2015年12月6日日曜日

12/4 勉強会:所得税:海外赴任者に支払う赴任手当の源泉徴収漏れに注意 他

1.組織再編に伴う資金借入れで法人税の行為計算否認を適用
・外国法人A社を親法人とする多国籍のグループ法人間での行為について課税庁が同族会社の行為計算否認規定を適用

・内国法人Xが外国法人C社へ借入金にかかる支払利息約93億円を支払っていたが、これを法人税を意図的に下げる行為と審判所も支持

・資金の調達方法はほかにも考えられるため、多額の支払利息を支払うことになる借入れに頼ることは純経済人の行為としては不合理、不自然


2.国税局指摘に異議述べずも賠償責任なし
業務委託手数料が給与所得と事業所得のいずれに該当するかに関連した裁判事例
■流れ
支払法人が納税者に支払った業務委託手数料は給与だと国税局から指摘
支払法人は異議を述べずに源泉所得税等を納付
納税者は給与認定を不服として審査請求を行った結果、給与課税は取り消された
上記に対し納税者は、支払法人は異議を述べ、その結果を是正するべき信義則上の義務を負っていたと主張
納税者が審査請求を行うなかで支出した弁護士費用等の損害賠償を支払法人に対し請求した

■地裁の判決
・国税庁からの指摘内容には相応の合理性があった
・よって支払法人が源泉税の納付に応じたことは不法行為にはならない

■高裁の判決
・国税局の指摘を受けたことにより修正申告を行うか否かはあくまでも支払法人自身の問題
・一般的にその判断前に納税者との話し合いの機会を持つ義務は認められない
・納税者に対する給与課税については納税者独自の判断で争うことができる


3.IFRS任意適用企業は97社に
国際会計基準をめぐる最近の状況について議論が行われた。
IFRS任意適用・適用予定企業97社であると発表
 …うち5社は非上場企業
 …業種別内訳は電気機器が15社と最も多い
  医薬品が10社、情報/通信業の9社と続く
 …1社も適用がない業種は12業種に減少している
  (建設業・銀行業・保険業等)

■プロジェクト計画表の復活を求める声があった
 …会計基準等の開発スケジュール
 …日本基準の予見可能性を高めるためには必要不可欠なため


4.リスク分担型確定給付制度
 拠出資金の運用リスクについて事業主と加入者で柔軟に分担する、年金制度
■現行の退職給付会計基準における、取り扱い
(1) 事業主が一定の掛金を外部に拠出し、それ以外に追加的な拠出義務を負わない場合
  ⇒確定拠出制度として、拠出額を費用認識するのみ

(2) (1)以外の場合
  ⇒確定給付制度として、債務()を認識する
  () 退職給付債務から年金資産を控除した金額

(3) リスク分担型確定給付制度
  確定給付企業年金法に基づくものであるが、事業主の掛金は固定拠出となっている。
  ⇒(1)(2)のいずれに該当するか定かでなく、今後の論点になる。

■国際会計基準(IAS19号「従業員給付」)における、取り扱い
 事業主に追加拠出を求めないものは、確定拠出制度として、拠出額を費用認識するのみ
 ⇒リスク分担型確定給付制度が、国際会計基準における取扱いと同様、確定拠出制度に区分された場合、拠出額を費用認識するのみとなる


5.事前通知とは
税務署が税務調査に入る際に、納税者や顧問税理士に対し調査日時や場所を通知すること。
・「事前通知」を受ける前に修正申告書を提出した場合
⇒無申告加算税や過少申告加算税は軽減または課されない。
   納税者の自発的申告を推奨することを目的としているため

・「事前通知」を受けた後に修正申告書を提出した場合
 ⇒無申告加算税や過少申告加算税が課される。


6.事前通知後の修正申告に加算税
28年度改正において、加算税UPが検討されている
①無申告加算税
【現行】
15%以上
 ・但し、自主的に期限後申告をした場合は、5%に軽減
 (税務調査の「事前通知」を受けてからでも、調査前なら軽減可能)
【改正後】
 ・「事前通知」後は、自主申告しても軽減措置適用せず

②過少申告加算税
【現行】
 ・10%以上
 ・但し、自主的に修正申告をした場合は、加算税なし
 (税務調査の「事前通知」を受けてからでも、調査前なら加算税なし)
【改正後】
 ・「事前通知」後は、自主申告しても加算税がかかる

 ⇒今後は、「事前通知」を受けてから修正申告では手遅れ

③短期間に繰り返し「無申告、過少申告、不納付」となると、加算税がUPする
・最大の重加算税率が50%程度となる可能性(現行は最大40%


7.消費税:インボイス方式について
■インボイス方式とは
インボイス方式とは仕入側である課税事業者が、売上側である課税事業者が発行するインボイスに記載された消費税額のみを控除することができる仕入税額控除の方式をいう(EUで採用)

⇒現行の「請求書等保存方式」では請求書等に適用税率・税額を記載することは義務付けられていないがインボイス方式ではその記載が必須となる。

政府は2021年4月から導入する方針

EUの採用理由
(1) 異なる税率ごとに税額が明示されているので、売り手にとっては正確な税額転嫁を実行できる。
(2) 同様の理由により、買い手にとっては正確な仕入税額控除の計算が可能となる。
(3) 免税事業者はインボイスを発行できないこととされており、免税事業者は消費税を請求できない。
    この結果、免税事業者に溜まる「益税」の発生が避けられる。

■日本型インボイス方式の検討
インボイス発行につき「登録事業者」制度を採用しないことで、免税事業者からの仕入であっても仕入税額控除が可能となる(検討中)


8.所得税:海外赴任者に支払う赴任手当の源泉徴収漏れに注意
・日本企業が海外赴任者に支払う海外赴任手当は『国外』源泉所得であるため、源泉徴収は不要である。

・ただし、会議等で一時的に帰国して業務に従事する期間に対応する部分は『国内』源泉所得に該当するため、源泉徴収が必要である。
⇒実務上源泉徴収を失念するケースが多いため、注意が必要。


9.ニュース
・会計士試験、前年比4.6%減の1,051人合格
 合格率10.3% 新制度開始以降で合格者数は最少

・定額法への変更、5年間で350社超
 定額法へ変更の流れが続く


10.法人実効税率29.97%へ
2016年度に、実効税率を20%台へと引き下げるよう、与党が方針を固めた。
・財源確保のため、「外形標準課税の増税」「繰越欠損金控除の縮小」「設備投資減税の縮小」を検討。
・赤字もしくは利益水準の低い企業にとっては増税となる。


11.監査法人の決定時期
(1)各証券取引所は、監査法人による金融商品取引法に準ずる監査を、原則として、上場申請直前々期・上場申請直前期の連結財務諸表・財務諸表に対して求めている。
  監査法人との契約は、監査対象期間の期首時点で締結されていることが望ましい。

■ショートレビュー
(1)ショートレビューとは、監査法人が一週間程度の短期間に、株式上場にあたっての課題を集中的に調査、課題の改善方法および、それを踏まえた上場までの具体的なスケジュール等を提案するものである。

 ショートレビューでは主に次のような項目を調査し、上場準備にあたっての検討課題を明らかにする。
   ①上場の時期や上場市場の選択
   ②経営組織体制・内部管理体制の整備状況
   ③会計管理制度の整備状況
   ④関係会社・特別利害関係者等の取引状況等

■今週の新規上場会社
上場・公開日    社名                           銘柄コード 市場  公募価格
123        インベスターズクラウド  1435         マザ   1,870
124        鎌倉新書                      6184        マザ   1,000

(インベスターズクラウド)
業種:建設業
事業内容:土地情報の提供・デザインアパートの企画、施工、賃貸管理
主幹事:SBI証券
監査法人:あずさ

(鎌倉新書)
業種:サービス業
事業内容:ポータルサイトを通じたライフエンディングサービスに係るマッチング事業及び書籍販売事業
主幹事:SMBC日興証券

監査法人:新日本






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  




0 件のコメント:

コメントを投稿