2014年8月21日木曜日

8/15 勉強会:社外取締役を選任予定でも「相当でない理由」を説明する必要があるか? 他

1.保証債務履行のための土地譲渡と認めず

【事例】
A社(業績悪く国税滞納中)が土地を所有
 ⇒債権者からの取立てを免れるため、土地の名義をB氏へ変更(登記上はA社のまま)
 ⇒国から土地が差押に
 ⇒B氏は土地を売却し、売却代金でA社が延滞していた国税を納付

【争点】
B氏が土地売却した際の譲渡益について、所得税法642項の規定は適用できるか?

所得税法642項・・・経営が傾いた会社に対して保証人が私財を売却して保証債務を履行した場合、その売却益のうち会社に求償できない部分は譲渡所得がないものとできる
B氏は、土地が差押えられた時点で、強制的に債務保証させられたものと同等と主張

【審判所判断】
・適用できない(通常通り譲渡所得がかかる)
A社が登記上正しい名義人であって、B氏の土地所有権は虚偽の権利である
・そもそも、国とB氏の関係において、B氏に債務履行義務があるわけではなく、保証人としての立場でもない


2.検証・IBM事件

■まとめ
132条は同族会社等に関する包括的な租税回避防止規定
 適用対象を「同族会社等」に限定しているだけで 「個別的な事象に対する租税回避防止規定」ではない

・今後は、課税逃れのテックニックの中身について検討することが必要
 経済的合理性(行為の理由、目的)がしっかりしていても結果として租税回避になっている行為は問題とすべき

IBM事件における税法の解釈と適用は、「社会通念」「常識」「正義」「公平」などが非常に重要になる

・過去の社会通念と今のそれは、違って当然。

・規定が制定されたときには考えられなかった行為が増えているが、規定の適用における「制度の目的」と「社会通念」に照らして行為の問題点を判断すればよい。


3.ベンチャー投資税制、未だ認定ファンドゼロ

※ベンチャー投資促進税制とは
会社が経産省認定のファンドを経由してベンチャー企業へ投資した場合に投資額の80%を損金算入することが認められる優遇措置

経産省が定めた認定要件が厳しいため、ファンドが税制適用の認定をうけられない。

原因として
・無限責任組合員による株式上場やM&Aの実務経験が乏しいこと
・実務経験はあるが上場やM&Aを成功させた確率が低いこと

投資者の投資促進に支障をきたす可能性があるため、ファンドへの認定要件のハードルを下げることも検討している。


4.社外取締役を選任予定でも「相当でない理由」を説明する必要があるか?

会社法の改正により、社外取締役がいない上場企業は、株主総会で社外取締役を置くことができない理由を説明する必要がある。

選任が予定されている場合はどうするか?
⇒選任予定がある場合は株主総会での承認が必要となるため、その際に「相当でない理由」を説明しなくてもよいと思われがちであるが、社外取締役がいるかいないかは事業年度の末日で判断することとなる。

従って選任予定の有無にかかわらず、社外取締役が事業年度にいない場合には「相当でない理由」を説明しなければならない

※補足
「相当でない理由」とは、社外取締役を置かない理由のほか、置くことによって会社にマイナス影響を及ぼす恐れがあるといった事情説明をする必要がある
適任者が見当たらないといった説明は×


5.株式譲渡と配偶者控除

≪事例≫
奥さんが昨年株で損をして確定申告。
今年は株で益が出て確定申告。
配偶者控除は大丈夫か?

①口座
・特定口座…通年の取引で源泉税を計算
・一般口座…都度の取引で源泉税を計算
※特定口座の場合は確定申告しなくても良い

②損益通算
・株の損失は、三年間損を繰り延べられる
※確定申告をしないと繰り延べできない
※翌期に益と相殺したい時も確定申告必要

→損益通算で損益をぶつけたとしても、配偶者控除の計算時は昨年の損は考慮しない
→今年の益が基礎控除の38万円を超えてしまうと配偶者控除に影響あり


6.IPO関連

アジア上場③
台湾証券取引所(TWSE

◆市場の構成
・台湾証券取引所・・・日本でいう東証1部・2
・台湾証券取引所グレタイ売買市場ト・・・日本でいうジャスダック・マザーズ

◆主な特徴
・電子部品、半導体関連企業の比率が高い
・個人株主比率が高い
・上場コストが低い
・外国からの投資比率が高い

◆上場に関する形式基準
・直近3事業年度分の財務諸表
・取締役会は5名以上の取締役で構成
・台湾会計基準、USGAAPIFRSが認められている
・台湾公認会計士による監査報告書への署名

◆上場している日本企業
SUMCO
ファミリーマート
セコム
ヨドコウ


7.財務デューデリジェンスに必要なスキル

()財務リスク分析力
※継続性のチェックが重要
)・営業損失、営業C/Fが継続していないか
   ・含み損の大きい資産を抱えていないか
   ・仕入先から不利な条件への変更要求がないか
   ・キーパーソンの退職はないか
   ・特定の部門、人物に重要な権限の集中がないか等

()その他
・ヒアリング技術
(ヒアリング対象者のタイプによって聞き方を工夫)
・無形資産の洗い出し
・コミットメントチェック


8.電子記録債権とは

2008年に電子記録債権法により制度化
・手形、売掛債権等に並ぶ新たな金銭債権
・電子債権記録機関が電子データにより管理
 (債権者及び債務者の名前、支払額、支払期日等)
・紛失や盗難リスクがない
・手形の作成、交付、保管コストがかからない

※手形債権の代替として機能することが想定
 ⇒ 会計処理は、手形債権に準じて取り扱う
※普及状況(20146)
 ⇒ 月末残高 約1,5兆円/月間件数 約5万件


9.組織再編等の株式買取請求制度の改正ポイント

・株式買取請求に係る撤回制限の実効化
 (現行)株主は会社に買取or市場で売却を選択可
 (改正)対象となった振替株式について、買取口座への振替申請を強制
・株式買取請求の効力発生時点の統一
 (現行)代金支払いの時まで、反対株主は株主としての権利を主張できる
 (改正)組織再編等の効力発生日に統一(代金支払いよりも早い段階)
・買取価格決定前の支払制度の創設
 (現行)裁判所が決定した価格により支払い
 (改正)会社自らが公正な価格と認める額を裁判所の価格決定前に支払うことができる
・簡易組織再編、略式組織再編等における株式買取請求
 (現行)簡易組織再編の要件を満たす場合、すべての反対株主に株式買取請求権が認められる
 (改正)簡易組織再編等に反対の株主に対しては株式買取請求権を付与しない

■組織再編の差止請求の改正ポイント
 (現行)略式再編以外の組織再編については、株主に差し止め請求権は付与されていない
 (改正)簡易再編の要件を満たす場合を除く組織再編の場合でも差止請求が認められる


10.詐害的な会社分割等の債権者保護の改正ポイント

 詐害的な会社分割等が行われた場合、残存債権者がどのように保護されるか?

  改正前:承継会社に詐害行為取消訴訟が出来る    →間接的な保護
  改正後:承継会社に債権の履行請求が出来る       →直接的な保護


11.キャッシュ・アウトの改正ポイント

 キャッシュ・アウト・・・現金を対価とする少数株主の締出し
 
 キャッシュ・アウトの手法
  現行会社法:主に全部取得条項付種類株式の取得が用いられている
        →常に株主総会決議が必要であり手間
  改正会社法:特別支配株主が他の株主に対して株式を売渡すよう請求することでCO可能
        →取締役会決議等で出来るようになった
        →法令違反等の場合は取得の差し止め請求が出来る等の株主保護がある


12.ライツ・オファリングによる新株予約権取得者の会計

①ライツ・オファリングとは
・基準日における全ての株主に対して、保有株式数に応じて無償で新株予約権を割り当てる
・割当てた新株予約権を金融商品取引所に上場する
※過去にも無償割当のケースはあるが、譲渡制限が設けられるなど上場を伴わないものでライツ・オファリングとは異なる

②ライツ・オファリングの種類
(コミットメント型)・・・欧州メイン
・証券会社が全て買取
(ノンコミットメント型)・・・日本メイン
・買い取り契約はなく、期限が過ぎれば失効する

③メリット
(取得者)
・割当を受けた株主は払込
⇒新株取得のみならず、市場で売却可能(希薄化による不利益を補填)
(発行者)
・希薄化効果による不利益を補填する機会を与えられる。
・売却されることで、市場を通じて資金調達が可能
⇒資金調達の目標達成。

④会社処理
(取得時)
・既存株主 
  仕訳なし
・市場で有償取得
  新株予約権        ×××  現預金                 ×××
  売買目的有価証券    ×××
orその他有価証券)

(期末時)※予約権時価<取得価額
・その他有価証券として保有
  その他有価証券評価差額金 ×××  新株予約権    ×××
  繰延税金資産             ×××
or
  投資有価証券評価損     ×××  新株予約権     ×××
・売買目的有価証券として保有
  有価証券評価損        ×××   新株予約権      ×××
(行使時)
  A社株式           ×××   新株予約権        ×××
                                                現預金                ×××
(株式売却時)
  現預金             ×××  A社株式                     ×××
                                               有価証券売却損益 ×××
(新株予約権売却時)
  現預金             ×××  新株予約権          ×××
                                              有価証券売却損益  ×××
(新株予約権失効時)
  新株予約権失効損     ×××  新株予約権       ×××


13.混迷のスカイマーク 苦境脱出のスターフライヤー

・スカイマークは、第一四半期決算で「継続企業の前提に関する注記」が加わった

・スターフライヤーは、第一四半期決算で「継続企業の前提に関する重要事象等」が外れた

・スカイマークは秋口の需要減シーズンに備えてリストラとキャッシュ確保(部品、機材を売却、今後は自社所有からリースの割合を増やす)に急ぐ

・スターフライヤーは前期からリストラを進め、かつ18%株主のANAとの共同運行で収益回復

・大手の後ろ盾がなく回復が遅れるスカイマーク
 ANAの助けを得て回復基調のスターフライヤー

・規制緩和によって生み出された「独立系」エアラインは結局うまくいかなかったのか…






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