2018年2月12日月曜日

2/9 勉強会:ホームページの制作及び管理業務は電気通信役務の提供に該当するか 他

1.MD&Aの開示の充実

・「業績等の概要」及び「生産、受注及び販売の状況」を「財政状態、経営成績及びCFの状況の分析」に統合し、
 記載内容の整理を求める
 ⇒企業の開示内容を投資者にとって分かり易くする

・「財政状態、経営成績及びCFの状況の分析」について、これまでは「提出会社の代表者」による分析・検討内容の
 記載が求められていたが「経営者の視点」に変更された
 ⇒経営者の視点による分析・検討が欠けているとの指摘があったため。雛形や例示は示されていない

・「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」の記載が義務化される
 ⇒単にCF計算書の要約を文章化したにすぎない記載が多いとの指摘を踏まえ、重要な資本的支出の予定及びその資金源 が何かの記載が求められる

・平成30年3月31日以後終了事業年度から適用





2.税効果注記、公開草案どおりで決着

■全般
・公開草案から大きな変更なし
■早期適用の時期の変更
・公表日以後→2018年3月31日以後
■評価性引当額の内訳に関する数値情報の注記
・DTAの発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している
・当該税務上の繰越欠損金の額が重要である
場合に必要。だが、重要性については個別判断。
⇒重要性がないときは個別FSにおいて評価性引当額の内訳に関する数値の注記は不要




3.確定申告期に再確認、重加算税の「特段の行動」

■重加算税が課されるケース
・過少申告行為そのもの⇒重加算税が課されるとは限らない
・過少申告を行い、その意図を外部からもうかがい得る「特段の行動(※)」をした場合⇒重加算税が課される
※特段の行動の判例
・顧問税理士に対して所得を秘匿(最高裁平成7年判決)
・税務調査等で内容虚偽の資料を提出(最高裁平成6年判決)

■最高裁平成7年判決
・株の売買による雑所得を秘匿し、重加算税を賦課された事例
⇒顧問税理士からの株の売買による質問、書類提出依頼にも関わらず秘匿したことが「特段の行動」と判断

■最高裁平成6年判決
・サラ金業の所得を過少申告し、重加算税を賦課された事例
⇒当初の申告額が極端に過少であったこと、税務調査時に虚偽の資料を提出したことが「特段の行動」と判断




4.中小企業向けの租税特別措置法、所得制限対象を追加

租税特別措置法の適用要件を見直し
大企業が、H30.4月~H33.3月までに開始する各事業年度において下記の要件を満たしていない場合、その事業年度については研究開発税制その他の一定の税額控除が適用できないこととする。とされた。
さらに「賃上げ+設備投資」に消極的な大企業のみならず中小企業も対象としてきている。

■要件(中小企業でも「適用除外事業者」とされる)
1,平均給与支等給額が比較平均給与等支給額を超える
2,国内設備投資額が減価償却費の10%を超える
3,事業開始日の日前3年以内に終了した各事業年度の所得の平均額が15億円を超える

■適用できない税額控除(4以降が新たに加えられる)
1,研究開発を行った場合の税額控除制度 2,情報連携投資等の促進に係る税額控除
3,地域未来投資促進税制 4,高度省エネ増進設備等を取得した場合の特別税額控除
5,所得拡大促進税制 6,中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例



5.注記を要件に実務対応報告18号修正せず

実務対応報告18号
「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」の修正について

■資本性金融商品のOCIオプションに関するノンリサイクリング処理は、
IFRSとJ-GAAPとの重要な差として、実務対応報告18号における修正項目とされる方向であった。
→IFRS上は、資本性金融商品の売却損益はOCIから純損益にリサイクリングされない。

■修正項目とすると、該当する資本性金融商品を二重に管理する必要が生じ、実務上の一定の負担が生じる。
  →在外子会社が資本性金融商品の銘柄数を多数保有する金融機関には、負荷が大きい。
  ⇒一定の注記を要件に修正しないことも容認する方向に。
⇒3月中に公開草案が公表される予定。





6.消費税QA ホームページの制作及び管理業務は電気通信役務の提供に該当するか

■質問概要
A社はホームページの制作及び管理業務を行う法人であり,注文を受けた後に,仕様等についてインターネット等の通信回線を利用して打合わせをしながら業務を進め,ホームページが完成した後にはインターネットを通じて納品することとしている。
このような業務に係る役務の提供は電気通信利用役務の提供に該当するか?

■回答
事例の役務の提供は,ホームページの制作・管理等という主たる業務についてその連絡をインターネット・メール等によっているに過ぎないと認められることから,電気通信利用役務の提供には該当しない。

■解説
電気通信利用役務の提供とは、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供であって,他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいうとされている。
事例の役務の提供は、ホームページの制作・管理等という主たる業務についてその連絡をインターネット・メール等によっているに過ぎず、著作物等を提供していることにあたらないため、電気通信利用役務の提供には該当しない。




仮想通貨による給与等の支払いは「現物給与」に該当

近年の仮想通貨の決済手段等の利用増加に伴い、
給与等をビットコイン等の仮想通貨で支払う事業者が増加している。

■背景
・外国人旅行客の呼び込み
・海外からの送金時に発生する手数料がかからないメリットの享受
・仮想通貨の普及等

■労働の対価を仮想通貨で支給を受けた場合の取扱い
・経済的利益の供与 ⇒ 現物給与を受けたと捉える
・給与所得の収入金額に該当
・士業の報酬等を仮想通貨で支払った場合
⇒支払側に源泉徴収義務が課される。

■支給する仮想通貨相当額はどうするか
給与や報酬の「確定日」における市場取引価額等より合理的に算定した価額。
⇒日本円で支払金額を確定させ、その確定額に相当する仮想通貨をもって支給。

■仮想通貨で支払した場合
(例)60万円の税理士報酬につき、50万円を日本円、10万円を仮想通貨で支払った。

支払側:源泉徴収義務あり
60万円×10.21%=61,260円(源泉徴収税額)

受取側:60万円の収入
※受取側が仮想通貨を売却して日本円にした場合
⇒取得価額(10万円)と売却価額との差額は「雑所得」扱いとなる。



8.取引価格の変動

・収益認識に関する会計基準案では、取引価格は契約における取引開始日以後に様々な理由で変動する可能性があるとして「取引価格の変動」に関する取り扱いがある。
・取引価格が事後的に変動した場合、既に充足された履行義務に関する収益の額を修正する
(数値例)
 12月決算のA社
 X1年1月にB社と契約締結(製品Xを@100千円で販売)
 B社が1月から12月末までに1000個より多く購入した場合、単価を遡及的に90千円に減額すると契約したケース
   1Qで75個販売 ⇒1年で1000個のペースではないので@100千円で収益計上
  2Qで500個販売 ⇒年間で1000個を超えることが見込まれるので
1Qで購入した75個についても@90千円に減額
  ⇒当該調整額(75個×減額10千円)は2Qで認識する



9.新収益認識基準 導入プロジェクトの準備段階でのポイント

■次のような取引があれば影響の可能性あり
・同一顧客に、ほぼ同時期に、複数の契約を締結
・契約内容の変更が頻繁にある
・1契約で複数の財・サービスの提供
・値引き、返品、リベート
・ポイント
・消化仕入、委託販売
・割賦販売
・工事契約ないし受注契約のソフトウェアビジネス
・出荷基準
・ライセンス供与
■企業活動への影響
(1)ビジネス
・契約書や取引
(2)内部統制
・業務プロセスや内部統制の見直し
・規程やマニュアルの変更
(3)管理会計
・業績評価
・人事評価
(4)IT
・関連システムの変更
(5)IR
・財務情報と分析、新収益認識基準が与える影響の説明




10.新収益認識基準の導入プロジェクトの進め方(実施ポイント)

■フェーズ1:影響度調査
・ヒアリングや調査票によるアンケートが一般的
・調査結果から課題把握
⇒影響部署やシステム、金額規模、対応に要する時間等

■フェーズ2:導入計画の策定
・プロジェクト目標の決定(例:制度対応だけでなく管理会計上の対応にも取り組む 等)
・いつまでに何に対応すべきかの導入計画を策定、必要時期・工数に応じて人員手配
・導入計画の策定
⇒いつ、誰が、何を、いつまでに実施すべきなのか明確にする
⇒どの部署から、どのくらいの人員が必要となるか検討し、リソース確保

■フェーズ3:対応策の検討・立案
・論点(差異)の検討
⇒より現場レベルの担当者へヒアリング、契約書や実績データ等を入手、会計処理の検討、システム変更の要否確認
⇒検討の過程と結果は文書化(論点の概要、新旧基準の相違点、金額的なボリューム、対象会社・システム等)しておく
・会計方針の文書化
⇒内部統制上も必要
・開示の検討
⇒現時点で注記に関して未公表だが、IFRS15号が踏襲されると項目が増加する
・社内展開とグループ展開

■フェーズ4:導入
・事前にトライアル実施が望ましい
⇒各社の個別TB(注記含む)はスケジュール通りに作成可能か
⇒連結TB(注記含む)はスケジュール通りに作成可能か
⇒改定された会計方針・業務プロセス・システムに問題はないか
・トライアルで問題が生じた場合は、前フェーズを修正する等で解決

■フェーズ5:導入後の対応
・ルーティン業務への落とし込み
・高度化や効率化




11.自己株消却⇒その他資本剰余金がマイナスの場合の会計処理

■基本的な会計処理のタイミング
⇒消却手続が完了した時
※意思決定時では発行済株式は減少していない
※意思決定済かつ期末に手続未了but金額重要⇒注記を検討

■会計処理の内容
⇒その他資本剰余金を減額、マイナスになる場合はその他利益剰余金から補填
※資本剰余金は株主からの払込資本のうち資本金に含まれないもの⇒負の値となる概念がない

■複数の消却が発生した場合の会計処理のタイミング
⇒会計期間末において、(まとめて)その他利益剰余金で補填
⇒四半期決算がある場合は、各四半期決算の翌月頭に洗替
※都度補填は、その他資本剰余金の増加と減少の順により、年度末における結果が異なってしまうため△



12.クラウドサービスの利用でIT統制・監査対応はこうする


■経理業務で主に利用されるクラウドサービス
・ストレージサービス
・業務機能サービス(銀行入出金データからの自動仕訳作成等)
・業務基幹支援サービス

■クラウドサービス利用時の留意点
・不正アクセス
⇒複雑なPW設定やIDの権限管理
・運用管理
⇒定期的なバックアップ
・データ保全
⇒最重要機密はクラウドに保管しない

■IT全般統制/業務処理統制
・【全般統制】評価範囲が限定的
⇒「システムの開発」、「システムの保守」等のサービス事業者に帰属する作業は評価の対象外
【業務処理統制】評価対象は通常
⇒クラウドサービスの内部仕様が判明しない場合は、エラーチェック
 (誤データを入力し、エラーとなるかチェック)

■監査人対応
・アクセス権限の有無
・委託先の内部統制の評価
・自動仕訳の生成・登録・承認体制




13.未上場の中小企業をM&Aにより取得する場合の留意点


■経営者の親族
経営者の親族は事業を引き継がない場合でも、経済的な利害関係が大きい場合が多い。
買い手の観点でのポイント
①親族外の第三者に譲渡する方向性の合意および決定事項等を伝えるタイミング
②買い手と売り手である程度の合意が出来るまで、詳細は親族に伝えないよう経営者に伝える

■DDでの情報収集方法
対象会社の経営者および従業員への不信感やネガティブイメージの払拭、競合への情報漏えいの配慮が重要
・早期の実務担当者へのアサイン
・顧問の専門家がいる場合の直接のインタビュー(対象会社に守秘義務の解除をしてもらう)



14.リストリクテッド・ストック(特定譲渡制限付株式)に関する平成29年度税制改正

(特定譲渡制限付株式の概要)
法人の役員等に役務提供の対価として交付される株式のうち、次の4つの要件を満たすもの。
(1)一定期限の譲渡制限あり
(2)勤務条件、業績条件等が達成されない場合、没収される
(3)役務提供の対価
(4)役務提供を受ける法人またはその関係法人の株式

(法人 損金算入)
・損金算入の要件は、職務執行開始後1ヶ月以内の株主総会で確定金額または確定株数が定められ、かつ交付されること。
 ⇒ 届出不要で事前確定届出給与と認められる。
 ⇒ 株数が業績等の事由で変動する場合は要件を満たさない。
 ⇒ 業績を達成しない場合「ゼロ」になる場合は要件を満たす(ゼロか100か、の場合は「変動」とみなされない)

・損金算入時期は、没収事由が消滅したとき(一定期間の勤務を終えるなど)

・損金算入額は、決議時点の株価を基に計算。

(個人 所得税)
・課税時期は、譲渡制限解除日。
 ⇒ 上記の「没収事由が消滅したとき」と同一とは限らない。たとえば1年間の勤務継続で没収事由が消滅しても、譲渡制限はその後3年間外れないケースなどがある。

・課税額は、譲渡制限解除日の株価を基に計算。

(退職所得)
・退職によって譲渡制限解除となるケースでは退職所得となる。




15.適切な機関整備のポイント

1.株主総会
・招集する手続き法令や定款を遵守
・議事録は10年保管

2.取締役会
・毎月開催
・招集する手続き法令や定款を遵守
・議事録は10年保管

3.取締役(※)
・(名義貸しレベルの)名目取締役はいない
・同族関係者が取締役の過半数を占めない
・常勤取締役は原則として専任である

4.監査役(会)(※)
・(名義貸しレベルの)名目監査役はいない
・取締役の同族関係者ではない
・常勤監査役が必要である

(※)独立役員を上場日までに1名以上確保することが必要。
独立役員とは一般株主と利益相反が生じる恐れのない社外取締役、社外監査役をいう。




















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