2017年1月13日金曜日

1/13 勉強会:第三者割当新株予約権の設計ポイント 他

1.過去の誤謬(減価償却資産の減損損失)

(設例)
・前期において、建物に係る減損損失450の計上漏れがあった
・過年度遡及会計基準の適用により、当期の期首利益剰余金を500減額処理した
・減損損失450に係る当期の減価償却費限度額は50
⇒当期の申告調整はどうするか。

(答)
別表四は「減価償却費認容」として50減算(留保)する


2.債権放棄の事実を認めるも、寄付金に該当で損金不算入

国外関連者(国外子会社)に対する債権放棄が、寄付金に該当すると判断された審判事例

債権放棄に関する損失が寄付金に該当する場合
⇒全額が損金不算入

寄付金に該当しない場合
⇒債権放棄に経済的合理性がある場合

経済的合理性の有無は、下記要素を総合して判断
(1)被支援者は支援者と事業関連性のある子会社等であるか
(2)当該子会社は経営危機に陥っているか
(3)支援者が損失負担を行う相当の理由があるか

今回の事例では、(2)から(3)が無いと指摘された。

さらに審判所は、子会社の債務超過が相当期間継続した事実が無い点を指摘、債権放棄による損失は法人税法上の寄付金に該当する(損金不算入)と判断した。


3.今週の専門用語

■固定資産税の設備投資減税

・「中小企業等経営強化法」が平成2871日に施行
⇒中小企業等を対象とした固定資産税の減税や金融支援等の特別措置

・固定資産の減税
⇒認定経営力向上計画に記載された機械装置を取得した場合、固定資産税が3年間2/3となる
⇒平成29331日までなら、生産性向上設備投資促進税制と重複適用可能

※生産性向上設備投資促進税制
 最先端設備等を取得した場合に、特別償却50%か最大4%の税額控除


4.分割法人の株式売却でも税制適格に

■平成29年税制改正で組織再編税制が大幅に見直し
⇒税制適格の判定に際して株式保有の継続に関する要件が緩和
(1)企業グループ内の分割型分割に係る関係継続要件
(2)共同事業を行うための合併等に係る株式保有継続要件

(1)分割後における、当事者間の完全支配関係の継続について
・改正前:親法人、分割法人、分割承継法人の間で必要
・改正後:親法人、分割承継法人の間で必要

(2)合併等後における、被合併法人等株主の合併法人等株式保有の継続について
・改正前:被合併法人等の発行済株式総数の80%以上に相当する株主による保有
※被合併法人等の株主数が50人未満の場合のみ
・改正後:被合併法人等の発行済株式総数の50%超を保有する株主による保有


5.中小企業の賃上げに最大22%の税額控除

H29年度税制改正で「所得拡大促進税制」を見直し。
前事業年度からの賃上げ率が2%以上であれば、前事業年度からの給与増加額の22%を税額控除。

なお大企業については、前事業年度からの賃上げ率が2%未満の場合は、「所得拡大促進税制」の適用対象外となる。

H294月以後開始事業年度より適用開始。


6.QAで読み解く中小企業の新投資減税

(1)中小企業投資促進税制
・機械装置、工具、ソフトウェアが対象
30%特別償却 or 7%税額控除

(2)固定資産の設備投資減税
・認定経営力向上計画の策定が必要
・機械装置、工具、器具備品、建物付属設備が対象
・償却資産税を3年間、2分の1に軽減

(3)中小企業経営強化税制
・認定経営力向上計画の策定が必要
・機械装置、工具、器具備品、建物付属設備、ソフトウェアが対象
・即時償却 or 7%-10%税額控除

⇒上記の(2)(3)、経営力向上計画の策定に税理士などが関与


7.相続税:類似業種比準方式改正の影響

■見直し内容
(1)類似業種の上場会社の株価について、前2年平均を加える
(2)類似業種の配当・利益・簿価純資産価額について連結決算を反映させたものとする
(3)配当・利益・簿価純資産価額の比重を1:1:1にする

■上記(2)の影響を検証
配当⇒連結子会社から連結親会社への配当は相殺されるためほとんど影響がないと思われる。
利益⇒単体では別表4調整後の課税所得をベースとしているが、改正後は連結P/Lの税引前利益がベースになると思われる。通常、別表調整は加算項目の方が多いため利益の数値は改正により小さくなるケースも想定される。
簿価純資産価額
⇒単体では別表4調整が反映された別表5(一)の数値をベースとしているが、改正後は連結B/Sの純資産がベースになると思われる。利益と同様、改正後の数値の方が小さくなるケースも想定される。 

上記分析は別表調整の金額が大きい場合を想定しているため、別表調整の影響が小さい場合は連結ベースの方が利益・純資産とも改正前より数値が大きくなると予想される。


8.グループ法人税制と特定新規設立法人の「他の者」

■特定新規設立法人とは(以下の3要件全てを満たす法人)
1.資本金等の額1,000万円未満の新規設立法人
2.他の者、他の者に完全支配された法人に50%超支配されている
3.上記判定の基礎となった他の者等の,新規設立法人の基準期間に相当する期間の課税売上高が5億円超
⇒設立1年目,2年目であっても,消費税免除なし

■グループ税制との比較(Cを中心に)
 AB 100%支配
 BC 100%支配
・グループ税制⇒ACはグループ税制の対象
・特定新規設立法人⇒上記3.の要件については、Bが判定対象となる(ACの関係ではなく)
 (3.5億円超の判定対象は,新規設立法人の直接的な株式保有を要件としている)


9.ホワイトカラーの犯罪

・かつて米国でビジネス・リーダーとして褒め称えたれた50人の経営者について、その後、ホワイトカラー犯罪で3名が刑務所に収監され、別の3名は不法行為により数百万ドルの罰金刑を科せられている。
・成功した人がなぜ、犯罪に走るのだろうか?
・インサイダーや粉飾決算などは少なくとも被害者を目にすることがない
 ⇒犯罪としての実感が希薄と感じる


10.平成29年度税制改正

1.デフレ脱却・経済再生
(1)研究開発税制
<従来> 売上に占める研究開発割合に応じた税額控除率
<改正> 試験研究費の増減率に応じた税額控除率
※売上規模に関わらず、試験研究費の増加を控除額に反映
(2)所得拡大税制
<従来> 雇用者給与増加額の10%
<改正> 雇用者給与増加額の10%(雇用者給与-比較雇用者給与)×2%

2.コーポレート・ガバナンス改革
(1)確定申告書の提出期限の延長
下記要件を満たせば、申告期限を4ヶ月まで延長可能
・会計監査人設置会社
・定款に定時株主総会が事業年度終了日の翌日から3か月以降とする旨を記載
(2)役員給与等
利益連動型給与の指標として下記の指標を採用することを認めることを明示
・売上高
・株価


11.第三者割当新株予約権の設計ポイント

■主要条件
(1) 行使価額固定型、行使価額修正型
・固定型:行使価額が満期まで一定。
株価↑=希薄化
株価↓=思い通りに資金調達ができない可能性あり

・修正型:株価が下がっても行使価額が下方に修正される
⇒資金調達の確実性が高くなる。

(2) 行使指定、行使制限、行使禁止
可能⇒発行会社のタイミング・ニーズに合わせた資金調達が可能に。

(3) 強制行使、コミットメント条項
株価が行使価額よりも高い場合に一定量の株式数を上限とした行使を強制できる条件が一般的

(4) 株式数固定、株式数変動
株式数固定型が一般的だが、株式数変動型とすることも可能
⇒行使価額修正条項が付されたものには株式数変動型が多い。

(5) 取得条項(コール条項)
よりよい資金調達手段がえられた場合、企業として新株予約権を取得してしまうもの

(6) 取得請求権(プット条項)
コール条項とは逆に、割当先が売却する権利。割当先の投資家と交渉の結果付されることがある。

(7) 権利行使条件(業績条件、株価条件)
不必要な希薄化を抑えるという観点からは、一定の行使条件により制限を設けることに意義あり


12.固定資産投資後の効果測定はこうする

投資実行後にその実際の成果を把握・測定できていないケースが非常に多い。
⇒固定資産投資後、「モニタリング可能指標」を適切に設定し、個別の投資案件ごとにその成果を把握することが重要。

■モニタリング可能指標の要件
①事後的にトレース可能
・投資後、一定期間経過後に定量的に把握することが可能なもの
・必ずしも金額である必要はない
・投資を契機にトレースの仕組みを構築することも一案
例:資産ごとの稼働時間と動力使用料を把握するなど

②固定資産そのもののパフォーマンスが測定可能
・操業度や市況などの外的要因による影響をできる限り排除し、固定資産のパフォーマンスを純粋に測定することが可能なもの
・単位当たりの指標を設定することや「%」や「時間」等の指標を設定することも有用
例:製品1個当たり人件費、設備稼働1時間当たりの電気使用量など


13.シャルレMBO事件における社外取締役の責任

(1)シャルレMBO事件とは
MBOを実施するに際し、買付側(創業家一族)の算定した価格<シャルレ側で算出された価格(11041300/株)
→買付側で高額と判断
→買付側である社長が価格が安くなるよう算定根拠となる利益計画の作り直しをメールで何度も指示
800/株でMBOを実施しようとしたが、上記内容が内部通報され、買付側はMBOを撤回、結果計画は頓挫した

(2) 社外取締役の責任
→義務違反なし

・監視義務
→本件においては、社長の価格決定への不当介入プロセスを知らなかったor容易に知り得なかったため、監視義務の前提を欠くと判断
・株主利益に配慮した公正な手続きにより買付者側と交渉すべき義務
→利益計画を変更することに十分な理由が認められた
→ヒアリングや計画作成の過程で不当性が認められなかった
(意図的に計画を下げる、数字合わせ等)


14.決算期変更時の論点

■事業年度の取扱い(会計&税務)
会計上最長16ヶ月⇔税務上は1年毎に区分の必要

~以下、事業年度を9ヶ月間に変更した場合を想定~
■減価償却限度額(税務。会計は合わせるのが一般的)
旧定率法:改定耐用年数(本来の耐用年数×12÷9)を使用
旧定額法・定率法・定額法:改定償却率(本来の耐用年数の償却率×12÷9)を使用

■貸倒実績率(税務)
・分子:前3年内事業年度の貸倒損失等×12(A)÷(12129)
・分母:前3年内事業年度の一括債権÷3(B)
A:必ず12
B:事業年度は3を超える場合はその数

■中間申告(税務)
・中間申告:変更後事業年度が6ヶ月以内⇒中間申告不要
・予定申告:前事業年度の法人税額÷9×6ヶ月分

■役員報酬(税務+会社法)
・変則事業年度の期間(9ヶ月)に見合った報酬等を総会決議すればOK

■親会社(3月決算)が子会社(12月決算)に決算期を合わせる場合(会計)
◇親会社の事業年度が9ヶ月(X1.4-X1.12)となるケース
BS(利益剰余金)で調整する方法
1Q(X1.6)にて、親会社業績3ヶ月分と同期間の子会社業績3カ月分により連結FS作成(SS不要)
連結会計年度のSSにて、子会社社業績を利益剰余金に反映
PLで調整する方法
1Q(X1.6)にて、親会社3ヶ月分と子会社6ヶ月分で連結FS作成

■子会社(12月決算)が親会社(3月決算)に決算期を合わせる場合(会計)
⇒子会社の事業年度が15ヶ月(X1.1-X2.3)となるケース
BS(利益剰余金)で調整する方法
⇒子会社の3カ月分(X1.1-X1.3)の業績のうち、親会社持分相当額をX1.3の連結SSに反映
PLで調整する方法
⇒翌事業年度(X1.4-X2.3)に影響させる(1Qでは6ヶ月分、4Qでは15ヶ月分が反映される)


15.上場準備中の事業承継(親⇒子)

上場後は一般的に株式の評価額が高くなる。
上場前のできるだけ初期段階で次世代の持分割合を増加させるような施策を取ることが望ましい。

・後継者(子)の持分割合増加のための諸施策
1.後継者への株式移動
直接的な持分移動により、後継者の持分割合が増加できるが、譲渡の場合には譲渡益課税、贈与の場合には贈与税が発生し、資金流出がある。

2.後継者への新株予約権の割当
株価が高くない初期の段階で、新株予約権を割当て、上場が近づいたところで行使し、持分割合を確保。
1.の株式移動と比べ、後継者の資金負担が少ない。

3.相続時精算課税制度
贈与時に贈与財産から2,500万円を特別控除した金額に、一律20%の税率を適用して計算した贈与税を支払い、その後、相続発生時に贈与財産を含む相続財産に対して計算した相続税額から、すでに支払った贈与税額を控除できる制度。


当該制度を活用すれば、将来、価格上昇が見込まれる株式価格を、現時点の時価で固定して後継者へ承継することができ、相続税額の節税効果が期待できる。









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2017年1月6日金曜日

1/6 勉強会:中小企業経営強化税制も固定資産税減税との重複適用可 他

1.中小企業経営強化税制も固定資産税減税との重複適用可

■生産性向上設備投資促進税制
・平成293月末で期限切れ
・平成29年度税制改正で、通常措置の延長あり
・上乗せ措置については、中小企業経営強化税制になった

■中小企業経営強化税制
・設備投資に対するもの
・現行制度では対象外の器具備品、建物付属設備が対象に追加された

■地方税
・固定資産税の軽減する特例措置の見直し
⇒中小事業者等が一定の機械装置を取得した場合、その固定資産税を3年間2分の1に軽減する
・平成313月末で終了

■重複適用できるか
・中小企業経営強化税制の生産性向上設備(A類型)と固定資産税の軽減措置の特例については要件等で重なる部分が多い
⇒要件さえクリアできれば重複適用も可能

■所得制限
・平成29年度税制改正での見直し
⇒課税所得(過去3年間平均)が15億円超の中小企業は一定の中小企業向け租税特別措置法の適用が受けられなくなる
 少額減価償却資産の取得価額の損金算入
 中小企業投資促進税制 など
・平成3141日以降開始事業年度より


2.吸収合併、株式交換でも現金交付可に

H29年度税制改正
・株式併合、全部取得条項付種類株式、株式等売渡請求という3種類の100%子会社化の手法が組織再編税制の対象
・上記手法では、対価として金銭が混在した場合であっても税制適格再編とされる。
※注目
・吸収合併および株式交換についても金銭交付が可能(従来は「株式以外の資産が交付されない」ことが適格要件)
・ただし合併法人または株式交換完全親法人が被合併法人または株式交換完全子法人の発行済株式の「3分の2以上」を保有している場合は「その他株主」に対して交付する対価を適格判定上考慮しないということ


3.租税公課と消費税の関係について

事例紹介

(1)領収証に貼付する印紙代を製品代とは別に請求された場合
⇒印紙代相当額も製品販売価格の一部
⇒課税仕入となる
(2)収入印紙をチケットショップから購入した場合
⇒課税仕入となる
(3)司法書士から請求された登録免許税・謄本代
⇒立替金
⇒仕入税額控除の対象外
(4)領収書にゴルフ場利用税の記載が無い場合の対応
⇒全額を課税仕入として処理する事は認められていない
⇒利用明細などのチェックが必要
(5)年の中途での不動産を購入時に支払った未経過固定資産税等
⇒不動産の譲渡対価
⇒建物は課税。土地は非課税。按分が必要な場合は按分する


4.不動産取得税の特例巡り納税者逆転敗訴

■不動産取得税の減税特例の要件
・敷地購入から4年以内に新築した共同住宅等
・独立区画部分が「100戸以上」であること

■事例
・納税者は6棟で総戸数が405戸であったため、減税特例があると主張
※上記の要件に「1棟辺り」という要件がないため

⇒最高裁判決において、戸数要件は複数棟毎ではなく1棟毎に判断すべきと判決


5.国内子会社がIFRSでも連結手続可能

・企業会計基準委員会が実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」の公開草案を決定
※平成293月中に正式決定する予定

・今回、「親会社が日本基準、国内子会社等がIFRS等に準拠して連結F/Sを作成している場合に実務対応報告第18号を適用できる」ように見直し
⇒国内子会社等のF/Sを日本基準に準拠するよう組替修正する必要がなくなる
※のれんの償却等、一部の項目については、修正が必要なケースあり

・適用初年度の前より、親会社が日本基準、国内子会社等がIFRS等に準拠して、連結F/Sを作成している場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う

3月決算法人の場合、平成303月期から適用の見込
※公表日以後、早期適用可(平成293月期から早期適用可の見込)


6.相続税の課税割合8.0%、過去最高に

H27年分の相続税の申告状況
H27年中に死亡した被相続人数 ⇒ 約129万人
・相続税の申告書を提出した被相続人 ⇒ 約13万人
うち相続税額の課税対象人数は約10万人で過去最高
課税割合も過去最高の8.0(100人に8人が課税対象者)

■増加した理由
H27.1.1からの相続税の基礎控除の引き下げが影響。
引き下げにより1人あたりの課税価格も約30%減少しており、低い課税価格の被相続人が多数発生していることも要因である。


7.事業承継税制の改正内容を読み解く

【事業承継税制とは】
・後継者が、現経営者から非上場株式等を相続・贈与により取得した場合に、相続税・贈与税の納税が猶予される制度
・申告期限から5年間、次の要件を満たす必要あり
(1)雇用の8割以上を5年間平均で維持
(2)後継者が代表を継続
(3)先代経営者が代表者を退任
(4)対象株式を継続して保有
(5)上場会社、資産管理会社等でないこと

29年度改正】
(1)の維持すべき人数の計算を、端数切捨てに(これまでは切上げ)
⇒従業員5人未満の会社は、1名減少しても大丈夫に

()従業員数4
4人×80%3.2
(現行:切上げ)4人維持が必要
(改正後:切下げ)3人維持でOK


8.相続で取得した非上場株式の譲渡

■非上場株式の発行会社への譲渡
(1)相続による取得以外
原則としてみなし配当課税あり
(2)相続による取得の場合
みなし配当課税なし(株式等に係る譲渡所得として申告分離課税)

■適用要件
(1)納付すべき相続税額があること
(2)申告期限の翌日から3年以内に譲渡すること
(3)譲渡時までに発行会社経由で届出書を提出すること

■その他ポイント
・取得した株式の一部のみを譲渡する場合にも適用がある
・相続税額の取得費加算特例との併用可


9.審査事例 中国子会社に対する売掛債権の放棄に係る損失は寄附金に該当するとした事例

■事案
A社(請求人)は、中国子会社(B社)に対する売掛債権を放棄し、貸倒損失として損金算入

■原処分庁の見方
売掛債権の放棄は仮装されたもの⇒損金算入はできない

■論点
1.請求人が売掛債権を放棄しているか否か
2.売掛債権を放棄したとして、その相当額を損金算入することは事実の仮装の行為に該当するのか

■結論
1.実態として債権放棄している。
A社はB社の事業継続より清算を選択し、文書により債権放棄した。
B社の土地建物が収用され、移転費用を考えると採算が悪いとの判断。
2.事実の仮装はないが、損金計上の要件は満たさない。
・債権放棄に経済合理性がある場合、寄附金の額には該当しない
 本事例では事業継続のうえで回収も不可能ではないため×
・債務超過が相当期間継続し,金銭債権の弁済を受けられないと認められる場合に該当しないため×。

⇒したがって国外関連者への寄付で全額損金不算入となった。


10.取締役解任の正当な理由

・解任には理由を要しない
・「正当な理由」がないと解任によって生じた損害の賠償を請求される
・「正当な理由」の5類型
①職務執行上の法令定款違反行為
②心身の故障による職務遂行の支障
③職務への著しい不適任や能力の著しい欠如
④経営判断の失敗により会社に損害を与えた場合
⑤業務執行の障害となるべき客観的状況
⇒④は見解がわかれる。


11.消費税率引き上げ時期の延期

1.消費税10%へ引上げ時期の延期
2年半延期(H31.10.1

2.消費税率引き上げ延期による影響
・軽減税率
2年半延期(H31.10.1
・消費税転嫁対策特別措置法の適用期限
2年半延期(H33.3.31
・区分記載請求書等保存方式の運用
(1)適用期間
2年半延期(H31.10.1H25.9.30
(2)税額計算の特例の適用期間
⇒中小事業者向けの特例は2年半延期
⇒中小事業者以外の特例は適用なくなる
・インボイス制度の導入
(1)インボイス方式導入時期
2年半延期(H35.10.1
(2)適格請求書発行事業者登録申請の開始
2年半延期(H33.10.1
(3)免税事業者からの仕入れに係る特例
2年半延期(H35.10.1H28.9.30


12.検出事項別にみる対応のポイント

■役員退職慰労金
・譲渡対価の決定:役員退職金の支給を考慮
・退職慰労金の支給を予定しない場合は、リスク回避のため、制度廃止の決議、役員から同意書を取得する等措置が必要

■スタンドアローン問題
・株主変更後、現在の資本関係を前提とした取引関係をどのように取り扱うか
(不動産の賃借、システム利用権限、バックオフィス機能に関する業務委託、その他シェアードサービス等)
・売主・買主間における十分な協議が必要

■チェンジオブコントロール条項(COC条項)
・COC条項:支配権を有する者の変更等を契約の解除事由等と定め、支配権の変動等について事前承諾を得る義務を課す条項
・買主と売主との間の契約交渉において、以下を考慮する必要があり
(1) 対象契約がどの程度対象会社の事業において重要なのか
(2) COC条項に該当すること又は同条項に係る義務に違反することによりどのような効果が発生するのか
(3) 承諾を取得することがどの程度難しいのか

■未払賃金
・以下を検討
(1) 未払賃金の試算結果を前提に価値評価を実施、譲渡対価から一定額を減額する
(2) 対象会社従業員に対し「未払賃金が存在しない」ことの誓約書を売主に取得させる義務を負わせる
(3) 表明保証(未払賃金の不存在)または特別補償の対象とする。


13.関連会社に子会社がある場合の連結の範囲、持分法の適用範囲

■前提
P
↓議決権25
A社(関連会社)
↓議決権100
S社(Aの子会社)

P社からみてS社は連結の範囲か?持分法適用範囲か?

・連結の範囲か?
⇒実態判断による(P社がS社の意思決定機関を支配しているなど)。

・持分法適用範囲か?
S社がP社の子会社、関連会社に該当しない場合でも、S社に持分法を適用して認識した損益や利剰が連結FSに重要な影響を与えるときは、S社の持分法損益をA社の損益に含めて計算する。


14.DDの検出事項への対応

4項目の有無にフォーカス
(1)実行(M&A)の障害となる事項
・例として反社との取引関係の存在
・原則、検討中止かスキーム変更
・スキーム変更の場合でも条件を付ける

(2)価値に影響を与える事項
・定量評価:◯かつ顕在化の程度:高
→減額
・定量評価:×または顕在化の程度:不明
→売主の表明保証

(3)実行後の事業遂行に影響を与え得る事項
・売主の表明保証とする
→オーナーチェンジにより取引先と取引が出来ない=事業遂行に影響あり

(4)実行に際して対応が必要な事項
・クロージング前後の誓約事項とする(売主の義務)
・クロージング前の前提条件とする


15.子会社売却時に留意したい4論点

■背景
・事業の選択と集中による見直しの活発化
・不採算事業の整理、ノンコア黒字企業の戦略的売却、目的が主

■親会社の意思決定におけるポイント
・赤字子会社の売却⇒(単に)売却する相手がいるか
・黒字子会社の売却⇒子会社を保有し続けた場合の価値以上で売却できる相手がいるか

■子会社の従業員を巻き込むタイミング
<役員>
・親会社からの出向者:当初売却検討段階(売却に先立ち親会社に帰任して関与)
・プロパー:煮詰まってきた段階(重要なポジションは変わらないが、ネガティブ反応の可能性)
<その他の従業員>
契約締結や公表段階(不安に起因する業績低下が企業価値低下に影響する可能性)

■意思決定後の売却プロセスの進め方
それぞれのメリットとデメリットを勘案して決定
・入札方式:高価格、好条件、漏えいリスク高、手続煩雑
・相対方式:低価格、悪条件、漏えいリスク低、手続簡便

■スタンドアロン・イシューを予め考慮
※子会社を独立させた場合の、親子会社に生じる影響
※重要な要素(経理、総務等)が親会社に残存するケースを想定

<子会社バリュエーションへの影響>
・親会社へ支払う業務委託手数料が第三者間取引に比して乖離していないか
If少ない:追加コスト加味し、評価額は低く設定
If多い:削減コスト加味し、評価額は高く設定

<売却後の親会社リストラクチャリングの必要性>
・子会社業務を担う親会社社員は、子会社へ異動せず、しばらくは子会社業務を担当(TSA契約)
・契約期間が終わると、これら社員を異動させる等、親会社内で負担が発生する。


16.課徴金事例(開示規制違反)

・証券取引等監視委員会が、金商法の課徴金事例(開示規制違反関連)を公表。
・開示規制違反の主な原因は下記4つ。
(1)特定の役員の主導
 創業者など、在任期間の長い役員のコンプライアンス意識の欠如に対して、他の役員が異論を差し挟むことが難しい雰囲気。
(2)事業環境の変化
 上場廃止基準に抵触することを回避したい、新規事業が順調に立ち上がったように見せるため売上を過大計上など。
 競争の激化が予想される事業環境の中で、影響力維持のため、売上至上主義に傾倒するなどの背景。
(3)コーポレートガバナンスの不備
 歴代社長による予算達成要求、社内牽制不足
(4)海外子会社等の管理体制の不備
 事業が軌道に乗る前の不適切な会計処理が発覚し、自発的な訂正が行われたケースも


17.取引参加者となるための取引資格の取得

形式基準と実質基準があり、証券取引所による審査により承認を得れば、資格を取得することができ、証券取引所で有価証券の売買又は市場デリバティブ取引を直接行うことができる。

・形式基準(直前期の状況)
1.財務基盤(主なもの)
a.金融商品取引業者
資本金:3億円以上
純財産額:5億円以上かつ資本金を上回っていること
自己資本規制比率:200%超

b.登録金融期間
資本金:3億円以上
純資産額:5億円以上、かつ、資本金の額又は出資の総額以上

c.取引所取引許可業者
資本金:3億円以上
純財産額:5億円以上かつ資本金を上回っていること、
業務実績:3年以上

2.安定収益性
経常収支率(※)が良好(100%目途)であること、又は直近2事業年度において経常損益及び当期純損益が黒字であり、かつ当該事業年度においても収益が良好であること

(※)手数料収入・金融収益/営業費用

・実質基準(現在及び今後の見通し)
1.健全な経営の体制(不適当と認められる者の支配を受けていないこと等)
2.公正円滑な取引所取引の受注・執行・受渡決済体制(誤発注未然防止・顧客管理体制等)

3. 内部管理態勢(リスク管理・コンプライアンス・規程の整備等)









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