2016年8月27日土曜日

8/26 勉強会:財務的に困窮に陥っている企業を買収対象とするM&Aの実行上のポイント 他

1.追徴の可能性が高ければ損益計上

・「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準(案)」の概要が明らかに
⇒監査保証実務指針第63号等を踏襲するものになっている

・適用範囲は日本で納税する企業の連結、個別F/Sにおける法人税等
⇒範囲を海外にある子会社にまで広げると抜本的な見直しになるため国内に限定

・更正等で追加される可能性が高く金額が合理的に見積もれる場合
・更正等で還付されることが確実に見込まれ金額が合理的に見積もれる場合
⇒追徴税額、還付税額を損益に計上することとされている(誤謬に該当する場合を除く)

・開示に関しては監査保証実務指針第63号、実務対応報告第12号とほぼ同じ内容になる予定


2.非適格現物出資-株式以外の金銭の交付が無い場合(被現物出資法人)

■事例
現物出資法人A
・簿価⇒資産1,500、負債1,000(簿価純資産価額500)
・時価純資産価額⇒1,200
・対価はB
被現物出資法人B
・資本金200、資本剰余金300増加

■被現物出資法人Bの会計処理(簿価純資産価額で移転した場合)
(資産 1,500 /
                     / (負債 1,000
                     / (資本金 200
                     / (資本剰余金 300

■被現物出資法人Bの税務処理
⇒非適格現物出資なので、移転資産負債を時価により譲り受けたものとして計算する。
(資産 2,200 /
                      / (負債 1,000
                     / (資本金 200
                     / (資本金等の額 1,000

⇒したがって税務調整は以下となる。
(資産 700   / (資本金等の額 700

■別表調整
別表四⇒調整なし

別表五()
⇒資産700
⇒資本金等の額△700

別表五()
⇒利益積立金額700


3.経理担当者による横領行為と顧問税理士の責任を巡る判決

■診療所の経営者が顧問税理士に対し、診療所の経理担当者の不正行為(横領)を調査する義務を怠ったなどと主張して損害賠償を請求した事案
・裁判所は、顧問税理士に会計上の不正行為に関する調査義務があったと認めることはできないと判断。
・税務顧問契約の委任内容は税務代理等であり、納税者の財産または診療所の運営に対する不正について判断し納税者に報告する義務はない。
・経理担当者の横領に関する顧問税理士の賠償責任を否定。


4.香典メモ廃棄も重加賦課要件を満たさず

・香典メモ破棄の行為が重加算税の対象となる仮装隠ぺいに該当するか否かが争われた事例

A氏は、相続財産の大部分を占める金融資産(X銀行に保管)を除外し、相続税申告
・申告期限から約18か月後の実地調査で、X銀行の記載を破った香典メモを提出
・調査担当者が別の部屋で破れたメモを発見
A氏は、X銀行との取引を知られたくなかった旨を申述

■審判所の判断
A氏の言動等は、計画的なものではなくとっさの行動
・相続財産の隠ぺいをできる限り貫こうとしたとまでは言い難い

以上より重加算税は取り消された


5.今週の専門用語

■特定目的信託
⇒金銭債権や不動産などの「特定資産」の流動化を目的とする信託(SPC)

・具体的な流れ
(1)特定資産の保有者(委託者)が信託銀行へ資産を拠出
(2)委託者は信託銀行から信託受益権を受け取る
(3)委託者は信託受益権を証券会社などを通して投資家へ販売
(4)委託者はその販売代金を、投資家は収益分配金を得る


6.9号買換え縮減なら年度内譲渡も選択肢

9号買換え特例は近年縮減傾向
・平成27年度税制改正では、対象となる買換え資産や課税繰延べ割合が縮減
・平成29年度税制改正でも、さらなる縮減が実施される可能性あり

■平成27年度税制改正の適用期限は、平成29331
⇒平成29年度税制改正は平成2812月半ば公表の見込み
⇒新制度の内容を見た上で、いずれの適用を受けるか(それとも買換え自体を見送るか)判断可
⇒新制度において縮減されていれば、旧制度の適用を受ける方が有利(ただし、平成29331日迄に譲渡が必須)


7.認定取消しで固定資産税の軽減措置の特例はどうなる?

■固定資産税の軽減措置とは
H28年度税制改正により、中小企業者等が「経営力向上計画」を作成し、主務大臣から認定を受けた場合には、固定資産税を3年間、2分の1に軽減する措置。
※資本金1億円超の法人等は適用対象外。

■要件
H28.7.1からH31.3.31までの間において、
「認定経営力向上計画」に記載された一定の機械装置を取得した場合に軽減措置を受けられる。
※施行日前に取得した機械装置は適用対象外。

■計画に基づく目標が未達、事業が行われていない場合はどうなるか?
・目標が未達の場合:認定を取り消さない。
⇒軽減措置も適用される。
・事業を行っていない場合:認定を取り消すことがある。
⇒認定取消後は軽減措置の適用を受けることができない模様。ただし、取消しが過去に遡って遡及されることはない。


8.平成28年度における消費税の改正について

1】高額特定資産を取得した場合の免税点制度

(改正前)
・自ら課税事業者を選択した事業者 or 新設法人が、税抜100万円以上の資産を取得した場合、翌期から3年間は免税事業者となれない

(改正後)
上記に加え、
・税抜1,000万円以上の資産を取得等した場合、翌期から3年間は免税事業者となれない
※対象は、納税義務のあるすべての事業者(新設法人等の要件なし)

(影響)
H28.4.1以降に高額資産を取得した場合に適用(経過措置あり)
・今後は、すべての課税事業者が高額資産を取得する場合に注意必要

2】事業者向け電気通信利用役務の提供に係る内外判定基準の見直し

(改正前)
・国内企業の海外支店が、海外企業から「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合、国内取引となりリバースチャージ義務が発生
※国内企業の海外支店に納税義務が発生

(改正後)
・上記の取引のうち、海外で行う資産の譲渡等のみのために役務提供を受ける場合、国外取引としてリバースチャージ義務がなくなる

(影響)
H29.1.1以後に行う取引について適用


9.所得拡大税制と当初申告要件

■いわゆる当初申告要件とは
ある規定について、確定申告書に必要事項の記載があることを要件として、その適用を認める制度のこと。この要件が付されている場合には、修正申告書または更正請求書において後からその規定の適用をうけることはできない。

■所得拡大税制との関係
租税特別措置法の規定についてはすべて当初申告要件が付されているものとされる。所得拡大税制は租税特別措置法の規定であるため、当初申告要件がある。

■具体例
3月決算法人A社は5月提出の確定申告書において所得拡大税制の適用を受けなかった(別表の添付もなし)

・同年7月において所得拡大税制の適用対象であったことに気づき、更正の請求を行った。
⇒所得拡大税制は当初申告要件が付されているため却下となった(確定申告時に記載がないため適用不可)

<参考:当初申告要件がない規定>
・受取配当等の益金不算入
・所得税額控除
・外国税額控除、など
⇒修正申告時または更正の請求時においてはじめて適用することも可能


10.【均等割】無償増減資に係る加減算規定は株式会社のみ適用

■無償増減資に係る加減算規定(H27年度改正で導入済)
均等割の税率区分の基準となる「資本金等の額」から、
・無償減資を行った場合の一定の欠損てん補の額を減算でき、
・無償増資をした場合には、その増資額を加算する必要がある。
⇒対象は株式会社に限定されているため、合同会社等には適用されない。

《一方で...
■税率区分の基準見直し(こちらもH27年度改正で導入済)
「資本金等の額」が「資本金及び資本準備金の合計額」を下回る場合には、BSの資本金と資本準備金の合計額が均等割の税率区分の基準となる。
⇒こちらは株式会社に限らず,合同会社等にも適用される。


11.IFRS15号とポイント引当金

・ポイント引当金についての処理で日本基準とIFRSとで差異が出そう

日本基準
・企業が将来負担すると見込まれる金額を「ポイント引当金」として計上する処理が多い。

IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」
・販売価格を商品分とポイント分に分けて、それぞれ、履行義務を充足した時点で収益認識する。
⇒商品は販売時点、ポイントは利用時点
⇒ポイント分は販売時に収益認識しないこととなる。


12.会社法改正による影響

1. 監査等委員会設置会社への移行
⇒移行する会社は順調に増加。本年6月の株主総会で、監査等委員会設置会社に移行した会社は、前年6月の株主総会で移行した会社数の76.8%の増となっている。

※監査等委員会設置会社とは
3名以上の取締役で構成(過半数は社外取締役)。
⇒重要な業務執行の決定の全部または一部を取締役に委任可
⇒機動的な意思決定が可能というメリットがある。

2.Web開示の状況
⇒会社法改正により、Webで開示すれば、株主への招集通知に記載が不要となる項目が拡大。事務負担の減少に。


13.新国税不服申立制度の概要と審査請求の上手な進め方

■改正の内容(2016/4以降に適用)
(1) 不服申立期間(不利益処分を知った日の翌日から)
2か月以内⇒3か月以内
(2) 異議申立前置の廃止
国税当局へ異議申立てを経た後に審査請求
⇒直接審判所長に審査請求が可能に
(3) 審査請求人が閲覧できる証拠資料等の範囲
国税当局が任意に提出した証拠資料等のみ対象
⇒審判所が職権で収集した証拠資料等も閲覧の対象
(4) 閲覧資料のコピー
不可⇒可
(3)(4)の留意点
閲覧可能な資料が多く⇒効率よく取捨選択する必要性
国税審判官経験者を代理人に選任して対応してもらうと効率的な選別・作業ができる。
(5) 審査請求人からの国税当局への口頭質問できない⇒口頭意見陳述の際にできることとなった
(5)の留意点
原処分庁の主張について、根拠や考え方の疑問点を質問、回答を踏まえて審査請求でどの部分を争い、どのように主張を展開していくか等について検討すべき
(積極的な質問権の行使)


14.財務的に困窮に陥っている企業を買収対象とするM&Aの実行上のポイント

・意向表明書の留意点
 ⇒有利子負債の削減が必要であることを明記する。

DD実施上の留意点
 ⇒実質債務超過額を把握する(資産負債を「私的整理に関するガイドラインによる評価基準」に出来る限り準拠した形で評価)
 ⇒正常運転資金の把握(支払繰延等で歪んでいる可能性がある為補正)
 ⇒社保や税金等公的債務の滞留状況の把握
 ⇒使用可能な欠損金の把握
 ⇒買収対象企業とともに再生計画案の作成に関わることが重要

・最終契約書の留意点
 ⇒事後的な損害賠償責任のリスク評価額を買収金額に反映させるべき
 ⇒効力は、再生計画への金融機関の同意を条件とする停止条件付きとすべき


15.CGコード対応による招集通知の状況

■取締役等の選任・指名の方針・手続き等における本年6月総会で実務上の大きな変更点

・社内役員の個々の選任・指名理由の記載
⇒取締役等の選任議案に関して、社外役員についてのみ各候補者の選任理由の記載が義務づけられている

・本年6月総会では
⇒社外役員のみならず、社内役員の選任理由を株主総会参考資料に記載する会社が大幅増加(前年比5倍)
⇒背景として、株主からは略歴だけではなく、功績や実績が求められた


16.企業買収に伴い取得した株式の減損判定

■前提
・実価上回る金額で(超過収益力を見込んで)取得した子株が取得原価の50%以下
・超過収益力には当社へのシナジー相当分も含まれる
・子会社は非上場

(一般論)時価を把握することが極めて困難と認められる株式の評価
・取得原価評価、減損は実価で判断
・実価:純資産方式による算定が実務上一般的(1株当たり純資産額×所有株式数)
IFRSでは公正価値による評価必要

■超過収益力を非上場株の実価に反映できるか
⇒実価に反映することOK
※買収時に見込の超過収益力が毀損していないことが条件

■当社(投資会社)に帰属するシナジー効果を実価に反映できるか
⇒実価に反映することOK
・シナジー効果:買い手側が享受できる価値(企業価値評価ガイド
ライン)
・連結決算上、子会社株式の減損時は係るのれんの一時償却必要


17.グループ法人税制と税効果会計

100%グループ内で資産譲渡を行った場合、
税務上、売り手側の譲渡損益は買い手側が再度売却するまで繰り延べられる。
(個別財務諸表):売り手
一時差異が解消すると見込まれる期に、売り手側に適用される税率にもとづき、繰延税金資産または負債を計上する。
(連結財務諸表)
会計上も損益を認識しないことから、繰延税金資産または負債を計上しない。

100%グループ内で子会社が親会社に寄付を行った場合、税務上、親会社が保有している子会社の株式を帳簿価額を修正。
(個別財務諸表):親会社
株式の帳簿価額の差額分、繰延税金資産または負債を計上。
なお、繰延税金資産の計上は株式売却の予定があり、回収可能性がある場合に限る。


18.ショートレビューによる資金管理(出納)の主なチェックポイント

・金銭出納と記帳、金銭出納と販売・購買などの担当分離が行われている等、牽制が働く組織となっているか?
⇒記帳業務と出納業務が同一担当者により行われている場合には、これを分離するなど、業務分掌を行う必要がある。

・収納金は直接支払いに充当せずに遅滞なく銀行へ預け入れされているか?
B to Bの企業では現金での回収を行うことはなく、該当なしがほとんど。

・金銭の支出は、支払依頼部署の責任者の承認印が押印された請求書等に基づいて行われているか?
⇒例えば支払依頼部署ではない経理部のみの押印だけだと不十分であり、支払依頼部署(営業部など)の承認印がある支払依頼書に基づき、支払手続を実施することが必要である。

・出納担当者以外の責任者が定期的に実査しているか?
⇒従業員不正を防止する目的もある。

・毎月銀行勘定帳と銀行残高証明書とを照合をし、銀行勘定調整表を作成しているか?
⇒銀行残高証明書ではなくとも、定期的に通帳と帳簿残高の一致を確認していれば、問題なし。









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