2016年5月13日金曜日

5/13 勉強会:税制改正の定額法変更では影響額を注記 他

1.身分証の提示は質問検査等に該当せず
■質問検査等とは
税務署などの職員が税金に関する調査で必要があるときに納税義務者に質問し、帳簿等の検査または提出の要求などをすることができる。
実地調査の場合は、事前に実地調査する旨を通知することとされている。

■今回の事例
・事前通知なしで、税務署の職員が納税義務者の自宅兼事務所に臨場し、自身の身分証の提示をしたこと、この行為が質問検査等に該当するかどうか

■納税者の主張
・事前通知なく臨場し、自己の身分証の提示、調査目的の来訪と告げたことは質問検査等に該当する
・事前通知の不備にあたり、適正手続を欠いた違法調査
・この調査で指摘された更正処分、付加決定は取り消されるべき

■審判所の判断
・税額や所得金額を確認する目的で、質問したり資料の確認を求めたわけではないので質問検査等の行使ない
 ⇒身分証の提示や来訪目的を告げる行為は質問検査等に含まれない


2.利益連動給与の算定指標、他社比もOK
28年度税制改正では、利益連動給与の拡充が行われている
・今までは「利益に関する指標」に連動
 ⇒経常利益、税前当期利益、当期利益

・改正後は、「利益の状況を示す指標」に変更
 ⇒EBITDA、売上高営業利益率、ROEROAEPS
 ⇒また、他社比(利益-他社の利益)、過年度比も可能

・ただし、売上やキャッシュ・フローは不可
・大前提⇒有価証券報告書を提出する法人に限られています。
2841日以後開始事業年度から適用


3.有価証券報告書作成上の留意点(平成283月期)
■連結CFにおける改正
・連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に係るCF
=財務活動によるCFの区分とする。
・連結範囲の変動を伴う子会社株式の取得関連費用もしくは連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に関連して生じた費用に係るCF
=営業活動によるCFの区分とする。

■法人税率引き下げ等に伴う税効果会計に関する注記
・法人税等の税率の変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正された場合
=その旨及び修正額を注記する。

■連結財務諸表における科目の表示
(連結BS
・「少数株主持分」→「非支配株主持分」
(連結PL
・「少数株主損益調整前当期純利益」→「当期純利益」
・「少数株主利益」→「非支配株主に帰属する当期純利益」
・「当期純利益」→「親会社株主に帰属する当期純利益」
(連結包括利益計算書)
・「少数株主損益調整前当期純利益」→「当期純利益」
・「少数株主に係る包括利益」→「非支配株主に係る包括利益」
(連結SS
・「少数株主持分」→「非支配株主持分」
・「当期純利益」→「親会社株主に帰属する当期純利益」
(連結CF
・「少数株主への配当金の支払額」→「非支配株主への配当金の支払額」

■その他
・企業結合会計基準等
・税効果会計に関する適用指針


4.熊本県全域の納税者、全税目の申告期限が自動延長
■概要・対象
・熊本県に納税地を有する納税者
H28/4/14以後に到来する申告・納税等の期限が自動で延長
・税務署等で手続きを行う必要はない
・期限をいつまでに延長するかは今後決定する

■留意点
・相続税等に関しては期限延長とならない場合あり
・熊本県外や相続税など今回の自動延長に該当しない場合は個別指定という手段で申告・納付期限を延長することが可能
 ⇒「災害による申告、納付等の期限延長申請書」
・税理士が被災して申告業務が行えない場合も個別指定で延長可能


5.税制改正の定額法変更では影響額を注記
■企業会計基準委員会が実務対応報告公開草案第46()を公表
()「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い()

・平成28年度税制改正で、建物附属設備及び構築物の償却方法が定額法に一本化(対象は、平成2841日以後取得したもの)
・多くの企業で、会計上の償却方法を定率法から定額法へ変更することを検討
・当該変更が「正当な理由による会計方針の変更」として認められるかどうか、企業や監査人から問い合わせ

■法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う
・法人税法に規定する普通償却限度額を会計上の減価償却費として処理
・建物附属設備及び構築物の減価償却方法:(従来)定率法→(平成2841日以後取得)定額法

■注記事項
・法人税法の改正に伴い、本実務対応報告を適用し、平成2841日以後に取得する建物附属設備、構築物又はその両方の減価償却方法を定率法から定額法に変更している旨
・会計方針の変更による当期への影響額

■本実務対応報告の適用
・公表日以後最初に終了する事業年度のみ
(平成28年度税制改正に係る減価償却方法の改正に限定して対応したものであるため)


6.馬券払戻金の課税めぐり納税者勝訴の逆転判決
■事例
・テレビや新聞などの情報を基に独自のノウハウで馬券を購入
・購入額は5年間で約73億円購入(利益は総額約5億円超)
・納税者(馬券購入者)は「雑所得」と主張
・地裁判決は、「一時所得」に該当、外れ馬券の購入費用は必要経費×
・高裁での判決は?

(補足)
PCソフトを駆使した最高裁判決の事例と異なる裁判。
最高裁判決の事例は、「雑所得」と判断された(H27310日判決)

■争点
一時所得に該当するか、雑所得に該当するか
一時所得に該当した場合
⇒的中した馬券に対応する購入額のみ必要経費算入
雑所得に該当した場合
⇒的中した馬券のみならず外れ馬券の購入額も必要経費算入

■高裁判決
以下理由により、
馬券の購入が経済活動の実態を有しているため「雑所得」」と判断した。
・馬券購入を裏付ける書類は保存されていないが、期待回収率が100%を超える馬券を選別できるといった独自のノウハウを基に、多数回かつ頻繁に選別可能な馬券を網羅的に購入していること。
100%を超える回収率を実現することで、多額な利益を恒常的に得ていたこと。
・最高裁事例のPCソフトを使用した独自の計算式による馬券の買い方と本質的な違いはないこと。


7.売上計算特例は支店・営業所別の適用可
H29.4.1~軽減税率の適用開始
・原則:10%売上、8%売上を個別集計する必要あり
・特例:通常事業を行う連続10営業日の実績割合(8%売上/売上総額)を用いた簡便計算OK
⇒特例は、支店毎・営業所毎に適用可能
A支店は個別集計、B支店は特例による簡便計算、ということが可能


8.法人税:役員による横領があった場合の税務処理
<例>
・役員が架空の仕入れを行い、架空仕入にかかる金額を横領
・法人は架空仕入れを含めて損金計上 

■必要な税務処理は3
(1)横領損失額をその損害が生じた年度の損失として計上(減算)
(2)架空仕入れ分を損金の額から控除(加算)
(3)役員に対する損害賠償請求権を益金算入(加算)

■上記(3)の益金はいつのタイミングで計上するか?
<関連通達>
法人が他の者から不法行為などで損害を受けた場合、その損害賠償金の収益計上時期は原則として支払を受けることが確定した日(例えば和解が成立した日など)の属する事業年度とする。また、実際に支払を受けた日の事業年度の益金としている場合はこれを認める。
⇒役員は「他の者」に含まれないため、この通達は適用されない。
したがって損害を受けた時点で請求権が確定している(⇒権利確定主義)と考え、(1)(3)は同一事業年度で処理を行う。結果、横領損失が生じた事業年度に加算調整が必要。


9.消費税:建設中の工事の施主としての地位を譲渡する場合の取り扱い
建仮で処理し、完成時に一括して仕入税額控除をする事としていたケースの地位譲渡時の処理は以下のとおり。

■売手
不課税取引として処理。
支出した金銭支出の精算であり、消費税の課税対象である資産の譲渡等の対価には該当しない。と解される。

■買手
建仮で処理し、完成時に(引き継いだ部分についても)全体にかかる仕入税額控除をとることが可能。


10.繰延税金資産(DTA)の表示区分
DTAの表示区分(流動か非流動か)は、原因となった取引あるいは科目が流動と非流動のどちらに属していたかで決まる
 ※繰越欠損金だけはワンイヤールール
IFRSDTAは一括して非流動区分に計上
・米国基準:従来は日本と同じ。最近、IFRSに合わせる改正が行われた
・日本でもIFRSに合わせる動きあり


11.法人税関係の改正
1. 株式交換等の適格要件の見直し
(1) 役員継続要件
特定役員(※)のいずれかが株式交換を伴って退任する株式交換でない事
⇒ 特定役員の全てが株式交換を伴って退任する株式交換でない事
※特定役員 … 社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務
取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者
(2) 現物出資の適格要件
・内国法人から外国法人への特定資産(※)の現物出資
⇒ 非適格から、PEへの場合は適格
・内国法人から外国法人への特定資産以外の現物出資
⇒ 適格から、PE以外への場合は非適格
※特定資産 … 国内にある不動産、不動産上の権利、鉱業権等

2. 役員報酬及び株式報酬の取扱
(1) 利益連動型の役員報酬
⇒ 経常利益、純利益、包括利益、一株当たり純利益の他、ROEROAも指標の適用として認められることに
(2) 株式報酬
⇒ 親会社発行の譲渡制限株式の交付は、譲渡制限解除時に損金算入可能に。


12.消費税関係の改正
 ■軽減税率&適格請求書等保存方式
  10%への引き上げに伴い、軽減税率制度&仕入税額控除方式(複数の税率に対応)の変更
   ⇒平成3341日~:適格請求書等保存方式が導入
  仕入税額控除の要件:
  適格請求書発行事業者から発行された適格請求書の保存していること
  適格請求書(以下を記載):
  適格請求書発行事業者の氏名または名称
  登録番号
  課税資産の譲渡等を行った年月日
  販売又は適用した資産又は役務の内容
 (軽減対象課税資産の譲渡等の場合、その旨と資産の内容を記載する必要あり)

 ■軽減税率の設定から適格請求書等保存方式導入まで(平成2941日~平成33331日)
  軽減税率適用の課税仕入⇒軽減対象課税資産の譲渡等である旨を請求書等に記載する必要あり。
  (困難な場合(以下)…簡便法あり)
 ・現金商売で、売上や仕入を税率ごとに区分することが困難な事業者
 ・自社又は取引先のシステム誠意が間に合わない場合(1年に限り適用可)
 ・課税売上高が5000万円以下の中小事業者(制度導入から4年間適用可


13.土地建物の含み損を解消するうえで税務上の留意点
会計上、減損損失を計上しても税務上は否認される。
税務上、含み損を実現させる為にはどうすれば良いか。
■グループ外の別法人へ譲渡する
 ⇒含み損実現

100%グループ内の法人間へ譲渡する
⇒一定の資産※の移転による譲渡損益は繰延べられてしまう
 ※簿価1,000万円未満の固定資産等
⇒では完全支配関係を解消すれば繰延べなくても良いのか?

(留意点)
譲渡損失を繰延べないようにするという目的のためだけに完全支配関係を解消する場合、租税回避行為と認められ、行為計算の否認が適用される可能性がある


14.中国子会社における不正
 (1)不正を犯す動機
・物価高、生活苦
・家族・親族の扶養責任
→血縁のつながりが重要、社会福祉制度も未成熟
・投資資金
→投資熱が非常に高い
・遊興費・メンツ
→メンツの社会
・本社からのプレッシャー
(2)不正を正当化する理由
・制度の未成熟
→担当官に便宜を図ってもらう
・低賃金
・日本駐在員との賃金格差
・終身雇用の感覚無し
(3)不正を犯す機会
・上司や日本本社からの不十分な監視


15.H28年改正(法人税関係1
■法人所得税率の引下げ
H284月以後開始年度:23.4%
H304月以後開始年度:23.2%

■法人住民税率の改正
・法人税割を引下げて(6.0%)地方法人税率を引上げ(10.3%)

■法人事業税の改正(H284月以後開始年度)
・付加価値割(引上げ):1.2%
・資本割(引上げ):0.5%
・所得割(引下げ):3.6%(800万円超)
・地方法人特別税(引上げ):414.2%

■欠損金の繰越控除制度の見直し
・控除限度割合:H274月からH304月にかけて65%から毎年5%引下げ
・欠損金の繰越期間10:1年見送り平成304月以後開始年度から

H284月以降取得資産の定率法廃止
・建物付属設備と構築物⇒定額法のみ
・鉱業用建物⇒定額法or生産高比例法

■租税特別措置の見直し
(主に)投資減税・雇用減税⇒廃止or要件縮減


16.収益認識に関する包括的な会計基準の開発
・企業会計基準委員会は、コンバージェンスを図る観点から、IFRS15号の収益認識に沿うよう、収益認識に関する包括的な会計基準の開発に着手。
IFRS15号に沿う場合、論点になりそうなものの例は下記の通り。

・返品権付き送品の販売 ⇒ 返品が見込まれる部分については収益を認識しない(従来の日本基準では返品調整引当金を計上していたが、そもそも売上を立てない)。
・純益による収益認識 ⇒ 主たる責任、在庫リスクなどを負っていない部分については収益認識しない(商社の売上などに影響)。
・契約ではなく実態に沿って収益認識 ⇒ 契約が別でも単一とみられる場合、契約が一つでもサービス内容が複数で別々に収益認識を求められる場合など

・注記事項も充実が求められる。
⇒収益の分解(製品ライン、地理的区分、顧客ごとの収益開示)
⇒契約残高(どんな契約が残っていて、どのように収益認識しているか分かるような資料を開示する)


17.特別利害関係者等との債務保証
(1)申請会社が特別利害関係者等から債務保証を受けている場合
⇒金融機関からの融資やリース会社からのリースを受ける際に、代表取締役の債務保証が求められることが多いが、個人的経営から脱却するため、債務保証を代表取締役から受ける取引は原則として解消が必要となる。
⇒債務保証の解除を行うタイミングとしては、上場承認がなされることを条件に、上場直前までに解消してもらうことが一般的である。
⇒ただし、取引相手方の事業によりその解消が困難なケースもあり、その場合は、F/Sに「関連当事者との取引」として注記するとともに、「リスク情報」に開示することとなる。

 (2)申請会社が特別利害関係者等を債務保証している場合
⇒この場合には、申請会社にとって取引の合理性がなく、利得行為ともなるため、速やかに解消する必要がある。

⇒遅くとも、上場直前事業年度末までに当該債務保証を解消することが必要である。









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