能性あり。



15.債権管理(督促)

・回収遅延が生じた場合、遅延理由を確認の上、回収予定が明確にならない場合に督促を実施
・督促状を内容証明郵便(※)で出すなどの対応が必要
(※)手紙型の請求書。内容を郵便局が確認し、5年間保存される。
弁護士名で送付する方がより回収可能性が高められると考えられる。
・内容証明郵便で支払が行われない場合、通常、裁判所による司法手続きへ移行。
・手続きの手法としては、1.支払督促、2.少額訴訟、3.通常裁判の3つ。










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2017年7月8日土曜日

7/7 勉強会:国税庁が想定する将来像、税務調査や徴収でAI活用も 他

1.未来投資戦略2017から読む税務・会計・会社法

■税務
・個人所得税の基礎控除等の人的控除等を週にかかわらず税負担の軽減額が一定となるよう検討中
⇒現状、高所得者ほど税負担の軽減効果が大きくなる仕組み
2020年までに大法人の電子申告利用率を100%へ(中小法人は85%へ)

■会計
・短期間に決算短信、事業報告、有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書と4つの異なる開示書類があり、投資家にとってわかりにくい。よって重複開示の解消等が検討される。

■会社法
・退任した社長、CEOが就任する相談役、顧問等について、氏名、役職、地位、業務内容等を開示する制度を創設する方向へ


2.濫用的な議決権行使書面の閲覧に制限を

・株主は、議決権行使書面を閲覧する事ができる
・議決権行使書面には、株主の住所が載っている
・このためか、毎年、同じ株主から閲覧請求があるなど、権利の濫用が見られる
・企業は専用の部屋と立ち会う社員を用意、1週間程度の閲覧が行わる事もある模様
・会社法の見直しにおいて、この閲覧謄写請求の濫用が論点の1つとなっている


3.全株没収のRS、損金0でも特別損失発生

・利益の指標を基礎として譲渡制限が解除される数が算定される譲渡制限付株式報酬が事前確定届出給与の対象から除外(平成29年度税制改正)

・一方、業績があらかじめ定めた基準に達しない場合に全ての株式が没収されるタイプの譲渡制限付株式報酬は、従来通り、事前確定届出給与の対象として損金算入可

・ただし、業績があらかじめ定めた基準に達しない(実際に全ての株式が没収された)場合、税務上、給与等の課税事由が生じない為、損金算入不可(⇔会計上、報酬債権額全額が特別損失として計上)
⇒企業が事前交付型の譲渡制限付株式報酬の導入を検討する際、ネガティブな判断材料となる可能性あり


4.国税庁が想定する将来像、税務調査や徴収でAI活用も

国税庁が10年後の税務行政をイメージした「税務行政の将来像」を公表。

具体的には、AI技術の進展を踏まえた情報システムの高度化を前提とし、AIを活用したシステムによる税務調査先の選定や税務相談の自動化など検討。
主にICTAIの活用による、「納税者の利便性の向上」と「課税徴収の効率化・高度化」を2つの柱とする

■納税者の利便性の向上・・・スムーズ・スピーディ
・カスタマイズ型の情報配信
⇒マイナポータル(政府運営のサービス)を通じて、納税者に対し申告案内などニーズにあった税情報をタイムリーに配信
・税務相談の自動化
⇒メールやチャット等を利用した相談や回答、
AIを活用した相談内容の分析等を自動表示できるシステムを検討
・申告納付のデジタル化
■課税徴収の効率化・高度化・・・インティジェント
・申告内容の自動チェック
⇒現状の自動化をさらに進める。
所得税の申告内容と相続税の財産所有情報等とシステム上でマッチングさせ、申告漏れ所得や財産をより迅速かつ効率的に把握する
・軽微な誤りのオフサイト処理
⇒記載事項に誤りがあった場合、現状行われている書面や電話連絡ではなく、電子メール等で行う。
・調査や徴収等でAIを活用
 国税庁は今後環境の変化に応じて順次見直しを行って行く方針。


5.株譲渡損の繰越は時系列的な申告が必要

■事例
次の場合、上場株式の譲渡損失の繰越控除の規定が適用できるか?
H26.3/1225年分確定申告書を提出(譲渡損失があったが計算明細書等を添付せず)
H27.3/526年分確定申告書を提出(25年分の譲渡損失を繰越控除)
H27.3/925年分更正請求書を提出(25年分の計算明細書等を添付)

■結論と理由
H25年分の譲渡損失の繰越は不可
理由は、下記適用要件(2)の「その後において連続して」を満たしていないから
(1)譲渡損失が生じた年の確定申告書に計算明細書等を添付
(2)その後において連続して確定申告書を提出
(3)特例を受ける年の確定申告書に譲渡損失が生じた年の計算明細書等を添付
H26年分申告書の提出前にH25年分の更生請求書を提出すれば適用できた


6.国税庁 特定医療法人制度FAQを公表

■特定医療法人とは
特定医療法人とは、財団たる医療法人又は社団たる医療法人で持分の定めがないもののうち一定のものをいう。
その承認を受けた後に終了した各事業年度の所得については、一般の医療法人の税率に代えて、19%(年 800 万円以下の部分は、一般の医療法人と同じ 15%)の税率により法人税を課すこととされている。本年331日現在の特定医療法人の数は362法人となっている。

■承認要件
(1号要件)
社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するものとして厚生労働大臣の証明の交付を受けること

【厚生労働大臣の証明事項】
・全収入金額に占める社会保険診療及び健康診査にかかる収入金額の割合が、80%を超えること。
・役職員1人につき年間の給与総額が 3,600 万円を超えないこと。
40 人以上(専ら皮膚泌尿器科、眼科等の診療を行う病院は 30 人以上)の患者を入院させるための施設を有すること
・各医療施設ごとに差額ベッド数の比率が 30%以下であること。など
(2号要件)
役員等のうちにその親族等の占める割合が3分の1以下であること。
(3号要件)
設立者、役員等もしくは社員又はこれらの親族等(特殊関係者)に対して、財産の運用や事業の運営に関して特別の利益を与えないこと。
(4号要件)
定款・寄附行為に、医療法人が解散した場合には、残余財産が国等に帰属する旨の定めがあること。
(5号要件)

その帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装して記録又は記載をしている事実等がないこと

7.退職者に支払うボーナスと源泉徴収

就業規則等で一定期間に在籍している者を支給対象者としている場合
⇒支給日に退職している者にもボーナスが支給される
⇒退職所得等ではなく、給与所得として源泉徴収が必要
⇒原則、給与所得の源泉徴収税額表の乙欄を使用
⇒ただし他社へ転職していない等で、新規に扶養控除等申告書を提出していない場合には甲欄で源泉徴収可


8.仮想通貨の会計処理/ASBJ論点整理

・ビットコインのみ⇒資金決済法上の仮想通貨すべてが対象に
・仮想通貨の売却損益の認識時点⇒一律の判断基準を設けない
期末評価の方法
・既存の会計基準(現金・棚卸資産・無形固定資産)には該当しない
・保有目的の観点からは時価をBS計上、差額をPL認識、が適合的
・活発な市場がある場合は時価評価する
・活発な市場がない場合、時価把握は困難。取得原価&減損とする


9.新規連結における税務上の留意点

■税額にも影響する問題
・繰越欠損金の利用制限
⇒連結対象としてから(完全支配ではない)、5年以内に以下の事象が発生した場合、繰欠の利用が不可能に。
⇒事業が継続していないと考えられるようなケースだとダメ
(1) 取得した法人が事業を営んでおらず、新たに事業を開始する場合
(2) 取得後、事業のすべてを廃止し、旧事業の事業規模の5倍超の資金の借入、出資、資産の受入を行う場合
(3) 役員のすべてが退任し、使用人の概ね20%以上相当の者が退職し、非従事事業の事業規模が旧事業の事業規模の5倍超となる場合 など
 ・グループ法人税制
100%完全支配するケースで問題に。
 ・受取配当金の益金不算入及び源泉所得税の税額控除

■税効果のみの問題(連結特有の一時差異)
・M&A等に当たってのアドバイザリーフィーの取扱い
⇒連結=費用処理、個別=取得原価に含める…一時差異に該当。
⇒株式の売却などの計画がなければスケジューリング不能差異⇒DTA計上不可


10.平成29年度税制改正における法人税関係の改正について

■確定申告書の提出期限の延長の特例
4ヶ月以内において税務署長が指定する月数の期間延長をすることが出来るとされた
※会計監査人を置いている場合で、3ヶ月以内に定時株主総会が招集されない常況にある場合

■利益連動給与(改正後:業績連動給与)
・算定指標に株価等が追加された
・株式、新株予約権による給与が追加された
・非同族会社の100%子会社が支給するものが追加された

■事前確定届出給与
・所定の時期に確定した数の株式又は新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与が追加された

■設立等の届出書の添付書類の簡素化
・法人設立届出書について登記事項証明書の添付が不要とされた


11.新規連結子会社を取得した時に連結会計への影響

■新規連結における検討項目や対応項目
(1)子会社の個別会計処理の検討・対応ポイント
・会計方針の統一
(2)連結会計上の検討・対応ポイント
・支配獲得日
・時価評価およびのれん
PPA
・セグメント
(3)情報収集
・子会社からのデータ収集方法と収集すべき内容
(4)税務
・税務上の影響
・連結納税
(5)内部統制
・評価範囲
(6)開示事項
・適時開示・臨時報告書


12.新規連結子会社に対する親会社での手続きのポイント

■必要情報をいかに正確かつ漏れなく、迅速かつ効率的に収集するか
⇒連結パッケージ(PKG)が有効
(1)子会社側でのシステム設計の要否を判断
(2)全ての子会社に新規子会社の追加を周知、配布する連結PKGのマスターにも反映
(3)新規子会社の経理担当者へ連結PKGの事前説明、作成時チェック用リストの配布
■連結精算表の作成にあたっての留意
(1)内取消去⇒親子会社間、子会社間取引を予め予想、自動仕訳の場合は突合差額の調整ルールを策定
(2)棚卸資産の未実現損益の消去⇒算定方法を事前に決めておく
 ■関連当事者取引⇒子会社経理担当者への関連当事者の範囲の説明、取引収集方法の整備


13.シンジケートローンに係る金利スワップ特例処理の各種論点

■金利スワップの特例処理
一定の要件を満たす場合、ヘッジ対象とヘッジ手段を一体のものとして考え、金利スワップを時価評価しない方法(IFRSでは認められていない)
※特例処理が適用できない場合でも、ヘッジ会計の要件を満たす場合はヘッジ会計適用可。
特例処理は例外的処理のため、要件充足の解釈は厳密に行うことを前提している

■ケース①
シンジケートローンのうち、特定の銀行からの借入部分を対象に金利スワップを締結した場合
⇒特例処理を適用することはできないと考えられる。
シンジケートローン全体を単一の借入として判断した場合、ヘッジ対象とヘッジ手段が一体ものと判断できない

■ケース②
シンジケートローンに対して複数の金利スワップを締結した場合
(シンジケートローンの総額と金利スワップの想定元本の総額は一致)
⇒特例処理を適用することはできると考えられる。
総額が一致している場合はヘッジ対象とヘッジ手段が一体と判断出来る。


14.親子上場が10年連続で減少し、2016年度末の親子上場社数は270社(前年比11社減)に

16年度は完全子会社化による上場廃止などで30社が親子上場を解消した。
一方、上場企業の買収などによる親子上場の増加は19社にとどまり、差し引き11社の純減

・親子上場は00年代半ばまで、ほぼ右肩上がりで増加。
知名度向上や資金調達を目的に子会社を上場させる例が相次ぎ、日本市場に特有な動きとして知られていた。
ただ、海外投資家の批判が高まったことなどを背景に、00年代後半からは一転して減少が続いている。

・ピークの2006年頃には、親子上場社数は400社超。


15.反社チェック

株主、役員、取引先、その他特別利害関係者が反社会的勢力でないかの各者の属性調査(属性チェック)
属性の調査方法としては、主にインターネット検索や記事検索(ex.日経テレコン)を活用

・検索方法
氏名(取引先の場合は代表取締役)又は会社名と検索キーワードで検索
⇒検索対象はグループ会社の全取引先(上場会社を含む)
⇒留意すべき業種と考えられる取引先については、全役員の個人名まで検索

・注意事項
1.検索モレ防止のため複数担当者で実施する
2.調査の記録は必ず残しておく

・検索キーワード例
企業名and ( 営業停止or 事業停止or 逮捕or 起訴or 検挙or 送検or 捜査or指名手配or 摘発or 行政処分or行政指導or 業務改善命令or 暴力団or 総会屋or 違反)









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