2019年4月17日水曜日

4/12 勉強会:KAM導入にあたって7つの懸念 他

1.報酬委員会における決定等手続(法人税関係)

報酬員会における決定等の手続について、要件が除外又は追加された。

・業務執行役員が報酬委員会又は報酬諮問委員会の委員でないことの要件を除外
・報酬委員会又は報酬諮問委員会の委員の過半数が独立社外取締役等であること及び
 委員である独立社外取締役等の全員が業績連動給与の決定等に係る決議に賛成していることの要件を追加
・報酬諮問委員会に対する諮問等を経た取締役会の決議による決定に係る給与の支給を受ける業務執行役員が
 その決定等に係る決議に参加していないことの要件を追加

■支払通知書等の確定申告書添付を不要に(所得税措置法関係)
下記の支払通知書等については、確定申告書に添付することを要しないこととされた。

・オープン型証券投資信託の収益分配の支払通知書
・配当等とみなす金額に関する支払通知書
・上場株式配当等の支払通知書
・特定口座年間取引報告書
・未成年者口座等につき契約不履行等事由が生じた場合の報告書
・特定割引債の償還金の支払通知書






2.四半期レビュー報告書記載内容を改訂へ

■四半期レビュー報告書の記載内容を見直し
・監査報告書の記載区分が見直しになったことに伴う見直し
・監査人の結論は冒頭に記載されることとなる

■順序
(現状)
・経営者の責任
・監査人の責任
・監査人の結論
・強調事項(GC、追記情報)
・利害関係

(改定後/矢印は現状からの記載位置の変更を示す)
・監査人の結論【↑】
・結論の根拠【新】
・強調事項(GC、追記情報)【↑】
・経営者及び監査役等の責任【↓※監査役追加】
・監査人の責任【↓】
・利害関係【→】



3.税込対価"放置"なら買い叩きに該当も

■転嫁対策ガイドライン
・取引先からの対価引上げの要請や価格交渉の申出がないことを理由として、消費税率引上げ後も消費税率引上げ前に定めた対価を据え置く場合
⇒買い叩きに該当すると記載
⇒税率引上げ前の対価を放置すれば買い叩きになり得るという見解

・企業は、取引先が対価引上げを拒んだ場合は買い叩きとならない「合理的な理由」に該当する旨をガイドラインに追記するよう要請
⇒公取は見送り
⇒仕入先の要望で価格を据え置く場合、仕入先から言質を取っておく必要がある





4.空き家特例、老人ホーム入所中要件示す

■空き家の譲渡所得の特別控除(3,000万円)の要件
H31年度税制改正の新適用対象要件のひとつの「被相続人が老人ホーム等に入所したときから相続開始直前まで、その家屋について被相続人による一定の使用がなされ~」の一定の使用について

■一定の使用とは
被相続人が家財道具等の保管場所として使用していた場合や老人ホームに入所している被相続人が居住用家屋に一時的に滞在した場合など


■特例適用要件
市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」を確定申告に添付





5.居住用財産の譲渡特例、適用範囲をめぐり一部取消裁決

■概要
・納税者は所有している1つの土地に日常生活を営んでる家屋、賃貸目的で共同住宅が2棟あり、それらを取り壊して更地として譲渡した際に、土地の敷地全体に居住用財産の譲渡特例を適用した所得税等の確定申告書を提出した。これに対し課税当局は、納税者の居住用に供されていない敷地部分は特例を適用できないとする更正処分を行った。また、納税者は特例の対象を認識していたのに関わらず、本件全ての土地が自己の居住用家屋である旨を記載して提出したことなどから重加算税賦課決定処分を行った。

■争点
・土地の特例の適用範囲がすべてか一部か。
・重加算税の可否

■裁決
・審判所は、特例対象になる家屋の判定は2以上の家屋がそれぞれ独立の家屋として機能を有する場合、その者が主として居住用に供していると認められる家屋に限り適用対象になるべきであるとした。土地の範囲については、地図上の区分線の位置に各家屋を区分するような柵などが存在したと認められないとして、適用される土地の面積の算定は全体の建築面積の合計に占める日常生活を営んでいた家屋の建築面積の割合により算定するのが相当であるとした。
・重加算税については、各建物の各居宅を物置として利用していたと認められることなどから、そのような利用実態より本件土地のすべてに適用できると誤解し、確定申告した可能性があるとして、重加算税を取り消した。





6.Q&Aで読み解く個人版事業承継税制

・個人版事業承継税制の適用を受けるためには個人事業承継計画の提出が必要だが、提出した場合は必ず事業承継をしなければならないか
⇒必ずしも事業承継をしなければならないわけではない。
 少しでも適用の可能性がある場合、2024年3月31日までに個人事業承継計画を提出しておくべき

・個人事業承継計画の変更は提出期限後でも可能か
⇒期限内に個人事業承継計画を提出していれば、提出期限後である2024年4月1日以降に変更届出を提出することが可能

・対象外となる事業はあるか
⇒不動産貸付業、駐車場業が個人版事業承継税制の対象外

・法人版事業承継税制同様に、個人版事業承継税制も複数の後継者に特定事業用資産を譲渡可能か
⇒原則として先代の事業者1人から後継者1人に譲渡することとされているが、事業ごとであれば複数の後継者に譲渡可能

・先代の事業者の配偶者が事業に供している不動産を所有している場合、その不動産は納税猶予の対象になるか
⇒先代の事業者と生計を一にする親族等が所有し、かつ先代事業者の事業の用に供していれば納税猶予の対象

・自宅兼事務所の場合、事務所部分は納税猶予の対象か
⇒事業の用に供されている部分のみが納税猶予の対象

・対象となる特定事業用資産は
⇒事業の用に供していた宅地、建物、減価償却資産が対象。預貯金、売掛金、棚卸資産、不動産貸付用の宅地建物は対象外

・個人事業承継計画には具体的に何を記載すればよいか
⇒後継者候補の氏名や事業承継の予定時期、承継時までの経営見通しや承継の事業計画を記載し、その内容について、税理士などの認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受ける必要がる




7.賃上げ税制:資格取得費用と教育訓練費

■概要
賃上げ・投資促進税制は一定の要件を満たしたうえで、教育訓練費の支出があれば
控除額が上乗せされる。

■教育訓練費の定義
法人がその国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ,又は向上させるために支出する費用のうち一定のものをいう

■ケーススタディ
従業員が資格を取得した際に法人が支出した受験料等の取扱いはどうなるか?

<対象となるもの>
・業務遂行に必要な資格取得にかかるもの(例:証券会社における「証券外交員」資格)
・資格取得後の法定更新講習会の参加費(更新料は除く)

<対象とならないもの>
・従業員が自己研鑽の目的で資格を取得した場合の受験料等(例:一般会社員のふぐ調理師資格)
・福利厚生の一環としての報奨金
・資格取得のために企業側が用意した教材費

→教育訓練の一環として資格を取得したか
→企業側が教育訓練を行ったか
等で判断する




8.法人税:欠損金の繰戻し還付 地方法人税の還付請求の失念に注意

■欠損金の繰戻し還付とは
青色申告法人が該当する事業年度に欠損金が発生した場合、
欠損金を前事業年度に繰戻しをして前年に支払済の法人税額の還付を請求できる・

■繰戻しの還付の計算方法
法人税(A):前期の法人税額×当期の欠損金額÷前期の所得金額
地方法人税:(A)×4.4%

■地方法人税の還付額の記載箇所
別表一(1)の27番の外書き欄に記載する
⇒会計ソフトでは自動で反映されず、手入力で入力するため失念が多い




KAM導入にあたって7つの懸念

・KAMが2020年3月期から早期適用開始
・監査報告書による株主等に対する情報提供を充実させる

懸念1 未公表情報の扱い
・監査人がKAMとして載せたい情報が未公表情報である場合、企業側の抵抗が大きいと思われる

懸念2 日本の会計基準
・試行結果によれば、IFRSを導入している会社では、KAMとして載せたい情報がほぼ公表されていたが、日本基準では未公表のケースが多かった。

懸念3 紋切り型
・紋切り型の監査報告書に慣れている日本の監査法人が、KAM導入後も同様の対応をしないか。

懸念4 保守的対応
・KAMに書いた事項でその後に不正が明らかになった、KAMに書かなかった範囲で問題が起きた時に監査人がどのような責任に問われるのか、
監査人が過度に気にして保守的な対応をとる恐れあり

懸念5 利用者の能力
・苦労してKAMを記載したとして、株主は理解できるのか

懸念6 監査役等の対応
・監査役はKAMの記載を減らさせることに注力するのではなく、KAMであがった課題に自らの権限と職務の範囲で対応できるか

懸念7 マスコミの対応
・KAMの内容を表層的に取り上げ、企業や監査人を萎縮させることにならないか
 KAMを基に「危ない企業」として喧伝するなど




10.大量保有報告書制度に関するQ&A(全編)

Q.大量保有報告書とは?
A.上場会社の株券等(自己株式は含めず、潜在株式は含める)の保有者で、保有割合が5%超となった日から5営業日以内に財務局に提出しなければならない書類。当書類提出後、1%以上変動した場合には変更報告書を提出。

Q.株券等保有割合が1%以上変動した場合の基準となる株券等保有割合は、いつ時点のものか?
A.直前に提出された大量保有報告書や変更報告書に記載された株券等保有割合。

Q.変更報告書の提出が求められる「記載すべき重要な事項の変更」とは?
A.保有者等の商号・氏名・住所・保有割合の増減・担保契約等重要な契約の締結や変更等。

Q.担保契約等重要な契約とは?
A.保有株権に関する貸借契約、担保契約、売戻し契約等、株券等の移動に係る契約や取り決めが該当。

Q.短期大量譲渡とは?
A.短期大量譲渡とは、変更報告書の報告義務発生時点で株券等保有割合が過去一定期間の最高保有割合の1/2未満となり、かつ最高保有割合から5%を超えて減少すること。





11.公開申請に伴い発生する費用

1.上場審査料
東京証券取引所200万円、その他100万円

2.上場手数料
取引所/定額/変動
東京/一部1,500万円、2部1,200万円/株式数×価格×(公募:万分の9、売出:万分の1)
マザ/100万円/株式数×価格×(公募:万分の9、売出:万分の1)
ヘラクレス/400万円/上場時の時価総額により25万円~1,300万円
大阪/500万円/1単位につき30円(上限1,500万円)
名古屋/300万円/1単位につき26円(上限1,700万円)
JASDAQ/600万円/上場株式数により72万円~132万円

 



12.IFRS16号適用にあたっての減損会計

IFRS16号を適用した場合、ほとんどのリースについて使用権資産とリース負債を認識
→使用権資産には減損会計が適用される

・減損テストのタイミング
他の資産と同様、減損の兆候が存在する場合にのみ減損テストを実施。
→使用権資産のグルーピングが必要となる
→一般的に使用権資産はCGU単位(関連する資金生成単位)での減損の検討が行われる
→使用権資産を認識することでCGU単位での帳簿価額が増加する
→のれんの減損テストにも影響を及ぼす(回収可能価額と比較する簿価が増加)

・CGUの具体例
小売店を展開する会社
①建物Aの1階を店舗として使用
②建物Bの2階を別会社に転貸
③建物Cの2フロアを人事・マーケティング部が使用

①=建物Aは店舗として利用されることではじめてキャッシュを獲得
→店舗のCGU単位で減損検討
②=サブリースにより、使用権資産が独立してキャッシュを獲得
→使用権資産単独で減損検討
③=人事・マーケティングは全社機能であるため、使用権資産は全社資産に該当
→関係するCGUに配分






13.軽減税率制度~その2~

■軽減税率の対象となる飲食料品の範囲
・食品表示法に規定する食品と食品添加物が対象、酒類、 医薬品、医薬部外品は対象外
(食品添加物:甘味料、着色料、凝固剤などの食品を製造、加工に必要なもの)

■軽減税率が適用されない外食やケータリングとは
・外食
⇒飲食店営業など、食事の提供を行う事業者が椅子、テーブル、カウンターなどの飲食に用いられる設備がある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供となるもの。
・ケータリングや出張料理
⇒発注者が指定した場所において行う加熱や調理又は給仕等の役務の提供を伴う飲食料品の譲渡
※飲食を提供される場所、飲食料品の飲食させる役務の提供の2要件

Q.屋台での飲食料品の販売は?
A.椅子、テーブルなどの設備があり、その場所で飲食させる場合は10%
  設備がない場合は、飲食料品の譲渡となるので8%
















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4/5 勉強会:軽減税率制度 他

1.監査法人がIFRS任意適用日本企業に提供している非監査証明業務と報酬額

■IFRS任意適用日本企業が、監査法人から提供を受けた非監査証明業務(合計111件)
・IFRSに係るアドバイザリー業務、研修業務 34件
・コンフォートレター作成業務 27件
・アドバイザリー、コンサルティング業務 10件
・内部統制等に関する改善助言業務 8件
・税務関連業務 7件
・その他 25件

■非監査証明業務に係る報酬が多いIFRS任意適用日本企業(上位5社)
・アサヒグループH:非監査証明業務報酬額(デューデリジェンス業務)417M ※監査報酬額409M
・ソフトバンクグループ:非監査証明業務報酬額(コンフォートレター作成業務)279M ※監査報酬額1,732M
・ツバキナカシマ:非監査証明業務報酬額(DD業務、コンフォートレター作成業務)219M ※監査報酬額81M
・パナソニック:非監査証明業務報酬額(会計税務アドバイザリー業務)201M ※監査報酬額1,081M
・LIXILグループ:非監査証明業務報酬額(IFRSに係るアドバイザリー業務)177M ※監査報酬額587M






2.IFRS等を踏まえてリース会計基準を開発へ

■オペレーティング・リースの取扱い
・IFRS:オンバランス
・日本基準:オフバランス
⇒重要な負債がオフバランスになっているのでは??
⇒IFRS適用企業との財務諸表の比較可能性
【国際的な問題提起により日本でもリース会計基準に着手!】
※解決すべき課題は山積しており、適用時期は不明

■想定される主な論点
・費用配分の方法(IFRSと米国基準とで乖離があり、どちらに合わせるか)
・IFRS16との整合の程度
・取引の範囲(所有権から使用権へ/サービスの利用権をどこまで範囲とするか)
・延長オプションの取扱い
・重要性の判断
・連結のみを対象とするか、単体まで対象とするか




3.建物収去費用を債務控除の対象と判断

■事案
・被相続人は土地を30年契約で借り、5階建ての店舗及び共同住宅を新築
・被相続人が賃料を長期間滞納したため、借地契約は解除
・被相続人は建物を取り壊し、更地として土地所有者に返還する義務を負う
・被相続人がその後死亡し、土地返還義務は相続人に引継がれた
・相続人は解体業者に約8千万円を支払って解体撤去工事を実施
・相続人は、工事費用は被相続人の債務として控除されるべきとする、更生の請求を行った
⇒税務署は債務控除の対象外として否認

■審判所の判断
・経済的合理性が認められる金額の限度で債務控除を認める
(理由)
・相続開始当時において、その履行が確実と認められるため控除はOK。
・ただし、8千万円については算定根拠が不明確で経済合理性を欠くと判断。債務控除額は5,775万円とされた




4.改正CFC税制上のペーパーカンパニーの定義

平成31年度税制改正では、ペーパーカンパニーの定義を見直し、救済措置を導入。
税負担率が30%を切る国の関連会社について、日本の親会社に合算して課税する。米国がタックスヘイブン扱いされて2重課税されることのないよう、米国での事業全体を踏まえて判断する仕組みにする。ペーパーカンパニーに該当しないためには「事業要件」「資産割要件」「収入割要件」等を満たす必要がる。



■CFC税制(タックス・ヘイブン対策税制・外国子会社合算税制)とは
外国子会社を利用した租税回避を防止するために、一定の条件に該当する外国子会社の所得を日本の親会 社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度。

■CFC税制上のペーパーカンパニーの定義
パターン1:単純な特殊会社であるペーパーカンパニー
パターン2:階層的に設けられたペーパーカンパニー
パターン3:不動産を保有するペーパーカンパニー(不動産業)
パターン4:不動産を保有するペーパーカンパニー(非不動産業)
パターン5:資源開発等プロジェクトに係るペーパーカンパニー
※ペーパーカンパニーに該当するかどうかの判定は、外国関係会社毎に行う必要がある。




5.収益認識会計における注記事項を検討へ

・企業会計基準委員会が収益認識会計における注記事項の検討に着手している。
・収益認識会計基準については、2021年4月1日以後開始する事業年度から強制適用されることになるが、2018年1月1日以後開始する事業年度からの早期適用も認められている。

◾️論点
・注記事項や売上高等の表示のほか、注記の記載場所
→早期適用時、必要最低限のものであり、個別注記として開示。
当該注記を重要な会計方針の注記として開示すべきか、否かを検討。

・個別財務諸表及び四半期財務諸表の開示取扱いは、単体開示の省略又は必要最低限の開示にとどめるべきだという意見や、四半期報告書において省略すべきだという意見があり、今後検討されていく。





6.RSを非居住者に支給でも損金算入の途

■役員給与税制の改訂
・譲渡制限付株式報酬(RS)を支給する場合の損金算入要件(Q18)
⇒居住者である役員:事前確定届出給与
⇒非居住者である役員:業績連動給与
・非居住者役員は日本の証券会社での口座開設が困難なため、ファントムストックを支給することが多い
・ファントムストックを業績連動給与で損金算入するためには、有価証券報告書等に非居住者役員への金銭報酬は居住者役員に付与する株式報酬に相当するものである旨の記載が必要

■従来からの取り扱いを明文化
・株式交付信託(Q16)
⇒役員が株式等を在職時に受け取った場合:給与所得
⇒退職時に受け取った場合:退職所得
・業績連動給与の減額(Q73)
⇒病気や不祥事により業績連動給与の一部を支給しない場合、減額する金額の算定方法を予め開示していれば、
損金算入可能




7.裁決事例:重加算税の賦課決定処分の取消事例

■概要
・請求人は同一の敷地内に建物A、B、Cを所有していた
・実際に居住していたのは建物Aのみ
・その後建物A、B、Cを一括で譲渡し居住用財産の特別控除特例を適用して申告
・税務当局は建物B、Cについては適用を取消したうえで意図的に過少申告したとして
 重加算税を課した

■審判所の判断
・特例が適用できるのは実際に居住していた建物Aのみ
・重加算税を課するためには、納税者が“当初から所得を過少に申告すること等を意図し、
その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした”上、その意図に基づき過少申告等をした
場合に課すのが相当
・請求人は税の専門家ではなく、建物B、Cが適用除外となることを正しく理解していたかは疑問が
 生じる。したがって意図的にB、Cに特例を適用して過少申告したとまでは認められない。
⇒重加算税の賦課要件を満たさないと判断し処分を取り消した





8.インボイス制度のシステム改修費用

2023年10月1日より適格請求書等保存方式(インボイス制度)がスタートする。

軽減税率の実施と同タイミングで、
インボイス制度を見据えたシステム改修(レジの改修等)を行った場合の費用は?
・修繕費として損金算入可
・金額は問わない(60万円超でもOK)
 ⇒消費税法改正に伴う必要な改修であるから
・作業指図書等で改修の理由を明確することが重要





新収益基準 本人と代理人の区分

・財またはサービスを自ら提供する企業=本人
 ⇒ 対価の総額を収益認識する
・財またはサービスを手配する企業=代理人
 ⇒ 手数料等を収益認識する

・判断の指標は下記で総合的に判断。
(1)財またはサービスの提供に主な責任を負うこと
(2)返品があった場合、主に負担を負うこと
(3)価格設定に裁量権を有していること

・法人税法上の扱い
 ⇒ 会計処理に準ずる

・消費税法上の扱い
 ⇒ 代理人取引であっても、基本的に課税売上と課税仕入をそれぞれ認識
 ⇒ 納税額は変わらないが、課税売上割合に影響

・開示事例(楽天)
「インターネットサービスのうち、当社グループが主に楽天会員に対して商品を提供するインターネット通販サイト『楽天ブックス』、『爽快ドラッグ』、『ケンコーコム』等のサービスにおいては、当社グループが売買契約の当事者となります。(中略)なお、楽天ブックスのうち、国内における書籍(和書)販売については、再販売価格維持制度を考慮すると代理人取引としての性質が強いと判断されるため、収益に関連する原価と総裁の上、純額にて計上しています。」






10.オペレーティングリース(以下、OL)も資産・負債認識する基準開発の着手を決定

・ASBJは3月22日、「すべてのリースについて資産及び負債を認識するリースに関する会計基準」の開発に着手することを決定。
⇒現行のOLは資産・負債を認識しないが、今後は全てのリース取引を資産・負債認識。
⇒IFRS16号、US-GAAP「リース(Topic842)」との比較可能性を確保。日本基準の信頼性回復。

・OLを資産・負債として認識することの懸念
①サービスとしての正確が強い。
②延長オプションについて、リース負債を認識することの懸念。
③適用コストに関する懸念。

・基準開発に対するニーズ
①国際的な会計準との整合性を図る。
②重要なOLに関する負債がオフバランスとなることが、日本の財務報告の信頼性を損なうリスクあり。

・留意点
①単体財務諸表での取扱は慎重に検討
②費用配分をIFRS16号と同様、前加重とすると税法の取り扱いと乖離する可能性あり。
③リースの識別、期間の判定、リースと非リースの分離等、国際的な会計基準の実務上の問題にも留意。




11.第2章「特定の財またはサービス」の識別のポイント

・本人と代理人の区分判定前(第1章参照)に、検討の対象となる「特定の財またはサービス」を識別することが必要
・契約を履行するための活動でも、当該活動により顧客に財またはサービスが移転しなければ、そもそも履行義務に該当しない
⇒例:顧客指定の工場でサービス提供する契約において本人として充足する履行義務に関連して発生した出張費(交通費、宿泊費、食費等)を顧客がサービス提供者へ支払うことを契約上合意
 これらの経費等は契約を履行するための活動に関連するが、当該活動は財またはサービスを顧客に移転しない=履行義務には該当しない
⇒顧客の支払金額=サービス提供の取引価額を構成するものとして総額で収益認識
⇒履行活動が代理人としての履行義務に関連する場合=発生した費用と顧客の支払額を純額で処理
 



12.新収益基準~本人・代理人の区分と会計処理への影響~
■顧客への移転前に、その財又はサービスを企業が支配しているか
・支配している⇒企業は本人⇒売上は総額表示
・支配していない⇒企業は代理人⇒売上は純額表示

■事例検討
・スーパーマーケット
⇒前提:品物の所有権を、メーカーや卸業者に残したまま販売する形態が多い
⇒顧客への移転前においては、品物の所有権はメーカーや卸業者にある
⇒スーパーは代理人

⇒レジで販売した金額ではなく、仕入等を控除したうえでの売上計上が必要





13.新収益基準~財またはサービスの「支配」の判断ポイント~
■収益認識基準における「支配」について
収益の認識は、履行義務の充足時行われる。
⇒履行義務は、顧客がその財又はサービスの「支配」を獲得した時点で充足。
⇒従って、顧客がその財又はサービスを「支配」した時点で収益の認識が行われる。

■「支配」の判断にあたっての指標
適用指針では、「支配しているか否か」を判定するための指標として以下3つの例を示している。
・契約履行の主たる責任
・在庫リスク
・価格設定における裁量権
⇒上記あくまでも例示であり、これら以外の指標も考慮する必要も。

⇒取引の性質や条件を基礎として、総合的な判断が必要。






14.相談役報酬の開示

・関連当事者の注記で役員報酬は開示対象外とされている。
⇒開示対象外とされる役員報酬は、役員が職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益を意味しており、相談役に対する報酬は開示対象外の役員報酬に該当しないと考えられる。
・当該相談役が主要株主に該当するなどで関連当事者に該当し、1,000万円を超える報酬がある場合には、関連当事者の注記として開示する必要があると考えられる。

※相談役
経営判断を行う社長や会長の相談にのり、アドバイスをしながら、彼らを支えていく役割を担っている。
実際には、社長職や会長職など会社のトップを退任した人が就くことが多く、会社によってその位置づけはさまざまであり、役割も異なる。




15.東名(4439)詳細


・光通信の出身者が経営するNTT光回線の代理店業務をコアに、積極的な事業展開を計画しており、上場前説明会で四半期利益が急拡大している
・事業は光通信やレカムなどと同様に、中小企業向けの回線提供サービスがコア
・その事業で得てきた10万の顧客基盤をベースに、保険や情報機器、照明器具、電力小売りといった事業を展開していこうと計画している。
・営業系の企業との印象が強く、上場後にさほどプレミアムがつきにくいと考えられる反面、
2015 年のストック型へのビジネスモデル変更で一時の赤字期間を経て、足下の業績が急速に向上している点に注目が集まると見られる。




16.IFRS適用会社向け2019年3月期決算の留意事項


2019年3月期から強制適用となる主な基準
・IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」
・IFRS9号「金融商品」
・IAS40号「投資不動産の振替」
・IAS28号「関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資」

・IFRS15号
支配の移転により収益を認識することを明確化し、より多くの規定や適用ガイダンスが設けられた
→返品権付き販売、製品細湯、ライセンス供与、買戻し契約などの特定取引に関するガイダンスが定められている

・IFRS9号
IAS39号の発生損失モデルからより将来予測的な情報を考慮した予想信用損失モデルに変更
→信用損失の認識が遅すぎる懸念に対応するための変更
IAS39号のヘッジ会計は企業のリスク管理活動が反映されていないと批判されていた
→より多くのヘッジ手段およびヘッジ対象がヘッジ会計の要件をみたすことなった
→ヘッジ会計を柔軟にしたことで、リスク管理目的等の文書化がより重要となった



17.軽減税率制度


■2019年10月1日より開始
・標準税率 8% ⇒ 10% (国税:7.8%(6.24%)、地方税:2.2%(1.76%)) ( )は10/1以後の8%の税率
・食品表示法に規定する飲食料品の譲渡、定期購読契約がされた新聞の譲渡に限り8%の軽減税率が適用

■軽減税率が適用されないもの
【飲食料品】人の飲食用に供されるものに軽減税率が適用されるが下記のものは除外される。
・酒税法に規定する「酒類」 ・医薬品、医薬部外品 ・工業用材料として取引される塩や油
・観賞用、栽培用として取引される植物 ・生活用水として販売される水 

【新聞】週2回以上発行されている新聞の譲渡は軽減税率が適用されるが下記のものは除外される
・コンビニ等で購入する新聞 ⇒ 定期購読ではないので除外
・ネット配信する電子新聞 ⇒ 「電気通信利用役務の提供」であり、「新聞の譲渡」ではないなので除外












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