2017年11月26日日曜日

11/24 勉強会:配偶者控除等に関するFAQ 他

1.独立企業間価格の簡易な算定方法示す

■国税庁から「移転価格事務運営要領」等の一部改正案が公表
・一定のグループ内役務提供取引=企業が役務提供に要した費用に5%を乗じた金額を加算した金額を独立企業間価格として取り扱う旨を新設
⇒適用要件
(1)役務提供が支援的な性質のものであり、法人及び国外関連者が属する企業グループの中核的事業活動には直接関連しないこと
(2)役務提供において、法人又は国外関連者が保有し、又は他の者から使用許諾を受けた無形資産を使用していないこと
(3)役務提供において、法人又は国外関連者が、重要なリスクの引受けもしくは管理又は創出を行っていないこと
(4)役務提供の内容が、研究開発、製造、販売及び金融等に該当しないこと
(5)同種の役務提供を非関連者に対して行っていないこと
(6)(1)~(5)までに掲げる要件の全てを満たした企業グループにおける役務提供について、その内容に応じて区分し、その区分ごとに役務提供に係る総原価の額を合理的な方法によりその役務提供を受けた者に配分した金額に、その金額に5%を乗じた額を加算した金額をもってその役務提供の対価としていること
(7)役務提供の内容を記載した書類等を作成し、又は取得し、保存していること


2.税効果注記、早期適用は来年3月期から

(1)税効果会計基準の一部改正(案)が12月中に正式決定され、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用
⇒表示及び注記事項は、平成30年3月31日以後最初に終了する連結会計年度の年度末に係る連結F/Sから早期適用可

(2)表示・注記事項について、早期適用を認める理由
・DTA・DTLを全て非流動区分に表示する変更に伴う (流動比率に対する)影響は限定的
・注記事項の追加はF/S利用者に対してより有用な情報を提供

(3)表示・注記事項以外について、早期適用を認めない理由
⇒早期適用を認めると、3月決算法人においては、平成30年3月期が対象となり、既に進行している年度の四半期F/Sに影響を及ぼす可能性がある、等

(4)税効果会計基準の一部改正(案)を早期適用する場合の留意事項
⇒表示・注記事項併せて適用(それぞれ部分的に適用することは想定されていない)


3.配偶者控除等に関するFAQ

■配偶者控除 ※控除対象配偶者を妻とする。
現行:年間の所得金額が38万円以下(給与収入103万円以下)の控除対象配偶者
⇒夫の配偶者控除として、夫の所得金額より38万円控除可能

改正:妻の所得金額38万円を前提として、夫の所得金額により控除額が異なる
給与収入1,120万円以下 ⇒38万円控除
給与収入1,170万円以下 ⇒26万円控除
給与収入1,220万円以下 ⇒13万円控除
給与収入1,220万円超  ⇒控除なし
⇒夫の配偶者控除として、夫の所得金額よりそれぞれの金額が控除可能

なお妻の年間所得金額が38万円超から123万円以下の場合は、「配偶者特別控除」の適用がある。

■FAQ(一部抜粋)
Q1:いつから改正か
A1:H30.1.1以後の所得税より適用。※H29年分の所得税(年末調整等)に影響なし

Q2:源泉控除対象配偶者とは
A2:妻の合計所得金額が85万円(給与収入150万円)以下で夫の所得金額900万円(給与収入1,120万円)以下の人

Q3:源泉控除対象配偶者に該当しない場合
A3:マル扶の「源泉控除対象配偶者」欄に記載不要。
またH30.1.1以後の給与支給の際、配偶者を考慮されない所得税が徴収される。(=増税となる)

Q4:期中に源泉控除対象配偶者に該当することとなった場合。
A4:異動がわかった際に給与担当者へ報告(マル扶を提出)すること。
異動がわかった日以後の最初の給与支給より徴収される所得税額がかわる。

■参考
国税庁のHP
https://www.nta.go.jp/gensen/haigusya/pdf/koujo_faq.pdf



4.収益認識会計基準案、大きな方向性に変更なし

■収益認識会計基準案とは
IFRSとの整合性を取るために策定された売上高の計上方法に関する新しい基準

■公開草案に対するコメント
・中小企業への影響が大きいため、個別財務諸表への適用を任意にすべき
・税務上の申告調整が増加しないように、会計処理と税務処理を合わせるべき
・割賦基準を代替的な取扱いとして定めるべき(新基準案では、販売時に一括して売上計上)
・重要性等を考慮した上で代替的な取扱いを認める旨を明記してほしい

■適用
・来年3月頃までに正式決定
・2021年4月1日以後開始する事業年度から強制適用予定


5.観光立国実現のための財源、出国税

■旧来の出国税(国外転出時課税制度)
 H27.1/1以後に国外移住する居住者が1億以上資産を所有している場合、資産の含み益に対して所得税を課税されていた。⇒ 一定の限られた者を対象にした制度であった。

■H30年税制改正による出国税
「日本人を含む」出国旅客に対して「出国目的や手段は問わず」負担を求める。
 2019年中の導入を目指しており、金額は一人当たり1,000円を超えない範囲を予定している。
 従業員が頻繁に海外主張するような企業であれば負担増にはなるが、負担額は損金算入とされる予定。

■出国税を導入している国と税額
 アメリカ 申請手数料として14ドル(約1,540円)
 韓  国 出国納付金として10,000ウォン(約975円)
 オーストラリア  出国旅客税として60AUドル(約5,280円)


6.グループ法人税制 実務の落とし穴

■100%支配の判定
(1)個人
個人100%保有の場合、その個人にはその個人の親族等も含まれる。つまりこれらの親族等で100%支配している法人が複数ある場合にはそれらの法人間には完全支配関係があることとなる

(2)外国法人
「一の者」には外国法人も含まれることに留意する

■支配関係は発行済株式等で判定する
議決権ベースで100%支配していても発行済株式等で100%支配していない場合完全支配関係はないものとする

■形式的に100%関係を解消しても無効(同族会社)
第3者割当により従業員(またはその他の者)に新株を発行した場合であっても実質的に資金調達等がされない場合にはその取引は無効(行為計算の否認)となる

■完全支配関係の発生日は株式の引渡日で判定
株式の譲渡損益は譲渡契約締結日ベースで計上するが、完全支配関係の判定は引渡日ベースで判定する。契約日と引渡日にズレがあり、決算日をまたぐ場合には注意が必要



7.今週のFAQ<医療費通知とは>

■平成29年分の確定申告から、医療費控除の適用を受ける場合に、そのまま添付できる一定の医療費通知とは、どのようなものですか?

■医療費通知とは、健康保険組合等の医療保険者が発行する医療費の額等を通知する書類のこと、以下の6項目が記載されていることが必要
1.被保険者又はその被扶養者の氏名
2.療養を受けた年月
3.療養を受けた者
4.療養を受けた病院、診療所,薬局その他の者の名称
5.被保険者又はその被扶養者が支払った医療費の額,
6.保険者の名称
※自己又は生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費に関する医療費通知に限定


8.単元株式数の減少

・東証は2018年10月1日を期限として単元株式数を100株に統一する取り組みを実施
・現状94%が100株、残り6%は1,000株
・1000株から100株への手続き=「単元株式数の減少」の手続き
①単元株式数の減少のみ実施
 ⇒取締役会決議(会社法195Ⅰ)

②同時に株式併合も実施(投資単位が低下するため)
 ⇒取締役会決議+株式併合の総会特別決議
(数値例)
 仮に投資単位が100万円(1,000円×1,000株)の場合
 売買単位を100株に変更すると投資単位は10万円(1,000円×100株)となる。
 当時に5株を1株とする株式併合を行えば50万円(5,000円×100株)となる。


9.非適格株式移転を利用したM&Aスキームの実務ポイント

■適格株式移転の要件
・グループ内の適格株式移転or共同事業を営むための適格株式移転に該当する必要あり
⇒株式移転後も完全支配関係が継続することが見込まれる必要あり
⇒株式移転後に株式移転完全子法人株式をグループ外部に譲渡する場合は非適格に。
⇒株式移転完全子法人の資産を時価評価課税した後に株式譲渡。

■平成29年度改正
・帳簿価額が1000万円未満の資産を時価評価の対象となる資産から除外
⇒営業権のほとんどは帳簿価額が0円。実質的に営業権の時価課税が不要となった。

■非適格株式移転を利用したM&Aスキーム
・被買収会社:A社(簿価純資産10億円)
・株主:X氏(A社を100%支配。株式取得価額1億円)
・株式移転:A社を完全子法人、新設P社を完全親法人として実施
・本件株式譲渡価額:30億円 
・論点:譲渡価額30億円と簿価純資産10億円との差額20億円の性格

(1) ケース1:20億円=1000万円を超える土地の含み益のケース
・X氏:A社株主⇒P社株主
・完全子法人A社で評価益を計上。A社に課税。
・完全親法人P社でのA社株式の受入価額:30億円
・この後、買収会社に30億円で売却したとしても、完全親法人P社に課税は生じない。

(2) ケース2:20億円=営業権の含み益(超過収益力部分)
・完全子法人A社では営業権時価評価不要。課税なし。
・完全親法人P社でのA社株式の受入価額:30億円
・この後、買収会社に30億円で売却したとしても、完全親法人P社に課税は生じない。
⇒いずれの当事者においても課税関係を生じさせないことが可能に。
⇒包括的租税回避防止規定の適用を回避する必要あり。
⇒経済合理性や事業目的を説明できるようにしておく必要がある


10.源泉税に関する課税リスクとその対応

■租税条約が国内法と異なる所得源泉地を定めている場合
・日本では使用料についてはその使用地、人的役務の提供については役務提供地が所得源泉地
・租税条約では所得源泉地国を支払者の所在地国とする債務者主義が定められていることがある
⇒租税条約に基づき課税が生じる場合があるため、源泉税の徴収漏れを指摘されないよう注意が必要

■現地税務当局との所得分類に係る見解の相違
・国外取引に係る対価の所得区分については、2国間の租税条約及び国内法の規定による
⇒自社が行っている国外取引に係る所得分類について、税務当局に対して合理的に説明できる準備を行う必要がある


11.PEに関する課税リスク

1.PEとは
事業を行う一定の場所があって、企業がその事業の全部または一部を行っている場所を指す。
※PEの有無は所得の課税関係を決めるうえで重要な事項
2.PEの範囲(日本企業が海外で事業を行う場合、進出国が日本と租税条約を締結しているか否か)
・締結済⇒租税条約
・締結未済⇒進出国の国内法
※新興国では、PEの拡大解釈の傾向あり
※税務当局同士の同意が得られない場合は二重課税もあり
3.駐在員事務所に対するPE認定
・直接的な営業は認められていないが、営業活動と認められるとPE認定
・あくまで準備的・補助的な活動であり、収益獲得に寄与していないことを証明
⇒駐在員事務所の勤務者の行動範囲を定めた活動ポリシーを定め、これに従う


12.アジア事例から見る、移転価格税制に関する課税リスク~文書化の重要性~

■物品販売
日本親会社とアジア地域の子会社、及び在外子会社間取引が調査のターゲット
・在外子会社の所得は低いはず、または高いはず、と安易に前提が置かれてしまう事例多
・シークレットコンバラブル(※1)による課税も目立つ
⇒取引の概要、リスク等について、文書化による準備が重要
(※1)どのような過程を経て独立企業間価格が算定されたのか、当局が開示しない

■無形資産取引
・日本親会社:高いノウハウ提供当等を理由に、受け取るべきロイヤリティの不足を指摘されること多
・在外子会社:赤字の場合は無形資産に価値毀損を根拠に、ロイヤリティの損金否認されること多
⇒ロイヤリティの授受を行うのか、行うならどちらの国で市場調査するかを文書化しておく必要

■市場固有の特徴
⇒マーケットプレミアムやロケーションセービング(※2)等の市場固有の特徴は、価格に影響することから、その恩恵がどちらに帰属するかを事前に当局と協議して文書化が必要
⇒中国やインドでは新興国に帰属する、とする立場
(※2)安価な人件費により利益を創出すること

■文書化不備による罰金
中国やインドでは、不備に関して罰金あり

■(補足)相互協議(※3)・APA(※4)を考慮
・中国やインドネシアでは相互協議が実質機能しておらず、二重課税が放置される実情
・タイではAPAの対応が遅い
(※3)租税条約に適合しない課税を排除するための条約締結国当局間での協議
(※4)移転価格に関する事前確認制度



13.駐在員等の所得税に関する課税リスクとその対応

■日本での課税リスク
出向元法人が出向先法人との給与較差を補てんするために支給する給与は出向元法人の損金に算入される。
ただし、較差補てん金が合理的な額を超える場合、出向先への寄付金として取り扱われる。
昨今給与水準の上昇が著しいアジア地域では、較差補てん金を寄付金として認定される事例が増加している。
⇒原則駐在員の給与は全て海外子会社が負担する企業も増加している。

■現地での課税リスク
日本親会社が給与等の一部を負担することが多いが、
日本において支払われるものであっても駐在地国での役務提供への報酬のため、駐在地国での個人所得税の対象となる。
各国の税務当局も日本人駐在員が日本で給与等の一部を受け取っている事情を把握しているため、日本払いの所得申告漏れの指摘による追徴課税が発生することが増加している。

■みなし給与
海外赴任先での家賃補助、語学研修費用、現地での個人所得税などを日本親会社又は海外子会社が負担した場合は、税務上の給与となる。

■海外出張者への課税
海外出張し、現地で役務提供を行った際の給与は出張先の国内源泉所得に該当し、原則として現地で課税が生じる。但し、短期滞在者免税要件を満たす場合は居住地国で課税が生じる。

※参考
短期滞在者免税要件は以下の3つ
・12ヶ月のうち、源泉地国での滞在日数が183日を超えないこと
・報酬を支払う雇用者が源泉地国の居住者でないこと
・雇用者のPEが報酬を負担しないこと


14.子会社等の判定の範囲の決定における、種類株式等の取扱い

■種類株式とは
剰余金の配当その他の権利が普通株式とは異なる内容の株式

■他の会社の議決権の所有割合の計算方法
(1)原則
期末において所有する議決権の数(※1)÷期末において行使できる議決権の総数
※1:自己株式、完全無議決権株式(株主総会の全ての事項について議決権を行使することができない株式)、相互保有株式は含まれない。

(2)一部の議案のみに議決権を有する種類株式の場合
(1)では期末において行使できる議決権の総数に完全無議決権株式を含まないが、当該場合には含む。

■種類株式として定めることができる種類の内容のうち、議決権行使に影響するもの
(1)議決権制限
株主総会において議決権を行使できる事項が異なる
(2)拒否権
株主総会又は取締役会の他、種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする
(3)役員選任
種類株主総会において取締役または監査役を選任する

■議決権を実質的に所有するような投資契約や株主間契約
明確な規定がないため、実質的な判断が必要。
※一部の議案のみに議決権を有する種類株式の取扱いに照らして判断することも考えられる。

■留意点
・連結会計基準や持分法会計基準では、支配力基準や影響力基準のような規定や要件がある。
・上記に対し、支配力、影響力の判定に関しては実態を踏まえた判断が必要。


15.新規公開企業、業績予想正確に(保守的に?)

・あずさ監査法人の調べでは2010年~2016年までに上場した企業の4分の1超が、上場時に発表した利益予想を達成できていなかった。

・上場後に下方修正を行った企業が、2016年は33%に対して、2017年は3%のみ。

・2014年、新規公開した企業の4割で業績予想が下振れ。黒字予想から一転して赤字に転落した企業もあり。

・上場時には会社の創業者や出資者が保有していた株を売り出して現金化する場合が多く、上場後に業績予想を下方修正した企業に対しては、投資家から株を高く売るのが目的ではないかとの批判が高まった。

・東証は上場企業の審査を厳格化。企業の上場作業を手伝う証券会社も「投資家の視線を強く意識するようになった」。


16.財産保全会社

オーナーが直接、公開予定会社の株式を保有するのではなく、オーナーが保有する別の会社が公開予定会社株式を保有する会社

・財規上の親会社等となるか?
財産保全会社が、実体のない会社で実質的にオーナーの個人的な持株会社であるような場合には、上場審査上も開示上も親会社等とみなされない。
ただし、事業会社としての意味合いが強くなると、親会社の実体を有するものとして判定され、申請会社は子会社上場として審査対応がなされる。
また、株式上場後に事業会社としての実体が出てくるような場合には、親会社情報の継続開示が求められる。









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

0 件のコメント:

コメントを投稿