2017年2月4日土曜日

2/3 勉強会:税制非適格SOの損金算入について 他

1.平成28年中における会計監査人の交代企業一覧

・平成28年度中に144社が監査人の交代(うち42社は新日本監査法人が交代)

(主な交代理由)
・任期満了に伴うもの
・監査継続年数を考慮したもの
※欧州では監査法人のローテーションが義務付け(原則として最長10年)

※平成27年度1社当たり監査報酬
連結財務諸表提出会社=約4,706万円(前年度4,580万円)
連結売上高が100億円以上500億円未満の会社=2,899万円(前年度2,892万円)


2.CFC税制、株譲渡損と配当等の通算不可

CFC税制とは
Controlled Foreign Company税制の略
⇒タックスヘイブン対策税制のこと

H29年度税制改正におけるCFC税制改正に伴い、受動的所得※(資産性所得)の範囲も見直されている
※積極的に努力を行うことなく得られる収入のこと

■変更点
(1)現行は、配当・利子など金額が「プラス」の項目のみ
(2)変更後は、有価証券譲渡損益、デリバティブ取引、為替差損益など「プラス」「マイナス」両方の可能性がある項目を追加
(3)(1)のプラス金額と(2)のマイナス金額は、通算不可
(4)マイナス金額は、翌期に繰越可


3.税務申告期限の延長で株主総会の7月開催も現実に

29年度税制改正で法人税の申告期限の見直しが行われる
・決算日から最大で6ヶ月まで申告期限が延長可能となる
 ()3月末決算の会社⇒9月末まで申告期限を延長可能
・定款により決算日以外で基準日を定めておく必要はあるものの、税務上のハードルがなくなることで株主総会の後ろ倒しする環境が整う

■効果等
・株主総会期日の分散化を促せる
・有価証券報告書の提出期限が事業年度経過3月以内とされているため、株主総会前に有報を提出することになる
⇒株主は十分情報を検討したうえで株主総会に臨むことが出来る

※有報等に記載する「大株主の状況」に関しては課題が残る
⇒決算日と議決権行使基準日にズレが生じるため


4.回収可能性の合理的説明は不開示の方向

■企業会計基準委員会が税効果に関する開示項目を検討中

■開示項目
1.DTA,DTLの発生原因別の主な内訳
2.税率差異の注記
3.決算日後に税法の改正があった場合、その内容及びその影響
4.評価性引当額の内訳
5.税務上の繰欠に関する注記(税務上の繰欠及びDTAの繰越期限別の金額)
6.税法の改正によりDTA,DTLの金額を修正した場合、その旨及び修正額

1.-3.:現行制度上、要求されている項目
4.-6.:追加を検討している項目

■回収可能性の合理的説明は不開示の方向
DTAの回収可能性に関する適用指針」では、「合理的な根拠をもって説明」できる場合、一部、原則と異なる取り扱いを容認しているが、「合理的な説明」の内容については、開示項目としない方向

「合理的な説明」の内容のみを開示しても有用とはならないという理由で開示項目としていないが、一方で、DTAの金額に重要性がある場合、開示項目とすべきという反対意見もあり
⇒今後、企業や監査人からも意見聴取する方向


5.所得税の仮装隠ぺいをめぐる最近の採決事例

過少申告行為等を仮装隠ぺいと断定した重加算税の賦課決定が、国税不服審判所によって取り消しされた事例

■事例
・給与収入以外に派遣業による収入あり
・給与所得のみ確定申告し、事業収入は申告しなかった。
・原処分庁は意図的に事業所得を申告に含めないと判断し、重加算税の賦課決定を行った

■不服審判所の判断
過少申告行為があったと認定も、以下理由により重加算税を賦課することはできないと判断した

契約書や請求書を破棄することなくパソコンで保存し、パソコン上で収入金額や経費、利益を把握していた。
⇒これらを秘匿目的で帳簿を作成しなかったとは断定し難い。また外部からうかがいできる特段の行動があったと評価できないため、意図的に「仮装隠ぺい」を行ったと判断できないとのことにより重加算税の処分を取り消した。


6.税制非適格SOの損金算入について

■現行
事前確定給与や利益連動給与等に該当しなくても損金算入可
→法人税法341項から「新株予約権」による給与が除外されているため。なお、ここでいう新株予約権とは「税制非適格SO」を言う。

29101日以後決議分
事前確定届出給与または利益連動給与に該当しない場合には損金算入不可

(1)事前確定届出給与の場合の留意点
取締役会で○月○日に○株を交付する旨を定め、その定めどおりに支給する必要がある

(2)利益連動給与の場合の留意点
現行の税制非適格SOは導入の決議等から数か月後に交付される仕組みが一般的。
⇒「数か月間の業績」を指標としているものとみなされると「利益(業績)連動」給与とならない可能性がある。新たな制度設計を行う必要も。

■その他(現行と同じ)
損金算入額:発行時の時価
損金算入時期:権利行使日の属する事業年度


7.確定申告書の送付と発信主義

・「郵便物」又は「信書便物」…定形郵便、レターパックなど
⇒税務署への提出日は通信日付印により表示された日=「発信主義」

・上記以外…ゆうパック、ゆうメール等
⇒税務署への提出日は到達した日=「到達主義」

到達主義では、いくら期限内に送付手続が完了したとしても、税務署への到着が期限後となれば、期限後の提出となってしまうため留意。


8.条件付取得対価の会計処理(アーンアウト)

・条件付き対価の取り決めは、将来の業績等の不確実性に係るリスクを分担するために契約に織り込まれる。
 ※事業計画の利益達成率で対価が変動するような契約
・取得時に支払った対価の一部が返還された場合の処理については会計処理が明確化されていない。
 ※将来業績が目標未達で当初対価の一部を返還するケース
 ⇒今後、企業会計基準委員会で取り上げられるとのこと。
・追加で支払う場合の処理
 ⇒のれんを追加認識。のれん償却は当初取得時に遡って実施。


9.小売業の上場審査

1)出店政策
・出店エリアや出店形態の方針や出店基準の設定などにより、継続的に出店し経営活動が安定的に遂行できるか確認される。
⇒立地場所の選定から開店に至るまでの社内手続が規程に基づき行われているか
⇒新規出店・改装・退店などを決定するときの売上基準・利益基準が明確か、
⇒新規出店の収益予測・投下資本の回収予測方法はどのように行われているか、など

2)販促政策
・過剰な販売促進活動が会社の収益性を圧迫していないかどうか確認される。
⇒定期的なセール期間と売上効果はどのくらいか、
⇒販売価格の変更基準は何か、
⇒価格変更の社内手続が規程に基づき組織的に行われているか、など

3)在庫管理
・適正在庫基準の考え方や品目別在庫月数、長期滞留品の評価基準など確認される。
・実地棚卸状況、棚卸差異の発生状況などの内部管理体制の運用状況も確認される。

4)店舗資金管理
・現金過不足の発生状況や着服の有無、不正防止策などにより、内部牽制制度の構築・運用が確認される。
・店舗資金の保有限度額の設定状況や、売上代金の管理方法、本社や内部監査によるチェック方法なども確認される。

5)労務の状況

・他の業界に比べ臨時従業員の比率が高く、正社員の離職率が高い傾向にあるため、正社員と臨時従業員の構成比やその方針などにより、必要な人員が確保されているかが確認される。









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