2016年6月26日日曜日

6/24 勉強会:所得税:非居住者期間に取得した家屋でも住宅ローン控除可能に 他

1.今週の専門用語

■経営陣幹部
CGコードで用いられている用語
・単なる経営陣よりも経営陣幹部の方が狭い概念といえる
 参考:補充原則3-2②「CEOCFO等の経営陣幹部」
・経営陣とは取締役会のメンバーでない者も含まれる
 参考:基本原則4の(3)「経営陣(執行役およびいわゆる執行役員を含む)」

※コーポレートガバナンスコードには5つの基本原則、30の原則、38の補充原則がある


2.非適格分社型分割-株式以外の金銭等の交付がない場合(分割承継法人)

■事例
分割法人A
・簿価⇒資産1,500、負債1,000(簿価純資産価額500)
・時価純資産価額⇒1,200
・対価はB
分割承継法人B
・吸収分割にともない資本金200、資本剰余金300増加

■分割承継法人Bの会計処理(簿価で移転した場合)
()資産 1,500 /
          / ()負債1,000
    / ()資本金200
                    / ()資本剰余金300

■分割承継法人Bの税務処理
⇒非適格分社型分割なので、移転資産負債を時価により譲受たものとして計算する。
()資産 2,200 /
                    / ()負債1,000
                    / ()資本金200
                    / ()資本金等の額1,000

⇒したがって税務調整は以下となる。
() 資産 700  / () 資本金等の額700

■別表調整
別表四⇒なし

別表五()
⇒資産700
⇒資本金等の額△700

別表五()

⇒利益積立金額700


3.税率引上げ延期に伴う改正法遡及適用も

・消費税率10%への引上げ⇒平成31101日まで延長
・当初の経過措置の指定日=平成28101日だった。
⇒秋の臨時国会で経過措置に関する改正がされるが、101日以降となる可能性あり
⇒その場合、改正法案の成立後、遡及適用される。


4.経営者報酬の「方針」の充実へむけて

政府主導で進められたインセンティブ制度に関する制度整備の概要

■譲渡制限付株式の事実上の解禁
・会社法上の解釈が示された
・税法上明確化されていなかった部分が税制改正で明確化
⇒事実上の解禁

■利益連動給与の算定指標の拡充
・限定的かつ硬直的な制度のため、あまり利用が進んでいなかった
・制度整備により、ROEEBITDA、部門利益なども要件の範囲に
・乗率だけでなく、計画比・前期比・他社比の算定も可能に

■株式報酬の現金化を容易にする措置
・インサイダー規制の適用除外要件が設定
⇒株式報酬全般に対しての現金化が容易になった


5.公益信託法が改正へ、税制も見直し

■法制審議会の信託法部会が公益信託法の見直しの検討へ
・信託法は平成18年に全面的な見直しが行われた。
・その際、公益信託部分については、実質的な見直しが行われなかった。

■公益信託とは
・委託者がその所有する財産を一定の公益目的のために受託者に譲渡し、受託者がその財産を管理処分することで、公的目的を実現するもの
・公益信託は、税制上、「特定公益信託」と「認定特定公益信託」に分類され、各種優遇措置が講じられている。

■特定公益信託とは
(1)信託終了時に信託財産がその委託者に帰属しない
(2)信託契約が合意による終了が出来ない
(3)出資する財産が金銭に限定されている
等、一定の要件を満たすことが信託契約で明らかであり、信託銀行等が受託者であることについて、主務大臣の証明を受けたもの

■認定特定公益信託とは
・特定公益信託のうち、一定の要件(文化芸術等の信託目的を有する)を満たすもの
・委託者が個人であれば、財産を拠出した際に寄付金控除し、仮に亡くなった場合、委託者の相続人の相続財産に含めた上で、その課税評価額はゼロとして評価される(相続対策となる側面あり)

■課題項目
・信託実務及び信託財産の範囲
ex.税制上の優遇措置を受けるには、信託財産は金銭に限定されるが、
不動産、著作権等の金銭以外の財産についても、公益信託の積極的な利用を促進する観点から、公益信託の信託財産の範囲に含めることを認めるかどうか
・公益信託の受託者等

■公益信託法が改正されれば、税制の見直しも必要になる。


6.生計一の配偶者が所有する車両の減価償却方法

■事例
・Aが妻所有の車を無償で使用した。
・妻はAの生計を一にする配偶者である。
・妻所有の車の減価償却費をAの必要経費に算入。
・必要経費に算入すべき金額はどう計算するか。
⇒A氏ベースで計算するか、所有者の妻ベースで計算するか

■法令解釈(所得税法56条と56条の1)
親族()の所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額を、居住者()の必要経費に算入する。

上記条文を言い換えると、妻所有の車の減価償却費をAの必要経費に算入するならば、妻ベースの減価償却方法によって計算すること。

■裁判内容
Aは定率法を償却方法として届出したため、定率法により減価償却費を計算したが、上記に基づき妻の償却方法(定額法)で減価償却すべきと判断された。

※妻は償却方法の届出をしていない。
※所得税法における法定償却方法は定額法である。


7.営利目的で毎週・大量購入も、外れ馬券は必要経費に該当せず

【東京地裁事例】
・毎週かつ大量に馬券を購入(15002000回、3年間で約2.6)
・開催日のほぼすべてで当たりを獲得
⇒当たり馬券が雑所得になるか?

【判決】
・馬券購入行為が一般的な購入行為と質的に異なるとはいえない(詳細は下記)
・一般的な当たり馬券と同様、一時所得として、外れ馬券は必要経費には該当しない

【他の事例との対比】
(本件納税者:一時所得)
・競争成績分析、血統分析による各馬の実力と適正から勝ち馬を予想し、その馬を中心に相当点数の馬券を購入
3年総額で約0.7億の損失
(別件納税者1:雑所得)
・レース毎に8つの考慮要素に基づいた評価を実施、レース結果をシミュレーションし、個別に馬券を購入
6年総額で約5.5億の利益
(別件納税者2:雑所得)
・馬券を自動的に購入するソフトを開発、独自の条件設定と計算式をもとに馬券を購入
3年総額で約1.4億の利益


8.所得税:非居住者期間に取得した家屋でも住宅ローン控除可能に

28年度改正で住宅税制の家屋取得に係る対象者が「居住者」から「個人」に変更された。

■比較
改正前:海外赴任中(非居住者期間)に居住用家屋を取得=住宅減税の対象外
⇒規定が「居住者が取得し」となっていたためNG

改正後:海外赴任中(非居住者期間)に居住用家屋を取得=住宅減税の対象
⇒規定が「個人が取得し」に改正されたためOK

■注意点
本人が長期間居住できない場合には「同一生計親族」が6月以内に入居し、その年1231日時点で居住していることが要件となる。


9.【法人税】国庫補助金の圧縮記帳と資本的支出

国庫補助金の圧縮記帳は
・固定資産を取得した場合
・固定資産を改良した場合
に適用可能。

従って、資本的支出についても適用可能。
なお修繕費等として損金処理した場合にも、所得計算上、当然補助金収入と相殺される。


10.特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)

・一定期間の譲渡制限が付された現物株式を報酬として付与するもの
・譲渡制限がつく⇒役員の中長期の株価向上へのインセンティブとなる
 株主目線の経営を促す

平成28年度税制改正で導入促進のための改正あり
・発行会社は損金算入OK、事前確定届け出が不要な役員給与
・受け取った個人は譲渡制限解除時に課税される


11.事業継続計画の見直しポイント

1.事業継続計画とは
⇒企業が大火災などの緊急事態に遭遇した場合に、損害を最小限にし、早期復旧をするために取り決めておく計画

2.評価ポイント
(1)危機発生後の行動・連絡が具体的かつ明確になっているか。
⇒曖昧な計画だと、実際に危機が発生した場合に適時に行動できない恐れあり。
(2)対策内容は、被害軽減対策だけでなく、代替生産計画も練りこまれているか。
⇒被害が軽減されても生産活動に戻れないケースもある。
⇒他の生産拠点で代替生産できれば、早期事業再開が見込める。
(3)復旧目標は、取引先やマーケットの事を考慮して定めているか。
⇒取引先や、マーケットの求めるスピード感がないと、販売機会等を逸する恐れあり。


12.平成28年度税制改正における消費税関係の改正について

■高額特定資産の取得⇒その後3年間、事業者免税点制度が適用不可
・免税事業者or簡易課税適用、でない事業者が対象
・高額特定資産の仕入(当然課税仕入)を行った場合、その期を含め3年間免税事業者となれない
・高額特定資産とは:棚卸資産or調整対象固定資産、税抜金額が1000万円を超えるもの

■事業者向け電気通信利用役務の提供に係る内外判定基準の見直し
リバースチャージ方式の対象となる役務提供について、見直し
・国外事業者の恒久的施設である国内支店等でうけた事業者向け電気通信利用役務の提供
⇒国内で行う資産の譲渡等に要する特定仕入は「国内取引」として課税仕入扱いに。
・国内事業者の国外支店等で受けた電気通信利用役務の提供
⇒国外向けの資産の譲渡等に要する特定仕入…「国外取引」として不課税取引扱いに。
201711日以後に行う取引について適用



13.決算日が連結決算日と異なる連結子会社に発生した後発事象の取扱い

Ex.連結子会社の決算日後に係争事件の敗訴が確定(修正後発事象)
 ・親の決算日:3月末
 ・子の決算日:12月末

1. 子会社決算日~子会社監査報告書日までに発生
 ⇒子会社の個別上で引当金計上

2. 子会社監査報告書日~親会社の計算書類の監査報告書日に発生
 ⇒連結上で引当金計上

3. 親会社の連結計算書類の監査報告書日~金商法に基づく監査報告書日に発生
 ⇒監査役の監査報告書に内容を記載


14.特別利害関係を有する取締役が関与した議決の効力

■事例
A取締役に対して、1,000万円の貸付の決議があった。
A取締役も出席し、全会一致で承認決議がおりたが、この決議の効力は?

■回答
特別利害関係者が参加しており、決議自体には瑕疵があり違法。
しかし取締役の総数から特別利害関係を有する取締役を除外した人数の過半数の出席があり、その全員が賛成された取締役会決議は、特段の事情が無い限り無効とはならない。


15.スライド内のメッセージは90文字以内

■多くても90文字まで
・プレゼンで伝える内容は1つ
・人が一度に読める文字には限度あり
・制限下でいかにメッセージを伝えられる表現を考える
・文字数を制限するツールとしてメッセージボックスを利用する
※文字数が多い⇒内容が整理されていないのがほとんど

■方法
・メッセージボックスの大きさと記載する文字の大きさを決める
・全てのスライドに同じメッセージボックスを使用して統一感を出す
・例:枠線の幅3ptMSPゴシックで文字17ptなら2行でほぼ90文字


16.相続税評価における「借りている土地の権利」

・借りた土地の上に、金属造の露天式立体駐車設備を立てている。
 相続が発生した際、この土地の賃借権はどのように評価されるか?

(1)住宅を建てている場合 → 借地権割合で評価。
(2)住宅以外の「堅固な構築物」を建てている場合 → 借地権割合または地上権割
合のいずれか低い方で評価。
(3)(1)(2)以外の場合 → 地上権割合の半分で評価。

・借地権割合:都心では70%以上のエリアが多いが、郊外では30%になることも。
・地上権割合:利用期間によって5%~90%。存続期間の定めがなければ40%。

・露天式立体駐車場は(2)に該当。


17.公開申請に伴い発生する費用

(1)証券取引所
1.上場審査料
東京証券取引所200万円、その他100万円

2.上場手数料
取引所/定額/変動
東京/一部1,500万円、21,200万円/株式数×価格×(公募:万分の9、売出:万分の1
マザーズ/100万円/株式数×価格×(公募:万分の9、売出:万分の1
ヘラクレス/400万円/上場時の時価総額により25万円~1,300万円
大阪/500万円/1単位(※)につき30円(上限1,500万円)
名古屋/300万円/1単位(※)につき26円(上限1,700万円)
JASDAQ/600万円/上場株式数により72万円~132万円

(※)投資単位が50万円とみなして次の計算により算出した調整後の上場株式数
投資単位調整後上場株式数=上場株式数×(実際の投資単位÷50万円)








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