2017年7月15日土曜日

7/14 勉強会:収益認識、消費税の税込処理はできず 他

1.未来投資戦略2017から読む税務・会計・会社法

■税務
・個人所得税の基礎控除等の人的控除等を週にかかわらず税負担の軽減額が一定となるよう検討中
⇒現状、高所得者ほど税負担の軽減効果が大きくなる仕組み
2020年までに大法人の電子申告利用率を100%へ(中小法人は85%へ)

■会計
・短期間に決算短信、事業報告、有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書と4つの異なる開示書類があり、投資家にとってわかりにくい。よって重複開示の解消等が検討される。

■会社法
・退任した社長、CEOが就任する相談役、顧問等について、氏名、役職、地位、業務内容等を開示する制度を創設する方向へ


2.会計士協会、交代した監査人にヒアリングを実施へ

下記書類の監査対象会社数の増減理由記載箇所を現行の自由記載から選択肢形式に変更
・登録事務所概要書変更事項届出書(会社数及び会社名)
・監査契約会社リスト変更事項届出書
これで把握した交代理由を踏まえ、必要と認めた場合は、交代理由等をヒアリングする方向


3.四半期報告書 作成上の留意点(平成296月第1四半期提出用

(1)「経営方針」等の重要な変更等の記載に係る留意点
・従来、決算短信の記載内容とされていた「経営方針」について、開示府令が改正され、有価証券報告書の記載内容とされた
⇒四半期報告書上、「経営方針」等に重要な変更等があった場合、その内容を記載
※平成2941日以後に開始する事業年度に係る四半期報告書について適用

(2)リスク分担型企業年金に関する留意点
・平成291月、リスク分担型企業年金※導入
※運用リスクを事業主と加入者で柔軟に分け合う確定給付企業年金
・実務対応報告「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」を公表
⇒リスク分担型企業年金のうち、企業が掛金相当額の他に拠出義務を
実質的に負っていないものは、退職給付会計基準に定める確定拠出制度に該当
※平成2911日以後、適用

(3)改正実務対応報告「連結F/S作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」
⇒本改正により、本実務対応報告の対象範囲に修正国際基準(JMIS)等に準拠した連結F/Sを作成し有価証券報告書により開示している国内子会社等も含められた。
※平成2941日以後開始する連結会計年度の期首から適用

(4)改正実務対応報告「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」
(3)と同様


4.退職金RSとPSUの組み合わせ増加も

RSとは、リストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式)
PSUとは、パフォーマンス・シェア・ユニット(業績条件達成後に株式を付与する制度)

自社の役員報酬制度として、退職金としての譲渡制限付株式報酬とパフォーマンス・シェア・ユニットの組み合わせを、導入・検討する企業が増加している。

■導入や検討する理由
・退職金とすることで、役員の所得税負担が軽減。
・譲渡制限付株式報酬で譲渡制限の解除等が退任時の場合、退職給与として損金算入することが可能。
・H29年度税制改正で、PS型の株式報酬も損金算入することが可能

今後、RSとPSUの組み合わせが役員報酬の標準モデルとなる可能性あり



5.収益認識、消費税の税込処理はできず

収益認識に関する会計基準(案)では、消費税の税込方式は採用不可
⇒消費税は第三者のために回収される金額であるため収益認識しない

強制適用に関しては、2~3年先からといった案が出ているようだが、税込処理を採用している企業はシステム変更が必要となるので注意!


6.措置法税額控除 職権による控除額の増額可に

■従来の流れ
(1)調査による更正により所得が増加⇒修正申告
(2)法人税額が増加したことにより試験研究費等の税額控除限度額が増加
(3)更正の請求により還付をうける⇒更正の請求

■29年改正
調査による増額更正により、租税特別措置法の税額控除限度額が増加する場合には、職権更正により控除額を増額できることとなった。

(従前)
建付け上は2回の手続き(修正申告+更正の請求)が必要
(改正後)
修正申告時に控除額を増加させて申告(更正の請求不要)

■留意点
上記規定は当初申告時に税額控除を適用するための別表を添付していることが要件となるため、当初申告時に別表添付がない場合は適用されない
(=遡って添付があったことにはなるわけではない)


7.今週のFAQ<札幌高裁判決(低解約返戻金型保険の一時所得の支出金額

■質問
個人が法人から生命保険契約の契約者の地位を3172,400円で承継
理事長Aの一時所得の計算上、3172,400円は「その収入を得るために支出した金額」として控除されるのか?

■回答
控除される
⇒収入を得た個人が自ら負担した支出は控除できる
⇒それまで法人が支払っていた保険料は控除できない(二重控除になるため)


8.監査人交代時の意見表明

・監査人の交代は、臨時報告書及び適時開示による開示が必要
臨時報告書では
・「異動に至った理由及び経緯」を記載 
・退任する監査人が「その理由及び経緯に対する異動公認会計士等の意見」を表明する
 従来の交代理由は「任期満了」が多かった。
・東芝に対して新日本有限責任監査法人が行った意見表明
 「同社が組織的な隠蔽工作を行ったことで、監査を十分に行うことができなくなった」
・オークファンに対して有限責任あずさ監査法人が行った意見表明
 「会社から監査業務への理解を得られないため、契約継続は困難」


9.会計不正が発覚した際の税務手続のポイント

■過年度に過大な売上計上があったケース
・決算の修正と修正損の損金算入の可否
⇒過年度損益修正損を当期で計上…税務上は前期以前の損失。当期は加算調整必要。
⇒税務上は更生の請求が必要(ただし、粉飾決算の場合、前期修正を行った期の申告書が提出されることが要件)
⇒消費税は当期の減額としてよい。

■従業員による横領が発覚したケース
・横領、その後損害賠償を受けた ⇒ 両建計上
・横領=架空経費の計上 ⇒ 加算税+重加算税の論点あり


10.平成29年度税制改正・外国子会社合算税制の改正

■合算対象とされる外国法人の判定方法の見直し
・「外国関係会社」の判定においては「50%超を直接及び間接に」所有するかどうかで判定されていたが、50%超の連鎖関係があるかどうかで判定されることになった。
・居住者又は内国法人が外国法人の残余財産のおおむね全部を請求することができる等の関係がある場合におけるその外国法人も「外国関係会社」の範囲に含まれることになった。
・外国関係会社が特定外国子会社等に該当するかどうかを判定するための租税負担割合基準(20%未満のトリガー税率)が廃止される。
ただし、租税負担割合が20%以上の場合は本規定の適用除外とされる項目が追加されるため、実質20%未満の判定は残ることとなる。

■適用除外基準(経済活動基準)の見直し
・経済活動基準のうち、下記のいずれかを満たさない外国関係会社について、合算課税の対象となる。
 事業基準
 実体基準及び管理支配基準
 非関連者基準
 所在地国基準

■部分合算課税の見直し
・もともと対象となっていた配当や利子などの範囲について見直しがされるとともに、有価証券の貸付の対価、デリバティブ取引損益、外国為替差損益や無形資産等の譲渡損益等も資産性所得に含められることとなる。
・資産性所得の合計が1,000万円以下である場合は、資産性所得合算課税の適用除外とされていたが、今回の改正で2,000万円以下となる。

■特定の外国関係会社に対する合算課税
・外国関係会社のうちペーパーカンパニー等については、合算課税の対象とされる
(適用除外基準の判定をすることなしに合算課税の対象となる)。



11.四半期報告書作成上の留意点

企業と投資家との建設的な対話を促進することを目的として開示資料の見直しが行われた
■「経営方針」等の重要な変更等の記載に係る留意点
(1)概要
従来の短信記載⇒有報記載
四半期報告書については、「経営方針」等に重要な変更があればその内容を記載
平成29年4月1日以後から適用
(2)財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析
当四半期連結累計期間において、経営方針等に重要な変更があったとき、または新たに定めた時はその内容を記載する必要がある(新設)



12.管理会計の課題と将来像(大きな話

■よく見られる課題
⇒適切な意思決定や業績評価をサポートするツールであるべきところ・・・
・形骸化している。
・一般的に良いと言われる手法を採用しているが、会社の性質に合っていない。
・事業の変化に合わせられていない。
・現場にプレッシャーを与えるツールになっている。

■今後の社会と経営課題
・情報の多様化、加速化⇒統制の限界⇒現場判断の必要性増加。
・市場ニーズの多様化に対し、スピーディに反応できる現場力を生み出せるか。

■今後の管理会計に求められる姿
・個々の従業員が自律的かつ柔軟に意思決定できる環境を提供すること。
・その判断で得られた業績を適切に評価できる材料を提供すること。



13.金利スワップ取引の会計

・金利スワップ
⇒金利変動リスクのヘッジ目的に利用される。

・会計処理は3パターン
(1)原則的処理
⇒時価評価し、評価差額をPLヒット。デリバティブの会計処理の原則。
(2)繰延ヘッジ
⇒時価評価し、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで繰延
例外的な処理であるため、事前テスト、事後テストが求められる(本当にリスクヘッジできているか)
(3)特例処理
⇒ヘッジ対象(借入等)と金利スワップを一体とみなし、時価評価しない。
金利スワップにより変動利率を固定化又は固定利率を変動化する目的から、ヘッジ対象と金利スワップを一体として処理する特例処理が認められていると考えられる。



14.資本金1億円以下の有名企業

・資本金1億円の会社で有名な企業は下記。
 ⇒ 日本マクドナルド(資本金1億円、東証1部上場日本マクドナルドホールディングスの子会社)
 ⇒ ジャパネットたかた(資本金1億円、非上場)
 ⇒ アイリスオーヤマ(資本金1億円、非上場)
  ⇒ ヨドバシカメラ(資本金3千万円、非上場)

・日本マクドナルド、担当者のコメント
 ⇒ 法人税法上は大法人で、メリットは受けていない(大法人に該当する持ち株会社の100%子会社であるため)。
  ⇒ 一方、住民税均等割と事業税(外形標準課税の対象外)などにメリットはある。
グループ全体で最適な資本政策をとって顧客価値向上への投資と株主還元に資する利益の最大化を行っている。

・2017年、新たに7社の上場企業が資本金を1億円以下に減資。
 ⇒ IRで「節税目的」と明記する企業も。

・平成 31 年度より、「前 3 事業年度の平均所得金額が 15 億円を超える企業」は、資本金 1 億円以下であっても各租税特別措置を受けることができなくなる。
 ⇒ 法人税の軽減税率の特例(所得 800 万円以下に 15%)、 研究開発税制、所得拡大促進税制など
 ⇒ ただし、外形標準課税の適用基準はいまだ資本金のみ。近い将来見直される可能性あり。



15.債権管理(督促)

・回収遅延が生じた場合、遅延理由を確認の上、回収予定が明確にならない場合に督促を実施
・督促状を内容証明郵便(※)で出すなどの対応が必要
(※)手紙型の請求書。内容を郵便局が確認し、5年間保存される。
弁護士名で送付する方がより回収可能性が高められると考えられる。
・内容証明郵便で支払が行われない場合、通常、裁判所による司法手続きへ移行。
・手続きの手法としては、1.支払督促、2.少額訴訟、3.通常裁判の3つ。










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