2016年3月18日金曜日

3/18 勉強会:3月期決算において税効果会計で留意すべき事項 他

1.ヤフー・IDCF事件は「租税回避」の捉え方をどう変えたか
■「租税回避」の捉え方に関する最高裁の判示
132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは
 ⇒法人の行為又は計算が組織再編成に関する税制にかかる各規定を組織再編の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいう

・濫用の有無の判断に当たって
 1、法人の行為又は計算が、通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいていたり、実態とはかい離した形式をしていたりするなど不自然なものであるかどうか
 2、税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等を考慮したうえでその行為又は計算が組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって、組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱していてその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否かという観点から判断するのが相当である

■まとめ
・税法の濫用は租税回避と最高裁が判示した
・濫用かどうかは
 1、普通(一般的)に考えたときに違和感が残るやり方で組織再編しているかどうか
 2、税負担の減少以外に組織再編をする経済的合理性が認められる事情があるかどうかを考慮してその組織再編が税負担の減少させることを意図したもので組織再編税制の各規定の本来の趣旨や目的を無視して税制の適用が受けられるように、または受けないようなやり方で組織再編しているかどうかという観点から判断する方向性を示した

IBM事件のあとにヤフー・IDCF事件の上告棄却が出された
 ⇒ヤフー・IDCF事件の上告棄却判示を後世に残したいという最高裁のメッセージではないか。


2.マイナス金利で退職給付の割引率は?
■企業会計基準委員会の公表内容
平成283月決算においては、以下いずれの方法を用いても、現時点では妨げられないとしている。
 1.マイナスとなっている利回りをそのまま利用する方法
 2.ゼロを下限とする方法(すなわちゼロとする方法)
1.2.ともに採用する根拠があり、見解として公表するには相当の審議が必要としている。そのため現状は"妨げられない"としており、また、"平成283月決算においては"とある。


3.監査法人のガバナンス・コードは年内にも策定へ
・金融庁は「監査法人のガバナンス・コード」を策定する方針
⇒昨今の新規公開を巡る会計上の問題や、会計不正事案などを踏まえたもの。
⇒大手上場企業等を監査する監査法人において実効的なガバナンスを確立し、マネジメントを有効に機能させていくための取り組みを進めるに当たって確保されるべき原則を示すもの。
具体的な内容はこれから議論する。


4.訪日ツアーめぐる取引を輸出免税と認めず
日本法人が訪日旅行ツアーを主催する海外旅行会社に提供した取引は消費税上、輸出免税に該当するかどうかで争われた事例

■日本法人が海外旅行会社へ提供したサービス
⇒訪日ツアーの飲食場所や宿泊場所等の計画や手配
※サービスの実際提供先は訪日旅行客
※上記サービスの対価を海外旅行会社から受ける

⇒日本法人は上記売上を輸出免税売上と処理し、飲食や宿泊に要した費用は課税仕入れとしていた(=還付)

■結論
・輸出免税売上には該当しない
⇒日本法人が主張した【旅行パッケージ商品】資産の輸出ではなく
 【国内におけるサービスを確実に利用できるようにする】役務の提供に該当
※役務の提供の場合、サービスが行われた場所で国内外の判定をする


5.リスク分担型DB、会計上はDCと同様
() DB:確定給付年金制度、DC:確定拠出年金制度
・企業会計基準委員会は政府が導入予定の「リスク分担型DB」に関する会計上の取扱いを検討

■リスク分担型DB
・確定給付企業年金法に基づいて実施
・ただし、事業主に予め固定された掛金以外に追加的な拠出を求めない仕組み
⇒ 現行の退職給付会計基準上、「確定給付制度」又は「確定拠出制度」のいずれに該当するかが最大の論点

・リスク分担型DBでは、新たな労使合意を形成し、掛金を変更することができる規定があるものの、当該規定に基づき掛金を変更する場合を除き、企業は追加的な拠出義務を負っていない。
⇒ 会計上、確定拠出制度として取り扱い、リスク対応掛金()も含めた掛金の毎期拠出額を費用処理する方向で検討
() 予め財政悪化時に想定される積立不足を測定し、その水準を踏まえた掛金

■既存の確定給付年金 ⇒ リスク分担型DBに移行する場合
 過去の積立不足に対応する部分として「特別掛金相当分」を算定して拠出する場合、特別掛金の未拠出額に相当すると考えられる範囲で、かつ、移行前の退職給付に係る負債に認識している範囲で、当該残高を退職給付に係る負債として引き継ぐ方向で検討


6.輸出類似取引とは
消費税の輸出免税の対象とされている輸出取引のこと。
主に国外事業者に対するサービス提供等が該当し、国際輸送や国際郵便が代表例。

ただし、以下に該当する場合は「輸出免税」に該当しない。
非居住者(外国法人など)に対する役務提供のうち、
(1)国内にある資産の輸送費や保管料
(2)国内における飲食代や宿泊料
(3)上記(1)(2)に準ずるもので国内において直接便益を享受するもの
⇒これらはすべて通常の「課税取引」に該当する。


7.職務発明が「法人」に帰属で通達改正へ
H28.4.1より、職務発明の権利が「従業者帰属」から「法人帰属」へ
・発明報酬の取扱が以下の通り変更に

(現状)従業員帰属
・発明した権利を、従業員から法人へ譲渡する必要あり
・発明時の報酬(出願補償金等)⇒譲渡所得
・譲渡後の報酬(特許登録補償金等)⇒雑所得

(今後)法人帰属
・発明時点から権利は法人が保有しており、譲渡の必要なし
・発明に関する総ての報酬⇒雑所得


8.税務の動向:新品の機械装置の固定資産税を3年間半減
■特例の対象となる機械装置
・販売開始から10年以内のもの(新品)
・旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するもの
1160万円以上

■適用内容
新法施行日(2834日提出、施行日はまだ未定)以後3年間に渡り、機械装置等に対する固定資産税の課税標準を1/2とする。

(例)H28.6月取得
H29年度、H30年度、H31年度の固定資産税が半減

■生産性向上税制との関係
一定の要件を満たす場合、併用可。
※ただし、生産性向上税制はH29331日までの事業供用分をもって終了


9.消費税:同じ8%でも経過措置分と軽減税率分は区分管理が必要
軽減税率導入後の消費税率の区分は下記の4区分となる。
同じ8%税率にも国税と地方税の内訳が異なる2種類が存在することとなり、注意が必要。

 ・5% (経過措置 国税:4%、  地方税:1)
 ・8% (経過措置 国税:6.3%、 地方税:1.7)
 ・8% (軽減税率 国税:6.24%、地方税:1.76)
 ・10%(標準税率 国税:7.8%、 地方税:2.2%)


10.電子記録債権
・電子記録によって発生、譲渡が行われる金銭債権
・でんさいねっとは既存の銀行間システムを利用できるので利用者を増やしている。
・電子記録債権のメリット
  作成・保管コストの削減
  盗難・紛失のリスク低減
  債権の分割が容易

・会計処理は「手形債権に準じて取り扱う」とされている。
・表示名は「電子記録債権」


11.企業結合会計基準改正のまとめ
1. 考え方の変更
⇒ 親会社説から経済的単一体説へ

2. 改正点
(1) 名称の変更
・少数株主持分 ⇒ 非支配株主持分
(2) 会計処理の変更
・非支配株主との取引(子会社株式の追加取得や売却)
⇒ 連結財務諸表上、持分変動の差額を資本剰余金に計上
※企業グループ間の取引の為、資本取引であるという考え方
・取得関連費用の取り扱い
⇒ 連結財務諸表上、取得関連費用は費用として処理


12.工事進行基準適用に関する会計・監査のポイント
■計算要素
 ・総収益   ⇒ 契約で決定
 ・総原価   ⇒ 会社が見積もる必要あり★
 ・工事進捗率 ⇒ 実際に発生している原価に基づき算定★
 ※ ★の箇所について、恣意的な利益操作が行われる余地がある

■見積総原価
 実行予算に基づいているか
 実行予算 = 詳細な工事各段階での見積り原価の積み上げ ⇒ 各段階で適切な承認を得ているか
 実行予算の見直し ⇒ 他の資料・状況なども見て、見直しが必要かどうか検討

■工事進捗率
 不適切な原価調整によって正しい率が算定されないことがある

■何が大事か
 ・総原価も進捗率も会社の内部統制が大きく影響する
 ・数字を視る側の視点としては、社内風土(予算にコミットする風土、姿勢か)等も意識すべき


13.3月期決算において税効果会計で留意すべき事項
■税効果会計に適用する税率
 ・現行:決算日現在で公布されている税率
 ・草案:決算日現在で国会で成立している税率
 ⇒H28331日以後に終了する事業年度の年度末に係る連結F/S・個別F/Sから適用
 ⇒よって3月決算の会社がH28年度税制改正大綱による改正後の法定実効税率を使うかどうかは、改正税法が3月末において国会で成立しているかどうかにより判断する

H28年度税制改正大綱の法定実効税率(資本金1億円超、標準税率)
 ・現行 :H27年度32.11%、H28年度以後31.33
 ・改正案:H28年度とH29年度29.97%、H30年度以後29.74


14.有価証券の評価のポイント
■売買目的有価証券以外の有価証券について、価値が取得価額に比べて「著しく下落」している場合
・減損処理をして評価差額を損益計算書計上
・価値下落後の価額で貸借対照表計上

■時価が「著しく下落」しているかどうかの判断
時価が著しく下落
・回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損する
・具体的には期末時点の時価の下落率を下記の3種類に分類

時価のある有価証券
(1)30%未満のケース
   →減損処理は不要
(2)30%以上50%未満のケース
   →「各企業が設けた基準」により著しい下落と判定される場合、
   「回復可能性」がなければ減損
   →時価が過去2年で著しく下落、債務超過や2期連続赤字で翌期も予想される
   =「回復可能性」なしと判断
(3)50%以上のケース
   →回復可能性がなければ減損

時価のない有価証券
(1) 50%未満のケース
   →減損処理は不要
(2)50%以上のケース
   →回復可能性がなければ減損
   →「回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合」には減損不要
   →事業計画等が実行可能で合理的、概ね5年以内に回復する見込、回復可能性は毎期見直し


15.企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針
・平成271228日に指針が公表された。
・主な改正は3
 →将来の業績予測等を総合的に勘案(分類4
 →経常利益ではなく課税所得を判断基準に(分類24
 →従来の期間でスケジューリング不能な差異も場合によっては資産計上可能に(分類23

・分類15は従来の取扱と変わらず

・分類2
【要件】過去3年間安定的な経常利益 → 過去3年間安定的な課税所得に変更。
【回収可能性】スケジューリング不能の場合、資産計上不可 → 将来回収できることを合理的な根拠で説明する場合計上可
 ※株式の売却時期は決まっていないが保有目的からいずれ売却する可能性が高い、など

・分類3
【要件】過去の経常利益が大きく増減 → 過去の課税所得が大きく増減
【回収可能性】5年以内の、スケジューリングで判断 → 5年を超える期間に回収可能であることを企業が合理的に説明すれば回収可能性あり、と判断

・分類4
【要件・回収可能性】
 将来5年超にわたって安定的に課税所得を獲得できると説明すれば分類2に該当するものとして扱う。
 将来3年~5年にわたって課税所得を獲得できると説明すれば分類3に準ずるものとして、5年以内のスケジューリングで回収可能性を判断。


16.資本政策のスケジューリング
大きく以下の4つの時期に分けて考えることができる。
(1)オーナー一族の持株調整期
⇒資本政策の開始時点で、もっとも安価に増資あるいは株式を移動できる期間
⇒主目的は、オーナー一族の持株を増加させることであり、以降のステップで外部株主が参入してくるのに備えることである。

(2)役員・従業員の持株調整期
⇒ある程度上場の目処がついてきた段階
⇒株式保有の方法として、従業員持株会やストック・オプションなどのインセンティブ・プランを導入

(3)安定株主の持株調整期
⇒金融機関・取引先等の外部株主を参入させ、上場後の安定株主作りを行う期間
⇒割当先および株数は、将来を見据えて、取引関係、営業上の支援等を考慮して決定

(4)発行済株式数の調整期
⇒株式上場が近づいてきた時点で最終的に申請時の発行済株式数を調整するための期間
⇒株式分割などにより発行済株式数を調整


17.今週の新規上場会社
上場・公開日/社名/銘柄コード/市場/公募価格(円)
314LITALICO /6187/ マザ/1,000
315日 富山第一銀行/7184/ 1部/470
315日 富士ソフトサービスビューロ/6188/JQS/890
315日 ユーエムシーエレクトロニクス/6615/1部/3,000
315日 昭栄薬品/3537/JQS/1,350
317日 アカツキ/3932/マザ/1,930
318日 イワキ/6237/2部/2,000
318日 グローバルグループ/6189/マザ/2,000
318日 フェニックスバイオ/6190/マザ/2,400
318日 ヒロセ通商/7185/JQS/830
318日 アイドママーケティングコミュニケーション/9466/マザ/1,440
318日 アグレ都市デザイン/3467/JQS/1,730

LITALICO
業種:サービス業
事業内容:就労支援事業、児童発達支援事業、学習教室及び幼児教室の運営等
主幹事:野村證券
監査法人:新日本

(富山第一銀行)
業種:銀行業
事業内容:銀行業
主幹事:大和証券
監査法人:新日本

(富士ソフトサービスビューロ)
業種:サービス業
事業内容:コールセンター及び事務センター等のBPO事業
主幹事:野村證券
監査法人:太陽

(ユーエムシーエレクトロニクス)
業種:電気機器
事業内容:電子機器の受託製造・開発を行うEMS事業
主幹事:みずほ証券
監査法人:新日本

(昭栄薬品)
業種:卸売業
事業内容:天然油脂由来の油脂化学品(オレオケミカル)を主な取扱商品とする化学品事業、家庭用洗剤等の日用品を企画販売する日用品事業、土木建設関連の薬剤を主な取扱商品とする土木建設資材事業
主幹事:大和証券
監査法人:太陽

(アカツキ)
業種:情報・通信業
事業内容:スマートフォン向けソーシャルゲームの企画・開発・運営
主幹事:野村證券
監査法人:あずさ

(イワキ)
業種:機械
事業内容:化学薬品等の薬液移送に使用されるケミカルポンプ及びポンプ専用コントローラ等の周辺機器の開発、製造、仕入れ及び販売(輸出入を含む)
主幹事:大和証券
監査法人:あずさ

(グローバルグループ)
業種:サービス業
事業内容:保育所等の運営を通じて次世代を担う子供たちを育成する子育て支援事業
主幹事:いちよし証券
監査法人:太陽

(フェニックスバイオ)
業種:サービス業
事業内容:PXBマウスを用いた受託試験サービス
主幹事:SMBC日興証券
監査法人:あずさ

(ヒロセ通商)
業種:証券・商品先物業
事業内容:外国為替証拠金取引事業
主幹事:野村證券
監査法人:トーマツ

(アイドママーケティングコミュニケーション)
業種:情報・通信業
事業内容:流通小売業の統合型販促支援事業
主幹事:みずほ証券
監査法人:あらた

(アグレ都市デザイン)
業種:不動産業
事業内容:新築戸建分譲事業、注文住宅・戸建建築請負事業、その他不動産に関連する事業
主幹事:みずほ証券

監査法人:新日本















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