2015年11月29日日曜日

11/27 勉強会:マイナンバーにおける実務上の留意点-本人確認編- 他

1.節税の事実がなくても土地保有特定会社の適用あり
■取引相場のない株式の評価方法(相続税)
(1)原則
・大会社 …類似業種比準方式
・中会社 …類似業種比準方式と純資産価額方式の併用
・小会社 …純資産価額方式

(2)例外
・下記に該当する場合は、主に純資産価額方式
 開業前(休業中)の会社
 開業3年未満の会社
 株式保有特定会社(純資産に占める株式等の保有割合が50%以上)
 土地保有特定会社(総資産に占める土地等の保有割合が70%以上など)

■今回の事例
・土地の保有割合70%以上の非上場会社の株式を相続により取得
 (会社の規模は大会社)
・納税者と課税庁の間で評価方法について争われた
 納税者 …営業の事実があることから類似業種比準方式
 課税庁 …土地保有特定会社に該当することから純資産価額方式
・営業の事実等は問わず、純資産価額方式で評価することに合理性があると東京地裁は判断した
 …土地保有割合が極めて高い評価会社はその資産価値をよく反映する純資産価額方式で評価することが適切


2.タイムスタンプ

■タイムスタンプとは?
・電子文書がスキャンされた時点及び電子化から現在まで当該電子文書が改ざんされていないことを証明するもの
・タイムスタンプは日本データ通信協会の認定を受けたものである必要がある
・時刻情報に加え「ハッシュ値(あるデータについて一定の演算処理をすることにより得られる値)」が付与される
・ハッシュ値の比較により電子文書の改ざんの有無を検証できる


3.所得控除見直しでゼロ税率を導入も

政府税制調査会において、個人所得課税・資産課税の見直しについて、論点整理が行われた。

基本的には若年層や低所得層の税負担減を図る方向性であるが、税負担減を補う税負担増をどこで補うか具体的な話は上がっていない。

■個人所得課税
 …諸控除を見直し、より税負担の累進性を高めていく

・人的控除(扶養控除や基礎控除)は所得控除方式に代わる制度へ
・欧米諸国で採用されている方法を参考にしながら考慮
 (ゼロ税率、税額控除等)

■資産課税
・相続税
 …平成25年度税制改正の影響を見極めながら、対象をさらに検討
・贈与税
 …高齢者の資産保有の増加や老老相続が進んでいる現状を踏まえ、相続税との関係を含めさらに幅広く検討


4.ハイブリッド型年金の会計処理を検討へ

■ハイブリット型年金
 確定給付制度における、運用リスクを事業主と加入者で柔軟に分け合うことができる年金制度
 (運用成績↓:加入者への支給を減額(事業主の負担を軽減) ⇔ 運用成績↑:加入者への支給を増額する)
 ⇒制度導入が検討されている

■現行の退職給付制度
 「確定拠出制度」、「確定給付制度」いずれに該当するか判断した上で、会計処理
 ⇒ハイブリッド型年金はどちらに該当するか不明
 ⇒ハイブリッド型年金の会計処理を検討へ


5.マイナンバーにおける実務上の留意点-本人確認編-

Q1:従業員のマイナンバーはH27年末の年末調整で集める必要があるか
A1:H27年中の取得は法令上の義務ではないため集める必要はない。
  マイナンバーの記載をもとめても差し支えないが、記載を拒否されたとしても記載を強制することはできない。

Q2:通知カードにてマイナンバー確認をする際、免許証等で身元確認をするが、顔写真と容姿が違っている場合はどう対応をすればよいか
A2:身元確認は顔写真がついている免許証等にて氏名・住所・生年月日を確認するので、容姿自体は確認事項とならない

Q3:健康保険証で身元確認は可能か
A3:健康保険証単体では不可。
  健康保険証+年金手帳など2つの書類を組み合わせれば可能。

Q4:長く務めている従業員に対しても本人確認が必要か
A4:必要である。
  原則、マイナンバーの提供を受ける際には本人確認(「番号確認」と「身元確認」のこと)が必要のため

Q5:従業員の本人確認は毎年行う必要があるか
A5:毎年行う必要はない。2年目以降は本人確認を簡略化可能。

Q6:外部委託先へ支払調書を発行する際にも本人確認が必要であるか
A6:「個人番号の提供のお願い」といった書類を作成し、通知カードの写しを貼付けて提出すれば本人確認は完了となる。


6.スマホでスキャナ保存が可能に

・領収書等の書面保存コストを軽減するために、スキャナ保存制度あり
・平成27年度改正で「3万円未満」の金額要件が撤廃、3万円以上の領収書保存も可能に
・平成28年度改正でスマホによるスキャンも認められる方向に
 ※現在は、原稿台と一体となった固定スキャン機器の使用しか認められていない
 ※領収書等には従業員等の署名が必要、かつ、PC取込後「3日以内」にタイムスタンプの付与が必要に


7.税務動向:法人版ふるさと納税

■概要
企業が一定の地方公共団体の地方創生事業に寄付をした場合、
・寄付金額の全額を損金算入(現行通り)
・法人税及び法人住民税から寄付金額の3割を税額控除
(ただし、法人税額等の20%を限度とする)
・寄付金額の下限を10万円とする

■対象外自治体
東京都:東京23区他
神奈川県:鎌倉市、藤沢市、厚木市、寒川町
埼玉県:戸田市、三芳町
千葉県:市川市、浦安市

■実施時期
未定


8.法人税:債権放棄に関する法基通9-4-29-6-1(3)ロとの適用の区別

債権放棄をする場合においては,以下の2つの場合があり得る。

A:その債権について、企業活動上のさまざまな理由により債権放棄をせざるを得ない場合
⇒損金算入の理由として費用的に捉える。法基通9-4-2が適用される場面。
債権放棄が企業活動上必要でないと,寄附金の額に算入される。
必要であるか否かを判断するために、“合理的な再建計画”が必要とされる。

B:その債権が無価値なものと評価された上で、債権放棄をする場合
⇒損金算入の理由として損失として捉える。法基通9-6-1(3)が適用される場面。
貸倒損失として、法定手続等より無価値なものと評価されることが必要である。
無価値であるかを判断するために、“法定手続に準じる公正な手続”による債権放棄が必要とされる。


9.税効果の新指針 適用初年度の影響額

・適用初年度の期首の影響額の取扱について意見が分かれている

(公開草案)
・新指針の適用を「会計方針の変更」として、適用初年度の影響額はすべて利益剰余金調整とする取扱

これに対し、
DTAの取り崩し時にはPLヒットすることから、計上時と取り崩し時で処理が不整合となる
・監査委員会報告66号はルール自体が「会計上の見積もりの変更」であり、新たな指針の適用は見積りの変更に該当する⇒全額PLヒットすべき
といった意見が出ている。


10.グループ会社間取引の相殺処理の効率化ポイント

1. グループ会社間の取引の相殺とは
(1) グループ会社間の債権・債務の相殺
(2) 未実現利益の消去
※グループ間の取引は、個々の会社では通常の取引だが、グループ全体を一つの会社とみなすと、内部での取引に過ぎないため、取引がなかったことにする必要がある。

2. 効率化のポイント
(1) グループ会社間の債権・債務の相殺が大変な理由
⇒ どの債権と債務が紐付くのか、突合が困難
⇒ 効率化の方法として、下記の方法が挙げられる。
 ・差異の許容額を定め、許容額以下の差異については無視する
 ・正しい金額がどちらなのかを定めておく
(2) 未実現利益の消去
⇒ 期末の在庫額と利益率を乗じた金額を消去
⇒ 個々の在庫毎の利益率を把握することが困難
⇒ 取引の時点で、期末の在庫の利益率が把握できるようにする必要がある。


11.決算早期化を阻害する、連結決算プロセスにおける相殺消去処理の負荷

■連結決算のプロセス
 3段階に大別
 単純合算 → 相殺消去処理 → 開示資料の作成

■負荷のかかる連結決算処理
 相殺消去のプロセスが多く、連結決算早期化の大きな阻害要因となっているといえる


12.BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの経緯と最終報告書の概要

1.経緯
 多国籍企業による、各国の税制の相違点や不整合を利用した国境を越えた過度な節税策が問題に
OECDG20が中心となり、以下を目的に合意文書を作成。
 日本の税制改正に影響する。
①国境を越えて事業展開する企業活動に係る国内の課税ルールの整合性確保
 ②企業行動の実態に即した課税ルールの再構築
 ③国際課税ルールの策定

2.最終報告書の概要
  ①電子商取引課税
⇒消費税は27年度税制改正(国境を越えた役務提供に対する消費税の課税の見直し)で対応済
  ②ハイブリッド・ミスマッチの効果の無効化
   ⇒27年度税制改正(外国子会社配当益金不算入制度の見直し)で対応済
  ③効果的なCFCルールの構築 ⇒今後法改正の要否を含め検討
  ④利子等の損金算入を通じた税源浸食の制限 ⇒今後法改正の要否を含め検討
  ⑤有害税制への対抗 ⇒既存の枠組みで対応
  ⑥租税条約の乱用防止 ⇒租税条約の拡充の中で対応
  ⑦恒久的施設認定の人為的回避の防止 ⇒租税条約の拡充の中で対応
  ⑧移転価格税制(無形資産) ⇒今後法改正の要否を含め検討
  ⑨移転価格税制(リスクと資本) ⇒今後法改正の要否を含め検討
  ⑩移転価格税制(他租税回避の可能性が高い取引)
   ⇒今後法改正の要否を含め検討
  ⑪BEPSの規模や経済的効果指標の集約・分析方法の策定
  ⑫タックス・プランニングの報告義務 ⇒今後検討
  ⑬移転価格関連の文書化の再検討 ⇒28年度税制改正で対応予定
  ⑭相互協議の効果的実施 ⇒対応済
  ⑮多国間協定の開発 ⇒参加予定


13.子会社化した直後の吸収合併の個別財務諸表の取り扱い

下記2つの合併処理がある
(1)パーチェス法による合併処理
→取得原価を、識別可能な子会社の資産・負債の時価を基礎に配分

※パーチェス法による合併処理は、株式の取得と直後の吸収合併の取引は一体で、一つの企業結合を構成
子会社株式取得の対価を合併対価とした「取得」であると判断

(2)共通支配下取引としての合併処理
→移転する資産及び負債は移転前の簿価で承継
→ただし親会社が子会社を企業結合する場合では、子会社の資産・負債の簿価を連結上修正していれば当該価格が適正な帳簿価格

※共通支配下の取引とは、親会社と子会社の合併や、親会社の支配下にある子会社同士の合併など、結合後企業のすべてが企業結合の前後で同一の企業によって最終的に支配され、その支配が一時的ではない場合での企業結合をいう。


14.米ファイザーがアラガンを買収

・米製薬会社ファイザーが、アイルランドに本社を置く同業のアラガンを買収。
・買収総額は1,600億ドル(約20兆円)と製薬業界で過去最大。
・形式上は、アラガンが買収側に。
⇒本社がアイルランドになることで、大規模な節税が可能となる。
・アラガンも元をたどれば米国企業。
 アイルランドの医薬品メーカーを買収する際、税務上の本社をアイルランドに移して今の形になっている。


15.取締役会の整備のポイント

(1)株式上場審査では、コーポレート・ガバナンスが最重視されている。
 取締役会は、コーポレート・ガバナンスが機能するための重要な意思決定機関であり、決議事項、報告事項を明確にする必要がある。
(2)機動的な経営を実践するために、定期的(最低月1回)に取締役会を開催する必要がある。
(3)同族関係者が取締役会総数の過半数を占めないようにする。
(4)名目的な取締役が存在する場合、上場審査上問題となる。

■今週の新規上場会社
上場・公開日    社名              銘柄コード 市場  公募価格(円)

1127      ネオジャパン        3921      マザ  2,900






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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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