2017年11月26日日曜日

11/24 勉強会:配偶者控除等に関するFAQ 他

1.独立企業間価格の簡易な算定方法示す

■国税庁から「移転価格事務運営要領」等の一部改正案が公表
・一定のグループ内役務提供取引=企業が役務提供に要した費用に5%を乗じた金額を加算した金額を独立企業間価格として取り扱う旨を新設
⇒適用要件
(1)役務提供が支援的な性質のものであり、法人及び国外関連者が属する企業グループの中核的事業活動には直接関連しないこと
(2)役務提供において、法人又は国外関連者が保有し、又は他の者から使用許諾を受けた無形資産を使用していないこと
(3)役務提供において、法人又は国外関連者が、重要なリスクの引受けもしくは管理又は創出を行っていないこと
(4)役務提供の内容が、研究開発、製造、販売及び金融等に該当しないこと
(5)同種の役務提供を非関連者に対して行っていないこと
(6)(1)~(5)までに掲げる要件の全てを満たした企業グループにおける役務提供について、その内容に応じて区分し、その区分ごとに役務提供に係る総原価の額を合理的な方法によりその役務提供を受けた者に配分した金額に、その金額に5%を乗じた額を加算した金額をもってその役務提供の対価としていること
(7)役務提供の内容を記載した書類等を作成し、又は取得し、保存していること


2.税効果注記、早期適用は来年3月期から

(1)税効果会計基準の一部改正(案)が12月中に正式決定され、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用
⇒表示及び注記事項は、平成30年3月31日以後最初に終了する連結会計年度の年度末に係る連結F/Sから早期適用可

(2)表示・注記事項について、早期適用を認める理由
・DTA・DTLを全て非流動区分に表示する変更に伴う (流動比率に対する)影響は限定的
・注記事項の追加はF/S利用者に対してより有用な情報を提供

(3)表示・注記事項以外について、早期適用を認めない理由
⇒早期適用を認めると、3月決算法人においては、平成30年3月期が対象となり、既に進行している年度の四半期F/Sに影響を及ぼす可能性がある、等

(4)税効果会計基準の一部改正(案)を早期適用する場合の留意事項
⇒表示・注記事項併せて適用(それぞれ部分的に適用することは想定されていない)


3.配偶者控除等に関するFAQ

■配偶者控除 ※控除対象配偶者を妻とする。
現行:年間の所得金額が38万円以下(給与収入103万円以下)の控除対象配偶者
⇒夫の配偶者控除として、夫の所得金額より38万円控除可能

改正:妻の所得金額38万円を前提として、夫の所得金額により控除額が異なる
給与収入1,120万円以下 ⇒38万円控除
給与収入1,170万円以下 ⇒26万円控除
給与収入1,220万円以下 ⇒13万円控除
給与収入1,220万円超  ⇒控除なし
⇒夫の配偶者控除として、夫の所得金額よりそれぞれの金額が控除可能

なお妻の年間所得金額が38万円超から123万円以下の場合は、「配偶者特別控除」の適用がある。

■FAQ(一部抜粋)
Q1:いつから改正か
A1:H30.1.1以後の所得税より適用。※H29年分の所得税(年末調整等)に影響なし

Q2:源泉控除対象配偶者とは
A2:妻の合計所得金額が85万円(給与収入150万円)以下で夫の所得金額900万円(給与収入1,120万円)以下の人

Q3:源泉控除対象配偶者に該当しない場合
A3:マル扶の「源泉控除対象配偶者」欄に記載不要。
またH30.1.1以後の給与支給の際、配偶者を考慮されない所得税が徴収される。(=増税となる)

Q4:期中に源泉控除対象配偶者に該当することとなった場合。
A4:異動がわかった際に給与担当者へ報告(マル扶を提出)すること。
異動がわかった日以後の最初の給与支給より徴収される所得税額がかわる。

■参考
国税庁のHP
https://www.nta.go.jp/gensen/haigusya/pdf/koujo_faq.pdf



4.収益認識会計基準案、大きな方向性に変更なし

■収益認識会計基準案とは
IFRSとの整合性を取るために策定された売上高の計上方法に関する新しい基準

■公開草案に対するコメント
・中小企業への影響が大きいため、個別財務諸表への適用を任意にすべき
・税務上の申告調整が増加しないように、会計処理と税務処理を合わせるべき
・割賦基準を代替的な取扱いとして定めるべき(新基準案では、販売時に一括して売上計上)
・重要性等を考慮した上で代替的な取扱いを認める旨を明記してほしい

■適用
・来年3月頃までに正式決定
・2021年4月1日以後開始する事業年度から強制適用予定


5.観光立国実現のための財源、出国税

■旧来の出国税(国外転出時課税制度)
 H27.1/1以後に国外移住する居住者が1億以上資産を所有している場合、資産の含み益に対して所得税を課税されていた。⇒ 一定の限られた者を対象にした制度であった。

■H30年税制改正による出国税
「日本人を含む」出国旅客に対して「出国目的や手段は問わず」負担を求める。
 2019年中の導入を目指しており、金額は一人当たり1,000円を超えない範囲を予定している。
 従業員が頻繁に海外主張するような企業であれば負担増にはなるが、負担額は損金算入とされる予定。

■出国税を導入している国と税額
 アメリカ 申請手数料として14ドル(約1,540円)
 韓  国 出国納付金として10,000ウォン(約975円)
 オーストラリア  出国旅客税として60AUドル(約5,280円)


6.グループ法人税制 実務の落とし穴

■100%支配の判定
(1)個人
個人100%保有の場合、その個人にはその個人の親族等も含まれる。つまりこれらの親族等で100%支配している法人が複数ある場合にはそれらの法人間には完全支配関係があることとなる

(2)外国法人
「一の者」には外国法人も含まれることに留意する

■支配関係は発行済株式等で判定する
議決権ベースで100%支配していても発行済株式等で100%支配していない場合完全支配関係はないものとする

■形式的に100%関係を解消しても無効(同族会社)
第3者割当により従業員(またはその他の者)に新株を発行した場合であっても実質的に資金調達等がされない場合にはその取引は無効(行為計算の否認)となる

■完全支配関係の発生日は株式の引渡日で判定
株式の譲渡損益は譲渡契約締結日ベースで計上するが、完全支配関係の判定は引渡日ベースで判定する。契約日と引渡日にズレがあり、決算日をまたぐ場合には注意が必要



7.今週のFAQ<医療費通知とは>

■平成29年分の確定申告から、医療費控除の適用を受ける場合に、そのまま添付できる一定の医療費通知とは、どのようなものですか?

■医療費通知とは、健康保険組合等の医療保険者が発行する医療費の額等を通知する書類のこと、以下の6項目が記載されていることが必要
1.被保険者又はその被扶養者の氏名
2.療養を受けた年月
3.療養を受けた者
4.療養を受けた病院、診療所,薬局その他の者の名称
5.被保険者又はその被扶養者が支払った医療費の額,
6.保険者の名称
※自己又は生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費に関する医療費通知に限定


8.単元株式数の減少

・東証は2018年10月1日を期限として単元株式数を100株に統一する取り組みを実施
・現状94%が100株、残り6%は1,000株
・1000株から100株への手続き=「単元株式数の減少」の手続き
①単元株式数の減少のみ実施
 ⇒取締役会決議(会社法195Ⅰ)

②同時に株式併合も実施(投資単位が低下するため)
 ⇒取締役会決議+株式併合の総会特別決議
(数値例)
 仮に投資単位が100万円(1,000円×1,000株)の場合
 売買単位を100株に変更すると投資単位は10万円(1,000円×100株)となる。
 当時に5株を1株とする株式併合を行えば50万円(5,000円×100株)となる。


9.非適格株式移転を利用したM&Aスキームの実務ポイント

■適格株式移転の要件
・グループ内の適格株式移転or共同事業を営むための適格株式移転に該当する必要あり
⇒株式移転後も完全支配関係が継続することが見込まれる必要あり
⇒株式移転後に株式移転完全子法人株式をグループ外部に譲渡する場合は非適格に。
⇒株式移転完全子法人の資産を時価評価課税した後に株式譲渡。

■平成29年度改正
・帳簿価額が1000万円未満の資産を時価評価の対象となる資産から除外
⇒営業権のほとんどは帳簿価額が0円。実質的に営業権の時価課税が不要となった。

■非適格株式移転を利用したM&Aスキーム
・被買収会社:A社(簿価純資産10億円)
・株主:X氏(A社を100%支配。株式取得価額1億円)
・株式移転:A社を完全子法人、新設P社を完全親法人として実施
・本件株式譲渡価額:30億円 
・論点:譲渡価額30億円と簿価純資産10億円との差額20億円の性格

(1) ケース1:20億円=1000万円を超える土地の含み益のケース
・X氏:A社株主⇒P社株主
・完全子法人A社で評価益を計上。A社に課税。
・完全親法人P社でのA社株式の受入価額:30億円
・この後、買収会社に30億円で売却したとしても、完全親法人P社に課税は生じない。

(2) ケース2:20億円=営業権の含み益(超過収益力部分)
・完全子法人A社では営業権時価評価不要。課税なし。
・完全親法人P社でのA社株式の受入価額:30億円
・この後、買収会社に30億円で売却したとしても、完全親法人P社に課税は生じない。
⇒いずれの当事者においても課税関係を生じさせないことが可能に。
⇒包括的租税回避防止規定の適用を回避する必要あり。
⇒経済合理性や事業目的を説明できるようにしておく必要がある


10.源泉税に関する課税リスクとその対応

■租税条約が国内法と異なる所得源泉地を定めている場合
・日本では使用料についてはその使用地、人的役務の提供については役務提供地が所得源泉地
・租税条約では所得源泉地国を支払者の所在地国とする債務者主義が定められていることがある
⇒租税条約に基づき課税が生じる場合があるため、源泉税の徴収漏れを指摘されないよう注意が必要

■現地税務当局との所得分類に係る見解の相違
・国外取引に係る対価の所得区分については、2国間の租税条約及び国内法の規定による
⇒自社が行っている国外取引に係る所得分類について、税務当局に対して合理的に説明できる準備を行う必要がある


11.PEに関する課税リスク

1.PEとは
事業を行う一定の場所があって、企業がその事業の全部または一部を行っている場所を指す。
※PEの有無は所得の課税関係を決めるうえで重要な事項
2.PEの範囲(日本企業が海外で事業を行う場合、進出国が日本と租税条約を締結しているか否か)
・締結済⇒租税条約
・締結未済⇒進出国の国内法
※新興国では、PEの拡大解釈の傾向あり
※税務当局同士の同意が得られない場合は二重課税もあり
3.駐在員事務所に対するPE認定
・直接的な営業は認められていないが、営業活動と認められるとPE認定
・あくまで準備的・補助的な活動であり、収益獲得に寄与していないことを証明
⇒駐在員事務所の勤務者の行動範囲を定めた活動ポリシーを定め、これに従う


12.アジア事例から見る、移転価格税制に関する課税リスク~文書化の重要性~

■物品販売
日本親会社とアジア地域の子会社、及び在外子会社間取引が調査のターゲット
・在外子会社の所得は低いはず、または高いはず、と安易に前提が置かれてしまう事例多
・シークレットコンバラブル(※1)による課税も目立つ
⇒取引の概要、リスク等について、文書化による準備が重要
(※1)どのような過程を経て独立企業間価格が算定されたのか、当局が開示しない

■無形資産取引
・日本親会社:高いノウハウ提供当等を理由に、受け取るべきロイヤリティの不足を指摘されること多
・在外子会社:赤字の場合は無形資産に価値毀損を根拠に、ロイヤリティの損金否認されること多
⇒ロイヤリティの授受を行うのか、行うならどちらの国で市場調査するかを文書化しておく必要

■市場固有の特徴
⇒マーケットプレミアムやロケーションセービング(※2)等の市場固有の特徴は、価格に影響することから、その恩恵がどちらに帰属するかを事前に当局と協議して文書化が必要
⇒中国やインドでは新興国に帰属する、とする立場
(※2)安価な人件費により利益を創出すること

■文書化不備による罰金
中国やインドでは、不備に関して罰金あり

■(補足)相互協議(※3)・APA(※4)を考慮
・中国やインドネシアでは相互協議が実質機能しておらず、二重課税が放置される実情
・タイではAPAの対応が遅い
(※3)租税条約に適合しない課税を排除するための条約締結国当局間での協議
(※4)移転価格に関する事前確認制度



13.駐在員等の所得税に関する課税リスクとその対応

■日本での課税リスク
出向元法人が出向先法人との給与較差を補てんするために支給する給与は出向元法人の損金に算入される。
ただし、較差補てん金が合理的な額を超える場合、出向先への寄付金として取り扱われる。
昨今給与水準の上昇が著しいアジア地域では、較差補てん金を寄付金として認定される事例が増加している。
⇒原則駐在員の給与は全て海外子会社が負担する企業も増加している。

■現地での課税リスク
日本親会社が給与等の一部を負担することが多いが、
日本において支払われるものであっても駐在地国での役務提供への報酬のため、駐在地国での個人所得税の対象となる。
各国の税務当局も日本人駐在員が日本で給与等の一部を受け取っている事情を把握しているため、日本払いの所得申告漏れの指摘による追徴課税が発生することが増加している。

■みなし給与
海外赴任先での家賃補助、語学研修費用、現地での個人所得税などを日本親会社又は海外子会社が負担した場合は、税務上の給与となる。

■海外出張者への課税
海外出張し、現地で役務提供を行った際の給与は出張先の国内源泉所得に該当し、原則として現地で課税が生じる。但し、短期滞在者免税要件を満たす場合は居住地国で課税が生じる。

※参考
短期滞在者免税要件は以下の3つ
・12ヶ月のうち、源泉地国での滞在日数が183日を超えないこと
・報酬を支払う雇用者が源泉地国の居住者でないこと
・雇用者のPEが報酬を負担しないこと


14.子会社等の判定の範囲の決定における、種類株式等の取扱い

■種類株式とは
剰余金の配当その他の権利が普通株式とは異なる内容の株式

■他の会社の議決権の所有割合の計算方法
(1)原則
期末において所有する議決権の数(※1)÷期末において行使できる議決権の総数
※1:自己株式、完全無議決権株式(株主総会の全ての事項について議決権を行使することができない株式)、相互保有株式は含まれない。

(2)一部の議案のみに議決権を有する種類株式の場合
(1)では期末において行使できる議決権の総数に完全無議決権株式を含まないが、当該場合には含む。

■種類株式として定めることができる種類の内容のうち、議決権行使に影響するもの
(1)議決権制限
株主総会において議決権を行使できる事項が異なる
(2)拒否権
株主総会又は取締役会の他、種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする
(3)役員選任
種類株主総会において取締役または監査役を選任する

■議決権を実質的に所有するような投資契約や株主間契約
明確な規定がないため、実質的な判断が必要。
※一部の議案のみに議決権を有する種類株式の取扱いに照らして判断することも考えられる。

■留意点
・連結会計基準や持分法会計基準では、支配力基準や影響力基準のような規定や要件がある。
・上記に対し、支配力、影響力の判定に関しては実態を踏まえた判断が必要。


15.新規公開企業、業績予想正確に(保守的に?)

・あずさ監査法人の調べでは2010年~2016年までに上場した企業の4分の1超が、上場時に発表した利益予想を達成できていなかった。

・上場後に下方修正を行った企業が、2016年は33%に対して、2017年は3%のみ。

・2014年、新規公開した企業の4割で業績予想が下振れ。黒字予想から一転して赤字に転落した企業もあり。

・上場時には会社の創業者や出資者が保有していた株を売り出して現金化する場合が多く、上場後に業績予想を下方修正した企業に対しては、投資家から株を高く売るのが目的ではないかとの批判が高まった。

・東証は上場企業の審査を厳格化。企業の上場作業を手伝う証券会社も「投資家の視線を強く意識するようになった」。


16.財産保全会社

オーナーが直接、公開予定会社の株式を保有するのではなく、オーナーが保有する別の会社が公開予定会社株式を保有する会社

・財規上の親会社等となるか?
財産保全会社が、実体のない会社で実質的にオーナーの個人的な持株会社であるような場合には、上場審査上も開示上も親会社等とみなされない。
ただし、事業会社としての意味合いが強くなると、親会社の実体を有するものとして判定され、申請会社は子会社上場として審査対応がなされる。
また、株式上場後に事業会社としての実体が出てくるような場合には、親会社情報の継続開示が求められる。









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

2017年11月17日金曜日

11/17 勉強会:株式売渡請求のポイント 他

1.一般社団法人利用の節税スキームに警鐘

■日税連の神津会長が2つの相続税関係の節税スキームに警鐘
(1)一般社団法人を利用した節税スキーム
・富裕層が一般社団法人に資産を移転することで相続税を節税
⇒相続税の課税対象となる不動産や株式を一般社団法人に移転、相続人が理事長等に就任することで実質的に無税で資産移転可能

(2)小規模宅地特例を利用した節税スキーム
・H22年度税制改正では、特定居住用宅地等について要件を満たす対象者は80%減額可能
⇒相続人が資産管理会社を設立、同社に建物を譲渡し自らは社宅として居住することで要件を満たし、相続時に特例を受ける
※要件の一つ「相続開始前3年以内に日本国内にあるその人又はその人の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと」を満たすためのスキーム
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4124.htm

いずれも制度趣旨から逸脱しており今後の税制改正に影響を及ぼす可能性あり


2.有償SO、IFRSとの違いは対応困難

・ASBJは、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」に寄せられたコメントについて検討中
⇒コメントには、実務対応報告案とIFRSで処理内容が異なる点について、懸念を表明するものが複数あり

・IFRS第2号「株式に基づく報酬」では、権利確定条件として勤務条件がある場合のみ、有償新株予約権を報酬として費用計上

・今回の実務対応報告では、勤務条件がある場合のみならず、勤務条件がなく業績条件が付されている有償新株予約権も報酬として費用計上

・ASBJは、ストックオプションを費用計上する等、両者は類似している面もあるが、一方、構造的に異なっている面もある為、部分的な差異を論じることは必ずしも適切ではないし、両者の差異はIFRSの解釈に及ぶ可能性もある為、ASBJだけでは対応困難であるとし、実務対応報告案の変更は行わない方向


3.競馬予想プログラムで大量購入でもハズレ馬券は経費に該当せず

■H27.3月の最高裁判決
裁判所判断:払戻金を「雑所得」としハズレ馬券の購入代金を必要経費として控除可
購入方法:馬券を自動購入するソフトを使用して、長期間に多数回かつ頻繁に的中馬券に着目せず網羅的に馬券を購入

■今回の高裁判決(H29.9月)
裁判所判断:払戻金を「一時所得」とし、ハズレ馬券は必要経費の対象外とする
購入方法:自ら開発した競馬予想プログラムを用いて、予想的中率及び期待値算出のために演算処理行って買い目の馬券を抽出。抽出した馬券と他の馬券購入者が低く評価した馬券とを比較して、より高配当を得ようとする馬券を購入する方法

■一時所得の条文の概略(所基本通達34-1)
・馬券を自動的に購入するソフトウェアを使用している
・ネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に馬券の的中に着目しない網羅的な購入
・上記の購入方法で多額の利益を恒常的にあげること
・これらの購入方法が経済活動の実態を有すること
⇒上記を満たせば雑所得に該当し、該当しない場合は一時所得と規定されている

■高裁判決は?
・今回の納税者は必ずしも競馬予想プログラムが抽出した買い目の馬券を無差別かつ網羅的に購入していたわけではない。
・8年間のうち3年は損失を発生させているので恒常的に利益を上げていない。
・PCを使用したプログラムを用いて長期間に多数回購入しているが、買い目の的中に着目した購入方法は、一般の競馬愛好家の購入方法と同じである。
(=競馬新聞の印を見て購入する方法と同じ)
⇒上記より馬券の購入が一体の経済活動の実態を有すると客観的に明らかにできないと判断し、一時所得に該当すると判決を下した。

※なお納税者は上告受理申立てを提起中。


4.特徴税額通知、マイナポータル利用見送り

・規制改革実施計画で、マイナポータルを利用して住民税の特徴税額を従業員が直接取得できるようにする案が検討
⇒見送り決定
(理由)
・マイナポータルの普及率が低い
・自治体によって対応が異なることで書面と電子の通知が混在する恐れ
・事前に従業員に承諾を取る手間がかかる

■新制度
(1)事業者は給与支払報告書提出時に電子的送付の同意の有無を報告
(2)eLTAXを通じて事業者に電子的に特徴税額を送付
(3)同意がなければこれまで通り書面で送付



5.税理士法違反のチェックポイント特集

税理士監理官・専門官
⇒税理士法違反行為がみられる税理士等に対する調査を行う。

■事例1 不真正税務書類の作成 
 不正な書類を作成したり、事実に反する申告書を作成した場合は、不正に対しての税理士の関与度を調査
⇒「事実に反する、若しくはおそれのある」行為とわかっていたかどうか。(メール、メモ等の物証の収集)
■事例2 税理士本人の脱税・申告漏れ
⇒税理士法人の代表者や実質的に経営している者の行為も違反行為の対象となる。
■事例3 業務懈怠
 申告書類の作成を依頼されていたにもかかわらず、申告期限まで申告しなかった。
⇒原因が事務所の職員であっても監督者(税理士)の違反行為
■事例4 使用人に対する監督義務
 事務所の職員が、顧問先の不正経理に加担。
⇒監督者だけでなく、当該職員からも聴取を行う


6.LEDランプの取替えにかかる税務処理

従来の蛍光灯からLEDランプへ交換する場合の取替費用の取り扱いは下記のとおりとなる。

■購入する場合
LEDランプ代及び工事費用を修繕費として処理

<参考>(国税庁質疑応答事例)-LEDランプの取替費用-
蛍光灯は照明設備がその効用を発揮するための1つの部品であり,かつ,その部品の性能が高まったことをもって,建物附属設備として価値等が高まったとまではいえないと考えられるため,修繕費として処理することができる

■所有権移転外リース取引により取得する場合
リース料総額及び工事費用をリース資産として資産計上し、リース期間定額法で償却費計上
⇒上記<参考>はあくまで「購入」を前提としているため、所有権移転外リースの場合は適用されない

なお、リース期間終了後に買取(購入)する場合であっても、その購入費用は修繕費として処理できない



7.平成29年分 年末調整のポイント

■年末調整の対象となる人や対象とならない人は、どのような人ですか?
・年末調整の対象とならない人は次のとおりです。
1.年調時までに扶養控除等申告書を提出していない人
2.給与収入金額2,000万円超
3.国内に住所も1年以上の居所も有していない人(非居住者)
4.年の中途で退職(死亡退職等を除きます。)した人
5.災害減免法で源泉について徴収猶予や還付を受けた人

■年末調整はいつ行うのですか?
・その年最後に給与の支払をする時⇒一般的に12月中に行う

■年末調整後に給与の追加払や控除対象扶養親族等の異動があった場合
・年末調整のやり直し(再調整)をする
・期限⇒基本は源泉徴収票を給与所得者に交付する翌年1月末日まで

■平成30年分マル扶
・配偶者が源泉控除対象配偶者に該当するかどうかはどの時点で判断するのか
⇒提出する日の現況により判定、直近の源泉徴収票や給与明細書を参考にして見積り
・年の中途で合計所得金額の見積額に異動がある場合、どうすればよいか
⇒扶養控除等異動申告書を給与の支払者へ提出
 給与支払者は上記の提出があった日以後、扶養人数を修正の上、源泉徴収税額の計算を行う
 なお、源泉は遡って修正はせず、年末調整により精算
・控除対象扶養親族の「16歳未満の扶養親族(平15.1.2以後生)」の判定
⇒平成30年12月31日の現況により判定・記載



8.商品券の非行使部分の処理

・収益認識基準の適用指針案52-56項
・発行した商品券などが顧客によって使用されない場合の取り扱い
 ⇒「非行使部分」は「企業が将来において権利を得ると見込めるか」で収益認識タイミングが異なる
・見込める場合⇒顧客の権利行使パターンと比例的に収益認識
(例)
 商品券1,000円を顧客に販売
 10%(100円)を非行使部分と見込む
 商品券が1年目に700円(70%)、2年目に300円(30%)使用された場合、
 1年目は100円×70%、2年目は100円×30%を収益として計上する
・現行の日本基準では一定期間経過後に一括計上が多く、処理が複雑になる可能性あり


9.吸収合併の場合のポイント

■法務
(1) 対象会社(合併消滅会社)の解散
・許認可は必ずしも存続会社に承継されない。
⇒許認可を維持する必要がある場合は他のスクイーズアウト方法を検討

(2) 手続
・存続会社、消滅会社の双方において手続必要
⇒株主総会の承認、株式買取請求の対応、債権者保護手続 等
⇒総会承認は、簡易合併or略式合併の場合は片方もしくは両方で省略可能な場合あり
⇒債権者保護手続は効力発生日の1か月以上前に公告が必要

■税務
(1) 適格合併
・存続会社&消滅会社…簿価により引き継ぎ
・少数株主…合併直前の帳簿価額を譲渡原価として譲渡損益計算。みなし配当発生しない。

(2) 非適格合併
・存続会社…時価で受入+資産負債調整勘定が発生
・消滅会社…時価譲渡のため、譲渡損益発生。合併最終年度の損金or益金に算入。みなし配当が生じるため、源泉徴収義務が発生
・少数株主…交付を受けた金額からみなし配当相当額を控除した金額を譲渡対価として譲渡損益を計算


10.所得拡大促進税制と当初申告要件

■当初申告要件について
・確定申告後に適用し直すことは認められるか?
⇒当初申告要件の定めにより、当初の確定申告で適用を選択しなかった場合は適用不可

■所得拡大促進税制とは
【概要】
・給与等の支給総額が、基準年度と前年度より増加した場合に、
増加した給与額の10%を法人税からマイナスできる制度(法人税額の20%が限度(大企業は10%))
・限度額は平成29年度税制改正により、平均給与等支給額が前年度比2%以上増加している場合は22%に改正
 (大企業の場合は12%)
※平成29年4月1日以後開始事業年度から適用

【詳細】必要に応じて読んでください
(1)適用期間
・平成25年4月1日以後に開始する事業年度~平成30年3月31日までに開始する事業年度

(2)基準年度とは
・平成25年4月1日以後に開始する事業年度のうち最も古い事業年度の「直前の事業年度」
⇒基準年度がない場合、平成25年4月1日以後に開始する最も古い事業年度の給与等支給額の70%相当額
 が基準年度の支給額となる

(3)要件
・給与等支給総額が基準年度より2%~5%増加
・給与等支給総額が前事業年度以上
・平均給与等支給額が前事業年度以上(大企業は2%以上増)

【用語】
・給与等支給総額
⇒給与の総額から、役員報酬、役員の親族等に対する給与、退職手当を除く(賞与、パートアルバイトの賃金含む)
・平均給与等支給額
⇒適用年度の継続雇用者に対する給与等支給額÷継続雇用者の月ごと延べ人数合計
・継続雇用者
⇒適用年度及び前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者(つまりどっちにもいた人)


11.株式売渡請求のポイント

■法務
(1)概要
・特別支配株主が、当該会社の株主総会決議によることなく、他の株主全員に対し、その保有する株式の全部を、自己に売り渡すよう請求すること。
(2)必要議決権数
・90%
(3)株主総会
・承認不要
・債権者保護手続不要、端数処理手続不要
(4)新株予約権
・個別の同意不要
■税務(完全子会社化が行われた場合)
(1)支配株主
・取得に要する金額=取得価額
(2)対象法人
・税制適格
⇒課税関係なし
・税制非適格
⇒対象法人を時価評価し、評価損益は完全子会社化完了日の属する事業年度で益金・損金処理
(3)少数株主
・譲渡価額と取得価額の差額で譲渡損益を計算
■会計
(1)連結
・追加取得の持分を被支配株主持分から減額
・追加取得により増加した親持分は追加取得した株式の取得価額と相殺、差額を資本剰余金とする


12.株式交換におけるポイント~スクイーズアウト~

完全親子関係を図る方法⇒スクイーズアウトとしては合併に比してより直接的な手法

■法務
完全親会社の手続:総会特別決議(略式※・簡易なら不要)、買取請求の対応、債権者保護
※TOBにより対象会社の90%を取得しておければ、株式交換における対象会社での決議が不要

■税務
・適格株式交換
親会社:子会社株式の取得価額⇒子会社における簿価
子会社:特に調整なし

・非適格株式交換
親会社:株式の取得価額⇒子会社株式の時価
子会社:時価評価損益を益金又は損金に算入

■会計
・個別
子会社株式の取得原価⇒交付した親会社株式の時価

・連結
子会社株式の追加取得の処理に準ずる


13.取得関連費用と税効果

■取得関連費用の取扱

・個別財務諸表
取得時にて付随費用と認められるものは取得価額に含める

・連結財務諸表
発生した事業年度の費用として処理

・税効果
個別財務諸表上の子会社への投資額と連結貸借対照表に差異が生じる。
回収可能性があれば繰延税金資産を計上

・売却時
付随費用のうち、売却に対応する額分、連結財務諸表上で売却損益の調整が必要


14.スクイーズアウトの概要・手続き

■スクイーズアウトとは
M&Aにおいて、会社の株主を大株主のみにするために、少数株主に対して金銭その他の資産を交付し、強制的に締め出すこと。

■吸収合併
・合併により消滅する会社(対象会社)の権利義務の全てを合併後の存続会社(支配株主)に承継
・支配株主が議決権の2/3以上保有で対象会社を完全子会社化が可能。

■株式交換
・株式会社が他の株式会社(合同会社を含む)に発行済株式を全て取得させ、完全親子会社関係を実現。
・少数株主への対価は金銭とし、直接支配会社に移転する方法が多い。
・吸収合併と同様、支配株主が議決権の2/3以上保有で対象会社を完全子会社化が可能。

■全部取得条項付種類株式
・株主総会特別決議により既存の株式全部取得条項付種類株式にする⇒全部取得条項を使用し、少数株主に端数を付与
・平成26年の会社法改正以後、株式併合の手続き整備、株式売渡請求の制度が設けられてから使用が減少

■株式併合
・少数株主の保有株式数が1株未満の端数になるように株式を統合し、少数株主は現金を対価として保有株式を失う。
・平成26年の会社法改正により、法的安定性が担保され、改正前より利用が増加

■株式売渡請求
・特別支配株主(議決権9/10以上を直接又は間接に保有)が対象
・対象会社の承認を得ることで対象会社の少数株主に対して株式の売渡請求が可能
・平成26年の会社法改正により、新たに導入
・株主総会の決議不要、少数株主の有する株式の端数処理不要⇒時間的・手続き面のコスト削減可能



15.IFRSのPL表記が変更に?

IASBで現在下記を議論中。

(1)EBITをP/Lの小計に表示する検討を優先的に進める。
(2)P/Lに投資カテゴリーの導入を検討する。
(3)費用性質法、費用機能法に基づく表示に関するガイダンスを追加する。

(1):(比較可能性のある利益として)EBIT、を表示すべきという提案(過去にもダ
イムラーなどがEBITを表示してい)。
(2):投資収益・投資費用、財務収益・財務費用を独立表示させるという議論。
(3):費用性質法、費用機能法のどちらが財務諸表利用者に有用な情報を提供するか
を判断するためのガイダンスを提供。


16.メルカリ、資金決済法に抵触?

(概要)
・メルカリはスマートフォン向けのフリーマーケットアプリの運営会社
・爆発的な普及により、日本で唯一の「ユニコーン」(企業価値10億ドル以上の未上場企業)と期待されていた。

(詳細)
・メルカリは、自分が物品を販売して得た売上金を、メルカリに預けておくことができる。
・売上金が1万円未満だと、引き出すのに210円の手数料がかかるため、1万円を超えるまでためておく人が多い。
・保管期限は1年間。そのお金で売買を繰り返す。これがクレジットカードや銀行口座を持たない若者にメルカリが爆発的に普及した理由の一つ。

・この仕組みが、資金決済法が定める「資金移動業者」にあてはまるとの指摘あり。
・資金移動業者は万が一、経営不振に陥った場合などに備えて、預かっている資金の100%以上を金融庁に供託金として保全しなければならない。

・メルカリは「資金移動業者には当たらない。売上金は(事業などで使うことのないように)別口座で保全している」と説明。
・しかし、金融庁は「ユーザーの売上金を別口座で保全する方法では、万が一、経営不振に陥った際の利用者保護として不十分」との認識。
・金融法制に詳しい弁護士も「別口座で管理していようと、倒産した場合、弁済の原資に使われ、債権の優先度の高い金融機関に支払われる可能性が高い」と指摘。

(現状)
・経産省の後方支援もあり、最近になって、メルカリが売上金をプールする仕組みは、資金移動業者に相当するのではなく、プリペイドカードや商品券と同じような「前払い式支払い手段」と解釈することで、金融庁と経産省の間では「合意ができた」とのこと。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

2017年11月10日金曜日

11/10 勉強会:会計システムのクラウド化における検討 他

1.マイナス金利下の割引率、来年3月以降も現行の取扱い可

■ASBJは、実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取り扱い」を平成30年3月31日以降も適用する方針
・第34号では、利回りが期末においてマイナスの場合、「下限としてゼロを利用する方法」「マイナスの利回りをそのまま利用する方法」のいずれかを認めている
 ただし平成30年3月30日に終了する事業年度までの1年間とされている
・どちらを採用しても重要な影響はないとされており、注記も不要の方向性


2.IFRS任意適用に先立つ会計方針の変更等

■概要
IFRSを任意適用しようとしている企業が、その適用に先立って(IFRS導入に備えた対応として)会計方針の変更等を行うが、その代表的なものとして下記事項が挙げられる。
「減価償却方法の変更」、「耐用年数・残存価額の見直し」、「連結子会社の決算期の変更」

■「連結子会社の決算期の変更」
・連結F/Sを作成する際の、親会社及び連結子会社の報告日に関するIFRSの取り扱いは下記の通り
(1)親会社及び子会社のF/Sは、報告日を同一にしなければならない。
(2)両者が異なる場合、実務上不可能な場合を除き、子会社は親会社のF/Sの報告日と同時点の追加的な財務情報を作成しなければならない。
(3)実務上不可能な場合、子会社の直近のF/Sを利用するが、当該F/Sと連結F/Sの決算日の間に生じる重要な取引又は事象の影響について調整しなければならない。
(4)その場合であっても、当該F/Sと連結F/Sの決算日の差異は3ヶ月を超えてはならない。

・上記取り扱いに対する実務上の対応
(1)調査対象としたIFRS適用会社138社のうち、47社がIFRSの適用に先立って連結子会社等の決算期を変更している。
(2)上記変更は減価償却方法の変更よりも早い時期(1期あるいは数期前)に行っている例が多い。
(3)連結子会社を多数有する企業は、(特に海外子会社)数回に分けて決算期変更を行っている例も見られる。
(4)最近1、2年の傾向として、12月決算であることの多い海外の連結子会社の決算期に親会社の決算期を変更して統一する事例が増えてきている。


3.OCI課税の税金費用表示は今後検討

OCIとは、その他の包括利益のこと。

連結納税加入時にその他有価証券が時価評価された場合等、その他包括利益に対し課税されることが考えられる。
⇒その場合、税金費用の表示上の取扱いを明確にすべきと問い合わせが多数あり。

企業会計基準委員会は、上記が論点となる「税効果会計基準」の一部改正を正式決定した後に、将来の検討課題として検討する予定


4.税務CGによる調査省略は51社が対象に

■税務CG(コーポレートガバナンス)とは
税務についてトップマネジメントが自ら適正申告の確保に積極的に関与し、必要な内部統制を整備すること

■対象法人
・特別国税調査官が所轄する大法人

■取組のメリット
・調査間隔の1年延長(調査省略)
<条件>
・税務CG(コーポレートガバナンス)の状況が良好であること
・調査結果に大口悪質な是正事項がない
・税務リスクが高い取引などの自主的な開示


5.自社株対価TOBの普及となるか

■現行制度
 税務上は「株主が保有株を手放した」とされ、みなし売却益へ課税されてきた。
 納税資金を手当てできない株主としてはTOBに応じるネックとなっていた。

■平成30年度改正案
 みなし売却益への課税がTOB直後に発生するのを避けるため株式で保有している間は課税の繰り延べを認めるよう財務省へ要望

■改正案に懸念される事項
 現行制度に比べ多額な資金調達を要しないため、積極的な事業再編が促される一方、改正要望案にある「自社株等」の範囲によっては外国企業が日本の100%子会社を利用して容易に自社株対価TOBを仕掛けることも考えられ改正案に懸念する意見も出ている。


6.家賃保証サービスに係る消費税の課税関係

■Q
A社は賃貸住宅の家賃支払いを保証するサービスを行っている。
入居者が家賃を滞納した場合には入居者に代わって家主に賃料を支払い、後日入居者からその金額を徴収している。この場合の課税関係はどうなるか。

■A
各者の課税関係は以下のとおりとなる。
(1)A社から家主への支払=不課税(立替金処理)
(2)家主=居住用物件であれば非課税、居住用以外であれば課税(通常の家賃収入と同じ)
(3)入居者からA社への支払=立替金の精算であるため不課税

■保証料の取り扱い
(1)入居者がA社へ支払う保証料=非課税(信用の保証にかかる役務の提供に該当)
(2)A社が受け取る保証料=非課税売上

■参考(連帯保証人が支払う場合)
連帯保証人が入居者に代わって支払う賃料相当額は資産の譲渡等の対価に該当しないため不課税となる(入居者に対する貸付金として処理)


7.“配当還元”巡り低額譲渡の問題も 地裁判決受け納税者が控訴-相続税対策による株の譲渡そのものにも否認リスク

■事案
・個人Aが保有する自社株をB社に譲渡(7.88%)
・Aの譲渡所得の申告⇒収入金額は配当還元方式で算定した価額(実際に譲渡した金額)を使用
 取得側(B社)からすると「同族株主以外の株主等が取得した株式」のため配当還元にて評価

■税務署の主張と裁判所の判決
・本件譲渡対価は時価(類似業種比準方式)の2分の1に満たない⇒低額譲渡として更正処分(裁判所も認めた)
・これにより54M⇒1,816Mの譲渡収入へと

■考え方
・相続税⇒財産の移転があった際の価額を基に"その取得者"に課税
 それに対し
・所得税⇒資産の値上がり益を所得として"元の所有者"に対し課税
したがって、低額譲渡の判定も譲渡直前における元の所有者にとっての価値により評価するのが相当
・本ケースでは譲渡したのは7.88%であったが、Aの譲渡直前の議決権は22.79%と15%以上であったため配当還元が採れず原則的評価方法の類似業種比準方式が時価と判定された


8.返金不要の支払

・スポーツクラブの入会金や電気通信契約の加入金など、返金不要な顧客からの支払の処理
⇒現行の日本基準では一般的な定めはない
⇒入金時に一括処理と契約期間で按分とに分かれる

収益認識基準の適用指針案(57-60項)はこの取扱を明確化している。
⇒将来の履行義務の場合、財・サービスが提供される時点で収益認識する
⇒スポーツクラブへの入会により会員期間中にサービスを受ける権利や非会員より低い価格で財・サービスを購入できる権利を付与する場合には、会員期間にわたり履行義務の充足につれて収益認識することが求められる
⇒会員期間に定めがない場合、平均在籍年数などの合理的な見積により収益を配分する


9.役員向け株式交付信託制度に係る会計処理

■スキーム
(1) 【会社→信託】自社株を取得することを目的として、役員報酬相当額を信託に拠出
(2) 【信託←市場】信託が市場から自社株を取得
(3) 【会社→信託】剰余金を配当
(4) 【会社→役員】ポイントの付与(業績達成度等に連動)
(5) 【会社→役員】ポイントに基づき株式を交付(退任時or在任期間中)
【前提】
・株式交付信託を用いた役員報酬について、株主総会の承認が必要
・取締役会等により株式給付規程を制定
・信託期間を通じて議決権は行使しない(信託管理人が指図)

■会計処理
・株式投資信託⇒信託財産をBSに計上(≠年金資産の扱いとは異なる)
・ポイント割当時:費用および引当金を計上(≠ストックオプション)
・株式交付時:引当金を取り崩し


10.非業務執行役員に対するインセンティブ報酬としての株式報酬を考える

※非業務執行役員=社外取締役、監査等委員、監査委員、監査役

・賞与や業績連動報酬は、業務を執行せず業績に責任を負わない非業務執行役員にはなじまないという考えがある
 ⇒経営の一翼を担っている以上、非業務執行役員に業績連動報酬を付与することが不適切とまでは考えられない


11.タイ 独占または市場支配的地位の形成につながる企業結合

・事前届出が必要
・企業結合が著しく競争を制約する事となる場合には、企業結合実行後7日以内に届出
※具体的な届出基準はOTCC(タイ取引競争委員会)が定めることになっているが、現時点では未公表


12.会計システムのクラウド化における検討

■クラウド化による最大のメリット
⇒自動仕訳機能による人的作業の削減 (簿記知識なくとも経理が可能)
・従来:証憑をもとに、経理部員が作成した仕訳を、会計システムに登録
・クラウド:金融機関データをもとに、クラウドシステム内で自動仕訳が作成&登録

■自動仕訳における検討
(1)金融機関データベースの仕訳は現金主義⇒発生主義に変換する必要のある取引はどれにするか
(2)検証作業も踏まえ、勘定科目を適度に細分化
(3)例:売掛金の回収か前受金の発生か判別できない、といった自動仕訳の限界のリカバーはどうするか

■経費管理システムのクラウド化における留意点
(1)仕訳を部門別に作成するのか、勘定別に作成するのか、集計対象をどうするか
(2)証憑がクラウド環境にしか残らないため、会計との整合や、後の検証作業をどうするか

■給与計算システムのクラウド化における留意点
(1)基本給与、社保、勤怠、持株会等のサブ情報をどう取り込むか、クラウド対象とするか
(2)マイナンバーに関するセキュリティ体制はどうか


13.新収益認識会計基準案による実務への影響

・製品保証引当金
現行
無償(初期不良対応等)で商品の修理/交換をする場合:費用の発生見込額を合理的に見積可能な場合、販売時に引当計上
有償(保証期間延長サービス等)で商品の修理/交換をする場合:費用の引当計上はできず、保証期間に応じて収益認識

新収益認識基準案
対象商品が合意された仕様に従っているという保証(初期不良対応等)のみの場合⇒引当金として処理
上記保証に加え、有償による保証サービスあり⇒保証サービス分を契約負債と認識し、期間に応じて取崩/売上計上
※実質的な収益認識額への影響なし

・返品調整引当金
現行
将来の返品額を合理的に見積可能な場合、販売時に返品見込み分も含めて収益認識+引当金計上

新収益認識基準案
返品見込み部分は収益を認識しない
⇒新収益認識基準案では返品見込み分の収益認識は行わず、返品見込額を返品資産(原価)/返金負債(売価)として認識する

・ポイント引当金
現行
ポイント付与時にポイント分も含めて収益認識、ポイント使用見込額を引当金計上

新収益認識基準案
ポイント付与時にポイント分を除いて収益認識し、ポイント使用時に収益認識
⇒販売時にポイント売上分を契約負債として認識し、使用時に売上へ振替


14.引当金の計上タイミングのポイント

■前提
引当金の計上要件(4要件)
①将来の特定の費用又は損失であること
②その発生が当期以前の事象に起因していること
③発生の可能性が高いこと
④その金額を合理的に見積もることができること

下記にて実務において迷いやすい論点を科目ごとにピックアップ。
■賞与引当金
論点:決算賞与を期末日後に支給する場合の引当金計上。
⇒支給の原因が当期における従業員の勤務に起因していれば引当金を認識
※決算日に支給額が確定⇒未払費用又は未払金計上

■役員退職慰労引当金
論点:内規に定めのない功労加算金の引当金計上。
⇒支給が決定される株主総会の決議時に費用認識することが多い。
※引当金計上の判断⇒支給理由、内規内容、過去の支給実績、今後の支給可能性等から慎重に判断。

■工事損失引当金
論点:どのようなタイミングで引当金計上又は見直し。
⇒実行予算作成後の合理的な見積額により行う。

■訴訟損失引当金
論点:訴訟の提起後の引当金の認識時点
⇒事実関係、訴訟の進行状況、専門家の助言等から発生の可能性が高まったと判断される時。
※裁判での敗訴、和解の成立による損失額の確定⇒未払金計上

■災害損失引当金
論点:期末日以前に発生した災害に対する決算日以降に発生する費用又は損失の引当金の認識。
⇒災害を直接の原因としているか、合理的に金額が見積もれるかをポイントに判断。

■債務保証損失引当金
論点:主たる債務者がどのような状態にある場合に引当金計上するか。
⇒下記3つの状況により判断。(決算期ごとに見直す必要あり)
・法的、形式的に経営破綻している場合
・実質的に経営破綻に陥っている場合(深刻な経営難、再建の見通しがない等)
・今後、経営破たんに陥る可能性が高い場合(経営難、経営改善計画等の進捗が芳しくない等)


15.米国が連邦法人税率引き下げ

・連邦法人税率を35%から20%に引き下げ 税率は恒久化
・海外留保資金には5~12%を課税(従来は米国に戻す際、最大35%)。先行きはゼロに。米国内にお金を戻しやすくする。
・グローバル比率の高い企業には10%の海外収益課税を課す
・外資が米国で稼いだ資金の国外送金に一部課税(最大20%?)


16.ベンチャーの失敗事例(その4)

1.種類株主総会決議を忘れる
・種類株式の発行後、一定の場合には特定の種類の株式(A種優先株式、普通株式等)の株主のみで構成される種類株主総会決議が要求される。
・これを忘れると会社の行為が無効となるおそれあり。
・種類株主総会決議が要求されるのは、(1)種類株式の内容として拒否権を定めた場合、(2)会社法上定められている場合
・(1)の場合はVC等の投資家と協議の上、内容を定めるため、会社も種類株主総会が必要なことを認識していることが多いが、
(2)については特に種類株主の内容として定めなくとも必要となってしまうため、気をつける必要があり。

(参考)会社法上の種類株主総会事項(主なもの)
(1)ある種類株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがある次の事項についての決議
1.次に掲げる事項についての定款の変更
イ 株式の種類の追加
ロ 株式の内容の変更
ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
2. 株式の併合又は株式の分割
3.株式無償割当て
4. 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集
5. 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集
6.新株予約権無償割当て
7.合併等
(2)全部取得条項付株式の定めを設けるための定款変更決議をする種類株主総会
(3)監査役選任の種類株主総会において監査役を解任する種類株主総会
(6)組織再編行為の対価として譲渡制限株式を発行する存続会社等の種類株主総会
(7)譲渡制限株式についての定めを設ける定款変更の決議
(8)組織再編行為により、譲渡制限株式等を交付する場合における契約・計画を承認する種類株主総会






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供