2017年7月21日金曜日

7/21 勉強会:税務の動向 外国人留学生国籍別租税条約 他

1.会社法上、株式の無償発行が可能とされる方向

・現在、会社法で不可である株式の無償発行(取締役の報酬として)が可能になるよう検討中
・税務上、損金算入可否は不明であり企業のニーズは未知数
⇒業績連動給与に該当=算定方法を有価証券報告書等で開示するなどの要件あり
・有利発行規制(会社法1993項)の適用の要否が問題
・現行の譲渡制限株式で十分との声もあり
⇒事前確定届出給与として損金算入が可能


2.今週の専門用語

■最終親会社
・企業グループの構成会社等のうち、
他の構成会社等の「議決権の過半数」等を支配するもの
・国別報告事項(CbCR)の提出義務者


3.CbCRへの多国間評価で課税上お墨付き

■価格調整金等とは
企業が既に行った国外関連取引に係る対価の額を、後々に移転価格上適正な価格である独立企業間価格に変更するため支払う金額

⇒当該支払が合理的と認められない場合は寄附金課税がされる

(裁決事例)
・寄附金課税されない
…原材料の価格高騰が原因で遡及して取引価格を改定
 ※他社も同様の改定が必須かつ事前の取り決め必須

・寄附金課税される
…国外関連者の財務支援目的や支払額の根拠がないケース


4.賃貸借・使用貸借の判断を巡る最近の税務トラブル

使用貸借とは、当事者が相手から無償で物を借りて、使用等したのちに返還する契約

■事例
・A社(納税者の関連法人)所有の土地建物につき、B社(第三者)との間で賃貸借契約あり。
・納税者がA社より代物弁済にて建物を取得。
・建物につき、納税者とA社間で賃貸借契約を締結。年480万円収入あり
・A社は土地建物をB社に転貸し、再度賃貸借契約を締結。年3,000万円収入あり
・納税者は不動産収入として480万円とするが、同金額を超える固定資産税や減価償却費を必要経費としていた
・原処分庁は納税者とA社間の契約は、「賃貸借」ではなく「使用貸借」とする課税処分を行った

■不動産所得の法令解釈
不動産等の貸付による所得を不動産所得とする。
すなわち、納税者がA社に不動産等を使用収益させて、その対価を得ることを目的とする行為から生じる所得と解する。

■審判所の判断
・納税者とA社間の契約が、代物弁済後に行われている。
⇒租税回避目的のために契約が行われたと考えられる。
・不動産収入年480万円が固定資産税の半分にも満たない。
また転貸したB社から賃料の5分の1にも満たない。
⇒本来の使用を目的として対価を得ていると判断できない。

以上より、「賃貸借」ではなく「使用貸借」と判断され、不動産の収入及び固定資産税等の必要経費双方ともに算入されないとされた。



5.選択同意書なければ小規模宅地特例NG

■小規模宅地特例とは
・生活基盤を維持するために処分しがたい宅地について、評価額を減額(相続税を減額)できる特例
・特例を受けるためには特例対象宅地を取得した全ての相続人の選択同意書が必要

■事案
A区土地 ⇒遺言により長男が相続決定
B市土地 ⇒未決定(長女ら共同相続人あり)
※A区土地とB市土地のどちらも特例対象宅地等に該当

(1)A区土地を相続した長男は、選択同意書の提出の必要があるか?
(2)未分割財産は申告期限後3年以内に選択同意書を取得すれば特例適用可、というただし書き規定が適用されるか?

■判決
(1)選択同意書は提出必須
⇒B市土地には共同相続人がいるので、選択同意書が必要
(2)ただし書き規定の適用不可
⇒A区土地が未分割財産ではないため適用不可

■実務上の対応策(例)
・特例対象宅地すべての相続人を1人にする
・A区土地も相続が決まってないことにして、3年以内に分割協議をまとめる



6.税務の動向 外国人留学生国籍別租税条約

■アルバイトに対する源泉徴収
原則として源泉徴収が必要
ただし、外国人留学生のうち、租税条約が締結されている国の留学生については一定の届出を要件に源泉徴収義務が免除される。

■国別租税条約締結の有無()内は全留学生に占める当該国の割合
中国(31.8%)○
ベトナム(15.9%)○
フィリピン(11.8%)○
ブラジル(9.8%)○
ネパール(4.9%)×
韓国(4.4%)○
ペルー(2.4%)×
インド ×
パキスタン ○
バングラデシュ ×

■提出書類
給与等の支払者を経由して、
・租税条約に関する届出書
・在学証明書
の提出が必要



7.国税庁「法人事業概況説明書」を抜本改訂

・平成30年4月1日以後終了事業年度分から新様式
・海外子会社の名称・出資割合などの記載欄が追加
・PC利用状況はより具体的に ⇒ 調査効率化目的
・経理の状況欄で社内監査欄を追加
・特別利益、特別損失欄を追加



8.総額表示、純額表示

・日本基準では収益に関し売上と仕入を純額で表示するか総額で表示するかについての一般的な定めはない
・唯一、ソフトウウェア取引において、リスクない委託販売の手数料収入は「総額表示は適切でない」とされているのみ
・IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」では、 本人=総額表示、代理人=純額表示、とされている。
・判断のポイント
 顧客に移転される前に、「財又はサービス」を企業が支配しているか否か
 約束履行責任、在庫リスク、価格設定の裁量権 など



9.日本公認会計士協会は18日、女性会計士活躍促進協議会のポータルサイトを開設

・女性会計士の割合は、米国は5割、シンガポールは6割。
・日本は合格者が2割程度、(結婚や出産などで自ら会員登録を抹消する例も多いため)会員登録ベースでは14%。


10.与信限度額の設定

1.信用調査会社の評点をもとにした算出方法
・メリット
与信限度額の設定が容易にできる
・デメリット
信用調査会社の評点がない会社や、評点が低い会社については、当該方法を用いた与信枠は設定できない
信用調査会社としては、帝国データバンク、東京商工リサーチなど

2.「純資産」を基準とした算出方法
純資産を基準に、「この程度であれば、焦げ付いたとしても影響が小さい」という「一定割合」を設け、そこに格付による「ウエイト」を加味して管理する方法
・計算例
純資産× 一定割合(5%~30%)× 格付ウエイト(例:S=1.7 A=1.3 B=1.0 C=0.7 D=0.5 E=0)
一定割合は10%が一般的といわれている
・メリット
純資産の範囲で設定するため、倒産した場合でも配当を受けられる可能性が高い
・デメリット
純資産の少ない企業では利用しづらい

3.自社の「売上債権」を基準とした算出方法
自社の売上債権を基準に、「一定割合」を設け、そこに格付による「ウエイト」を加味して管理する方法
・計算例
自社売上債権× 一定割合× 格付ウエイト
・メリット
取引先数が多い企業では使い勝手がいい
・デメリット
取引先1社1社に対する依存度が高い企業では使いづらい
売上の変動幅が大きい企業には適さない

4.取引金額をもとにした算出方法
想定取引額(例:過去1年間の月平均売上高×債権回収サイト月数)
・メリット
取引実態を反映した金額の設定が可能
・デメリット
季節変動他、取引額が増加するたびに与信枠の見直しが必要になる








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

0 件のコメント:

コメントを投稿