2016年8月27日土曜日

8/26 勉強会:財務的に困窮に陥っている企業を買収対象とするM&Aの実行上のポイント 他

1.追徴の可能性が高ければ損益計上

・「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準(案)」の概要が明らかに
⇒監査保証実務指針第63号等を踏襲するものになっている

・適用範囲は日本で納税する企業の連結、個別F/Sにおける法人税等
⇒範囲を海外にある子会社にまで広げると抜本的な見直しになるため国内に限定

・更正等で追加される可能性が高く金額が合理的に見積もれる場合
・更正等で還付されることが確実に見込まれ金額が合理的に見積もれる場合
⇒追徴税額、還付税額を損益に計上することとされている(誤謬に該当する場合を除く)

・開示に関しては監査保証実務指針第63号、実務対応報告第12号とほぼ同じ内容になる予定


2.非適格現物出資-株式以外の金銭の交付が無い場合(被現物出資法人)

■事例
現物出資法人A
・簿価⇒資産1,500、負債1,000(簿価純資産価額500)
・時価純資産価額⇒1,200
・対価はB
被現物出資法人B
・資本金200、資本剰余金300増加

■被現物出資法人Bの会計処理(簿価純資産価額で移転した場合)
(資産 1,500 /
                     / (負債 1,000
                     / (資本金 200
                     / (資本剰余金 300

■被現物出資法人Bの税務処理
⇒非適格現物出資なので、移転資産負債を時価により譲り受けたものとして計算する。
(資産 2,200 /
                      / (負債 1,000
                     / (資本金 200
                     / (資本金等の額 1,000

⇒したがって税務調整は以下となる。
(資産 700   / (資本金等の額 700

■別表調整
別表四⇒調整なし

別表五()
⇒資産700
⇒資本金等の額△700

別表五()
⇒利益積立金額700


3.経理担当者による横領行為と顧問税理士の責任を巡る判決

■診療所の経営者が顧問税理士に対し、診療所の経理担当者の不正行為(横領)を調査する義務を怠ったなどと主張して損害賠償を請求した事案
・裁判所は、顧問税理士に会計上の不正行為に関する調査義務があったと認めることはできないと判断。
・税務顧問契約の委任内容は税務代理等であり、納税者の財産または診療所の運営に対する不正について判断し納税者に報告する義務はない。
・経理担当者の横領に関する顧問税理士の賠償責任を否定。


4.香典メモ廃棄も重加賦課要件を満たさず

・香典メモ破棄の行為が重加算税の対象となる仮装隠ぺいに該当するか否かが争われた事例

A氏は、相続財産の大部分を占める金融資産(X銀行に保管)を除外し、相続税申告
・申告期限から約18か月後の実地調査で、X銀行の記載を破った香典メモを提出
・調査担当者が別の部屋で破れたメモを発見
A氏は、X銀行との取引を知られたくなかった旨を申述

■審判所の判断
A氏の言動等は、計画的なものではなくとっさの行動
・相続財産の隠ぺいをできる限り貫こうとしたとまでは言い難い

以上より重加算税は取り消された


5.今週の専門用語

■特定目的信託
⇒金銭債権や不動産などの「特定資産」の流動化を目的とする信託(SPC)

・具体的な流れ
(1)特定資産の保有者(委託者)が信託銀行へ資産を拠出
(2)委託者は信託銀行から信託受益権を受け取る
(3)委託者は信託受益権を証券会社などを通して投資家へ販売
(4)委託者はその販売代金を、投資家は収益分配金を得る


6.9号買換え縮減なら年度内譲渡も選択肢

9号買換え特例は近年縮減傾向
・平成27年度税制改正では、対象となる買換え資産や課税繰延べ割合が縮減
・平成29年度税制改正でも、さらなる縮減が実施される可能性あり

■平成27年度税制改正の適用期限は、平成29331
⇒平成29年度税制改正は平成2812月半ば公表の見込み
⇒新制度の内容を見た上で、いずれの適用を受けるか(それとも買換え自体を見送るか)判断可
⇒新制度において縮減されていれば、旧制度の適用を受ける方が有利(ただし、平成29331日迄に譲渡が必須)


7.認定取消しで固定資産税の軽減措置の特例はどうなる?

■固定資産税の軽減措置とは
H28年度税制改正により、中小企業者等が「経営力向上計画」を作成し、主務大臣から認定を受けた場合には、固定資産税を3年間、2分の1に軽減する措置。
※資本金1億円超の法人等は適用対象外。

■要件
H28.7.1からH31.3.31までの間において、
「認定経営力向上計画」に記載された一定の機械装置を取得した場合に軽減措置を受けられる。
※施行日前に取得した機械装置は適用対象外。

■計画に基づく目標が未達、事業が行われていない場合はどうなるか?
・目標が未達の場合:認定を取り消さない。
⇒軽減措置も適用される。
・事業を行っていない場合:認定を取り消すことがある。
⇒認定取消後は軽減措置の適用を受けることができない模様。ただし、取消しが過去に遡って遡及されることはない。


8.平成28年度における消費税の改正について

1】高額特定資産を取得した場合の免税点制度

(改正前)
・自ら課税事業者を選択した事業者 or 新設法人が、税抜100万円以上の資産を取得した場合、翌期から3年間は免税事業者となれない

(改正後)
上記に加え、
・税抜1,000万円以上の資産を取得等した場合、翌期から3年間は免税事業者となれない
※対象は、納税義務のあるすべての事業者(新設法人等の要件なし)

(影響)
H28.4.1以降に高額資産を取得した場合に適用(経過措置あり)
・今後は、すべての課税事業者が高額資産を取得する場合に注意必要

2】事業者向け電気通信利用役務の提供に係る内外判定基準の見直し

(改正前)
・国内企業の海外支店が、海外企業から「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合、国内取引となりリバースチャージ義務が発生
※国内企業の海外支店に納税義務が発生

(改正後)
・上記の取引のうち、海外で行う資産の譲渡等のみのために役務提供を受ける場合、国外取引としてリバースチャージ義務がなくなる

(影響)
H29.1.1以後に行う取引について適用


9.所得拡大税制と当初申告要件

■いわゆる当初申告要件とは
ある規定について、確定申告書に必要事項の記載があることを要件として、その適用を認める制度のこと。この要件が付されている場合には、修正申告書または更正請求書において後からその規定の適用をうけることはできない。

■所得拡大税制との関係
租税特別措置法の規定についてはすべて当初申告要件が付されているものとされる。所得拡大税制は租税特別措置法の規定であるため、当初申告要件がある。

■具体例
3月決算法人A社は5月提出の確定申告書において所得拡大税制の適用を受けなかった(別表の添付もなし)

・同年7月において所得拡大税制の適用対象であったことに気づき、更正の請求を行った。
⇒所得拡大税制は当初申告要件が付されているため却下となった(確定申告時に記載がないため適用不可)

<参考:当初申告要件がない規定>
・受取配当等の益金不算入
・所得税額控除
・外国税額控除、など
⇒修正申告時または更正の請求時においてはじめて適用することも可能


10.【均等割】無償増減資に係る加減算規定は株式会社のみ適用

■無償増減資に係る加減算規定(H27年度改正で導入済)
均等割の税率区分の基準となる「資本金等の額」から、
・無償減資を行った場合の一定の欠損てん補の額を減算でき、
・無償増資をした場合には、その増資額を加算する必要がある。
⇒対象は株式会社に限定されているため、合同会社等には適用されない。

《一方で...
■税率区分の基準見直し(こちらもH27年度改正で導入済)
「資本金等の額」が「資本金及び資本準備金の合計額」を下回る場合には、BSの資本金と資本準備金の合計額が均等割の税率区分の基準となる。
⇒こちらは株式会社に限らず,合同会社等にも適用される。


11.IFRS15号とポイント引当金

・ポイント引当金についての処理で日本基準とIFRSとで差異が出そう

日本基準
・企業が将来負担すると見込まれる金額を「ポイント引当金」として計上する処理が多い。

IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」
・販売価格を商品分とポイント分に分けて、それぞれ、履行義務を充足した時点で収益認識する。
⇒商品は販売時点、ポイントは利用時点
⇒ポイント分は販売時に収益認識しないこととなる。


12.会社法改正による影響

1. 監査等委員会設置会社への移行
⇒移行する会社は順調に増加。本年6月の株主総会で、監査等委員会設置会社に移行した会社は、前年6月の株主総会で移行した会社数の76.8%の増となっている。

※監査等委員会設置会社とは
3名以上の取締役で構成(過半数は社外取締役)。
⇒重要な業務執行の決定の全部または一部を取締役に委任可
⇒機動的な意思決定が可能というメリットがある。

2.Web開示の状況
⇒会社法改正により、Webで開示すれば、株主への招集通知に記載が不要となる項目が拡大。事務負担の減少に。


13.新国税不服申立制度の概要と審査請求の上手な進め方

■改正の内容(2016/4以降に適用)
(1) 不服申立期間(不利益処分を知った日の翌日から)
2か月以内⇒3か月以内
(2) 異議申立前置の廃止
国税当局へ異議申立てを経た後に審査請求
⇒直接審判所長に審査請求が可能に
(3) 審査請求人が閲覧できる証拠資料等の範囲
国税当局が任意に提出した証拠資料等のみ対象
⇒審判所が職権で収集した証拠資料等も閲覧の対象
(4) 閲覧資料のコピー
不可⇒可
(3)(4)の留意点
閲覧可能な資料が多く⇒効率よく取捨選択する必要性
国税審判官経験者を代理人に選任して対応してもらうと効率的な選別・作業ができる。
(5) 審査請求人からの国税当局への口頭質問できない⇒口頭意見陳述の際にできることとなった
(5)の留意点
原処分庁の主張について、根拠や考え方の疑問点を質問、回答を踏まえて審査請求でどの部分を争い、どのように主張を展開していくか等について検討すべき
(積極的な質問権の行使)


14.財務的に困窮に陥っている企業を買収対象とするM&Aの実行上のポイント

・意向表明書の留意点
 ⇒有利子負債の削減が必要であることを明記する。

DD実施上の留意点
 ⇒実質債務超過額を把握する(資産負債を「私的整理に関するガイドラインによる評価基準」に出来る限り準拠した形で評価)
 ⇒正常運転資金の把握(支払繰延等で歪んでいる可能性がある為補正)
 ⇒社保や税金等公的債務の滞留状況の把握
 ⇒使用可能な欠損金の把握
 ⇒買収対象企業とともに再生計画案の作成に関わることが重要

・最終契約書の留意点
 ⇒事後的な損害賠償責任のリスク評価額を買収金額に反映させるべき
 ⇒効力は、再生計画への金融機関の同意を条件とする停止条件付きとすべき


15.CGコード対応による招集通知の状況

■取締役等の選任・指名の方針・手続き等における本年6月総会で実務上の大きな変更点

・社内役員の個々の選任・指名理由の記載
⇒取締役等の選任議案に関して、社外役員についてのみ各候補者の選任理由の記載が義務づけられている

・本年6月総会では
⇒社外役員のみならず、社内役員の選任理由を株主総会参考資料に記載する会社が大幅増加(前年比5倍)
⇒背景として、株主からは略歴だけではなく、功績や実績が求められた


16.企業買収に伴い取得した株式の減損判定

■前提
・実価上回る金額で(超過収益力を見込んで)取得した子株が取得原価の50%以下
・超過収益力には当社へのシナジー相当分も含まれる
・子会社は非上場

(一般論)時価を把握することが極めて困難と認められる株式の評価
・取得原価評価、減損は実価で判断
・実価:純資産方式による算定が実務上一般的(1株当たり純資産額×所有株式数)
IFRSでは公正価値による評価必要

■超過収益力を非上場株の実価に反映できるか
⇒実価に反映することOK
※買収時に見込の超過収益力が毀損していないことが条件

■当社(投資会社)に帰属するシナジー効果を実価に反映できるか
⇒実価に反映することOK
・シナジー効果:買い手側が享受できる価値(企業価値評価ガイド
ライン)
・連結決算上、子会社株式の減損時は係るのれんの一時償却必要


17.グループ法人税制と税効果会計

100%グループ内で資産譲渡を行った場合、
税務上、売り手側の譲渡損益は買い手側が再度売却するまで繰り延べられる。
(個別財務諸表):売り手
一時差異が解消すると見込まれる期に、売り手側に適用される税率にもとづき、繰延税金資産または負債を計上する。
(連結財務諸表)
会計上も損益を認識しないことから、繰延税金資産または負債を計上しない。

100%グループ内で子会社が親会社に寄付を行った場合、税務上、親会社が保有している子会社の株式を帳簿価額を修正。
(個別財務諸表):親会社
株式の帳簿価額の差額分、繰延税金資産または負債を計上。
なお、繰延税金資産の計上は株式売却の予定があり、回収可能性がある場合に限る。


18.ショートレビューによる資金管理(出納)の主なチェックポイント

・金銭出納と記帳、金銭出納と販売・購買などの担当分離が行われている等、牽制が働く組織となっているか?
⇒記帳業務と出納業務が同一担当者により行われている場合には、これを分離するなど、業務分掌を行う必要がある。

・収納金は直接支払いに充当せずに遅滞なく銀行へ預け入れされているか?
B to Bの企業では現金での回収を行うことはなく、該当なしがほとんど。

・金銭の支出は、支払依頼部署の責任者の承認印が押印された請求書等に基づいて行われているか?
⇒例えば支払依頼部署ではない経理部のみの押印だけだと不十分であり、支払依頼部署(営業部など)の承認印がある支払依頼書に基づき、支払手続を実施することが必要である。

・出納担当者以外の責任者が定期的に実査しているか?
⇒従業員不正を防止する目的もある。

・毎月銀行勘定帳と銀行残高証明書とを照合をし、銀行勘定調整表を作成しているか?
⇒銀行残高証明書ではなくとも、定期的に通帳と帳簿残高の一致を確認していれば、問題なし。









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2016年8月13日土曜日

8/12 勉強会:居住用財産 譲渡所得特別控除 相続時にも適用へ 他

1.粉飾による課徴金巡り役員に賠償命じる

・有価証券報告書に虚偽記載
・これにより会社は
 第三者委員会を設置し調査…第三者委員会に対する報酬が発生
 決算、過去の有価証券報告書を訂正…監査報酬が発生
 金融庁の課徴金納付命令に従い課徴金を納付

・会社は不正に関与した元取締役会長らに対し損害賠償を請求

・地裁の判断
 元取締役会長が粉飾に関与
 第三者委員会が指摘した11の取引のうち7の取引を粉飾と認定
 上記2つの報酬について11分の7に相当する金額と課徴金の全額を損害と認定し元取締役会長に損害賠償を命じた


2.非適格現物出資-株式以外の金銭の交付が無い場合(現物出資法人)

■事例
現物出資法人A
・簿価⇒資産1,500、負債1,000(簿価純資産価額500)
・時価純資産価額⇒1,200
・対価はB
被現物出資法人B
・資本金200、資本剰余金300増加

■現物出資法人Aの会計処理(簿価純資産価額で移転した場合)
()負債1,000/()資産1,500
()B社株式500

■現物出資法人Aの税務処理
⇒非適格現物出資なので、移転資産負債を時価により譲渡したものとして計算する。
()負債1,000/()資産1,500
()B社株式1,200/()譲渡益700

⇒したがって税務調整は以下となる。
()B社株式700/()譲渡益 700

■別表調整
別表四⇒譲渡益計上漏れ700(加算・留保)

別表五()
B社株式700

別表五()
⇒調整なし


3.処分が異議決定までに存在すれば適法

■不動産の公売に関する売却決定処分に対する異議申立て
・異議申立ての段階でいまだ行われていない処分に対する異議申立てが、異議決定されるまでの間に当該対象である処分が下された場合、適法であるか否か?
⇒異議決定までに当該処分が下された場合には適法であると判断


4.今週の専門用語

■役員等の株式会社に対する損害賠償責任
役員等()がその任務を怠ったことにより株式会社に損害を与えた場合に負う損害賠償責任のこと。総株主の同意があれば免除することができる。

※取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人

()
・循環取引などの粉飾取引を行った場合
・役員等が行う利益相反取引により株式会社に損害が生じた場合


5.特定譲渡制限付株式、退職所得にも該当

平成2878日付の所得税基本通達に改正

■特定譲渡制限付株式の所得税法上の取扱い
・雇用関係による交付は給与所得
※但し退職に基因した場合のみ退職所得

■特定譲渡制限付株式の法人税法上の取扱い
・事前確定届出給与の一つ
⇒退職の時期が確定していない中で交付された株式は、事前確定届出給与の要件を満たさないと考えられる。

個人を退職所得とし、法人でも損金算入とさせるために、譲渡制限期間と退職のタイミングを合わせる等工夫が必要。


6.税効果適用、決算日に国会成立の税法で

■税効果会計に適用する税率に関する適用指針
⇒決算日において国会で成立している税法に基づく「税率」を適用
⇒税額を算定する、他の要素(ex.繰欠)についても、同様の取扱いをすべき
⇒決算日において国会で成立している「税法」に基づいて算定する方向で検討

■税法の変更があった場合、税率の変更があった場合と同様の開示
(1)決算日以前に税法の改正+税法の改正に伴いDTA及びDTLの金額を修正した場合、その旨、修正額を開示

(2)決算日後に税法の改正があった場合
その内容及びその影響額を開示


7.同族会社等の判定明細書利用の「株主リスト」の書式が明らかに

■株主リストとは
商業登記規則等の改正により、H28101日以降、役員変更の登記等、株主総会の決議を要する事項について登記する場合は、上位10名等の「株主リスト」の添付を義務付けられることとなった。大企業のみならず、中小企業にも適用される。

主な記載事項
・株主の氏名又は名称
・株主の住所
・株主の有する議決権数
・株主の議決権数割合
・代表者の証明印

■法人税の申告書の別表2で対応可能か。
原則:写しとしてそのまま提出することはできない。ただし以下要件を満たす場合は、別表2の明細書を利用することが可能となる。
・別表2に発行済株式の総数が記載されている。
・別表2に記載された株主の氏名・住所・株数等が株主総会の日と同じである。
・別表2に記載された株主が、登記事項につき議決権行使できた総株主の議決権の2/3を超える


8.消費税率引上げ延期に伴う税制措置の全容

・消費税率10%への引上げ時期が下記の通り変更
(従前)H29.4.1(変更後)H31.10.1 2年半延期
・軽減税率の導入時期、インボイス制度の導入時期なども、同様に2年半延期
・ただし、中小事業者(基準期間の課税売上5,000万円以下)以外の事業者に係る売上税額・仕入税額の計算特例は適用廃止

※税額の計算特例(税額の簡易計算)は元々中小事業者向けだが、軽減税率対応システムの導入準備期間確保のため、経過措置として、中小事業者以外にも適用予定であった。
※軽減税率導入時期が延期となり、準備期間も伸びたことから、上記経過措置は不要と判断された。

⇒中小事業者以外は、早めにシステム導入準備を進める必要あり


9.不動産取得税の減額措置巡り逆転の納税者勝訴判決

■概要
・不動産会社Aは土地を購入し、不動産取得税を納付した
・取得から4年以内に総戸数100戸以上の住宅を建築し、不動産取得税の減免を申請した
※土地取得から4年以内に総戸数100戸以上の住宅を建築すると不動産取得税の減免を受けることができる
・建築戸数は6棟で総戸数は405戸(1棟あたり約70戸)

■争点
<総戸数>をどのように認識するか?
・不動産会社A⇒すべての棟の戸数の合計で判断すべき
・東京都⇒1棟あたりの総戸数で判断すべき

■判決
・東京地裁⇒1棟あたりの総戸数で判断する
・東京高裁⇒すべての棟の総戸数で判断する
⇒地裁の判断を取り消した。

現在、最高裁で係属中


10.【消費税】インボイス制度の導入を平成3510月に2年半延期

自民公明両党は「消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置」を正式決定した。増税のタイミングと同様に、各制度導入のタイミングが2年半先送りされる。

 ※⇒の左側が改正前、右側が改正案

■税率引上関係
・税率引き上げ時期
  H29.4.1H31.10.1
・経過措置の指定日
  H28.10.1H31.4.1

■軽減税率関係
・軽減税率導入時期
  H29.4.1H31.10.1
・インボイス制度の導入時期
  H33.4.1H35.10.1


11.土地再評価差額金

・「土地の再評価に関す法律」を適用し土地を時価で再評価
・税務上、評価差額は課税対象とならない
 ⇒一時差異となり税効果の対象となる
・法定実効税率に変更があった場合には、再評価にかかるDTADTLは変更後の実効税率で計算し直し、DTADTLの増減額は再評価差額金に加減する。


12.居住用財産 譲渡所得特別控除 相続時にも適用へ

・自分が住んでいた土地家屋を売却する場合、譲渡所得から3,000万円が特別控除できる。
・この制度は相続人には適用されず、結果、売却されず放置される空き家が発生する原因となっていた。
・税制改正により、相続人にも同様の控除がされるようになった(平成2841日以後)。
・条件として、「新耐震基準に適用した建物であること(ただし相続後に耐震改修しても可)」、「相続開始後概ね3年以内」、「売却額1億円以下」、「相続後、人に貸し付けたりしていない」を満たす必要がある。


13.ショートレビューによる固定資産管理の主なチェックポイント

・固定資産の取得・処分については、所定の責任者の承認を受けているか?
⇒重要な固定資産の取得・処分が発生する場合には、職務分掌規程等により定められた権限者の承認を行う必要がある。
ex.○○百万円以上の固定資産の取得については、取締役の承認が必要)

・固定資産の取得・処分は設備投資計画に基づいて行われているか?
⇒重要な固定資産の取得・処分が見込まれる場合には、予算及び中期経営計画等において、その計画を反映させる必要がある。

・償却方法は適切に行われ、償却不足が生じていないか?
⇒会計上では費用の計上漏れが問題視されるため、償却不足は解消する必要がある。

・現物について定期的に実査が行われているか?
⇒例えば、四半期や毎決算期末等に定期的に実査を行う必要がある。

・現物に管理番号を付し、台帳との照合が可能か?
⇒実査を効率的に実施する点からも、現物と紐づけるための資産番号を付与する必要がある。

・リース契約により使用している資産についても、他の固定資産と同様に台帳管理、現物管理が行われているか?

⇒リース物件が少ない場合(exコピー機12台)は特段問題視されないが、金額的重要性のあるリース資産の取得やリース物件が増加した場合には、他の固定資産と同様の管理が必要である。







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2016年8月7日日曜日

8/5 勉強会:平成28年度における所得税関係の改正について 他

1.税務調査の省略が可能になる税務コーポレートガバナンス

・税務に関するコーポレートガバナンスが良いと認められた特別国税調査官所掌(しょしょう)法人については、次年度の税務調査を省略することが可能となっている
・国税庁は取組内容を明確化した事務運営指針を公表
・対象となる法人 資本金等が40億円以上の法人で国税局長が指定したもの
・調査間隔を1年延長している。最大で4年が認められている。


2.任意組合の持分譲渡巡り一部取消し裁決

■事案
 任意組合の組合財産⇒ホテルとその敷地、改良補修積立金(現預金)出資持分を他者へ譲渡

■譲渡時の課税関係
 土地建物に対する持分部分⇒分離長期譲渡所得
 改良補修積立金(現預金)⇒譲渡収入の対象外と判断
 ⇒キャピタルゲインを生ずべき資産ではないため

■総合課税になりうるか
 匿名組合の持分譲渡⇒特定の場合には総合課税となる
 任意組合の持分譲渡は?
 ⇒審判所は匿名組合と同様に取り扱うべきではないと指摘


3.今週の専門用語

■自主開示事項
調査省略対象事業年度の申告の際に開示する事項

・具体的な開示事項
(1)組織再編における適格組織再編か否かの判定
(2)特別損失計上取引
(3)売却・譲渡・除却・評価損などの損失計上取引
(4)その他一時的な損金計上取引
(5)取引額が売上額の0.1%以上の仮受金・仮払金取引

※国税当局と見解の相違が生じやすい取引を記載


4.宗教法人が営むビル型納骨堂は固定資産税等の課税対象?

宗教法人が専ら本来の目的で利用している、「境内建物及び境内地」(宗教法人法第3条に規定)は、固定資産税や都市計画税が課税されない(地方法人税法)
⇒宗教法人が運営するビル型の納骨堂()は非課税の対象となる「境内建物及び境内地」に該当するか否か

()地上5階・地下1階の建物。各階には納骨庫や参拝施設の他、礼拝施設や会食施設が設置

(1)利用者の宗旨宗派を問わない
(2)宗教法人以外の宗旨宗派の僧侶等が主催する儀式行事が施設利用料を払うことで許容され、また、実際に例外的とは言えない割合で行われている
(3)民間業者を通して広く利用者を募集している

東京地裁の判決:非課税の対象となる「境内建物及び境内地」に該当せず課税される。
(1)(3)の点を踏まえ、本件納骨堂は専ら宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状況にあるとは言えないと指摘


5.平成28年度における所得税関係の改正について

H28.4.1より施行された主な改正論点

■居住用財産の3,000万円控除(相続により取得した空き家等が対象)
適用要件
・相続により居住用家屋等を取得
H28.4.1-H31.12.31まで間に譲渡
・相続後空き家でも適用可
・譲渡価額が1億円以下

■減価償却制度の改正
H28.4.1以後取得の建物附属設備及び構築物等は定額法のみ適用

上記のほかにも規定の改正や適用期限の延長等あり。


6.生産性向上税制、償却不足額の繰越可

・生産性向上設備投資促進税制の特別償却
H28.4.1H29.3.31までに取得等した資産:償却割合50%
H29.4.1以降に取得等した資産:制度自体が廃止
H29.3.31までに取得等した資産であれば、H29.4.1以降開始事業年度であっても、特別償却不足額の繰越し制度の活用は可能


7.有料老人ホーム交付の「預り証」にかかる印紙税(文書回答)

■印紙税法上
・「売上代金にかかる金銭の受取書」は第17号の1文書となる
・「売上代金以外の金銭の受取書」は第17号の2文書となる。
※第17号の1文書の税額は記載額により変動
※第17号の2文書の税額は一律200

■有料老人ホームが交付する「預り証」について
(1)照会者の主張
・終身利用の家賃に充当する一時金を受領した際に発行
・老人福祉法上、一定期間が経過するまで返還義務がある
⇒あくまで「預り金」の受領証明書であり第17号の2文書に該当する

(2)東京国税局の回答
・役務提供(施設利用)の対価として受領すべき家賃の前払い
・返還義務はあっても実質的に家賃の対価であり「売上代金」と判断できる
⇒預り金は売上代金の受領証明書であり第17号の1文書に該当する


8.【贈与税】暦年贈与サポートサービスと連年贈与

■「暦年贈与サポートサービス」とは
相続税の基礎控除額の引下げにより、生前贈与に関連した節税商品として注目されている。

①贈与の都度、銀行等が贈与者と受贈者間で贈与に関する双方合意がある旨を確認し、
②「贈与契約書」を作成して贈与者の口座から受贈者の口座へ贈与資金を振り込むことで各年の贈与額ベースで贈与税の基礎控除(110万円)の適用を受けるもの。

■留意点
あらかじめ一定額を定期的に贈与する旨を取り決めていた場合には、取り扱いが異なる。
本サービスを利用したとしても定期金の権利の贈与があったとして、契約金において定期金の権利の評価額に対して贈与税が課税される。


9.アプリ内課金の収益認識

基本プレーが無料でアイテム課金の場合の売上認識について。
①ゲーム内通貨等の販売時点
②ゲーム内通貨等を利用してアイテムを購入した時点
③アイテムを使用した時点
⇒日本基準ではいずれのケースもある
IFRSでは③=アイテムを使用した時点


10.未回収の売掛金の会計処理

1.未回収の売掛金がある場合の貸倒引当金計上額の算定
・取引先の経営状況に応じて、見積もり方法が定められている。

(1)経営状態に大きな問題なし
⇒一般債権
⇒貸倒実績率にて評価
(2)破綻はしていないが、債務の弁済能力に重大な問題あり
⇒貸倒懸念債権
CF見積法 or  財務内容評価法のいずれかで評価
(3)経営破綻、もしくは実質的に経営破綻
⇒破産更生債権等
⇒財務内容評価法で評価

2.取引先の経営状態に問題はないが、売掛金が滞留している場合の考え方
・何かの理由で、払えるのに払ってもらえない売掛金など
(1)取引先の経営状況で形式的に考える
⇒一般債権として取り扱う
(2)支払ってもらえない理由を第一に考える
⇒貸倒懸念債権として取り扱う


11.株式交換時の株主資本項目決定の際の留意点

■論点
適格株式交換による払込資本の増加についての組み合わせ

■法人住民税均等割の負担増
資本金+資本準備金の増加⇒均等割の計算基礎が増加⇒税負担増

■債権者保護
その他資本剰余金で全額処理したい⇒債権者保護手続をとればOK
債権者保護手続をとらないと、資本金又は資本準備金の増加にしなければならない


12.四半期決算における減損処理方法

■有価証券
・四半期切り放し法と四半期洗い替え法が認められる(継続適用)

■ゴルフ会員権
・有価証券と同様、四半期切り放し法と四半期洗い替え法が認められる(継続適用)

■固定資産
・減損の存在が相当程度確実な場合に限り認識及び測定


13.監査役監査実施要領の解説

従前明確化されていなかった内容を中心に記載

■監査役スタッフの独立性について検討すべき事項の例
①監査役の監査役スタッフに対する指揮命令権の明確化
②監査役スタッフの人事異動・人事評価・懲戒処分に関する監査役の同意権の明確化
③監査役スタッフの活動費用の確保


14.円滑に進めるグループ横断プロジェクト(京王電鉄)

■連結決算早期化プロジェクト
グループ会社との協力関係の構築が必須
⇒そのための仕掛けが必要

①基本方針を持つ
⇒議論を尽くすことで、チームメンバーの意識が一つになる
⇒グループ会社への説明も熱意のこもった合理的なものとなる
⇒問題に対するチームメンバーの主観判断を少なく、負担軽減
⇒全体の公平感を保持

②基本方針を明確に伝える
・グループ会社への要求は厳しい内容が通常
⇒メリットも合わせて説明すると効果的
・「原則として・・とする」はNG
⇒例外を設けるならば限定列挙

③相手の話をよく聞く
・相手の問題点を1つずつ解決していく
⇒解決方法をこちらで限定せず、相手に述べてもらうように

④丁寧に対応する
・一度ヒアリングした内容は全て書き留める
⇒次回のヒアリングでは必ず一つレベルの高い議論をする
・与えた宿題事項の適時の進捗リマインド
⇒相手から信頼感を獲得する

⑤トップの関与を活用
・振りかざすものではなく、後ろ盾として必要
⇒プロジェクトメンバーの励み・使命感につながる


15.「会計監査のあり方に関する懇談会」提言を受けて

・相次ぐ会計不祥事と、会計監査人がそれを見過ごしていた事例を受けて、金融庁からの提言。
・監査法人もガバナンス・コードを導入することを検討。イギリス、オランダは大手監査法人のみ。日本でも同様に。
・株主向けの情報提供の充実。例として、「同一の監査人による監査を受けてきた期間」、「監査法人の研修制度」、「監査人がどのようなリスクに着目して監査を行ったか」
・監査責任者ではなく、監査法人そのものを一定期間でローテーションする制度の検討。
・適切な監査時間を確保するための工夫、特にIT活用の充実。


16.ショートレビューによる販売管理(与信管理、債権管理)の主なチェックポイント

・新規の販売契約の締結等にあたり、相手先の信用調査を行い、必要な承認を得て取引を開始しているか?
⇒職務分掌規程や与信管理規程等を整備し、運用することが必要。

・得意先に対して与信限度額を設定し、限度超過の場合は必要な承認を行っているか?
・既存顧客について、継続的に与信限度額の見直しを行い、その条件で実際に運用されているか?
⇒一定の金額レンジを設け、レンジ単位で与信限度額を設定することは可能であるが、特に金額的重要性が高い顧客については、得意先ごとに与信限度額の設定が必要。

・債権の滞留期間別把握と調査・催促状況はどのように行っているか?
⇒未回収先は、未収金リスト(年齢表)を作成し、どのくらいの期間未回収なのかを管理することが必要。

・貸倒引当金設定の妥当性

⇒作成した未回収リストを基に、貸倒懸念のある先を特定することや、実際に貸倒が発生した場合には、貸倒実績に応じた引当金を設定する必要がある。







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