2017年2月25日土曜日

2/24 勉強会:役員給与税制・株式報酬・関連税制の改正ポイント 平成29年 他

1.今3月期から業績予想の様式はなし

・東証、決算短信の様式のうち、短信のサマリー情報について、上場企業に課している使用義務を撤廃
・現行の「次期の業績予想」を表形式で表示している様式がなくなる
⇒様式に関する自由度の向上
⇒短信の添付資料と同様、短信作成の際の参考様式として、上場会社に対しその使用を要請するにとどめる
⇒業績予想の開示は企業の完全任意


2.適用の可否は固定資産の設置場所で判断

H29年度税制改正で「固定資産税の軽減措置の特例」に
「測定工具及び検査工具、器具・備品、建物附属設備」が追加
・ただし、地域や業種の限定あり。償却資産として課税されるものに限る
・特例が適用できるか否かは、本社所在地でなく、固定資産の設置場所で判断する方向で検討中
・機械装置に関しては、現行制度同様、全国・全業種で適用可能


3.継続保有要件緩和は50%超グループ対象

・平成29年度税制改正において、組織再編税制が見直される
・適格合併における取得株式継続保有要件の緩和が行われる

29年改正において50%超を保有する「企業グループ」が無い状態であれば、株式継続要件は課さないこととされる。

※企業グループ…「50%超」の支配関係にあるグループのこと

()
各株主が2%ずつしか株式を保有していない 等


4.中長期インセンティブと税務・会計上の論点

■現行制度
・役員給与
⇒定期同額or事前確定届出or利益連動のいずれかの要件を満たした場合のみ、損金算入OK

・退職給与、新株予約権
⇒役員給与とは別の規定があり、多くの場合、損金算入OK

■平成29年度税制改正
・インセンティブ報酬
⇒事前確定届出or利益連動のいずれかの要件を満たした場合のみ、損金算入OK

・業績/株価条件のない株式報酬
⇒事前確定届出の要件を満たす場合のみ、損金算入OK
ex.譲渡制限付株式

・業績/株価条件のある株式報酬
⇒利益連動の要件を満たす場合のみ、損金算入OK
ex.パフォーマンスシェア※
※業績に応じて、譲渡制限が解除される、譲渡制限付株式


5.子会社に対する高額外注費に行為計算否認規定を適用

■事例
(1)A社は発注元より@3,750円で受注。
(2)A社は子会社B社へ@3,750円で外注。
(3)子会社B社は下請け業者へ@3,500円で外注。
(4)A社顧問税理士の助言により、子会社B社に対する外注単価を複数年かけて7,000円まで増額。
(5)A社の子会社B社に対する外注費が不当に高額と判断され、行為計算否認規定により外注費が損金不算入となった

■行為計算否認の判断基準
・純粋に経済人の行為として不自然で不合理でないか。
・当事者間の通常の取引に経済的合理性があるか。

■審判所判断
・子会社への外注単価7,000円は一般的な取引相場とかけ離れている。
・子会社B社の実質的な役割は少ないのが、受注単価3,750円を超えて増額する合理性は認められない。
・A社の税負担を圧縮する意図が明確。
以上により、損金不算入とした課税処分は適法と判断した。


6.住宅ローン控除の再適用とその手続き

■要点
・転勤等で一時的に住宅をあけることになっても残存期間において再居住すれば再び税額控除可能
・海外転勤でもOK28年度改正)
・転勤前に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」と未使用分の住宅ローン控除証明書及び申告書を税務署に提出
・転勤明けに「(再び居住の用に供した方用)住宅借入金等特別税額控除の計算明細書」等を確定申告書に添付して提出


7.月々等の源泉徴収は「源泉控除対象配偶者」に限定へ

■改正
・従来の「控除対象配偶者」⇒「同一生計配偶者」へ
・合計所得1,000万円以下の居住者の「同一生計配偶者」を「控除対象配偶者」と規程
・合計所得900万円以下の居住者の合計所得85万円以下の配偶者⇒「源泉控除対象配偶者」
※合計所得1,000万円⇒給与所得1,220
 合計所得85万円⇒給与所得150

■適用
・「源泉控除対象配偶者」⇒源泉上、扶養のカウント
・合計所得900万円超⇒源泉では控除できず、年調で清算

■適用時期
・平成30年分以降の所得税について適用予定


8.PPA

・合併・買収時の対価(取得原価)を、被取得企業の資産・負債に配分する手続き
・のれんの取り扱いが課題となる。
PPAでは識別可能な無形資産と残額(=狭義ののれん)に分類する
 識別可能な無形資産=ブランド、特許権、顧客関連試算
・配分の結果、償却年数やDTL計上有無等の違いが生じればPLに影響あり
IFRS:狭義ののれんは非償却なので影響大きい。
 日本:のれんも償却するので、大差なし


9.特許権使用料に関する消費税の判定

1.内外判定
(1)特許権の登録地が1国のみ
⇒登録地が国内か国外かで判定
(2)特許権の登録地が複数国
⇒特許権を所有する者が国内に住んでいる(居住者)か、国外に住んでいる(非居住者)で判定

2.課税関係
⇒国内取引に該当する場合、借受人が居住者か非居住者によって処理は下記のようになる。
・居住者  … 課税取引
・非居住者 … 輸出免税


10.ビジネスDDの成功に役立つ事前検討のポイント

⇒高値掴みを避けるため、投資仮説・投資論点の設定が肝要

■投資仮説・投資論点
(1) 本当に対象会社が自社に必要なリソース又はコンピテンシーを高いレベルで持ち
合わせているのか
(2) シナジー効果は、いつから、どの程度見込めるのか
(3) シナジーを得るために追加で必要になるコストと投資
(4) (2)(3)の確度

■複数の案件候補
・案件の優先度と、代替案の有無の検討

■想定シナジー効果の社内共有
・関係部署とシナジーの内容・効果について握っておく
⇒価格に想定外のシナジー効果を織り込まないようになる(高値掴みを避ける)
⇒PMI後に関係部署から「聞いていない」と言われるリスクを避ける


11.組織再編に関する開示

・企業結合の概要
 ⇒被取得企業の名称、事業の内容、企業結合を行った主な理由、企業結合日、企業結合の法的形式など
F/Sに含まれている被取得企業または取得した事業の業績の期間
・取得原価の算定等に関する事項
⇒被取得企業または取得した事業の取得原価、対価の種類ごとの内訳など
・取得原価の配分に関する事項
⇒取得原価の大部分がのれん以外の無形資産に配分された場合には、配分された金額および主要な種類別の内訳など
・連結の範囲等
・決算期の異なる子会社について特に行った決算手続きの概要
・会計方針等
・企業集団の財政状態、経営成績、CFの状況を判断するために重要なその他の事項


12.役員給与税制・株式報酬・関連税制の改正ポイント 平成29

■背景(平成28年)
・法人税法上の利益連動給与と事前確定届出給与の区分が不明瞭
→株式報酬を中心とする中長期のインセンティブプラン導入の税制支援としては、より包括的かつ整合的な制度への見直しが必要

■平成29年改正
中長期の企業価値創造を引き出すための役員への多様なインセンティブを付与できるような制度への見直し
→平成28年は損金算入不可であったが平成29年改正で可能になったもの

・株式交付信託
会社が金銭を信託に拠出し、信託が市場等から株式を取得。一定期間経過後に役員に株式を付与。
H28も退職給与として交付することで損金OKだった
・パフォーマンスシェア
中長期の業績目標の達成度合いに応じて、株式を役員に付与
H28も譲渡制限付株式として交付することで損金OKだった


13.(ケーススタディ)事業年度をまたぐ諸費用の取扱い

■会計処理を迷いやすいポイント
①当期支出した、翌期以降の取引に関連する費用の計上時期
②将来に発生が見込まれる費用の計上時期
③後発事象の取扱いの判断

■長期借入に係る費用(①)
・アレンジメントフィー:(一般的には)ローン組成に対するイニシャルコスト⇒発生年度の費用
・エージェントフィー:(一般的には)契約期間中に係るランニングコスト⇒期間に応じて配分
⇒ただし、手数料の名称だけで判断せず、係る役務の内容・期間で実質的に判断

■期末時点で企業買収手続中の取得関連費用(①)
if株式取得⇒個別上は取得株式の取得原価、連結上は発生年度の費用
if事業譲渡⇒個別上も連結上も発生年度の費用

■期中に意思決定した本社移転に係る引越費用(②)
・発生年度の費用
※引当金⇒費用の発生が当期以前の事象に起因しているか?

■決算日後に関係会社の整理を意思決定した場合(③)
※後発事象⇒実施的な原因が決算日現在において存在した?
YES(ex.累積赤字)⇒修正後発のためFS修正
NO(ex.事故災害)⇒開示後発のためFS注記


14.PMIの成功に役立つ事前検討のポイント

(PMIPost Merger Integration= M&A実行後において、シナジーを実現し、
企業価値を向上させるための統合プロセス全体)

シナジー効果を実現させるためには、以下の3つが重要。
(1) 適切なPMIマネージャーの早期関与
(2) シナジー効果関連部署の早期関与
(3) シナジー効果創出担当者の早期関与によるコミットメント

(1) 適切なPMIマネージャーの早期関与
PMIでは、シナジー効果の創出のみならず、ルールやプロセスの共通化、対象会社の経営管理、経営改善等、多くの部署を巻き込む必要があるため、部課長レベルがPMIマネージャーとして専従することが望ましい。
PMIマネージャーをM&A戦略の構築段階から関与させることで、検討事項の理解や関与してきたコミットメントを引き出せる。

(2) シナジー効果関連部署の早期関与
シナジー効果に関する項目が抽出されたときに関連部署を明確にする。M&A戦略の構築段階から関連部署を関与させることで、責任感を持たせ、PMIの初日からシナジー効果創出に動くことができる。

(3) シナジー効果創出担当者の早期関与によるコミットメント
シナジー効果を実現するためには、現場に納得して動いてもらう必要がある。コミットメントがあってもシナジー効果創出は容易ではないので、コミットメント状態がない中では、シナジー効果の実現はより困難となる。


15.アサツーDK、ゴンゾの不適切な取引で関係者の処分を発表

・アサツー ディ・ケイが買収した会社(※1)で買収前に粉飾決算をやっていた事件。
・アサツー ディ・ケイがファンド(※2)に対して補償請求等を行う方針。
⇒表明保証違反に基づく補償請求損害賠償

(※1)連結子会社ゴンゾ
(※2)いわかぜ1号投資事業有限責任組合(いわかぜファンド)

・訴訟外での解決が難しい場合には訴訟の提起も行なう考え。
・社内でも、社長の月額報酬30%返上、副社長の解任または辞任処分も決定。


16.ファイナンスの手法

ファイナンス手法/持分比率の変動/資金調達/発行済株式数の増加
1.株主割当増資/×/○/○
2.第三者割当増資/○/○/○
3.株式分割/×/×/○
4.株式併合/×/×/×(減少)
5.株式無償割当/×/×/○
6.株式売買等による移動/○/×/×(変動なし)
7.新株予約権/権利行使前:×、権利行使後○/○/○
8DES/○/×/○

1.株主割当増資
株主間の不利益がないため、上場前規制は特になし。

2.第三者割当増資
持分比率が変動するため、上場前規制あり(継続保有要件など)。

3.株式分割、4.株式併合
外部株主を入れる前に、実行されることが多い。

5.株式無償割当
3.株式分割との相違点は以下。
・株式分割は同一の種類の株式数が増加、株式無償割当は同一または異種の株式の交
付が可能
・株式分割は自己株式も増加、株式無償割当は自己株式に割当が生じない。
・株式分割は自己株式の交付は生じない、株式無償割当は自己株式の交付が可能

8DES(デット・エクイティ・スワップ)
金銭債権の現物出資

短期間に実行可能、債権者側も事業再生を目的として活用









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