2019年7月30日火曜日

7/26 勉強会:親子上場の問題点 他

1.固定資産評価の取消訴訟で追加主張は可

■寺院である納税者が所有する建物(鉄骨・鉄筋コンクリート造)の固定資産税評価額が問題となっていた税務訴訟
・東京都は、建物全体を一単位として鉄筋コンクリート造の補正率を適用し、登録価格を6億8,800万円と決定。
・納税者は、鉄骨造である部分には鉄骨造の補正率を適用すべきとし、登録価格は5億8,700万円と主張。
・納税者は一審で敗訴。控訴審の中で納税者は、鉄筋及びコンクリート使用料の誤りを追加主張したうえで、登録価格は5億4,727万円であると主張。
・東京高裁は、控訴審における追加主張は裁決前置の要件を充足せず、不適法であるとして追加主張を却下。

⇒最高裁は、追加主張であっても、審査決定の取消訴訟においてその違法性を基礎づける事由として主張することが許されるべきと判断。
⇒最高裁は、東京高裁判決を棄却したうえで、本件取消訴訟を原審である東京高裁に差し戻した。




2.ヤフーに続く132条の2否認で原告敗訴

■法人税法132条の2
・組織再編成に係る行為計算否認規定

■概要
・会社名や概要は不明
・東京地裁「事業の移転及び継続という実質を備えず」と判断。原告は控訴

■争点
(1) 繰越欠損金の引き継ぎ要件を満たす点
・引継ぎ制限が適用外になるケースでも行為計算否認は適用できるのか
⇒引継ぎ制限「典型的な租税回避行為としてあらかじめ想定されるものを規定しているにすぎない」
⇒形式要件をみたしていても実質的な判断となる

(2) 「法人税の負担を不当に減少させる結果となる」か否か
・スキーム:旧子会社の吸収合併に合わせて新子会社を設立、合併と同日に旧子会社の従業員、棚卸資産、商号、役員等をすべて新子会社に引き継がせている
⇒事業の移転及び継続という実質を備えているとはいえない。ひどく不自然なスキーム
⇒繰越欠損金の引継ぎによる税負担の減少以外の合理的な目的があるとは認めがたい




3.働き方改革に資する設備も中小企業経営強化税制の対象

中小企業経営強化税制の適用要件である一定の金額要件及び販売時期要件を満たしていることを前提として、働き方改革で資する減価償却資産を対象とする。
⇒即時償却又は税額控除が認められる

■働き方改革の推進に資する減価償却資産の例
・建物附属設備
⇒生産等活動の用に直接供される工場、店舗、作業場等の中に設置させる施設(食堂、休憩室、更衣室、ロッカールーム、シャワールーム、仮眠室、トイレ等)に係る建物附属設備(電気設備、給排水設備、冷暖房設備、可動式間仕切り等)

・器具及び備品
⇒工場、店舗、作業場等で行う生産等活動のために取得されるもので、その生産等活動の用に直接供される器具備品(テレワーク用電子計算機等)、ソフトウェア(テレビ会議システム、勤怠管理システム等)



4.審判所が土地の取得費で市街地価格指数を認めず

■事例
相続により取得して土地を譲渡したことによる譲渡所得金額の計算上控除する取得費について、概算取得費か市街地価格指数等により算出した価額によるべきか争われた裁決。
⇒国税不服審判所は市街地価格指数は認められず、概算取得費とするのが相当であると判断した。

■判断内容
・措置法には土地取得費は、土地の譲渡に係る収入金額の100分の5に相当する金額(概算取得費)とする旨の規定があり、概算取得費<実額取得費の場合かつ実額取得費が証明できると時は実額取得費とする旨が規定されている。
⇒市街地価格指数もみとめられるのではないか。
⇒しかし、請求人は売買契約書等が見つからず、実額取得費を直接証明できるものを提出しなかった。過去に農地→宅地に利用形態の変化があったため、合理的に認められないとの判断となった。




5.剰余金配当の課税関係で東京高裁が注目判決

■概要
資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とした配当をしたA社に対して、
課税当局は、その配当全額が資本と利益が混合したものとし、
全体を資本の払戻しとして課税。

■結論
東京高裁が以下の判決
資本剰余金を原資とする配当⇒資本の払戻し
利益剰余金を原資とする配当⇒剰余金の配当となり益金不算入の対象となる



6.裁決例:同族会社の行為計算の否認

■概要
A社グループ(日本を含むグローバル企業)に属するX社は
海外グループ法人B社から866億円の借り入れを行い、これにかかる
支払利息を損金算入した。
これについて税務当局は<同族会社の行為計算の否認>が適用できる
事項に該当するとして否認・更正処分を行った。

■争点
<同族会社の行為計算の否認>規定は「これを容認した場合には
法人税の負担を不当に減少させる結果となる」ような不自然・不合理な
行為=経済的合理性を欠く行為を否認するものである。
今回はX社の行為が「経済的合理性を欠いているか否か」が争われた。

■借入の理由
・多額の負債を抱えるB社の財政を健全化したい
・国内企業再編のためX社に資金を集中させる必要がある
・ユーロ・円通貨スワップ取引を終了させ手数料負担を減らしたい
・米国税制との関連で資本関係を整理する必要がある、など

■東京地裁判決
・一連の取引に「経済的合理性がない」とまでは言えないため<同族会社の行為計算の否認>
規定の適用はできないとして国の主張を退けた。

■補足
東京地裁は、「同族会社がその特性を活かした経済活動を行うことはごく自然な事柄である」とし
同族会社でなければなし得ないような行為・計算があったとしても直ちに税負担の公平が害される
ものではない、とした。
⇒納税者にとって非常に有利な判断で、本件が確定した場合には<同族会社の行為計算の否認>規定は
事実上適用の余地がなくなる。





7.消費税:10/1の0時以後も売上管理等により旧税率適用も

10/1以後の取引は新税率10%が適用されるが、
深夜営業を行っている飲食店等を考慮し、一部例外を認めている。

■原則
10/1の0時以後に行う譲渡(販売)や仕入(支払)は、
軽減税率対象資産を除き10%が適用される
⇒0時を過ぎての会計やタクシーの支払い、電車賃等

■例外
飲食店などで、自社の継続的に行う売上管理等(ルール)を踏襲している場合、旧税率を適用しても問題なし
⇒朝5時の閉店までは前日の営業日の売上としているお店など
ただし従前より継続適用している場合に限られる。




8.三菱ケミカルHD、監査法人から「KAMに相当する事項」を受領。

・連結子会社のM&Aに伴う無形資産およびのれんの計上について、その測定が複雑かつ「経営者の判断を伴う」ものであることから、監査法人が「監査上の主要な検討事項」に相当するものと判断。
・実施した監査手続について記載した。
 ⇒ 契約書閲覧、経営者との議論、取締役会報告資料の閲覧
 ⇒ 経営者が利用した外部の評価専門家への質問
 ⇒ ネットワークファームの評価専門家による検証
 ⇒ 売上収益予測の分析(過去実績及び類似企業との比較)





収益認識基準早期適用会社の開示

・収益認識基準の早期適用は28社
⇒IFRS16社、米国基準2社、日本基準10社
⇒日本基準の会社の売上高の影響は、増加:4社、減少3社、軽微2社、遡及修正1社

・開示書類で「会計方針の注記」で具体的な影響の記載がある。
例①)オープンハウス
 →不動産仲介手数料を「契約成立時点」から「物件引渡時点」へ
例②)日本オラクル
 →ライセンス販売を「契約に定める許諾期間に渡って認識」から「顧客に供された時点で認識」へ

・適用初年度の経過措置
 ①原則
 →会計方針の変更として取り扱い、過去の期間にすべて遡及適用する。
 ②容認
 →遡及適用した場合の累積的影響額を、期首の利益剰余金に加減し、期首から新たな会計方針を適用。




10.取得となる会社分割

・分離元企業は「投資の清算」or「投資の継続」によって会計処理が異なる
⇒「投資の清算」=移転損益認識
⇒「投資の継続」=移転損益認識しない
・分離先企業=パーチェス法を適用、税効果を認識
・分離元企業の税効果会計=「投資の清算」or「投資の継続」、税務上「適格」or「非適格」によって会計処理が異なる


11.収益基準下での工事契約について~工事完成基準・原価回収基準~

■収益基準公表による影響
・旧工事基準が廃止(収益基準に、「工事完成基準」「工事進行基準」という用語は無い)
・旧:成果の確実性が見込まれるか⇒新:履行義務の充足が一定期間において見込まれるか

■適用する基準の決定フロー
①工事契約が一定期間に渡り充足される履行義務に該当するか(NOなら工事完成基準)
②履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もれるか(NOなら原価回収基準)
③①②ともにYESなら工事進行基準
※履行義務の充足=支配の獲得
※進捗度の見積もり方法
・アウトプット法:生産単位数といった達成成果を指標
・インプット法:コストや労働時間といった投入量を指標
⇒理論的にあるべきはアウトプット法
⇒計測が難しいので、実務上はインプット法(原価比例法等)が主

■工事完成基準
・5要件に照らして収益の認識時期を判断
(1)対価を収受する権利を有する
(2)法的所有権を有する
(3)物理的占有がある
(4)所有に伴う重大なリスクの引き受けと経済価値の享受がある
(5)検収が終了している
・不動産⇒顧客から代金の回収と鍵を渡した時点で全て充足
・受注製作ソフト⇒契約内容や検収書の受領が重要(無形かつ登記制度がなく(2)(3)が△)

■原価回収基準
・原価と同一の金額を収益計上する方法
・損益は0だが、履行義務の充足の進捗という事実を反映する
・いまだ契約に至っていないが、発生費用は実費でも回収できると考えられるケース
⇒緊急時・災害時の工事といった特殊なケースが該当




12.最近ありがちな連結納税の実務上の留意点

■連結子法人の範囲
株式会社以外の会社が設立された場合の連結法人の範囲
・合名会社、合資会社、合同会社は、普通法人のため、連結子法人の対象となる。
・一般社団法人は、連結子法人に該当しない。

■自己創設営業権
平成29年度税制改正によって、現金買収でも特定連結子法人に該当するケースが生じ、時価評価の対象資産からは、自己創設営業権が除外されている。


13.中小企業の消費税の軽減税率の特例

1.売上税額の計算の特例

(1)「小売等軽減仕入割合」の特例
■対象企業
① 軽減税率対象品目を取り扱う卸売業・小売業(他社から購入した商品を加工せずに販売する企業)
② 特例摘要期間中に簡易課税制度の特例を受けない企業
③ 課税仕入(税込)に対して、税率ごとに区分経理ができる企業
■内容
課税売上(税込)に対して、小売等軽減仕入割合(課税仕入に占める軽減税率対象分の課税仕入の割合)をかけた額を軽減対象品目の課税売上(税込)とみなして、売上税額を計算できる。

(2)「軽減売上割合」の特例
■対象企業
(1)以外の軽減税率対象品目を取り扱う企業(業種を問わない)
■内容
課税売上(税込)に、軽減税率割合(通常の10営業日分の課税売上に占める軽減税率対象分の課税売上の割合)をかけた額を軽減税率対象品目の課税売上(税込)とみなして、売上税額を計算できる。

(3)上記(1)、(2)の割合計算が難しい場合の特例
■対象企業
適用対象期間中の課税売上(税込)のうち、軽減税率対象分の課税売上が概ね50%以上の企業
■内容
A、Bの割合の計算がいずれも難しい場合、これらの割合を50%として計算できる。

2.仕入税額の計算の特例

(1)「小売等軽減売上割合」の特例
■対象企業
① 軽減税率対象品目を取り扱う卸売業・小売業
② 特例摘要期間中に簡易課税制度の特例を受けない企業
③ 課税売上(税込)に対して、税率ごとに区分経理ができる企業
■内容
課税仕入(税込)に、小売等軽減売上割合(課税売上に占める軽減税率対象分の課税売上の割合)を乗じた金額を軽減対象品目の課税仕入(税込)として、仕入税額を計算できる。

(2)「簡易課税制度」の届出の特例
■対象企業
軽減税率対象品目の扱いがある(1)以外の中小企業
「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出すれば、届出を行った課税期間から簡易課税制度を適用することができる(適用期間は2019年10月1日~2020年9月30日まで)。

■適用期限
売上税額計算の特例は、2019年10月1日から4年間
仕入税額計算の特例は、2019年10月1日から1年間の日の属する課税期間の末日まで




14.親子上場の問題点

・親子上場は欧米でほとんどみられない日本独特の資本政策
・親子上場の問題点は大きく3つ
・問題が顕在化した直近事例はヤフー(親)とアスクル(子)
1.親会社が自らの利益を優先して子会社の一般株主の利益を損なうリスク
親会社は子会社上場後も資本や人事を通じて子会社の経営に影響力を残す。
子会社の株主は不合理だと思う資本政策に対しても抵抗しにくい。

2.資金の二重取り
親会社は子会社も含めた企業価値を裏づけに上場時に市場から資金を集め、さらに子会社上場で再び資金を得るため。
東京証券取引所は新規上場ガイドブックで、「(親子上場は)新規公開に伴う利得を二重に得ようとしているものではないかと考えられ、上場審査では慎重に対応する」と説明している。

3.子会社の稼いだ利益の一部が少数株主持分利益として外部に流出する。
イオンでは連結純利益が子会社のイオンモールを下回る。



15.借入コスト

・借入コストの取り扱い
借入コスト=資金の借入に関連して発生する利息およびその他のコスト
→借入金のアレンジメントフィー等も対象に含まれる。
適格資産の取得、建設に直接起因する借入コストは取得原価を構成し、それ以外は発生時に費用処理。

・適格資産
使用または販売可能になるまでに、相当の期間を要する資産
→製造工場、投資不動産等が該当
→短期期間に大量生産する棚卸資産は対象外

・日本基準との違い
日本基準では一定の要件を満たした場合、借入コストの資産計上は認められている(容認規程)が、
IFRSの場合、該当時は資産計上がマストとなる

・中止時の取り扱い
工場建設中に、建設中止期間が生じた場合、当該期間に対応する借入コストは資産計上しない



16.軽減税率制度における中小事業者の特例

■概要
軽減制度が実施される平成31年10月1日から一定期間、売上又は仕入を軽減税率と標準税率とに区分することが困難な中小事業者に対して、売上税額又は仕入税額の計算の特例が設けられている。

※中小事業者:基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者
※困難な事情:税率ごとの管理を行えなかった場合等をいい、困難の程度は問われない

■売上税額の計算の特例のポイント
・平成31年10月1日から平成35年9月30日までの期間が対象
・売上の一定割合を軽減税率の対象売上げとして売上税額を計算することができる

※一定割合
①小売等軽減仕入割合:卸売業・小売業の仕入高のうち、軽減税率の対象となる仕入高の占める割合
②軽減売上割合:通常の連続する10営業日の軽減税率対象品目の売上割合 
③50/100

■仕入税額の計算の特例のポイント
・平成31年10月1日から平成32年9月30日を含む課税期間の末日までの期間が対象
・仕入の一定割合を軽減税率の対象仕入れとして仕入税額を計算することができる
・簡易課税制度の届出の特例を適用することができる

※一定割合
①小売等軽減売上割合:卸売業・小売業の売上高のうち、軽減税率の対象となる売上高の占める割合
②軽減売上割合:通常の連続する10営業日の軽減税率対象品目の売上割合 
③50/100

※一定割合にて計算しない場合、簡易課税制度の届出の特例が適用可能














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2019年7月23日火曜日

7/18 勉強会:新連結納税制度・グループ調整計算の行方 他

1.和解金に係る源泉税負担を巡り会社勝訴

・会社は元役員に対し、未払役員報酬請求訴訟の和解金1億5千万円を支払った。
・税務署は、和解金を役員給与(賞与)と認定し、源泉税約6千万円の納税処分を行った。
・会社は、源泉税を納付したうえで、源泉税の支払を元役員に対して求める訴訟を提起した。
・会社と元役員は和解交渉では源泉税について想定しておらず、負担について協議をしていなかった。

⇒高裁は、裁判上の和解の中で会社が元役員に源泉税相当額の支払を請求しない旨の合意が成立したとは認められないことから、会社は元役員に対して源泉税相当額の求償をできると判断した。



2.新連結納税制度・グループ調整計算の行方

■フェイズ
・検討段階
・9月中に論点整理が報告されるのでは。

■グループ調整計算
・現行制度:受取配当の益金不算入制度等は連結納税グループで判断
・改正案:各社で判断し、グループ調整計算は行わないのが「原則」、グループ調整計算は「例外」という取扱いにしたい。
・研究開発税制及び外国税額控除が最も影響を受ける見通し。

■改正法公布から適用までの猶予期間
・1~2年の猶予を設ける
・現行で連結納税制度を採用している会社も、この猶予期間で新制度を適用しない、という選択をすることが可能





3.今週の専門用語

■遺留分侵害請求権
 遺言や贈与によって相続人の遺留分が侵害された相続人が、侵害された遺留分を金銭的に取り戻すための請求。
 遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に補修される遺留取得割のこと。一定範囲の相続人には「遺留分」を認め、たとえ遺言などがあっても侵害できない。





4.遺留分侵害額、金銭以外は譲渡所得課税

・遺留分制度の見直しが行われており、遺留分侵害額請求権から生じる権利を金銭債権化。

・遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者は、金銭をすぐに用意できなければ金銭債務の全部又は一部に支払期限の延長を求められるが、それでも金銭で払うことが出来なければ所有資産を遺留分権利者に渡すことになる。
⇒代物弁済となり、受遺者に渡所得課税が課せられる。従来の課税関係と異なるから注意が必要。





5.OEM(製造委託契約)による飲食料品の軽減税率適用の可否

■OEMによる食料品の適用税率
・製造販売 ⇒ 飲食料品の譲渡に該当し、軽減税率
・賃加工   ⇒ 役務の提供に該当し、標準税率

※OEM(original equipment manufactuer)

■基本的な考え方
・完成品の所有権が「製造者」「製造元」のどちらにあるか
「製造者」 ⇒ 軽減税率
「製造元」 ⇒ 標準税率

※製造者=食品製造業者、製造元=食品卸売業者

・食材の調達方法別
①食材を製造者が調達 ⇒ 軽減税率(所有権は製造者)
②製造元から無償支給 ⇒ 標準税率(所有権は製造元)
③製造元から有償支給 ⇒ どちらもあり得る(実務上は「賃加工」として処理することが多い)

・最終的にはOEMの内容により個別判断




6.消費税相談:防音工事を施した住宅の貸付

■概要
・当社は不動産業を営む法人
・賃貸物件の近くに音楽大学があり防音工事を施している
・全体的に通常の賃貸物件とは趣が異なる(床も補強している)
・契約書上、住宅の貸付けとして賃借している

■質問
このような物件を賃貸する場合でも<住宅の貸付け>として非課税処理で問題ないか

■回答
住宅の貸付け(非課税)で問題ない

■解説
住宅とは「人の居住の用に供する家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう」と
されており、構造に関する制限は規定されていない。当該物件は特殊な防音工事が
施されているものの、生活の本拠であり契約において住宅の貸付けと明記されて
いることから<住宅の貸付け>として認められる。



7.所得税:2020年度以後の所得税

■基礎控除
控除額が38万円⇒48万円へ
ただし高所得者については、段階的に控除額が引き下げられる。
合計所得金額が2,400万円以下 ⇒ 48万円
合計所得金額が2,500万円超   ⇒ 0円(基礎控除なし)

■給与所得控除額
・現行:1,000万円超 ⇒220万円(上限)
・改正:  850万円超 ⇒195万円(上限)
850万円以下については段階的に控除額が設定。
⇒改正前より控除額が10万円引き下げ

■給与収入850万円超の人
850万円超の人の負担増をやわらげるため、「所得金額調整控除」が新設される
ただし以下要件に該当する場合のみ適用される。
・特別障害者に該当する人
・年齢23歳未満の扶養親族がいる人
・特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる人
※所得金額調整控除は15万円を限度
※適用者は、年末調整時に「所得金額調整控除申告書」を給与支払者へ提出しなければならない

■給与収入850万円以下の人
実質的には影響なし
⇒基礎控除が10万円増したものの給与所得控除額が10万円減少されたため。





8.アジアの国別ガバナンス達成度ランキング、日本は2016年4位から、2018年7位に下落

・海外投資家から最も上がった声は、
 「もっとも情報が記載された有価証券報告書を総会前に提出してほしい」
 「日本語だけでなく英文でも同時に開示してほしい」
・一方で、欧州では有報のような非財務情報を含むフレームがなく、ある会社はCSRレポート、ある会社は統合レポートなどバラバラであり、全ての企業が一定量の開示をしている日本を評価する声も。




CFOインタビュー ~事業を理解し、数字を語る~ スクウェア・エニックスHD CFO 渡邉一治氏

■社内でのCFOの役割
・管理会計と財務会計を担当領域とする。
 ⇒管理会計は「人を使って人を動かす」イメージ。
  2013年3月期の大きな損失をきっかけに、ビジネス・ディビジョン制(BD制)に移行。
  開発部門を11のBDに分け、各々が開発だけでなく、広告・販売、最終損益まで責任を持つ形式に移行。
  これを社内で共有するようにしたところ、業績はV字回復。

 ⇒財務会計は決算とIRが基本業務。
  BSをシンプルかつ健全な状態に保つことが重要な役割。
  ゲームの収益性は厳しいので、利益が見込めないものはすぐに評価損計上。

■理想とするCFO像
・事業がわかることが大切、かつそれを数字で語れる必要がある。

■業務効率化
・RPAの導入により、手作業を効率化
 ⇒Apple、Google等のプラットフォーマーから売上データを入手し、集計していたが
  集計作業の3,4割の効率化を実現。



10.監理銘柄・整理銘柄

・監理銘柄
上場銘柄が上場廃止基準に該当するおそれがある場合、
その銘柄を一定期間、監理銘柄に指定して売買が行われる。

⇒上場廃止になると、証券取引所での売買が行われなくなるため、
そうなる可能性が高い銘柄を投資家に周知させるのが主な目的

・整理銘柄
上場廃止基準に該当し上場廃止が決定した場合、
整理銘柄として銘柄の売買が行われる。

⇒上場廃止になると流通性が著しく低下するため、投資家に注意を促すために設けられた制度
⇒上場廃止が決まった場合に、直ちに取引停止にすると投資家の売買の機会が著しく狭められてしまうため、
原則として1カ月間整理銘柄に指定された後に上場廃止となる。




11.資産の減損

・減損の兆候検討
日本基準:具体的な数値基準あり(市場価額が簿価から50%程度以上下落等)
IFRS:具体的な数値基準なし

・減損プロセス
日本基準:2段階アプローチ(兆候→認識→測定)
IFRS:1段階アプローチ(兆候→測定)
→IFRSのほうが減損の兆候があれば即減損。日本基準は割引前キャッシュ等と簿価を比較して、減損判定
→IFRSのほうが厳しく、日本基準のほうが緩い(但しIFRSでは減損の戻入れ認められる)

・減損の戻入れ
日本基準:禁止
IFRS:のれんは禁止。その他資産は毎期戻入れの検討が必要
→IFRSは減損測定時の判定が緩いため、戻入が認められている
→日本基準=減損計上の入り口を狭くし、戻入を認めない
→IFRS=減損計上の入り口を広くし、戻入れを認める




12.消費税 軽減税率・経過措置~まとめ~
■消費税率と実施時期
 消費税率 2019年10月1日より8% ⇒ 10%(消費税率7.8%、地方消費税2.2%)
 なお旧税率の8%については、消費税率6.3%→6.24%、地方消費税1.7%→1.76%にそれぞれ変更となる。

■軽減税率が適用されるもの
 酒類・外食を除く飲食料品の譲渡、週2回以上発行される新聞(飲食料品でない生活用品は対象外)

■経過措置
 10月1日以降に資産の譲渡等や役務提供が行われるものについて8%の旧税率が適用される措置
 9月30日までに対価受領や申込みが必要とされるが、下記のものには留意する事。

 3月31日までに契約締結が必要⇒請負工事等、資産の貸付、指定役務の提供、予約販売























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7/12 勉強会:リース契約にかかる改正消費税法上の取扱い 他

1.株譲渡損益の計上時期、前提条件に注意

・法人税法上、有価証券の譲渡損益の計上時期は原則として「譲渡に係る契約の成立した日」である。
・M&Aに係る表明保証違反により「前提条件」を満たせず株式譲渡が実行されなけらば、
 譲渡損益の計上時期は「契約成立日」でなく「実行時点」になるため株式譲渡に係る「前提条件」に注意が必要である。
・外国法人株式を譲渡する場合、現地の譲渡手続きを完了しない限り譲渡の効力が生じないケースもある。



2.収益認識注記、重要性乏しければ省略可

■フェイズ
・検討段階
・収益認識基準本体:2022/3期決算※より強制適用
※3月決算の会社の場合(基準文言:2021/4以後開始する事業年度から)
・今年の9月末をめどに公開草案を公表する意向(ASBJ)

■開示目的を斟酌
・開示目的に照らして重要性を検討:乏しいものは省略可能
・有用性を欠かないために、注記は集約or分解することも必要になりそう

■参考:開示目的を達成するための要素
(1) 収益の分解
(2) 収益を理解するための基礎となる情報
⇒契約及び履行義務、取引価格の算定方法、履行義務への配分額の算定方法、履行義務の充足時点に関する情報、等
(3) 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報



3.売上金額を調整で隠ぺい仮装行為と認定

■平成21年~平成27年年分の各取引先に対する売上金額を集計した表を調整し、消費税の課税事業者にならないよう事業所得の売上金額を1,000万円以下に減額したことが隠ぺい又は仮装に当たるかについて争われた裁判。

■判決
売上金額を集計した表を調整した行為は、事実の隠ぺい又は仮装に当たると判断。
⇒各売上の年次集計表において、申告する売上金額に○印や下線を付すなどして、売上金額を調整したものと認定。





4.令和元年分の平均路線価、4年連続上昇

・前年比+1.3%で4年連続上昇(前年上昇率:+0.7%)
⇒交通利便性や住環境の優れた地域を中心に上昇。外国人観光客の増加も店舗・ホテル需要の高まりやインフラ整備の進展も影響した。

・上昇率1位沖縄県(8.3%)、2位東京都(4.9%)であった。
⇒沖縄県は国内外からの観光客の増加や県内の景気好調が影響。

・全国で路線価が最も高いのは34年連続東京都中央区銀座5丁目銀座中央通りであった。
1㎡当たりの路線価は4,560万円。




5.カード利用のポイント交換は「資産の譲渡等」に該当

■概要
①後払方式のカードを利用して会員が加盟各社で商品購入等をする都度、利用金額に応じたポイントを付与
②毎月の利用額(後払決済額)を会員に請求する際に、貯まったポイントに応じた金額を後払決済額から割引く
③会員に対し、提携法人のポイントと引換えにカード発行元のポイントの付与を受けることができるサービス(ポイント交換)を行う

⇒この場合、③のポイント交換は「資産の譲渡等」に該当するのか

■資産の譲渡等の判断
・ポイント付与に基づく後払決済額からの割引は「役務の提供」に該当
・ポイント交換が行われた場合に、各提携法人がカード発行元に対し精算金として支払う金員は、役務提供による後払決済額からの割引額に対応した経済的利益に該当
・役務提供があることを条件として金員が収受される関係のため、この精算金は「対価」に該当

⇒ポイント交換は、「対価」を得て行われる「役務の提供」であるため、「資産の譲渡等」に該当



6.会計方針の開示基準、2021年3月期から

■概要
関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則等が、
重要な会計方針含まれる。
⇒注記が必要

■適用時期
2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末から適用
(早期適用可)




7.改正:解約返戻金のない短期払の定期保険等の損金算入

■概要
令和1年10日18日以後契約分より下記のとおり改正
改正前:支払額の多寡にかかわらず支出日の属する事業年度に損金算入
改正後:年間保険料30万円を超えるものについては保険期間の経過に応じて損金算入

■具体例(終身の第3分野保険)
・年間保険料25万円(支払期間3年、総額75万円)
⇒毎期25万円ずつ損金算入

・年間保険料100万円(支払期間3年、総額300万円)
⇒保険期間※に応じて損金算入
※116歳-加入時年齢

例えば加入時年齢56歳であれば総額を60年間(毎期5万円)に
渡って損金算入することになる





8.消費税:建設仮勘定の課税仕入れ

■建設仮勘定
工事代金の前払いや部分的な引渡しを受けた工事代金や諸経費など、
完成前の固定資産への支出を仮に計上しておくための勘定科目。
目的物の全部が引渡しされた際に固定資産として振替る。

■課税仕入れのタイミング
原則:設計料等の役務提供を受けた日、資材を譲り受けた日
例外:目的物を完成した日

■ミスが多い点
・建設仮勘定として処理=課税仕入れとして処理する
・完成に向けた着手金や中間金を課税仕入れとする
⇒勘定科目のみで判断しているケースが多い

■間違えないためのポイント
取引の中身を確認すること
・着手金や中間金⇒支払い時に課税仕入れとはならない
・設計料や材料費等⇒支払い時に課税仕入れ
・目的物の一部の引渡し分⇒支払い時に課税仕入れ※
※目的物の完成引渡し時に課税仕入れとすることも可能。

■適用税率
2019年10月の消費税率改正の際は注意が必要





会計方針の変更

・2018.4期~2019.2期の有価証券報告書で、31社・33件の会計方針の変更注記あり。
・最多は有形固定資産の減価償却の方法の変更(9件)。
・「収益及び費用の計上基準の変更」は5件。

例1)(オロ 東1、情報・通信業)(総額表示⇒純額表示へ)
「ネット広告売上の一部において売上原価に計上していたアドネットワーク運営会社に支払う費用及びリスティング費用等を、売上高から控除する方法に変更」

例2)(日本工業 東1、サービス業)(工事完成基準⇒工事進行基準)
「コンサルタント事業、電力エンジニアリング業務の業務契約に係る売上高の計上を完成基準から進行基準に変更」




10.時価会計基準を公表

・企業会計基準委員会(ASBJ)は7/4に「時価の算定に関する会計基準」を公表。
・従来、日本基準で「時価」は、金融商品会計基準の第6項に記載されているのみだった。
⇒今回の時価会計基準の第5項に新たに定義され、「時価」の概念も上書きされることとなる。
・時価が出口価格(資産の売却によって受け取る価格、又は負債の移転のために支払う価格)であることが明確化。
・時価はレベル1~3に分けられ、開示が求められる。
・2021年4/1以降開始する事業年度の期首から適用。
⇒2020年3月31日以降終了する事業年度に係る財務諸表から、早期適用も可。





11.宇宙旅行で世界初の上場企業

・社名へ-ヴァージン・ギャラクティック
・ニューヨークで株式を上場する投資会社と合併し、有人宇宙飛行を手掛ける会社で初の上場企業となる。
・ギャラクティックと合併するソーシャル・ キャピタル・ヘドソフィアは新会社の株式49%を保有する。
・ギャラクティックは約8億ドル(約870億円)を調達できるとのこと。
・ソーシャル・キャピタルが既に上場企業であることから、ギャラクティックはIPOのプロセスを省略できる。



12.日本基準とIFRSの相違点

■固定資産
・借入費用の資産計上
日本基準│自家建設の場合で、建設に要する借入資本の稼働前にかかる利子は取得価額に算入することが出来る
IFRS│建設または製造に直接帰属する借入費用は資産化しなければならない。該当しない借入費用は発生時に費用処理
→日本基準はできる規程、IFRSはしなければならない規程

・資産除去債務の敷金による調整
日本基準│簡便的に敷金の回収が見込めないと認められる金額を合理的に見積り、資産除去債務を計上せずに敷金を取り崩すことが可能
IFRS│敷金による例外処理は認められていない。
→IFRSは簡便的な処理が採用できない

・資産に関する補助金
日本基準│圧縮記帳が可能
IFRS│繰延収益または帳簿価額から控除して表示
→繰延する場合、日本基準は純資産、IFRSは財政状態計算書(BS)で繰延される

・減価償却基礎情報(残存価額、耐用年数、償却方法)
日本基準│多くの企業が税法の規程に従っている。合理的な方法で計画的・規則的に実施
IFRS│毎期事業年度末に再検討する必要がある
→IFRSでは毎期見直し、検討が必要となるため、実務上の手間を要する





13.消費税 経過措置~その3~

■リース契約にかかる改正消費税法上の取扱い
・2008年4月1日以降に行われたファイナンスリース取引⇒リース開始日時点での税率を適用する
⇒リース開始日が2019年9月30日以前の場合は旧税率8%又は5%が適用
⇒リース開始日が2019年10月1日以後の場合は新税率10%が適用

・再リース契約
⇒基本的には施行日以後に開始する再リース契約は新税率10%が適用
⇒2019年9月30日より前に契約し開始された再リース契約については旧税率8%が適用されるが
 毎月払いの再リース契約は対象外となるため注意が必要

・オペレーティングリース
⇒①2019年3月31日以前に契約締結 ②9月30日までにリース開始をした場合
 下記の要件を満たす事で旧税率の8%が適用される。
 必須:貸付期間と貸付期間中の金額が定められていることに加え下記の①か②の要件に該当する契約
  ①:理由があって金額を変更できるという決まりがない事。
  ②:中途解約不可、フルペイアウトの要件に該当している事。
























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