2018年11月13日火曜日

11/9 勉強会:請負契約に基づく機械装置、取得時期をめぐり納税者敗訴 他

1.請負契約に基づく機械装置、取得時期をめぐり納税者敗訴

■事例
・会社の決算期は平成25年3月期。
・工場に設置する機械装置の製造納入を請負業者に依頼。
・検収完了は、納入された機械装置が問題なく動作するかを確認し、検収書の押印をもって完了する契約。
・平成25年2月に機械装置は工場に設置され稼働したが、翌日以降に不具合が生じた。
・平成25年5月に機械装置が安定稼働することを確認し、検収書に押印した。

■争点
・納税者は、平成25年3月期の法人税申告に際して、2月分3月分の減価償却費を損金算入した。
・税務署は、平成25年3月期ではまだ機械装置を取得していないのだから、損金算入できないとした。

■東京高裁の判決(平成30年9月5日判決)
取得の時期=所有権移転の時期=検収完了の時期であるから、損金算入はできない。






2.信託の先進国の米国から学ぶ信託受益権評価

■信託給付の額の変動が予想される収益受益権の評価
・日本:収益受益権の評価方法について相続税法に定めなし(財産評価基本通達にゆだねられている)
・米国:収益率の高低に拘わらず、法定された金利(割引率)をかけて計算
⇒納税者の租税回避の余地がない

■信託給付の額が定額の収益受益権の評価
・日本:定額配当の場合に、財産基本通達で推算してよいのか明確でない
・日本:収益力をより高く設定した場合は元本受益権の評価が下がるので贈与税を節税することができるという見方あり
・米国:信託財産の評価額から収益受益権の配当額の評価額を控除して元本受益権の評価をすることができる

■給付の期間が終身の受益権の評価
・日本:定期金給付契約が終身定期金の場合は評価方法を定めているが、信託受益権が終身の場合は評価方法の定めなし
・米国:生命表の生存率に基づく評価方法が定められている。




3.贈与税の納税猶予における相続時精算課税のメリットとデメリット

・H29年度税制改正により、相続時精算課税制度と贈与税の納税猶予制度の併用が可能に
■相続時精算課税制度(贈与税の特例制度)
・60歳以上の父母または祖父母から
・20歳以上の子・孫への生前贈与があった場合
・生前贈与額の2,500万円までが非課税(2,500万円超過分には20%の贈与税がかかる)
・ただし贈与者が死亡して相続税を計算する際に、生前贈与された財産と相続された財産の合計額に相続税がかかる。生前贈与時に支払った贈与税額は控除される

■贈与税の納税猶予制度(事業承継税制)
・経営を承継する人が
・贈与により、一定の要件を満たす非上場会社の議決権株式等を取得した場合
・発行済議決権株式等の2/3に達するまでの部分(贈与前に保有しているものを含む)の
・贈与税の全額を猶予する
※雇用の8割以上を5年間維持する等の条件が満たされない場合、認定取り消しあり

■併用のメリット
・認定の取り消しがあった場合、相続時精算課税制度を併用している方が税額が有利な可能性が高い

■併用のデメリット
・贈与税の納税猶予制度には下記2つの減免制度があり、相続時精算課税制度を併用しない方が有利な可能性が高い
1.贈与時に比べて譲渡時に株価が下落している場合
納税猶予:譲渡時の時価で税額を計算する
併用時:贈与時には譲渡時の時価で税額を計算するが、贈与者の死亡時には贈与時の時価で相続税を計算する
2.受贈者が贈与者より先に死亡した場合
納税猶予:納税猶予された贈与税は免除され、受贈者の財産にだけ相続税がかかる
併用時:相続時精算課税に係る贈与税は免除されるが、贈与者の死亡時に受贈者の財産と贈与者の財産の合計額に相続税がかかる







4.税務当局の情報提供要請権限を大幅強化へ

デジタルエコノミーを通じた稼得者への申告漏れ防止へ

■平成31年度税制改正で大幅強化へ
現在、政府の税調では議論が進んでおり、31年度の国税通則法の改正により質問検査権に加え、第三者に対しても不特定多数の納税者に関する情報の提供を求める制度を導入する方向で議論がまとまっている。
現状、税務当局では情報提供要請権限は質問検査権による任意の情報提供要請にとどまっている。
改正されれば、仮想通貨取引業者やネット上でプラットフォーム運営を行っている者に対して、情報提供を求めることが可能。

■米国の行政召喚状に類似した制度の導入
⇒行政召喚状とは米国の税務調査において、納税者が任意調査に応じない場合、税法違反の疑いがある場合に実施される調査。これにも応じない場合は強制調査となる。
⇒日本の質問調査権とは、「物理的手段は認められてないものの、納税者の自発的な納税義務の履行を実現するために納税者に対して行使できる調査権」であるため納税者は権利の行使に対して応える義務がある。
つまり質問の対象を限定した上での質問検査権の行使である。改正された場合は非常に強い権限を当局はもつこととなる。







5.日本企業がIFRS移行時に認識した会計基準の差異(認識・測定に関するもの)の分析②

■収益認識の変更について
・IFRS移行時に開示される「調整表」(GAAP差の影響が記載)において、
収益認識基準の変更を記載していた会社は、163社中70社。

■収益認識基準の変更の主な内容
・出荷基準から引渡し基準、着荷基準への変更:22社
・出荷基準から主要なリスク及び経済価値が移転した時点への変更:9件
・工事完成基準(サービス提供時基準)から原価回数基準:6件
・代理人として実施した取引した取引を純表示から:5件
・費用計上していた販売手数料、販売促進費等を、収益から控除:4件
・出荷基準から検収基準、据付基準への変更:3件
・ポイントを費用計上から収益から控除:2件
→出荷基準からのその他基準への変更が34件と最も多い結果となった。





6.法人課税をめぐる最近の取消採決事例

■太陽光発電に係る発電システム本体とフェンス等の事業供給日(減価償却費の損金算入時期)が問題。
(引渡日:平成28年3月、工事完了:平成28年9月、決算日:平成28年3月)
・当事者は事業供給日を「引渡日」⇒損金算入可。
・課税当局は事業供給日を「売電開始日」⇒損金算入不可。

【裁判所の判断】
⇒本体とフェンス等は個別の資産と指摘
・発電システム本体は決算期において売電を開始していないから損金算入不可。
・フェンス等は引渡日から目的(発電システム本体の毀損防止など)に沿った機能を発揮していることから決算期に損金算入可。

■債権放棄の処理が仮想隠ぺいに該当するか否か
【概要】
・請求人が多額の債務免除益を計上。
・兄弟会社の分割及び特別清算や兄弟会社の金融機関に対する債務を引き受け、その債権を放棄。債権放棄の金額を貸倒損失として損金に計上。(兄弟会社は事業を分割承継法人に承継させたうえで特別清算により解散)
・税務調査を受けた結果、寄付金に該当するとの指摘を受け修正申告。
・これに対し、課税当局は当初から所得を過少申告する意図があったと主張し、重加算税を賦課した。

【裁判所の判断】
⇒貸倒損失額について寄付金に該当することを認識していたとは認められないことから、仮装隠ぺいの事実もみとめられないとして重加算税を取消。
・債務引受け及び債権放棄を行うことについて相当な理由があるなどとして寄付金に該当しないと認識していた可能性がある。
・経営状態の悪い兄弟会社を整理・再建することによって、兄弟会社の経営悪化による請求人の不利益を避ける目的を有していた可能性を否定することはできない。
・固定資産約5億円を特別清算開始申立書でゼロ円と評価することが不自然であるともいえない。









7.会社法改正で上場会社等に社外取締役の選任義務付けへ

・法制審議会会社法制部会は上場会社等に対して、社外取締役を一人以上義務付ける方針である。
→すでに上場会社の97.7%は社外取締役を選任している
→義務付けても大きな影響は及ぼさない
・また、仮に社外取締役に欠員が生じてもすぐに取締役会決議に影響しないとしており、複数の社外取締役を選任しておく必要はない。




8.給与と外注費_3

■判断基準について
・契約の有無
・代替性の有無
・拘束性の有無
・指揮監督の有無
・危険負担の有無
・用具供与の有無

■例(マッサージ師)
・A法人はマッサージ師Bと業務委託契約を締結
・A設置の施術所にてBがマッサージ業務を行う
・営業時間、施術料金等はAが設定
・売上はAに入金
・事故の責任はAが負う

<あてはめ>
・契約:業務委託契約
・代替性:有
・拘束性:有
・指揮監督:有
・危険負担:無
・用具供与:有

■裁決
・契約上は業務委託契約であるが実質は雇用契約
・BはAの指揮監督下にあるといえる
・Bは独自に費用負担、責任負担をしていない
⇒AがBに支払う対価は雇用契約に基づく給与である






HP掲載用の写真と源泉徴収

■事例
法人がプロの個人カメラマンへHP掲載用の写真撮影を依頼した場合、
報酬の支払いに対し源泉徴収を行うか否か。

■所得税法204条
「雑誌や広告その他の印刷物に掲載するための写真の報酬」は源泉徴収すると記載。

※源泉徴収が必要な報酬とは、所得税法204条に限定列挙されているため、
記載されていない取引に係る報酬は源泉徴収が不要となる。

■回答
HP掲載用の写真は、印刷物に掲載されるものでないため源泉徴収は不要。
⇒上記法令に規定されていないため。

なお会社パンフレットに掲載するための写真の報酬は、源泉徴収の対象となる
※両社が区分されていない場合も、源泉徴収した方が望ましい。






10.連結未実現損益消去

1.未実現「損失」
・連結会社相互間の取引によって取得した棚卸資産、固定資産その他資産に含まれる未実現「利益」は、全額を消去する必要がある。
・ただし、未実現「損失」は、「回収可能」であることを説明できる部分を除き、消去しない。

2.子会社が連結から外れたケース
・親会社から子会社に土地を売却した場合、売却益を連結上取り消し。
・子会社が連結から外れた場合、未実現損益の実現ではなく、子会社株式売却益の調整となる。

(連結修正仕訳(売却時))
土地 10,000 / 子会社株式売却益 10,000




11.開示の一元化と一体的開示

■日本公認会計士協会(JICPA)の定義
・一元化
⇒「会社法と金商法で要求される法的開示書類を一本化すること」
⇒金融庁・法務省から昨年12月に「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」が公表された。財務会計基準機構は共通化を行う際のひな形を公表。

・一体的開示
⇒「事業報告等と有報の内容をできる限り共通化し、開示時点も合わせて1つの書類として作成・開示すること」
⇒JICPAが法定開示における財務情報・監査は一元化すべき、と提言。一体的開示は一元化のための過程。




12第1章BS管理の重要性と活用方法

・従来よりもBSへの注目が高まっている ※ROA、ROE等
・財務諸表監査においても、BSを中心に数字の正しさが検証される傾向
⇒フローで構成されるPLは取引数が多く、検証に時間がかかるがBSであれば期末の残高を構成する取引を中心に確認すればよい
・BS残高の中には実際に目で確認できるものも多い
⇒一般的にはBSを管理するほうが実務上、効率的

「第2章「BSレコンシリエーション」の実務ポイント」」
※BSレコンシリエーション
BSに関する決算時の確認・調整手続きのこと
(1)あるべき残高との照合
⇒主な対象科目=預金、売掛金、買掛金、棚卸資産、固定資産等
⇒残高確認状や実査にて確認
(2)内容の確認
⇒対象科目=BS勘定科目全般
⇒確認方法は比較が有効
 前期比較、月次推移との比較、PL残高との比較、取引条件との比較
(3)システムとの照合
⇒主な対象科目=補助簿システムで管理されている売掛金、買掛金、棚卸資産、固定資産等
⇒販売管理システムと会計システムとの照合、前払費用等のスプレッドシートと会計システムとの照合等






13.日常的なBS管理のポイント

(1)補助科目を活用
・BS勘定は計上と消込で入り混じる
⇒効率的に対応させるために、補助科目が有

⇒例えば、「設備投資未払金」「人件費未払
金」といった目的別に分けると良い
⇒補助科目の名称は分かりやすくして、勘定
科目表でも具体的に目的を整理しておく

(2)摘要の記載の仕方
・いかに楽をして探すことができるか、を意

⇒記載項目にルールを定める。
⇒例:対象期間、費用内容、概算ならその旨

(3)伝票の入れ方
・計上と消込の関係性を意識。
⇒金額修正の場合、差額のみを入れず、元の
仕訳を取り消して再入力
⇒概算計上の伝票を確定額に振替る場合も、
概算額の取消と確定額の形状は1枚の伝票に

(4)注意すべき仕訳
手入力する振替伝票
⇒能力や経験の個人差の影響が大きい
⇒振替伝票をまとめて起票し、経験者による
集中的にチェックさせる体制も有効





14.IFRS16号への移行準備の全体像

IFRS16号=リースに関する基準

■新リース基準による借手への影響
従来:ファイナンス・リース取引のみをオンバランス(リース資産/負債)
新基準:すべてのリースをオンバランス(使用権資産/リース負債)

■リースの定義
「リース」に当たるか否かの判定が必要
⇒ここの取引ごとに判断していく

■リースの基本方針
下記が会計処理にあたっての基礎となる
・リース期間
・リース料総額の範囲
・割引率
⇒従来基準から概念的にはほとんど変更なし

■短期リース、少額資産のリース
短期リース:原資産のクラスごとに選択
少額資産:リース単位ごとに選択




15.親会社が有するその他有価証券を子会社に譲渡した場合

■グループ法人税制が適用される場合の留意点
(1)税務上の取り扱い
 譲渡時に計上された売却益は当期の課税所得計算上は益金に参入されない。
⇒譲渡損益調整資産として繰り延べ、将来子会社が他者に当該その他有価証券を譲渡した際に、益金に参入され、課税される。

(2)親会社側の譲渡時の処理(個別財務諸表上)
 将来加算一時差異に該当するため、繰延税金負債を計上。

(3)連結財務諸表上の処理
 ・親会社で計上された売却益を取り消し、投資有価証券を同額だけ減少させ、繰延税金負債も取り崩す。
 ・上記の未実現利益の消去を行ったことで、BS科学が譲渡前の取得価額に戻ってしまうため、改めて時価評価が行う必要がある。
  ⇒この時、期末日に投資有価証券を保有するのは子会社であるが、親会社の法定実効税率を使用する点に留意(当該一時差異は将来的に親会社において益金に参入されるため)。

■グループ法人税制が適用されない場合
(1)税務上の取り扱い
 親会社で計上された売却益は当期の課税所得に参入されるため、これに係る納税は当期で完了。

(2)親会社側の譲渡時の処理(個別財務諸表上)
 一時差異は生じておらず、税効果会計の適用対象外。

(3)連結財務諸表上の処理
 ・グループ法人税制のケースと同様に未実現損益の消去を行う。
 ・投資有価証券売却益を取り消すことが連結財務諸表固有の将来減算一時差異となるため、繰延税金資産の計上を行う。
 ・上記繰延税金資産の計上時の留意点
売却元である親会社の法定実効税率を使用
将来減算一時差異のうち親会社の当期の課税所得を上回る部分については、実際には課税が生じないため、繰延税金資産を計上しない
(例)未実現損益:1,000千円、当期の親会社の課税所得:800千円⇒800千円に対してのみ繰延税金資産を計上
  ③ 当該繰延税金資産は既に納付済みの税金費用であるため、回収可能性の検討を行う必要なし
 ・上記の未実現利益の消去に伴い、改めて時価評価を行う。
  ⇒その他有価証券評価差額金についてはすでに親会社で課税が完了しているため、繰延税金負債の計上は行わない。


15.上場審査における監査役に対する審査内容

監査役に対する審査(監査役面談)の主な質問事項には、以下のものが想定される。
通常は常勤監査役が対応。

実効性のある監査がなされているかがポイント。

1.監査役業務の執行状況確認
・決算内容について
(1)債権、資産の確認(特に不良債権、不良資産、遊休資産等)

・取締役の業務執行に対する監査状況
(1)会社と取締役の取引の有無、確認状況
(2)取締役会への出席状況
(3)取締役会での発言状況及び内容
(4)取締役議事録及び稟議書等の確認等について
(5)代表取締役、取締役の業務執行状況に関する見解

・監査役会の運営状況(監査役会を設置している場合)
(1)監査役の業務分担
(2)監査役会の開催状況(頻度、討議内容を議事録等で確認)

2.監査役の退任・就任の経緯・理由

3.監査法人及び内部監査との連携状況
(1)監査法人との連携状況
(2)内部監査との連携状況

4.内部統制の整備状況
(1)会社法における内部統制整備に関する見解
(2)金融商品取引法における内部統制整備との連携状況


















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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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