2016年8月13日土曜日

8/12 勉強会:居住用財産 譲渡所得特別控除 相続時にも適用へ 他

1.粉飾による課徴金巡り役員に賠償命じる

・有価証券報告書に虚偽記載
・これにより会社は
 第三者委員会を設置し調査…第三者委員会に対する報酬が発生
 決算、過去の有価証券報告書を訂正…監査報酬が発生
 金融庁の課徴金納付命令に従い課徴金を納付

・会社は不正に関与した元取締役会長らに対し損害賠償を請求

・地裁の判断
 元取締役会長が粉飾に関与
 第三者委員会が指摘した11の取引のうち7の取引を粉飾と認定
 上記2つの報酬について11分の7に相当する金額と課徴金の全額を損害と認定し元取締役会長に損害賠償を命じた


2.非適格現物出資-株式以外の金銭の交付が無い場合(現物出資法人)

■事例
現物出資法人A
・簿価⇒資産1,500、負債1,000(簿価純資産価額500)
・時価純資産価額⇒1,200
・対価はB
被現物出資法人B
・資本金200、資本剰余金300増加

■現物出資法人Aの会計処理(簿価純資産価額で移転した場合)
()負債1,000/()資産1,500
()B社株式500

■現物出資法人Aの税務処理
⇒非適格現物出資なので、移転資産負債を時価により譲渡したものとして計算する。
()負債1,000/()資産1,500
()B社株式1,200/()譲渡益700

⇒したがって税務調整は以下となる。
()B社株式700/()譲渡益 700

■別表調整
別表四⇒譲渡益計上漏れ700(加算・留保)

別表五()
B社株式700

別表五()
⇒調整なし


3.処分が異議決定までに存在すれば適法

■不動産の公売に関する売却決定処分に対する異議申立て
・異議申立ての段階でいまだ行われていない処分に対する異議申立てが、異議決定されるまでの間に当該対象である処分が下された場合、適法であるか否か?
⇒異議決定までに当該処分が下された場合には適法であると判断


4.今週の専門用語

■役員等の株式会社に対する損害賠償責任
役員等()がその任務を怠ったことにより株式会社に損害を与えた場合に負う損害賠償責任のこと。総株主の同意があれば免除することができる。

※取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人

()
・循環取引などの粉飾取引を行った場合
・役員等が行う利益相反取引により株式会社に損害が生じた場合


5.特定譲渡制限付株式、退職所得にも該当

平成2878日付の所得税基本通達に改正

■特定譲渡制限付株式の所得税法上の取扱い
・雇用関係による交付は給与所得
※但し退職に基因した場合のみ退職所得

■特定譲渡制限付株式の法人税法上の取扱い
・事前確定届出給与の一つ
⇒退職の時期が確定していない中で交付された株式は、事前確定届出給与の要件を満たさないと考えられる。

個人を退職所得とし、法人でも損金算入とさせるために、譲渡制限期間と退職のタイミングを合わせる等工夫が必要。


6.税効果適用、決算日に国会成立の税法で

■税効果会計に適用する税率に関する適用指針
⇒決算日において国会で成立している税法に基づく「税率」を適用
⇒税額を算定する、他の要素(ex.繰欠)についても、同様の取扱いをすべき
⇒決算日において国会で成立している「税法」に基づいて算定する方向で検討

■税法の変更があった場合、税率の変更があった場合と同様の開示
(1)決算日以前に税法の改正+税法の改正に伴いDTA及びDTLの金額を修正した場合、その旨、修正額を開示

(2)決算日後に税法の改正があった場合
その内容及びその影響額を開示


7.同族会社等の判定明細書利用の「株主リスト」の書式が明らかに

■株主リストとは
商業登記規則等の改正により、H28101日以降、役員変更の登記等、株主総会の決議を要する事項について登記する場合は、上位10名等の「株主リスト」の添付を義務付けられることとなった。大企業のみならず、中小企業にも適用される。

主な記載事項
・株主の氏名又は名称
・株主の住所
・株主の有する議決権数
・株主の議決権数割合
・代表者の証明印

■法人税の申告書の別表2で対応可能か。
原則:写しとしてそのまま提出することはできない。ただし以下要件を満たす場合は、別表2の明細書を利用することが可能となる。
・別表2に発行済株式の総数が記載されている。
・別表2に記載された株主の氏名・住所・株数等が株主総会の日と同じである。
・別表2に記載された株主が、登記事項につき議決権行使できた総株主の議決権の2/3を超える


8.消費税率引上げ延期に伴う税制措置の全容

・消費税率10%への引上げ時期が下記の通り変更
(従前)H29.4.1(変更後)H31.10.1 2年半延期
・軽減税率の導入時期、インボイス制度の導入時期なども、同様に2年半延期
・ただし、中小事業者(基準期間の課税売上5,000万円以下)以外の事業者に係る売上税額・仕入税額の計算特例は適用廃止

※税額の計算特例(税額の簡易計算)は元々中小事業者向けだが、軽減税率対応システムの導入準備期間確保のため、経過措置として、中小事業者以外にも適用予定であった。
※軽減税率導入時期が延期となり、準備期間も伸びたことから、上記経過措置は不要と判断された。

⇒中小事業者以外は、早めにシステム導入準備を進める必要あり


9.不動産取得税の減額措置巡り逆転の納税者勝訴判決

■概要
・不動産会社Aは土地を購入し、不動産取得税を納付した
・取得から4年以内に総戸数100戸以上の住宅を建築し、不動産取得税の減免を申請した
※土地取得から4年以内に総戸数100戸以上の住宅を建築すると不動産取得税の減免を受けることができる
・建築戸数は6棟で総戸数は405戸(1棟あたり約70戸)

■争点
<総戸数>をどのように認識するか?
・不動産会社A⇒すべての棟の戸数の合計で判断すべき
・東京都⇒1棟あたりの総戸数で判断すべき

■判決
・東京地裁⇒1棟あたりの総戸数で判断する
・東京高裁⇒すべての棟の総戸数で判断する
⇒地裁の判断を取り消した。

現在、最高裁で係属中


10.【消費税】インボイス制度の導入を平成3510月に2年半延期

自民公明両党は「消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置」を正式決定した。増税のタイミングと同様に、各制度導入のタイミングが2年半先送りされる。

 ※⇒の左側が改正前、右側が改正案

■税率引上関係
・税率引き上げ時期
  H29.4.1H31.10.1
・経過措置の指定日
  H28.10.1H31.4.1

■軽減税率関係
・軽減税率導入時期
  H29.4.1H31.10.1
・インボイス制度の導入時期
  H33.4.1H35.10.1


11.土地再評価差額金

・「土地の再評価に関す法律」を適用し土地を時価で再評価
・税務上、評価差額は課税対象とならない
 ⇒一時差異となり税効果の対象となる
・法定実効税率に変更があった場合には、再評価にかかるDTADTLは変更後の実効税率で計算し直し、DTADTLの増減額は再評価差額金に加減する。


12.居住用財産 譲渡所得特別控除 相続時にも適用へ

・自分が住んでいた土地家屋を売却する場合、譲渡所得から3,000万円が特別控除できる。
・この制度は相続人には適用されず、結果、売却されず放置される空き家が発生する原因となっていた。
・税制改正により、相続人にも同様の控除がされるようになった(平成2841日以後)。
・条件として、「新耐震基準に適用した建物であること(ただし相続後に耐震改修しても可)」、「相続開始後概ね3年以内」、「売却額1億円以下」、「相続後、人に貸し付けたりしていない」を満たす必要がある。


13.ショートレビューによる固定資産管理の主なチェックポイント

・固定資産の取得・処分については、所定の責任者の承認を受けているか?
⇒重要な固定資産の取得・処分が発生する場合には、職務分掌規程等により定められた権限者の承認を行う必要がある。
ex.○○百万円以上の固定資産の取得については、取締役の承認が必要)

・固定資産の取得・処分は設備投資計画に基づいて行われているか?
⇒重要な固定資産の取得・処分が見込まれる場合には、予算及び中期経営計画等において、その計画を反映させる必要がある。

・償却方法は適切に行われ、償却不足が生じていないか?
⇒会計上では費用の計上漏れが問題視されるため、償却不足は解消する必要がある。

・現物について定期的に実査が行われているか?
⇒例えば、四半期や毎決算期末等に定期的に実査を行う必要がある。

・現物に管理番号を付し、台帳との照合が可能か?
⇒実査を効率的に実施する点からも、現物と紐づけるための資産番号を付与する必要がある。

・リース契約により使用している資産についても、他の固定資産と同様に台帳管理、現物管理が行われているか?

⇒リース物件が少ない場合(exコピー機12台)は特段問題視されないが、金額的重要性のあるリース資産の取得やリース物件が増加した場合には、他の固定資産と同様の管理が必要である。







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