2015年1月17日土曜日

1/16 勉強会:使える補助金・助成金vol.15「特定就職困難者雇用開発助成金」 他

1.法人税率引下げと課税ベース拡大、平成27年度の重要改正を読み解く

■実効税率
 ・現行の実効税率(標準課税ベース) 34.62
  (東京都の場合 35.64%)
 ・平成27年度            32.11%(▲2.51%)
 ・平成28年度            31.33%(▲3.29%)

■繰越欠損金の控除限度割合
 ・現行の控除限度割合        所得の80
 ・平成27年度、平成28年度    所得の65
 ・平成29年度以降         所得の50
 ※大企業の場合
 ※中小企業は全額控除可

■繰越欠損金の繰越期間
 ・現行の繰越期間       9年間
 ・平成27年度以降      10年間
 ※帳簿書類の保存要件、欠損金に係る更正の請求等の期間も10年に延長

■受取配当金の益金不算入
 ・株式持分比率が5%以下のもの
  現行       50%が益金不算入
  平成27年度以降 20%が益金不算入

■外形標準課税
 ・付加価値割、資本割について、税率の見直し(増税)


2.業務委託契約に通謀虚偽表示を認めず

■裁決概要
・内国・外国法人間の業務委託契約に基づく支払手数料が(内国法人の)代表取締役への給与に該当するか否かが争われた。

■原処分庁の主張
・業務委託契約における当事者の真の合意内容は、外国法人=使用者、(内国法人の)代表取締役=労働者とする雇用契約であり、内国法人と外国法人とが虚偽の意思表示をしたものであることから、通謀虚偽表示(民法94条)により無効である。

■審判所の判断
・契約自由の原則に照らし()、業務委託契約に虚偽表示を認めず、支払手数料は内国法人に帰属と判断。
・雇用契約を締結する意思があったというだけでは、業務委託契約が虚偽表示によるものとの理由にならない。

※契約を当事者の自由にまかせ,国家はこれに干渉してはならないとする近代法の原則


3.3万円以上の領収書もスキャナ保存が可

3万円以上の契約書、領収書のスキャナ保存が可能となる
 ※今までは3万円未満は可能だった

■スキャナ保存は一定の要件のもとで可能
 ・税務署長の承認が必要
 ・契約書や領収書、納品書や見積書、注文書等が対象
  (決算書類等は不可)
 ・定期的なスキャナ保存等の社内規程の整備
 ・電子署名

■適用開始時期
 平成27930日以降の承認分から適用


4.繰延税金資産の回収可能性、例示区分の原案が明らかに

(論点)
 企業会計基準委員会が作成中の「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の原案が明らかになった。
⇒監査上の実務指針「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」
(通称、66)における取扱い
(業績等一定の要件に基づいて会社を5つに分類し、それぞれ回収可能性の判定をする)を大枠で踏襲(ただし、一部変更あり)

(66号からの主な変更点)
(1)例示区分4号⇒
 ()要件が「重要な税務上の繰越欠損金の存在」から「重要な税務上の欠損金の計上」へ、
 ()将来の課税所得の見積りに関し、5年超に渡り継続して計上することを合理的に説明できる場合、例示区分2号に該当するものとして取扱い可、また、概ね3年~5年程度課税所得を計上することを合理的に説明できる場合、例示区分3号に該当するものとして取扱い可

(2) 例示区分3号⇒
 5年を超えて差異が解消されるものについても、回収可能であることを合理的に説明できる場合、回収可能性ありと判断可

(3) 例示区分2号⇒
 スケジューリング不能な将来減算一時差異について、将来的に損金算入の見込みが高く、かつ、損金算入時点において課税所得が損金算入額を上回る可能性が高いと合理的に説明できる場合、回収可能性ありと判断可


5.9号買換え、課税繰り延べ割合を一部縮減

9号買換えとは
(1)10年超所有した土地や建物を譲渡
(2)新たに土地や建物、機械装置等を事業用として購入
(3)(1)の資産の譲渡につき譲渡益が発生した場合には、譲渡益の80%相当額が繰り延べられる (新たに取得した土地や建物を譲渡したときまで)

H27年税制改正
(1)      適用期限:H29331日まで延長
(2)      買換資産の範囲:機械装置が適用除外
(3)      繰り延べ割合の縮減:
地方⇒大都市等への買替え :75%へ引き下げ
地方⇒東京23区への買替え:70%へ引き下げ
上記以外:現行通り80

※大都市等とは
 東京都(武蔵野市、八王子市)、神奈川県(横浜市、川崎市等)
 埼玉県(川口市、川越市等)、千葉県(千葉市等)
※地方とは
 東京23区及び上記「大都市等」以外の地域


6.美術品も100万円未満なら減価償却資産

【改正内容】H27.1.1以後開始事業年度取得分に適用
(改正前)美術年鑑等に登載されている製作者の作品は減価償却資産に該当しない
 ⇒廃止

(改正前)取得価額が120万円(絵画は号2万円)未満であれば減価償却資産
 ⇒1100万円未満であれば減価償却資産
 ⇒100万円以上でも「時の経過による価値減少が明らかなもの」は減価償却資産
 例)会館ロビーなどの不特定多数が利用する場所の装飾品

【経過措置】
H26.12.31以前購入でも、適用初年度から減価償却資産として処理すれば適用可能


7.法人税:一般社団法人等が介在する場合の完全支配関係の判定について

■一般社団法人が介在するケース
 A株式会社
   ↓基金100
 B一般社団法人(資本なし)
   ↓株式100
 C株式会社

Q この場合、AC間で完全支配関係は成立するか?

A 完全支配関係は成立しない
⇒「完全支配関係」は株式または出資の全部を直接または間接に保有する関係をいう。
一般社団法人は株式(出資)を発行しないため、AB間に完全支配関係はない。したがってAC間にも間接的な完全支配関係は成立しない。

(注)一般社団法人の基金は「債務」として認識される


8.有形固定資産の測定・評価

日本基準:取得原価主義
 ※減損は取得原価の切り下げ
IFRS  :原価モデルもしくは再評価モデルの選択適用

原価モデル:日本の取得原価主義とほぼ同じ
再評価モデル:都度、公正価値で測定する
 ⇒再評価モデルは運用上のコスト問題などの課題が多い
 ⇒欧州でもほとんどの企業が原価モデル


9.景品表示法における課徴金について

1.課徴金の対象となる基準
 ・表示内容に対して、合理的に裏付ける根拠を示せない場合
 ・相当の注意を怠ったと認められる場合
2.課徴金額
 ⇒ 対象商品等の売上高の3%
3.課徴金の免税点
 ⇒ 対象商品等の売上高5,000万未満(課徴金で150万円)は課徴金は課されない。


10.時価発行新株予約権信託の概要

1.時価発行新株予約権のデメリット
 (1) 貢献度をキャピタルゲインに反映することが困難
 (2) 新株予約権付与のタイミングにより行使価額に差異
 ⇒ 付与された従業員等の間に不公平が生じる

2.スキームの相違
 (1) 時価発行新株予約権
 ⇒ 新株予約権発行会社が直接、従業員に新株予約権を交付
 (2) 時価発行新株予約権信託
 ⇒ 委託者が信託受託社に金銭を信託
  ⇒ 新株予約権発行会社は信託受託者に新株予約券を交付
 ⇒ 要件を満たした際に、従業員等(受益者)に、信託受託者より新株予約権を交付

3.時価発行新株予約権信託のメリット
 (1) 新株予約権の付与を貢献度に合わせて調整できる
 (2) 発行時の時価で付与できるため、付与のタイミングによる不公平を解消できる。

4.時価発行新株予約権のデメリット
 ⇒ スキームが複雑なため、留意すべき事項が多くなる。


11.意外と知らない 減損会計における資産のグルーピングの勘所

 ■グルーピングの範囲
  (最小)独立したCFを生み出す最小の単位
  (最大)報告セグメント

 ■グルーピングを見直す機会
  →よほどドラスティックな変化がない限り、一度決めたグルーピング方法を毎期継続適用
   ・事業再編成時
   ・経営者交替時
   ・その他(主要な資産の処分、セグメンテーションの方法の変更など)

 ■減損損失の各構成資産への配分
  →時価による方法と、簿価による方法
  →翌期以降の減価償却計算への影響も考慮して決定するとよい
  ※簿価に基づく比例配分と結果が大きく変わらないこと、という条件で償却資産に優先的に配分する方法も考えられる


12.平成2610月以後開始する事業年度に適用する法定実効税率

 ■平成26年の地方税法制の改正
  ・法人住民税の一部の国税化(地方法人税の創設)
   -各事業年度の所得に対する法人税の額×4.4
  ・地方法人特別税の規模を縮小し法人事業税に復元する措置
   -道府県民税:5.0%から3.2%(制限税率6.0%から4.2%)
   -市町村民税:12.3%から9.7%(制限税率14.7%から12.1%)
   -地方法人特別税の規模を1/3縮小し、法人事業税に復元

 ■法定実効税率への影響
  →ほとんどなし
   ・東京都の場合
    -外形標準課税法人  35.6390…%→35.6427…%(結局四捨五入すればミゴロシのまま)
    -上記以外の普通法人 37.1131…%→37.1139…%(同37.11%のまま)


13.賃借建物の修繕に関する問題

倉庫として借りている建物の屋根の一部が破損し、雨漏りが発生する。
賃貸人に修繕を要求したが拒否された。

Q 修繕工事が終わるまで賃料の支払を止めることは可能か?

A 特約がある場合を除き、民法によれば賃貸人は修繕をする義務がある。
  しかし支払を拒むことは出来ないと解される。 


14.M&Aにおける無形資産の取り扱いについて

(1)M&Aにおける無形資産の処理(概要)
 a.取得原価の算定(=無形資産の取得原価は超過収益力も含めた会社全体の買収価額に含まれる)
 b.取得原価の配分

(2)取得原価の配分
 取得原価を識別可能な資産・負債に配分(パーチェス・プライス・アロケーションPPA
 ⇒取得原価と純資産の差額(=広義の「のれん」)が、無形資産への取得原価の配分や狭義の「のれん」の原資となる

POINT
・取得原価と純資産の差額(=広義の「のれん」)が無形固定資産に紐づく可能性が高いからといって、必ずしもPPAにより配分されるとは限らない
・対象は特許権や商標権といった法的に権利化されたものに限らず、ブランド等も含まれ、対象範囲は広い
⇒何に配分するか⇒識別可能な資産の判断・評価が重要
・評価については、株価算定の様に①マーケットアプローチ、②インカムアプローチ、③コストアプローチに基づく

4)取得原価の配分のタイミング
 実務的にはM&A完了後であるが、ディール中にやることも有用
(理由)
・取得原価の配分が多くなれば、のれん(狭義の「のれん」)が少なくなる=今後の償却が減る
(のれんと無形固定資産の償却年数は異なる前提)

※狭義の「のれん」=最終的にBS計上ののれん


15.使える補助金・助成金vol.15「特定就職困難者雇用開発助成金」

・(対象者)
事業主

・(要件)
高年齢者、障害者、母子家庭の母等を、ハローワーク等の紹介で(1年間)継続雇用すること

・(受給内容)
高年齢者、母子家庭の母 :90万円
障害者:135万円
重度障害者:240万円

※短時間労働者の場合は減額
※大企業の場合は減額
※支給は半年で半分ずつ

・(手続き)
支給対象期末から2ヶ月以内「支給申請」をハローワークに提出








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

0 件のコメント:

コメントを投稿