2017年3月17日金曜日

3/17 勉強会:短信・有報の記載内容見直しのポイント 他

1.類似業種比準方式、会社規模要件で大幅見直し

■国税庁は「財産評価基本通達」の一部改正(案)に対する意見公募手続きを開始 (3/30まで募集)
・取引相場のない株式の評価(類似業種比準方式)の見直し
⇒平均で約1割程度、中小企業の株式の評価が下がる見込み
⇒平成2911日以後に相続、遺贈または贈与により取得した財産の評価に適用

■主な改正内容
・類似業種の株価について「課税時期以前2年間平均」が追加
⇒従来は「課税時期の属する月以前3か月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いもの」または「類似業種の前年平均株価」だった。
・比準要素(B:配当、C:利益、D:簿価純資産)について、単体数値から連結数値へ見直し
・比準要素のウェイトを「1:3:1」から「1:1:1」に見直し
・規模区分の金額等の基準を見直し、大会社及び中会社の適用範囲拡大
⇒従業員数70人以上=大会社へ、大会社の卸売業の年間取引額を「30億円以上」に引き下げ
⇒中会社の区分も総資産価額や年間の取引価額を軒並み引き下げ


2.有償新株予約権の会計処理()案が判明

※従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い (実務対応報告)

■有償新株予約権(有償SO
・上場企業だけでも約300社が導入

■実務対応報告の適用日
・公表日以降(経過措置あり)

■経過装置
公表日より前に有償SOを付与した取引については、(1)(2)を注記することにより、従来の会計処理継続可
(1)権利確定条件付き有償SOの概要
・各会計期間において存在した権利確定条件付き有償SOの内容
・規模(付与数等)
・変動状況(行使数や失効数等)
(2)採用している会計処理の概要


3.認定医療法人の贈与税非課税、新たな認定制度は10月に施行

■医療法人(おさらい)
・「持分あり医療法人」は18年改正により新設することができなくなった
・「持分あり医療法人」から「出資持分のない医療法人」へ移行を促すため、移行期間中に持分を法規すれば相続税・贈与税が免除される施策が取られている

※医療法人は株式会社のように利益の分配(≒配当)が出来ないため、純資産が膨れ上がってしまう傾向があり、持分があると過大な相続税・贈与税がかかるなどの問題点がある

■平成29年度改正
・相続税・贈与税が免除されるためには一定の要件を満たす必要があるが、その要件が29年度改正で更に緩和されることとなる

(緩和内容)
・役員の親族が役員総数の1/3以下
・法人関係者に利益提供をしない 等


4.フェア・ディスクロージャー・ルール、上場企業が悩む重要な情報の対象とは?

■今月(173)上旬に金融商品取引法の一部を改正する法案が閣議決定
⇒フェア・ディスクロージャー・ルールの導入へ

■フェア・ディスクロージャー・ルール
⇒上場会社等が未公表の重要な情報をその業務に関して(例えば、IR活動において)意図的に証券会社・投資家等に伝達する場合は同時に行い、意図することなく、証券会社・投資家等に伝達してしまった場合は、その後、速やかに当該情報をホームページ等で公表するよう、求めるルール

■重要な情報の範囲
・現行のインサイダー取引規制の対象となっている情報の他、
・現行の規制対象となっていないが、公表前の確定的な決算数値であり、かつ、株価に重要な影響を及ぼすものも含む


5.取得費加算特例で廃止通達の適用可

■取得費加算特例とは(譲渡所得)
相続により取得した土地や建物等を一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を取得費に加算することができる特例

H26年度税制
2以上の譲渡(短期譲渡及び長期譲渡)があった場合、税率が高い短期譲渡所得から取得費の加算を認める規定が廃止になった。
この通達はH2711日以後に開始した相続等に係る資産の譲渡につき適用。

■ではH261231以前に相続があった資産の譲渡については?
通達では廃止されているものの適用可能。


6.処分理由不提示でも地方税法に違反せず

■事案
・東京都が納税者に対し、第二次納税義務の納付通知処分を実施
・第二次納税義務が発生したのは、地方税法第11条の8が適用されるため
・通知書には、義務を負うことになった具体的な事実関係となる課税理由の明記なし
⇒行政手続法141項に違反するか否かをめぐって裁判

■判決
・納税者側の敗訴
⇒行政手続法33項により違法ではない

■根拠法令
行政手続法141項:行政庁が行う不利益処分には理由の提示が必要
国税通則法141項:国税に関する不利益処分には理由の提示が必要
行政手続法33項 :地方公共団体がする処分は同法141項を適用しない旨を規定


7.欠損金の繰越控除と新設法人

■新設法人の特例
設立の日から7年を経過する日までの期間内に属する事業年度は欠損金の全額が控除可能

ただし、
・資本金5億円以上の大法人の100%子会社
7年以内に上場した場合の上場以後
については所得金額の50%~65%の控除制限あり

この規定は資本金基準がないため、たとえば資本金10億円で設立された場合であっても資本金5億円以上の大法人の100%子会社でなければ適用可能となる


8.債務免除益の源泉義務巡る差戻し審で判決

■事案
組合⇒理事長へ48億貸付⇒貸付を免除

■争点
1.本件債務免除益が給与等に該当するか
2.給与等に該当する場合、収入金額に算入すべきか
⇒債務者が資力喪失し債務弁済が著しく困難、債務免除益を収入金額等に算入しない通達を適用すべきか

■結論
理事長の資産額(17)から本件債務以外の債務の額(52-48=4)を控除した額=13億は、債務免除益として経済的利益に該当し、給与等の金額に算入
⇒源泉税(4.8) +不納付加算税(4.8千万)

■裁判所の判断内容
本件債務免除益は雇用契約に類する原因に基づき提供した役務対価、功労への報償等の観点も考慮した給付とみるのが相当。
⇒本件債務免除益は給与等に該当する。

なお、2.の 資力喪失については最高裁で判断しておらず、審理のため高裁に差戻している。


9.スクィーズアウト

・少数株主から強制的に株式を取得し、完全子会社化すること
・手法として、株式交換、全部株式取得条項付種類株式、株式併合、株式等売渡請求などを用いたものがある。
・平成29年度税制改正法案では、これらの手法について、一律に適格要件が設けられ制度間の不均衡を調整することが盛り込まれている。
 ※株式交換では時価評価課税が行われることがネックであったが、改正後は適格要件を満たせば課税繰り延べとなる。
・一番メリットがあると言われている手法
90%以上保有:株式等売渡請求
 株主総会の特別決議が不要。時間的・手続的コストが小さく、端株の端数処理も不要
90%未満保有:株式併合
 株主総会の特別決議は必要だが、他の方法に比べて手続面でのメリットあり


10.減価償却方法の変更に係る実務上のポイント

1.税法の改正
H28.4.1以降取得の建物附属設備、構築物に関しては定額法のみに変更

2.会計方針の変更
・従来より税法基準+附属設備等の償却方法を定率法から定額法へ変更
⇒会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当
・上記以外
⇒正当な理由に基づき、自発的に行う会計方針の変更に該当

3.開示
・会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当
⇒会計基準等の改正を理由に変更した旨を注記
・正当な理由に基づき、自発的に行う会計方針の変更に該当
⇒会計上の見積の変更と区別することが困難な場合として、変更内容、理由、影響額等を注記


11.翌期に合併等が行われる場合の会計処理のポイント

■繰延税金資産の回収可能性
・消滅会社の繰越欠損金に係る税効果に留意

■固定資産の減損
・消滅会社:合併等が行われない前提で減損判定を行う

■退職給付
・取得の場合
⇒被取得企業の未認識項目は取得企業に引き継がれない
・共通支配下の取引
⇒未認識項目も引き継がれる


12.短信・有報の記載内容見直しのポイント

ディスクロージャーワーキング・グループ報告における提言を受け、有報及び短信の記載内容が見直された。

■短信
適用時期:平成29331日以後に終了する事業年度もしくは四半期累計期間
・短信のサマリー情報について、上場会社に課している使用義務を撤廃
・短信のサマリー情報及び経営成績等の概況の先行開示が認められた
・短信の添付資料の記載事項から「経営方針」が削除(有報へ移動)
・短信の添付資料の「経営成績・財政状態に関する分析」が、「当期の経営成績・財政状態の概況」に簡素化

■有報
適用時期:平成29331日以後に終了する事業年度に係る有報から
・有報の記載内容に「経営方針」が追加


13.リストリクテッド・ストック

■概要
・役員等に勤務条件や業績条件の成就により譲渡制限が解除される譲渡制限株を付与
・条件未達の場合は会社が無償取得
→リテンション効果(引き留め)、中長期の株価向上に対するインセンティブの付与
■会計処理
(1)報酬債権付与および発行時
→報酬債権を付与し、これを現物出資で受け入れ、前払費用として計上
Dr 前払費用 / Cr 資本金・準備金

(2)役務提供期間
→役務提供期間で費用計上
Dr 株式報酬費用 / Cr 前払費用
Dr DTA       / Cr 法調

(3)無償取得
→条件未達
Dr 損失 / Cr 前払費用


14.子会社株式の認識・賞与減額QA

■期末を跨ぐ子会社株式の売買時の発生・消滅の認識時点
①子会社株式でない上場株式:(原則)約定日、(例外)修正受渡日
②子会社株式でない非上場株式、事業投資の子会社株式:受渡日

・約定日基準の前提:約定~受渡が、市場の規則・慣行に従った期間
⇒非上場株式には、規則・慣行なし
⇒事業投資:自益権・共益権がいつ生じるか⇒株式の受渡日がいつか

■賞与を一方的に減額できるか
①具体的な規定がない場合
(原則)可能⇒労働者が請求権を得るには使用者の決定or労使合意が必要
(例外)長年に渡って一定額を支給することが常態化⇒労働者に請求権有の可能性大

②就業規則に具体的な規定がある場合
※就業規則:使用者が作成する規則
if「基本給の1ヶ月分を支給する」⇒減額NG
論点1:個々の労働者との交渉すれば?⇒減額NG(就業規則に達しない部分は無効)
論点2:就業規則を変更すれば?⇒減額OKただし周知+変更の合理性必要(著しい業績悪化等はOK)

③労働協約に具体的な規定がある場合
※労働協約:労使間で決定する協定
⇒②と同様の取扱い


15.回収可能性適用指針が本適用に<税効果会計・法人税等会計基準案のポイント>

平成2841日以後開始する事業年度に影響を与える税金関連の指針等として、以下の3つが公表等されている。

■回収可能性適用指針
■消費税増税延期に伴う税制上の措置(地方法人課税に係る措置)
■法人税等会計基準案

■回収可能性適用指針
・繰延税金資産の回収可能性に関する実務指針を基本的に引き継いでいる
・留意すべき変更点は「企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取り扱い」
・分類1 
⇒ 実務指針を踏襲している。
・分類2 
⇒ ・一定の要件を満たしたスケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産に回収可能性があるものとされた
  ・会計上の利益から課税所得に基づく要件に変更されている(分類3と共通)
  ・課税所得から臨時的な要因を除く(分類3と共通)
  ・過去3年及び当期のいずれの事業年度に重要な税務上の欠損金が生じていないことが追加 (分類3と共通)
・分類3 
⇒ ・一定の要件を満たした5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に回収可能性があるものとされた。
・分類4
⇒・期末に重要な税務上の繰越欠損金が存在するかではなく、過去3年または当期に存在していた否かどうかに焦点を当てる
・分類5
⇒ 実務指針を踏襲している。
・適用時期は平成2841日以後開始年度の期首から適用する

■消費税増税延期に伴う税制上の措置(地方法人課税に係る措置)
 ・法人住民法人税割の税率引き下げ、地方法人税の税率引き上げ、地方法人特別税の廃止および法人事業税の復元の実施時期が平成2941日から平成31101日に延長されている。
 ・単体納税制度を採用している場合、税効果への影響なし
 ・連結納税制度を採用しており、税金の種類ごとに回収可能性の判断が異なる場合、税国税効果会計に影響を与える

■法人税等会計基準案
 ・これまでの実務指から実質的な内容の変更は意図されていない。
 ・適用時期は公表日以後(平成28119)適用される。


16.今3月期決算の実務ポイント 税効果会計に適用する税率に関する適用指針

・公布日基準から成立日基準へ
⇒ 国会で法律の改正案が成立次第、新税率を適用

・各地方公共団体の条例改正を待たず、国会で改正地方税法等が成立した段階で、過去の実績等を基礎として税率を見積もる。


17.卸売業の上場審査

総資産に占める債権や在庫の比重が高い
⇒債権管理、在庫管理が重要なポイント

1)債権管理
与信管理方法や債権管理方法の内部管理体制の運用状況、滞留債権の評価基準について問われる。

・与信管理
新規先の信用調査はどのように行っているか
与信額がどのように設定されているか
取引条件などの承認方法が適切に行われているか

・債権管理
債権分類はどのように行われているか
滞留債権をどのように把握しているか
回収促進策の実施状況
過去の貸倒実績、残高確認の実施状況

2)在庫管理
適正在庫水準の考え方、品目別在庫月数、長期滞留品の評価基準などについて問われる。
実施棚卸方法、棚卸差異の発生状況などによる内部管理体制の運用状況が確認される。

3)その他
売上の総額表示か純額表示かも、同業他社の動向次第では問われる。









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