2016年11月5日土曜日

11/4 勉強会:CFC税制改正の行方 他

1.外国子会社配当金益金不算入制度

・日本の親法人が外国の子会社から受け取る配当の95%を益金不算入とする制度
・持株割合25%以上、保有期間6か月以上のものに適用される
・外国子会社にて損金になる配当は適用対象外
⇒オーストラリア:優先株式の配当、ブラジルなど
⇒国際的二重非課税を防止するため


2.中小会計指針案、資産除去債務は不要

「中小企業の会計に関する指針」の改正案が公表
検討中であった資産除去債務に関連し以下が追加された。

敷金は取得原価で計上する。
ただし、
返還されない部分⇒税法上の繰延資産に該当し、賃借期間で償却
返還される部分⇒原状回復義務の履行で回収が見込まれない部分は費用計上


3.任意の指名・報酬委員会の存在意義

■近年、取締役等の人事や報酬などを議論する”任意”の指名・報酬委員会を設置する企業が急増
・コーポレートガバナンス・コードにおいて、独立社外取締役を活用した任意の指名・報酬委員会の設置について言及していることが背景
・取締役会の下部機関として、適切な関与・助言により客観性と透明性を確保することが目的

■任意の指名・報酬委員会とは?
・会社法の指名委員会等設置会社とは異なる
・委員を開示する義務はなく、委員会が答申した事項に対する法的拘束力もない
※ちなみに法定の設置機関である指名委員会と報酬委員会の決定は、取締役会でも覆せない

■法的拘束力がなく、委員の開示義務もないのに公正性や客観性および透明性を確保できるのか?
・少なくとも、委員を開示し、その審議の過程を一定の基準を設けて透明化する必要がある
・任意の機関であるだけに、会社の実情に応じて役割はさまざまであり、創意工夫が必要


4.タワマンの固定資産課税を見直しへ

自民党税制調査会が平成29年度税制改正の主な検討課題を確認
そのうちの1つが、タワーマンションの固定資産税課税の見直し

・現状:タワーマンションの固定資産税は、低層階も高層階も同じ
・改正案:固定資産税を高層階は高く、低層階は低くする

ちなみに、土地と建物に対する固定資産税評価額の次の評価替えは平成30年度


5.クレカのショッピング枠の現金化に係る消費税の取扱い

消費者が利用するクレジットカードのショッピング枠を利用した現金化が、実際に現金化した際に消費税が課せられるか争われた事例

■現金化の方法
(1)商品を購入時に現金を渡すキャッシュバック方法
(2)購入した商品を転売し現金を渡す買取屋方式

今回消費税が課せられるかどうかで争われたのは(1)の方法

■争点
現金化するという行為が「金銭の貸付」に該当するかどうか

■判旨
金銭の貸付けの定義は消費税法上にない。
民法で判断すると、(1)金銭の授受(2)返還の合意を要件とする。
今回のケースは(2)の返還の合意が認められず、役務の提供に該当すると判断された(=課税取引)


6.会計方針の変更(出荷基準から検収基準への変更)

■過年度遡及会計基準の適用と申告調整について
会計方針の変更をした場合、会計上、遡及適用する
⇒会計上の利益剰余金期首残高をそのまま別表五()に反映した場合、前期の期末利益積立金額と当期の期首利益積立金額が不一致
⇒当期の期首利益積立金額を組替表示して申告調整

(設例)
・売上の計上基準を当期より出荷基準から検収基準へ変更
・前期、出荷済み+未検収の商品あり(利益10含む)

()                   
利益積立金額       前期末   当期首 
売掛金(過年度遡及)             10
繰越損益金          350       340 
差引合計額          350     350

(会社処理)
なし

(税務処理)
売上利益認容10/売掛金(過年度遡及)10

(修正処理)
売上利益認容10/売掛金(過年度遡及)10

(別表調整)
別表四    減算(留保) 売上利益認容10
別表五()Ⅰ 減算    売掛金(過年度遡及)10


7.富裕層PTは平成297月から全国展開

国税庁が富裕層に対する取組みを重点課題とした、重点管理富裕層プロジェクトチームを発足。

・東京、大阪、名古屋等の国税局に設置済み。
H297月以降、全国の国税局等にプロジェクトチームを拡大。
・富裕層でも多額の資産を保有している納税者を重点管理富裕層とし、関係者や関連法人を管理対象グループとして一体に管理、情報収集分析する。

既に導入されている国外財産調書や財産債務調書をもとに、未提出者に対し、「お尋ね」を送付するなどの対応を行う予定。


8.CFC税制改正の行方

29年度税制改正で、CFC税制(外国子会社合算税制)に関する租税回避スキームの封じ込め強化と、企業要望を反映した改正が同時に行われる可能性あり

(1)出資持分を保有せずにSPCを実質的支配でCFC税制の適用を回避するスキーム封じ込め
・日本企業が、ブローカーを介して租税回避地にSPCを設立
・日本企業はSPCと資本関係をもたず、その代わり、ブローカー(SPCの出資持分を保有)との間で、日本企業が実質的にSPC事業をコントロールする旨の契約を締結
・現在は、日本企業⇔SPCの資本関係がないため、CFC税制の適用対象外

⇒改正で、実質的に支配している場合は、資本関係なくてもCFC税制の適用対象へ

(2)航空機リースがCFC税制の適用除外へ
・航空機リースは、CFC税制の適用対象とされていた
※航空機リース事業は、国内ではなくあえて租税回避地の子会社を通じて行う合理性が希薄なため

⇒大手商社や銀行グループが、実態を持って海外で航空機リース事業を展開するケースが多くなり、CFC税制の適用対象か否かは実質により判断する方向へ


9.税務の動向:タワーマンションの固定資産税

■現状
タワーマンションは上層階ほど市場価格が高騰するが、固定資産税は部屋の面積が同じであれば同額。
⇒一棟の固定資産税評価額を基に各戸の専有面積に応じ按分して算出するため

■改正案(検討中)
・高層階,中層階,低層階ごとに実際の取引価格を踏まえて固定資産税額の按分をする
H30年以後建築のものを対象とする
20階以上の建物を想定

■相続税評価額(タワマン節税)への影響
今回の改正案は「固定資産税の負担額」の補正のみを想定
相続税評価額の改正には言及していないため影響はない模様


10.簡易課税制度選択不適用届出書提出失念による過大納付

■概要
・平成22年度に簡易課税制度選択届出書を提出
・その後、基準期間の課税売上高が5,000万を超えたため原則課税適用が続く (選択の効果は継続)
H26年度、クライアントが太陽光発電事業をすることとなり、税理士にも事業計画を説明
H27年度に太陽光発電設備を取得
・確定申告により税額控除を受けようとしたが、簡易課税選択の効果が生きていたため税額控除を受けられなかった(基準期間の課税売上は5,000万以下だった)
⇒消費税の過大納付となり税理士が訴えられた。

■解説
税理士はH26年度において「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出すべきであったにもかかわらず、その提出をしなかった(原則課税が続いていたため簡易課税を選択していたことを忘れていた)。
基準期間における課税売上高が5,000万以下であったため簡易課税が強制適用され、還付を受けることができず過大納付となった。


11.ストックオプションの税効果

・付与した会社側は、法人税法上、個人の所得税に対応して給与所得とすべき場合にのみ損金算入が認められる
・税制適格の場合、永久差異となり税効果の対象外。
・税制非適格の場合、税効果の対象。

税制非適格ストックオプション
・権利行使時点で「給与所得として課税⇒発行企業で損金OK
⇒付与時点で一時差異が生じる
DTAを計上

税制適格ストックオプション
・付与時、権利行使時に給与課税は非課税(譲渡時のみ譲渡益課税)。
・発行会社側でSO費用が損金にならない
⇒税効果の対象にならない


12.BEPS 最終報告書

・軽課税国に、実質的な経済活動を行わない、「キャッシュボックス」と呼ばれる事業体を作り、所得を蓄積する課税逃れを防止するためのフレームワークを検討。
・「リスクの負担」「無形資産の保有」「資金の提供」の3つの論点について、事業体に所得が移転することが合理的とされるための要件について論じている。
・要件を一言で言うと、「独立企業間で同じような取引が成立するかどうか」。


13.上場廃止基準(1部、2部市場)

1.主に以下に抵触すると上場廃止となる。
・株主数⇒400人未満
・流通株式数⇒2,000単位未満
・流通株式時価総額⇒5億円未満
・流通株式比率⇒5%未満
・時価総額⇒10億円未満となった場合で、9か月以内に10億円以上にならないとき
・債務超過⇒1年以内に解消すればOK
・有報等の提出遅延⇒法定提出期限の経過後1か月以内に提出しない場合
・虚偽記載又は不適正意見
・その他⇒銀行取引の停止、破産手続 ・再生手続・更生手続、完全子会社化など

2.上場廃止銘柄の例(11月)
・ノバレーゼ⇒株式等売渡請求(※)による取得
・アキュセラ・インク⇒アキュセラ・ノースアメリカ・インク(非上場)に合併
・クスリのアオキ⇒クスリのアオキホールディングスの完全子会社化
・日本合成化学工業⇒株式等売渡請求による取得
・シーエスロジネット⇒株式等売渡請求による取得
・モジュレ⇒有価証券報告書提出遅延
・サハダイヤモンド⇒株価が所要額未満

(※)株式等売渡請求

対象会社の総株主の議決権の90%以上を有する株主(特別支配株主)が、対象会社の承認を受けた上で、他の株主(少数株主)等が有する対象会社の株式等の全部を強制的に取得できる権利









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