2017年5月27日土曜日

5/26 勉強会:税務の動向 仮想通貨の消費税法上の取り扱い 他

1.Q&A役員給与税制改正の疑問点

・平成29年度税制改正について
Q:確定した数の株式を付与するタイプの譲渡制限付株式報酬を事前確定届出給与として損金算入可能か?
A:可能

Q:あらかじめ確定した数の株式を事後交付するタイプの株式報酬の導入を検討しているが、株式交付までに株式分割や株式併合があった場合、どのようになるか?
A:株式数が変わったとしても、事前確定届出給与に該当しうる。

Q:中長期の役員給与を事前確定届出給与として損金算入するためには、税務署への届出は毎年必要か?
A:1回の届出で足りる。1年以上先の期間も届出の対象とするよう省令が改正されている。

Q:業績が未達の場合に、"すべて"の株式が没収されるタイプの譲渡制限付株式報酬を支給しているが、没収要件が「業績」に関連する以上、事前確定届出給与から除外されるか?
A:事前確定届出給与となる。
 「利益その他の指標」を基礎として譲渡制限が解除される数が算定される譲渡制限付株式報酬が事前確定届出給与の対象から除外されているため注意。


2.分割型分割における他の者と分割法人の支配関係継続要件の改正

 (H29年度税制改正)
・例:A(親、承継法人)は、a(子、分割法人)から資産等の移転を受けた
・改正前:完全支配関係の継続が見込まれていない場合、非適格
・改正後:分割前にAを上位とする完全支配関係があれば、適格。分割後、a社株式の譲渡は自由


3.来料加工、省令の七業務を"総合勘案"

来料加工はCFC税制の適用除外基準である所在地国基準を満たすかどうかにおいて、29年度改正により来料加工に係る7業務が改正省令に列挙された。

■来料加工(例)
・日本法人の香港子会社が、中国広東省の法人に無償で原材料を支給、加工
⇒香港子会社は棚卸業か製造業かによってCFC税制の適用が変わる

■省令改正内容
・来料加工が所在地国基準を満たす場合として7業務が公表
7業務全てに該当する必要はなく、総合的に判断する


4.修正国際基準第4弾の改正案が明らかに

IFRS12号「他の企業へ関与の開示」※については、IFRSの取り扱いを基本的に変更しない方向

F/S利用者が以下の評価を行えるような情報の開示を目的とする基準
(1)他の企業への関与の内容・これに関連するリスク
(2)上記関与が財政状態、経営業績等に与える影響

≪開示に関する適用後レビューを実施へ≫
個々の基準を開発する際、有用性・コストの観点から開示が必要と考えられる項目を定めてきたが、その運用状況についてレビューしたことはない。

企業会計基準委員会は個々の基準に基づいて作成されたF/Sが公表時に想定していた有用な情報を提供しているかレビューすることに意義があると判断

今後、開示に関する適用後レビューを実施する方向


5.滞在日数だけでは住所判断の決め手にならず

税法上、「居住者」か「非居住者」のどちらに該当するか。

居住者:国内に「住所」を有し、かつ引き続き1年以上「居所」を有する個人
非居住者:居住者以外の個人

「住所」の認定がポイントとなるが、最高裁判決を引用すると、下記6項目を客観的事情に照らして総合的に勘案するとしている。
・滞在日数
・生活場所及び同所での生活状況
・職業及び業務内容、従事状況
・生計を一にする配偶者その他の親族の居住地
・資産の所在
・生活にかかわる各種届出状況等

生活の本拠地であることをうかがわせる重要な事情があるかなど、1つの項目のみで判断せずに、すべてを勘案して判断すること


6.類似業種の株価

・非上場会社の評価方法である「類似業種比準方式」の計算式で使用
・事業の種類が同一又は類似する複数の上場会社の株価の平均値

■平均値の計算期間の選択拡大
従来は「課税時期の属する月以前3か月間の各月のうち最も低いもの」か「前年平均株価」
29年度改正で「課税時期以前2年間の平均株価」が追加

■類似業種の業種目の減少
現在の118から若干減る見込み(6月公表)


7.税務の動向 仮想通貨の消費税法上の取り扱い

2971日以後の取り扱い
・仮想通貨の購入・譲渡⇒非課税扱い
・課税売上割合の計算から除外※

※以下の取引については課税売上割合の計算上、非課税売上に含めないこととされている
①支払手段の譲渡
②特定の金銭債権の譲渡
③売現先取引による債券等の譲渡

■支払手段にかかる関連規定
収集品,販売用に該当するもの(記念硬貨や古銭等)は非課税の対象から除外されているため、課税対象となる。なお、仮想通貨を「投資用」に購入・譲渡した場合でも非課税扱いとなる
(別段の規定が設けられていないため非課税でOK


8.<税務相談>法人税《完全支配関係子会社から残余財産の現物分配を受けた場合の課税関係》

■事例
完全子会社が解散し残余財産が確定
土地(帳簿価額3,000万円、時価1,500万円)の分配(適格現物分配)
保有する子会社株式の簿価は1,300万円、子会社の資本金等の額は2,000万円

■質問
1.みなし配当の金額は?
2.子会社株式の消滅時の譲渡損益と別表処理は?
3.土地の分配は土地の譲渡に該当するのか?

■回答
1.について
・適格現物分配である以上、時価ではなく簿価ベースで計算
⇒本ケースでは、1,000万円と算定(土地簿価3,000万円-資本金等2,000万円)
 なお、受取配当等の益金不算入が適用、適格現物分配は源泉徴収は不要

2. について
・譲渡損益は認識なし、譲渡損益相当額は分配を受けた法人の資本金等の額から減算
⇒本ケースでは、譲渡益が700万円発生、そのため資本金等をプラス加算する
 (土地簿価3,000万円-(みなし配当1,000万円+子株簿価1,300万円))

3.について
・適格現物分配の場合には、その現物分配をした資産の帳簿価額により譲渡損益を計算
⇒譲渡損益は生じない
⇒性質的には、損益取引と資本等取引の混合取引と解されている
※残余財産の分配は資本等取引の範囲に含まれている、一方、通常は時価による譲渡と計算される


9.権利確定条件付き有償SOの実務対応報告案

・従来は複合金融商品適用指針を利用していた⇒今後はSO会計基準等に準じた処理となる
・従来は発行時の払込価額を新株予約権として計上し、払込時に資本に振替していた。
・今回の草案
 業績条件を満たす可能性が高くなり、権利不確定による失効の見積もり数に重要な変動が生じたためSOの数を見直す
 SO価値が増えた分を
  株式報酬費用✕✕✕/新株予約権✕✕✕
 と処理する。


10.組織再編税制の改正の概要

1.スピンオフ税制
⇒支配株主の存在しない新設分割型分割や子会社株式の現物分配は現行では非適格
⇒上場企業で適格となるケースは稀
⇒活発な組織再編できる様に適格要件を緩和
⇒対象となる取引は下記
・単独新設分割型分割
100%子会社株式を対象とした現物分配

2.スクイーズアウト税制
⇒吸収合併及び株式交換に係る対価要件の緩和
⇒被合併法人等の発行済株式の2/3以上を有する場合の適格要件の緩和


11.スクイーズアウト税制の整備に関する実務ポイント

■適格スクイーズアウトの対価要件
(改正前)
・完全親法人株式以外の対価は×
(改正後)
・合併法人又は株式交換完全親法人が株式を3分の2以上保有する場合は金銭交付OK
・株主による価格決定申立金銭、株式売渡請求による金銭交付はOK

■非適格スクイーズアウトに係る税務上の取扱い
・株式交換完全子法人の資産の時価評価課税:
⇒含み損益が一定額未満※の資産、帳簿価額が1,000万円未満の資産は除外
・端株交付に係る金銭交付の取扱い見直し
※完全子法人の資本金等の額の2分の1or1,000万円のいずれか少ない金額

■スクイーズアウトに係る少数株主の課税関係(課税が発生するケース)
・みなし配当課税
⇒非適格スクイーズアウトで合併のケース(金銭交付/不交付を問わない)
・株式譲渡益課税
⇒金銭交付をするケース(適格/不適格を問わない)


12.スピンオフ税制の創設に関する実務ポイント

■スピンオフ税制とは
 特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフ等の円滑な実施を可能とする税制

■スピンオフの種類
【適格単独新設分割型分割】
 その分割に係る分割法人の当該分割前に行う事業を当該分割により新たに設立する分割承継法人において、独立して行うための分割として政令で定めるもの

【適格株式分配】
 完全子法人の株式のみが移転する株式分配のうち、完全子法人と現物分配法人とが独立して事業を行うための株式分配として政令で定めるもの

■課税関係
【適格単独新設分割型分割】
分割法人
 ・移転する資産に対する譲渡益課税なし(簿価移転)
 ・減少資本金等の額と減少利益積立金額の合計が、移転純資産簿価と同額
分割法人株主
 ・みなし配当課税なし、分割法人株式の譲渡益課税なし
 ・分割法人株式簿価を分割承継法人株式に付替え

【適格株式分配】
現物分配法人
 ・子法人株式の譲渡益課税なし(簿価移転)
 ・減少資本金等の額は、子法人株式の簿価と同額
現物分配法人株主
 ・みなし配当課税なし、現物分配法人株式の譲渡益課税なし
 ・現物分配法人株式簿価を子法人株式に付替え


13.監査役の視点からの監査法人のガバナンスコード

■ガバナンス・コードの採用により変わると思われる点
ガバナンス・コードにおいて示されている多くの点は、監査法人にとって当然であるが、当然かどうかと、適切に対応されていたか否かは別問題であり対応の精度が望まれる
・監督・評価機関の構成員に独立性を有する第三者を選任・役割の明確化
⇒以前は重要な機関に第三者を選定する事はなかった
・人事管理・評価および報酬に掛かる方針を策定
⇒職業的懐疑心を適正に発揮したかどうかの具体的な評価がなかった
・法人の構成員に対し、例えば非監査業務の経験や事業会社等への出向を含め、会計監査に関する幅広い知識・経験を獲得する機会を与える
⇒積極的には行われてこなかった
・利害関係者による評価と外部に向けた開示を充実
⇒以前はほとんどなかった


14.株主総会決議の瑕疵・動議

■総会決議の瑕疵を争う方法:以下の訴えによること可能
(1)訴え
・決議取消⇒実務上、大多数
・決議無効確認(決議内容が法令違反)、決議不存在確認(総会手続に重大法令違反)⇒稀

(2)決議取消事由
・招集手続又は決議方法が法令定款違反or著しく不公正(例:2週間の招集期間不足)
・決議内容が定款違反
・特別利害関係者の議決権行使による著しく不当な決議(例:事業の譲受予定人が議決に加わり可決)

(3)提訴権者:株主等(株主、取締役、監査役、精算人、執行役)、被告:会社
(4)提訴期限:決議の日から3ヶ月以内

■動議
(1)手動的動議(議事進行上の動議:採決方法・休憩・黙とう等)
⇒以下(議場判断) を除き、議長判断。※動議に対する議長の考えを議場に諮る形がスムーズ。
・議長不信任
・総会提出資料検査役選任
・会計監査人出席要求
・延期続行

(2)実質的動議(議案提案)
⇒不適法な内容、招集通知記載事項から予見し得ない内容は議長が排除可能。
※予見可能な動議は必ず取り上げる。
※動議か意見か不明な場合は、株主に確認する。


15.有形固定資産の減価償却方法の変更

■質問事項
大型設備の新規導入を機に、有形固定資産の減価償却方法を、定率法から定額法に変更する場合の会計上留意すべき事項

■減価償却方法の変更
減価償却方法は会計方針に該当
⇒会計方針を変更するには、会計基準等の改正に伴う場合(強制)とそれ以外の正当な理由による場合
(自発的)の2パターンがある
⇒自発的に会計方針を変更する場合は5要件を満たしている必要がある。

■遡及適用の有無
正当な理由による会計方針の変更は過去の期間全てに遡及適用することが原則。
⇒但し、減価償却方法の変更については遡及適用しない

■注記
過年度遡及会計基準上、会計上の見積りの変更と同様に取り扱われるものの、会計方針の変更に該当するため、変更の内容や変更を行った正当な理由等を注記する。


16.完全子会社の整理と税務

B社はA社が設立した完全子会社だが、業績不振が続いている。
A社はB社を吸収合併するか、解散させたいと考えており、それに先立ってA社⇒B社への債権を放棄した。

B社を吸収合併する場合)

B社は吸収合併されることで事業は継続される。
その為、「回収可能性がない」とは言い切れなくなり、債権放棄は寄付金扱いとなる。
なお、完全支配関係内部の寄付金は損金不算入となり、相手側では債務免除は益金不算入となる。

また、A社はB社を設立以来、完全支配していることから、合併は適格合併となり、B社の未処理欠損金は制限なく、A社で引き継ぐ事ができる。


17.資本政策事例

20175月現在
飲食業を営むA
20193月期を直前期とし、マザーズ上場を目指す
現在の資本構成は、オーナー80%、オーナー以外の役員20%
飲食業の多店舗展開を行っており、出店にあたっては、資金調達がカギ
これまでは借入金調達がメイン

オーナーの希望
・上場後も経営権は持ちたいが、当面の個人的な資金負担は難しい
・上場までの出店を加速するために、出店費用は資本政策の中で賄っていきたい
・経営権の安定のため、安定株主対策も進めたい
・従業員への福利厚生も考えたい

1.上記希望を達成するための資本政策の手段は?
1)第三者割当増資
⇒割当先として安定株主として将来機能することが期待できる取引先企業、金融機関などに対して実施

(2)オーナー向け新株予約権の発行
⇒オーナーの持株比率を保ち、経営権を維持

(3)従業員向けストックオプション、持株会の設立
⇒福利厚生目的、インセンティブ目的で帰属意識を高める

2.安定株主比率はどの程度か?
安定株主は、オーナー、オーナーの同族株主、取引先企業、金融機関、役員、従業員持株会など
比率は、株主総会の特別決議に必要な3分の2以上の議決権を確保しておくことが望ましい。
また、オーナー一族で過半数の議決権を確保しておくことが望ましい。

最低限、株主総会の特別決議の拒否権を発動できる3分の1超は確保しておくべきである。









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