2016年10月22日土曜日

10/21 勉強会:休眠会社の整理作業が開始、役員変更の登記漏れに要注意 他

1.グループ法人税制外しに132条が適用

・意図的にグループ法人外しをし、資産の譲渡損失を認識した中小企業について課税当局から同族会社の行為計算否認が指摘されている事例が複数件判明

・グループ法人外しとは、100%子会社の株式のごく一部を他者に保有させる行為

・グループ法人内では以下の取扱等が強制適用される
 グループ法人内での資産の譲渡について、譲渡損益を繰り延べる
 グループ法人内で配当の受け取りがあった場合、その全額を益金不算入とする
 グループ法人内での寄附については、支払側、受取側のいずれも損金、益金を認識しない


2.事業譲渡と退職給与負債調整勘定(譲受法人:(翌期の処理))

■事例
ABへ事業の一部を譲渡
転籍者に係る退職給付引当金500(有税)も移転
翌期、転籍者が退職、退職給与負債相当額は200とする。

B (譲受法人)の会計処理
()退引 500 / ()現金 500

B (譲受法人)の税務処理
退職に伴い
退職金⇒損金算入
退職給与負債調整勘定⇒取り崩して益金算入

()退職給与 500 / ()現金 500
()退職給与負債調整勘定 200 / ()退職給与負債調整勘定取崩益 200

⇒したがって税務調整は以下となる。
()退職給与 500 / ()退引 500
()退職給与負債調整勘定 200 / ()退職給与負債調整勘定取崩益 200

■別表調整
別表四
⇒退職給与500(減算・留保)
⇒退職給与負債調整勘定取崩益200(加算・留保) 

別表五()
⇒退職給付引当金▲500
⇒退職給与負債調整勘定200

別表五()
⇒調整なし


3.仮装隠ぺいと重加算税をめぐる最近の裁決事例

・太陽光発電設備の取得費を引渡しがあった課税期間ではなく、その直前の課税期間で課税仕入とした
⇒重加算税の対象となる仮装行為に該当するか否か?

■概要
・請求人はA社へH263月期に太陽光発電設備に関する設置工事を発注および課税仕入とした
・請求人は消費税申告書と共に提出した添付書面には、H26131日付の請求書が添付されていた
・請求書は請求人が作成したもので、欄外に「工事完了はH26331日迄とする」旨が記載されていた
・設置工事はH26715日に完了し引き渡された

■国税不服審判所
・請求書はあくまで工事代金を請求する書面であり、引渡しに関する書面ではない
・請求書がH26131日付で作成されていることから「工事完了は331日迄とする」との記載は工事完了の予定日が記載されただけ
・請求書がH263月期終了後に日付を遡って作成されたなどの事情は見いだせない
⇒よって請求書を作成したことをもって、引渡し日を仮装したとは到底認められない
⇒重加算税の処分取り消し


4.休眠会社の整理作業が開始、役員変更の登記漏れに要注意

■休眠会社とは
最後の登記から12年を経過している株式会社
※平成28年度(今年度)の場合、平成161013日以降に登記がされていない株式会社

■みなし解散の登記
平成281213日までに(1)又は(2)が無い場合、登記官が職権で解散の登記を行う
(1)役員変更等の登記申請
(2)まだ事業を廃止していない旨の届出

(1)補足
平成28年は会社法施行から10年。
公開会社ではない株式会社で取締役又は監査役の任期を10年にしている会社も今年は役員の変更登記が求められる


5.睡眠貯金事務手続きは一般に公正妥当な会計処理

請求人(農業協同組合)の睡眠貯金事務手続きの基準は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に該当するか否かで争われた事例

■睡眠貯金事務手続き
・最終取引日から10年経過した残高10,000円以上の口座
・貯金者に送付した郵便物が宛先不明等で返送された
10年+6ヶ月経過した日が属する事業年度の収益とする

⇒だが請求人は、行方不明や相続人のいないことが明らかでなった口座でない限り、収益と計上すべきでないとし、これらの睡眠貯金を収益計上していなかった

■判決⇒課税庁勝利
・他銀行等においても睡眠貯金事務手続きに定める収益計上基準が広く採用されている
・仮に収益計上を行ったとしても、その後に貯金者が判明し、払戻請求権の行使がされればそれを費用に計上すればよい


6.工事費用、改良費か必要経費で注目裁決

■賃貸用土地の造成工事に係る費用
⇒不動産所得の計算上、必要経費に算入できるか

(1)請求人の確定申告:必要経費に算入

(2)原処分庁の判断:必要経費に算入不可
∴改良費に該当し、資産の取得費に含めるべき

(3)請求人の主張:必要経費に算入可
∴原価、もしくは、販管費に該当

(4)国税不服審判所の判断:工事費用の処理は、工事の具体的な内容に従って判断すべき
(a)外溝造成工事(1):改良費
∴土地の形質を変更し改良する工事である
(b)土留め工事(2)、境界等整備、土壌汚染調査:必要経費に算入
∴土地の改良及び価額を増加させる工事ではない
(c)乗入側溝改修工事(3):繰延資産に該当し、償却費を必要経費に算入
∴工事を行うことにより請求人が借地権設定契約に基づき賃料を得られる(便益を受けられる)ようになり、その効果が支出以後1年以上に及ぶ
⇒原処分庁の請求人に対する更正処分等の一部を取り消し

(1)掘削、埋め戻し、整地
(2)隣接地との境界ブロックの撤去及び積み直し
(3)上地に接する県道の歩道部分の切り下げ、復旧


7.馬券を多数購入も経済活動の実態を有さず

■東京地裁事例
・毎週かつ大量に馬券を購入(15002000回、3年間で約2.6)
・開催日のほぼすべてで馬券を的中させ払戻金を獲得。年単位の収支は赤字。
・納税者は経済活動であるとし「雑所得」を主張も、馬券の購入行為が一般的な購入行為と質的に変わりはないため、「一時所得」として、外れ馬券は必要経費に該当しないと判決が下された。

■上記事例の控訴審
・納税者の主張
⇒営利目的とする継続的行為(=雑所得)にあたるか否かの判断は、馬券購入行為の「期間・回数・頻度」を最も重要な考慮要素とすべきと主張

・高裁の判決
馬券購入行為の「期間・回数・頻度」とその他の事情との間に優劣はない。一部を考慮して判断するのではなく、総合的に判断することが妥当。
⇒地裁判決を全面的に支持し、納税者の控訴を棄却した。


8.リスク分担型企業年金、IFRSと同様

【リスク分担型企業年金】
・確定給付型(DB)と、確定拠出型(DC)の中間の制度
・企業は固定の拠出額に加えて、将来の運用難対策資金(リスク対応掛金)を拠出する
・リスク対応掛金の範囲を超えて積立金が目減りした場合は、従業員の手取りが減る
⇒企業は拠出が増える代わりに、将来のリスクを限定できる

【会計処理上の扱い】
・企業の拠出義務の範囲により判定
・拠出義務が完全に限定的であれば、DCと同様の処理
・限定されずに拠出義務を追っている場合は、DBと同様の処理
IFRSでも取扱いは同様


9.登記申請:株主リスト添付の留意点

■概要
28101日以降、登記事項につき株主総会の決議を要する場合には、議決権数の上位10名(または議決割合が2/3に達するまで)の株主を記載した「株主リスト」の添付が必要となる。
 
■主な留意点(QA
(1)保有議決権数が10位の株主が複数いる場合⇒10位の株主すべての記載をする
(2)株主総会に出席しなかった株主も記載するか⇒記載する
(3)株主リストを「別表2」で代用することは可能か⇒不可
(4)101日前に総会決議をし、当期がそれ以後になる場合も添付が必要か⇒必要
(5)株主Aが死亡したが株主総会時点で相続人が誰か分からない場合は誰を記載するか⇒株主A


10.【所得税】未承認薬と医療費控除

従来は混合診療の場合、保険診療分を含む全体に健康保険は適用されなかった。
H28.4.1以降は混合診療の場合にも保険診療部分に保険適用を受け易くなった。
これにより混合診療が増加すると考えられる。

混合診療の場合、医療費控除の適用上注意が必要となる。
()未承認薬を使用する混合診療を受けた場合、
 診察分  :医療費控除可能
 未承認薬分:医療費控除の対象外


11.子会社投資に係る税効果

・連結BS上の子会社投資簿価>個別BS上の投資簿価
 ⇒一時差異となる。
 ⇒投資後の子会社の留保利益、為替換算調整勘定等が内容
・「親会社により投資売却の意思決定がなされた場合」等に繰延税金負債を計上する
・連結と個別とで差異あり
連結税効果指針
・「投資売却を親会社自身で決定でき、予測期間に売却意思なし」の場合には繰延税金負債を計上しない
個別税効果指針
・「支払いが見込まれない場合」等を除き一律で繰延税金負債を認識する、と規程されている
⇒個別を連結に合わせる提案あり。


12.事業再生の現実 4/4

事業再生スキーム濫用(詐害)のリスク

1.事業再生スキームが濫用とみなされ、訴訟などを受ける状況となってしまう要因
・債権者に対し、事業再生スキームを行うことについて、事前説明等を実施し、理解してもらう手続きをしていない。
・債権者に仁義を通していない。

2.濫用防止のための法律上の手当
(1)モデルケース(第二会社方式)
・新会社を設立し、旧会社の事業資産と事業負債を新会社に移す。
⇒移された資産と負債の差額を対価として、旧会社に支払う。
⇒旧会社は清算し、新会社で事業再生を図るスキーム

(2)法律上の手当
・法人格否認の法理
⇒旧会社と新会社とに支配関係+債務を免れる等の不当な目的
⇒新会社と旧会社は同一の会社とみなす。
⇒旧会社の債権者は保有する債権の全額を新会社にも請求できる。

・履行請求
⇒旧会社の残存債権者を害することを知っており、悪意があったなどが要件
⇒新会社に移された資産の総額を限度とし、旧会社の債権者は新会社に請求ができる。

・詐害行為取消権
⇒旧会社の残存債権者を害することを知っており、悪意があったなどが要件
⇒旧会社の債権者は、裁判所に対し、新会社へ旧会社から事業資産を移す取引を取り消すよう請求できる。
⇒新会社は旧会社に、移された資産全て又は相当額を旧会社に返還しなければならない。
⇒旧会社の債権者からすると、弁済原資が増える。


13.関係会社の管理方法

1.関係会社管理の必要性
業績不振の関係会社がある場合、上場審査上は合理的な再建計画がない限り精算等をする必要が出てくる。
関係会社の経営成績や財政状態の状況などをタイムリーに把握し、適切な指導・改善ができるような管理体制を確立することが必要である。

2.関係会社管理の具体的方法
1)関係会社管理部署の明確化
特定の部署にて一元的に管理する方法がある。ただし他の各部署のサポートを受けていく必要はあり。
関係会社の重要性の度合いに応じて決定。
申請会社の内部監査の対象に関係会社を含めることも重要。

2)関係会社管理規程の作成
規程には、関係会社の範囲、管理責任者の権限と責任の範囲、申請会社の承認事項および申請会社への報告事項等を定める。

月次ごとに報告書を入手し、適切にフォローできる体制を確立する必要がある。









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