2017年1月28日土曜日

1/27 勉強会:平成29年度税制改正について 他

1.平成29年度税制改正について①

■所得拡大税制(法人税)
・大企業は要件が一部変更
 改正前:平均給与等支給額が前事業年度を上回ること
 改正後:平均給与等支給額が前事業年度より2%以上増加すること
・中小企業は要件の変更なし
 ただし、平均給与等の支給額が前事業年度より2%以上増加した場合は控除額が大きく拡充
 10%+12%=22%を控除(10%は通常分、12%は上乗せ分)

■中小企業税制(法人税)
・中小企業のうち大企業なみに売上、利益がある企業については、中小企業向けの租税特別措置法の適用を停止する
 前3事業年度の所得金額の平均が年15億円を超えるとき

■仮装通貨の消費税非課税化(消費税)
・仮想通貨の取引について消費税を非課税とすることとした

■積立NISAの創設(金融)
・中長期にわたる投資を支援するため創設
・対象商品は投資信託に限定、投資方法は契約に基づき定期かつ継続的な方法による買い付け
・現行NISAとは選択適用

■タワーマンションにかかる課税の見直し
・高層階と低層階に実勢価格に差がある実態があるなか、固定資産税、不動産取得税の負担は平等
 ⇒高層階になるにつれ固定資産税等の負担が大きくなるように見直す
・平成30年度から新たに課税されることとなる新築のタワーマンションについて適用される


2.平成29年度税制改正について②

■配偶者控除制度の見直し
・配偶者の収入の上限103万円⇒150万円
・納税者本人の所得制限1,120万円から逓減し、1,220万円で消失

■株主総会時期の見直し
・株主総会の集中を緩和させるため、法人税等の申告期限の延長可能月数を拡大
・会計監査人設置会社において、定款の定めにより決算日より3ヶ月を越えて株主総会期日を設定
⇒決算日から最大6ヶ月まで延長可能(※株主総会開催月まで)


3.財産評価を巡る災害に関する判決事例

地盤の液状化、雑損控除は適用できる?
⇒事例ではできないと判断されている。

■雑損失控除
・生活に必要な資産が災害等により損失を被った場合に、その損失による担税力の低下を課税上、考慮しようという趣旨のもの。
・損失の有無は、資産の物理的被害の有無によって判断。
■今回の請求人は
災害後の宅地に係る固定資産税評価額の下落額を雑損控除の対象としたかった。
■審判所の判断
生活に通常必要な資産の毀損と認められるものではないため、雑損失控除の規定を適用することはできない。


4.小規模住宅用地特例の適用ミスで都敗訴

■概要
・相続により納税者が土地を取得
・建物を建て、法人へ賃貸 ※介護付き有料老人ホームとして使用

・都税事務所は小規模宅地の特例を適用せずに、固定資産税評価
⇒納税者が平成17年~平成26年まで固定資産税等を過大に納付

・都税事務所は平成22年~平成26年度分の過納付額966万円を還付
⇒平成21年度以前分は還付を拒否
⇒訴訟へ

■判決
・固定資産税等の過大な賦課徴収行為は違法であると判断
・一方で、納税者が住宅用宅地の申告を怠っていた過失もあったと指摘
⇒過納付額のうち2割を過失相殺し、8割を都税へ損害賠償を命じた


5.マイナス金利で実務対応報告を策定へ

企業会計基準委員会は3月期決算に向け、マイナス金利における退職給付債務等の計算の割引率に関する実務対応報告を策定へ

割引率を「マイナスの利回り」又は「ゼロ」として適用することも可

実務対応報告の適用は、平成293月期から1年間に限定される方向
今後、金利動向等を踏まえて恒久的な取扱いを設けるか検討


6.二次・三次再編の税制適格要件を見直し

H29年度税制改正で組織再編税制の大幅な見直しがあり、税制適格要件の緩和がキーワードとなる。
■二次再編
・主要な資産負債の移転を適格要件から除外
・移転事業の従業員の80%が移転先に残れば適格要件に該当
・株式交換完全親会社の100%保有関係の継続が、直接保有から間接保有でも適格要件に該当
■三次再編
・三次再編が適格合併である場合は、主要事業が三次再編に係る合併法人で継続していれば要件に該当。

<遺産分割の効力とは>
■遺産分割とは
被相続人が遺書を残さず死亡した場合に、相続人全員の共有財産となったものを、各相続人間の協議により分配すること。
■遺産分割の効力(民法909)
・相続開始時まで遡って効力が発生する。
・ただし第三者の権利を害することはできない。つまり相続開始時は相続財産が共有状態であるが、分割後は所有権を単独、かつ、相続開始時から相続していた扱いとなる。ただしその単独で所有していた所有権に、相続人とは関係のない第三者がからんでいる場合は、第三者の権利は保護される。


7.固定資産の取得後に国庫補助金等を分割して受けた場合の圧縮記帳の取扱い及び国庫補助金等の範囲について

【事前照会事例】
・国&県から取得資金支援が受けられる物流施設を取得
・国からは、補助金が交付決定通知後「5年間」で分割してもらえる
・県からは、「助成金」が一括でもらえる

⇒国庫補助金等の圧縮記帳を適用できるか?

⇒「5年間」の分割収入であっても、交付決定通知を受けた事業年度において一括して圧縮記帳が可能
(通知を受けた時点で、収入すべき権利が確定するため)
⇒「助成金」の名称であっても、圧縮記帳を適用できる
(交付目的が制度趣旨に合っていれば名称は関係ない)


8.株式交付信託と役員給与

■株式交付信託とは
会社が役員等に対して信託を利用して自社株式を交付する仕組み

■株式交付信託の種類
(1)在任時交付型株式交付信託:在任時に株式を交付する
(2)退任時交付型株式交付信託:退任時に株式を交付する

29年改正前後の役員給与に関する取扱い
(1)在任時交付型
改正前:定期同額給与・事前確定届出給与・利益連動給与のいずれにも該当しない⇒損金不算入
改正後:利益連動給与に該当する⇒損金算入可

(2)退任時交付型
改正前:役員退職給与として損金算入可
改正後:利益連動給与としての損金算入要件を満たす場合に限り(退職給与として)損金算入可

■施行
(1)在任時交付型→2941日以後の決議分より
(2)退任時交付型→29101日以後の決議分より


9.東京地裁 収用等の5,000万円特別控除特例の適用可否を巡り国側勝訴

■収用等の5,000万円特別控除の特例
 ”最初に”買取り等の申出があった日から6か月で土地建物を売却等の要件(買取り等の申出証明書が必要)

■事案
 S市は収用の対象資産Aの所有者Bに買取の申し出⇒S市は新たな価格を提示して買取りの申出⇒Bは申し出に応じなかった
 ⇒収用等裁決⇒S市はBの口座に補償金を送金⇒Bは収用代替特例で確定申告
 ⇒修正申告で収用等の5,000万円特別控除特例⇒認められず

■論点
 1.最初に買取り等の申出があった日はいつか(買取価格変更ありのため)
 2.修正申告書に買取り等の申出証明書等を添付していなくても収用等の5,000万円特別控除は適用できるのか否か

■結論
 1.買取価格変更ありでも、収用等裁決があっても、当初の申し出が最初に該当する
 2.申出証明書が必須


10.クロスボーダーM&Aの苦労話

・時差の問題が大きい
 ⇒UKの案件に関与した場合、夕方から深夜にかけてやり取りが増える
 ⇒欧州、西海岸と複数ある場合は担当者を変えないと寝る時間が無くなる
・現地カレンダー
 スケジュールを立てる上で、現地のスケジュールを把握することが肝要。
 欧州の夏休み、米国のクリスマス、イスラム圏のラマダン、中国の春節休暇等。
 ⇒これらの期間に対応してもらうのは至難の業。
・クロスボーダー案件では高値づかみも多い(成長国オークション)。
・早期に減損するケースや早期撤退も多い。


11.スキャナ保存制度の留意点

1.スキャナ保存制度改正の概要
⇒ハンディスキャナの利用が可能になるなど、スキャナ保存の要件が緩和
2.適用するための要件
⇒事務処理体制の整備等
・相互けん制
※事務に係る職責を分け、相互にけん制できる体制の構築
・定期的チェック
※最低、1年に一度は運用状況を確認しているか。
・再発防止策
※問題が生じた場合には、即座に経営者等に報告され、改善策を取っているか。


12.将来キャッシュ・フローの見積期間

・将来キャッシュ・フローの見積期間=主要な資産の残存使用年数を基礎として決定
・経済的残存耐用年数と税務上の残存耐用年数に著しい差異がない限り、税務上の耐用年数を使用可能
・主要な資産=将来キャッシュ・フロー精製能力にもっとも重要な構成資産かどうかが判断基準(残高に占める帳簿価額の割合で安易に決定しないこと)
・仮に将来キャッシュ・フローに一番寄与するものであっても償却済みの資産は主要な資産とならない
・主要な資産の大規模修繕等が計画されている場合は将来キャッシュ・フロー見積もりに織り込む
・大規模修繕により残存耐用年数が延長する場合は、延長後の残存期間を見積期間とする


13.期ズレ子会社の決算日後の減損損失は連結計上?

子会社の決算日後、連結決算日までに子会社で計上された減損損失を連結計上すべきか?
⇒修正後発事象の場合は連結計上する。関連会社の場合も考え方は同様。


14.執行役員制度について

■執行役員の定義
会社法上の概念ではない事から、各社の考え方によりそれぞれ定義がある。一般的には、上級使用人(上級管理職)と解され、目的による要素を勘案して定義が可能
→目的として、監督と執行の分離、上級使用人の処遇施策
■執行役員と会社の関係
自由度が高いゆえに、権限や義務は契約で定める必要がある
(1)雇用契約→使用人であることが前提+労働法の適用
(2)委任契約→取締役に近い
(3)混合契約→雇用契約の性質と委任契約の性質を包含、執行役員制度を創設する契約を締結


15.減損会計:使用価値に使用する割引率について

■減損会計(概要)
固定資産の収益性が低下して当初の投資の回収ができない場合回収可能価額※まで帳簿価額を減額し、減額分を減損損失計上
※回収可能価額:以下のうち金額が大きい方
・正味売却価額(資産を今処分した場合の価値)
・使用価値(資産を使用継続した場合の価値)⇒将来CFの割引現在価値、本論はここでの割引率について

■論点(1)~どのようなリスクを考慮して決定するか~:4方法
⇒貨幣の時間価値+将来CFが見積値から乖離するリスクを反映する必要
・企業に固有のリスクを反映した割引率
WACC
・合理的な市場平均収益率
・当該資産・資産グループのみを裏付けとして資金調達を行った場合の利率
※リスクの組み込み方法
将来CFと割引率のいずれかに反映する必要があるが、実務上、後者の方法が多い

■論点(2)~いつ時点の割引率か~
・減損損失の認識時点
⇒現在から将来に渡る回収可能性を反映させる必要

■論点(3)~税引前か後の割引率のどちらか~
・税引前
⇒割引く将来CFが税引前(法人税等の支払/還付は資産の使用から直接的に発生しないため考慮しない)

■論点(4)~子会社で採用した割引率の連結上の取扱い~
・連結の観点で資産グループを見直さない限り(資産の収益性が異なる可能性)、基本的に見直さない
・親会社の資本コストを用いる場合は簡便的にOK、明らかに不合理でない限り


16.粉飾法人で黒字申告していた場合

 ⇒ 修正経理を行い、更正の請求を行うことが出来る。ただし過去5年分まで。
 ⇒ 減額更正によって生じた過大申告に伴う法人税額は、すぐには還付されない。
 ⇒ 翌年以降5年間の納付すべき法人税額から控除。控除しきれない場合還付される。


17.情報システム整備

1)情報システム整備の時期
・上場審査では、内部管理体制について、1年以上の運用実績を要求
・大規模なシステム導入や見直しなどは、時間がかかるため、早期に着手する必要あり

2)情報システムの整備範囲
・どの範囲のシステムの見直しを行うか検討、目的に合致するように要件定義を明確化
Ex.販売部門)
売上計上、売掛金回収などの記録計算にとどまらず、得意先別、地域別、製品別等の経営陣のマネジメントに必要な資料を分析報告できるようシステム設計

3)内部統制報告制度
IT評価は不可欠な要素
1.全社的な内部統制に関する評価項目の1つとして
ITに関する適切な戦略、計画等の策定
IT環境に対する方針の設定
など、ITに対する適切な対応を図っているか評価

2.評価対象となったIT業務処理プロセス(例:販売管理)に係るIT基盤に係る全般統制として
・システムの開発、保守
・システムの運用・管理
・アクセス管理
などに関する整備・運用状況について評価

3.評価対象となった業務処理プロセスに係るIT業務処理統制として
・入力情報の完全性や正確性の確保
・エラーデータの修正と再処理の機能の確保
・マスタ・データの正確性の確保
などに関する整備・運用状況について評価

2.のIT全般統制は、3.の評価対象となったIT業務処理統制に対するIT基盤に対して実施
IT全般統制は、IT業務処理統制が有効に機能するための前提であり、両者が一体となって機能することが重要

IT全般統制に不備がある場合、虚偽記載に直接的に結びつくわけではない。しかし、IT業務処理統制が有効に機能しない可能性あり、そのため、虚偽記載のリスクが高まる

その場合には、不備を解消するようなIT全般統制の整備を図る、もしくは、IT業務処理統制に代替する業務処理統制(手統制など)の構築を図る必要あり

・当制度に関する留意点
1.制度が従業員に周知されていること
2.通報を受け付ける部署または外部機関が適切であること
3.通報があった場合には、放置せずに対応がなされていること
4.通報者が公益通報者保護規程(※)等に基づき保護されていること


(※)通報を理由とする解雇の無効や不利益な取り扱いの禁止などを規程









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